遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 実は今回、原作のキャラクターをお借りしました!

 知る人ぞ知る、あの御方です!



TURN - 18 Store Breaker

 

 意外かも知れないけど、ボクが住んでいる大都市『ジャルダン』の1番街には、カードショップは1店舗しか存在していない。

 何故かと言うと理由は明白で、そのたった一軒のカードショップがあまりにも大型な為、新しく増設する必要がないからだ。

 他の区域には小規模なショップがチラホラ見受けられるけど、ここ、カードショップ・『GARDEN(ガーデン)』は、1番街唯一(ゆいいつ)のカード販売店なだけあって、規格外にデカイ。なんせ、10階建てのビルひとつが、まるまるカード売り場として経営しているんだ。

 

 『決闘(デュエル)が全てを支配する街』と呼ばれている、ジャルダンにおいて、カードショップは言うまでもなく必要不可欠な施設だ。

 お目当てのパックや欲しいカードを探し求めて、はたまた、自分のデッキを強化するのに必要なカードを補充するべく、大人も子供も分け隔てなく街中(まちじゅう)決闘者(デュエリスト)が、この建物に足を運ぶ。他では売ってない様な高価なレアカードも置いてあるらしく、はるばる別の街から買いに来る客も大勢いる。それだけの集客数を余裕で収容できるんだから、この店のキャパシティの広さは驚異的だ。まさに『(ガーデン)』。

 

 もちろん店内には決闘(デュエル)スペースも完備してある。椅子に座って楽しみたい人の為に決闘(デュエル)テーブルも各階に置かれているし、最上階にはデュエルディスクが使える決闘(デュエル)フィールドも数台、設置されている。

 友達や初対面の人と決闘(デュエル)したりカードを交換(トレード)したり、決闘者(デュエリスト)同士で交流を深められるこの店は、決闘者(デュエリスト)御用達の憩いの場として街の人達に親しまれており、ジャルダンの名所の1つにも数えられている。

 

 さて、そんな名店にボクが何の用事で来ているかと言うと……

 

 

 

『レディース・アーンド・ジェントルメーン!! よくぞ集まってくれたなお前ら! これより、カードショップ・GARDEN(ガーデン)主催の決闘(デュエル)大会を開催するぞーっ!!』

 

「「「「おおおおおおおっ!!!!!!」」」」

 

「わぁ……すごい熱気」

 

 

 

 ビルの最上階──10階。決闘(デュエル)フィールドが設けられている階に何十人もの決闘者(デュエリスト)達が押しかけて、マイクを握った司会者さんの宣言に大歓声で応えた。毎日の様に繁盛している店だけど、今日みたいな日は倍以上の盛り上がりを見せる。

 

 そう。ボクは今、この店で定期的に開催される決闘(デュエル)の大会に参加している。休日で予定も無くて暇だったからね。フラッと立ち寄ってみたら面白そうなのがやってたから飛び入りしたんだ。

 えっ? いつものメンツはどうしたのかって? ……本日は、ぼっち参戦です。

 

 

 

「……あれ? セツナさんなのです!?」

 

「あっ、()(ふみ)ちゃん。久しぶり」

 

 

 

 語尾が独特な喋り方をする、黒い丸メガネを掛けた黒髪の女の子と出会った。名前は(はや)() ()(ふみ)ちゃんと言って、アカデミアの新聞部に所属している中等部の生徒だ。以前インタビューという名目で、一度だけ決闘(デュエル)をした事がある。【ウィジャ盤】デッキは恐ろしかったなぁ。あれ以来だから会うのは本当に久しぶりだ。

 

 

 

「偶然だね~。記文ちゃんも大会に参加するの?」

 

「それもあるのですが、今日は新聞部として、この大会の取材に来たのです!」

 

「取材かぁ、仕事熱心だね」

 

「はいなのです! お父さんの様な立派なジャーナリストになる為にも、シャッターチャンスは(のが)さないのです!」

 

「記文ちゃんのお父さんって、ジャーナリストなんだ?」

 

 

 

 ……記文ちゃんに似て、メガネを掛けてカメラとマイクを構えた中年のおじさんを想像してしまった。

 

 

 

『イィ~~~ッツ! タイム・トゥ・デュエル!!』

 

 

 

 っと、話してる内に大会が始まったみたいだ。広い室内の決闘(デュエル)フィールド全てで、それぞれの決闘(デュエル)が一斉に開始された。

 

 

 

「【モリンフェン】で【シーホース】を攻撃!」

 

「グワーッ!!」

 

 

 

「さすがジャルダンのカードショップ! どこもかしこも激しい決闘(デュエル)が繰り広げられてるのです~!」

 

 

 

 ハイテンションで会場内を駆け巡り、あちこちの決闘(デュエル)を見物して回る記文ちゃん。相変わらず元気そうで何より。

 

 確かにどの決闘(デュエル)も相当にレベルが高い。高度な戦術の応酬は、ギャラリーに混じって観戦しているだけでも楽しめる。でもやっぱり()()決闘(デュエル)を見てると、自分も早く()りたくなってくる。

 

 

 

「ボクの試合は……もう少し先か。ストレージでも漁ってよっかな」

 

 

 

 ストレージと言うのは、ケースの中に大量のカードが詰められている売り場の通称で、1枚10円とか30円で買えてしまう様な、レア度の低いカードが並んでいる。安物と言えど、掘り出し物が多いから侮れないんだよね。

 

 

 

「どれどれ? ……おっ、良いのあるじゃん」

 

 

 

 【D・D・クロウ】、【()()ガエル】、【魔導雑貨商人】……どれもこれも役に立つカードなのに、なんで安価コーナーに入ってるんだろう?

 

 昨今の決闘(デュエル)界はステータス至上主義。それ(ゆえ)、弱いカードは軽視されがちだ。どんなカードでも使い方次第だと思うけどなぁ。

 

 

 

「……カカカッ、無駄にデケぇカードショップですね兄貴?」

 

「ククク……さすがは決闘(デュエル)が支配する街と言ったところか。この店は絶対に頂くぜ!」

 

 

 

 ……? 今すれ違った三人組が妙な会話をしていた気がした。小太りな男と細身の男、それから(たけ)の長いコートを着て、頭にフードを被ったロン毛の男だ。見てくれからして怪しいけど、何者なんだろう?

 

 

 

「おっと、もうすぐボクの出番だ。急がないと」

 

 

 

 手に持っていたカードの束をストレージに戻そうとした時、ふと1枚のカードが目についた。

 

 

 

「これって……」

 

 

 

 ……直感で購入を決めたボクは、そのカードを取り出して、レジに持っていった。こういうのを衝動買いって言うのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──これでチェックメイト! 【ラビードラゴン】で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「うわあぁっ!? ま、負けたぁ……」

 

 

 

 ここまで順調に勝ち星を重ねて今ので三連勝。今日も調子が良いみたい!

 

 

 

「セツナさん安定の強さなのですー! この勢いだと優勝も狙えるのです!?」

 

「ありがとう記文ちゃん。あー、どうかな……」

 

 

 

 そりゃ優勝できれば嬉しいけど。試合を終え、ボクが決闘(デュエル)フィールドから降りると、すぐさま次に対戦を控えていた二人の決闘者(デュエリスト)が、入れ替わりで舞台に上がる。

 

 

 

(あっ……あの人はさっきの)

 

 

 

 壇上に立っていたのは少し前に見かけた、小太りでおかっぱ頭の男だった。よほど腕に自信があるのかイヤらしい笑みを浮かべている。

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……決闘(デュエル)は小太り男の一方的な展開(ワンサイドゲーム)で進行していた。

 

 

 

「【吸収天児】で攻撃!」

 

「うあぁーっ!?」

 

「カカカッ、どうした? もう手詰まりかい?」

 

「……あぁ……俺の負けだ……っ」

 

 

 

(決着か……運が悪かったね、対戦相手の人)

 

 

 

 あの人のデッキに小太り男のデッキは最悪の相性だった。

 

 

 

「あっ!」

 

「? どうしたの? 記文ちゃん」

 

「見たことある顔だと思ったら……あの人は確か、『ストア・ブレーカー』なのです!」

 

「ストア・ブレーカー?」

 

「以前、お父さんに教えてもらったのですが……カードショップの売り上げ金や、客のレアカードを奪って店を潰す、悪い人達なのです。ついにここもターゲットにされたのですね……!」

 

 

 

 そんなのがいるのか。要はあの三人を放っておくと危ないって事だね……

 ジャルダン屈指の人気店が潰れたりしたら街の経済的にも相当な痛手になるだろうし。騒ぎになる前に、それとなく司会者さんに伝えておこうかな。

 

 

 

「おい! もっと他に強い奴はいないのか! ひょっとしてこの店の最強は俺!? カカカカカッ!!」

 

「待つのですー!!」

 

「!?」

 

 

 

 記文ちゃんが突然このフロア全域に響く程の大声を発した。小太りの男が記文ちゃんを睨む。周りの客も、一斉に彼女へと視線を集中させた。注目に晒されながらも記文ちゃんは気丈に言い放つ。

 

 

 

「そこまでなのです、ストア・ブレーカー! カードショップを荒らす悪人には、正義の鉄槌を(くだ)してやるのです! セツナさんが!!」

 

「ボクッ!?」

 

 

 

 店中(みせじゅう)にデカイ声で正体をバラされて、さすがに計算外だったのか小太り男の表情が一気に険しくなった。

 

 

 

「ス、ストア・ブレーカーだって……?」

 

「聞いた事あるぜ、店の上前をはねたり客からレアカードを奪う連中だ……!」

 

「マジかよ、この店まで潰そうってのか……?」

 

 

 

 周囲の客の懐疑的な視線がストア・ブレーカー達に突き刺さる。完全にアウェーだ。これに耐えかねて退散してくれれば丸く納まるけど……

 

 

 

「チッ……兄貴、どうします?」

 

「ふん、いいだろう。受けて立ってやる」

 

 

 

 小太り男が兄貴と呼んだロン毛の男が、被っていたフードを脱いで素顔を見せた。目付きは悪いけどイケメンだった。どうやら彼がリーダー格みたいだ。

 

 

 

『あーーーーーっ!!』

 

 

 

 今度は司会者さんが驚きの声を上げた。どうでもいいけどマイクうるさい。

 

 

 

『こいつはカードショップ経営者の間でブラックリストに登録されていた……(ひゃく)のデッキを持つ決闘者(デュエリスト)! (もも)() ()(すみ)だ!!』

 

「百ぅ!?」

 

『そのひとつひとつが対戦相手のあらゆるデッキを想定して組まれた──アンチ・デッキ!』

 

 

 

 『アンチ・デッキ』……なるほど、さっきの決闘(デュエル)の相性が極端に悪かったのはそのせいか。

 

 

 

「ていうかこれ……本当にボクが決闘(デュエル)する流れなの?」

 

「セツナさんファイトなのですー! ストア・ブレーカーなんて、ガツンとやっつけちゃってくださいなのです!」

 

『頼むぞ少年! 私の店を守っておくれーっ!』

 

「ちょ、やめてよ司会者さんまで!」

 

「クククッ、確かキサマ、この大会で上位にランクインしていたな。私が勝った場合、キサマのデッキを頂くとしよう」

 

「! ……それは負けられないなぁ」

 

 

 

 やるしかないか。デッキもそうだけど、ボクもこの店には何度か(かよ)ってて気に入ってるから、無くなっちゃったら(さみ)しいし。

 

 ロン毛の男──(もも)()がコートを開くと、その内側にはいくつものデッキが納められていた。アレが百のデッキか、壮観だなぁ。

 

 

 

「さぁて、どのデッキを使おうかな? クク……こいつで行くか」

 

 

 

 百野は選択(チョイス)したデッキを抜き取ると、それをディスクに差し込んだ。恐らくはボクのデッキに対するアンチ・デッキだろう。だけど、()()を張られてると分かっていても、ボクはボクのデッキを信じて戦うよ。

 

 ボクと百野は決闘(デュエル)フィールドに上がり、同時にデュエルディスクを展開した。

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 (もも)() ()(すみ) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「ボクの先攻!」

 

(クククッ……キサマのデッキの『(カラー)』は、すでに今までの決闘(デュエル)()()()ている……!)

 

「カードを1枚セット! そして、【暗黒の竜王(ドラゴン)】を召喚!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500

 

 

 

「フッ、やはりドラゴンか」

 

「………」

 

「私のターン! 【コストダウン】発動! 手札を1枚捨て、手札のモンスターのレベルを2つ下げる! レベル4となった【竜殺者(ドラゴン・キラー)】を召喚!」

 

 

 

竜殺者(ドラゴン・キラー)】 攻撃力 2000

 

 

 

「このモンスターが召喚された時、フィールドのドラゴン族モンスター1体を破壊する!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 【竜殺者(ドラゴン・キラー)】の効果で、【暗黒の竜王(ドラゴン)】が早くも破壊されてしまう。

 

 

 

「バトルだ! 【竜殺者(ドラゴン・キラー)】で直接攻撃(ダイレクトアタック)! 『アサルト・スラッシュ』!!」

 

「うわあああっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 2000

 

 

 

「くっ……!」

 

『おぉーーーっと! いきなりライフポイントが半分も削られてしまったぁーっ!!』

 

 

 

 店の存亡が危ぶまれてるのに実況はしっかりこなす司会者さん、MCの(かがみ)

 

 

 

「おやおや、こんなものかい?」

 

「いいや、まだだよ! (トラップ)カード・【ダメージ・ゲート】!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500

 

 

 

「辛うじてモンスターを場に残したか。私はカードを1枚伏せてターン終了(エンド)だ!」

 

「ボクのターン! 【レッサー・ドラゴン】を召喚!」

 

 

 

【レッサー・ドラゴン】 攻撃力 1200

 

 

 

「さらに手札から【ユニオン・アタック】発動! 【暗黒の竜王(ドラゴン)】に【レッサー・ドラゴン】の攻撃力を加える!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500 + 1200 = 2700

 

 

 

「【竜殺者(ドラゴン・キラー)】に攻撃!」

 

 

 

 2体の竜の合体攻撃が決まり、【竜殺者(ドラゴン・キラー)】が撃破される。【暗黒の竜王(ドラゴン)】は前のターンの雪辱を果たせて溜飲が下がった様子だ。

 

 

 

「たかが【竜殺者(ドラゴン・キラー)】1体を倒すのに、ずいぶんとカードを使ったな?」

 

「……1枚カードを伏せて、ターンエンド!」

 

「私のターン、ドロー! ……クククッ、キサマに面白(おもしろ)いものを見せてやる」

 

「?」

 

「手札より、【竜破壊の(あかし)】を発動! デッキから【バスター・ブレイダー】を手札に加える!」

 

「!! バッ……【バスター・ブレイダー】!?」

 

 

 

 デッキから引き抜き、百野が見せつけてきたカードを見た途端、ボクは驚愕の声色で、そのカードの名を復唱した。観戦していた皆や司会者さんも驚いている様で、店内に大きなざわめきが広がった。

 

 

 

『なななななんとーっ!? 百野 真澄が手札に加えたのは、あの伝説の決闘王(デュエル・キング)()(とう) (ゆう)()も使っていたウルトラレアカード! 【バスター・ブレイダー】だぁぁぁぁっ!!!』

 

 

 

 司会者さんの実況を受けて観衆は一気に歓声を湧かせた。ストア・ブレーカーへの敵視など()()へやら。誰もが滅多にお目にかかれない稀少なレアカードを、拝めるかもしれないという期待を(いだ)いてか興奮していた。

 

 でも、ボクにも彼らの気持ちは凄く分かる。今、百野の手の内にあるカードには、それだけの存在価値があるんだ。

 

 ──決闘王(デュエル・キング)・武藤 遊戯。

 

 デュエルモンスターズの世界にその名を轟かせた初代王者。決闘者(デュエリスト)であれば、知らない者は一人もいない。

 そんな伝説の決闘者(デュエリスト)が使用していたカードとなれば、当然レア度も最高級。プロでも所有者は少ないと言われる程の貴重なカードなんだ。

 

 ……どうしてそれを彼が持っているのか……ボクは疑わしくなって、百野に尋ねた。

 

 

 

「……そのレアカードも()()から()ったの?」

 

「ククッ、あぁそうとも」

 

 

 

 やっぱり。

 

 

 

「奪われたカードで組まれたデッキが……決闘者(デュエリスト)に応えてくれるとも思えないけど?」

 

「そんなことは私に勝ってから言ってもらおうか! リバース(トラップ)・【戦線復帰】発動! 墓地から【トロイホース】を復活させる!」

 

 

 

【トロイホース】 守備力 1500

 

 

 

 【コストダウン】で捨てたのは、あのモンスターだったのか。

 

 

 

「【トロイホース】は地属性をアドバンス召喚する際、2体分のリリースに出来る」

 

(まさか……!)

 

「【トロイホース】をリリース! 出でよ、【バスター・ブレイダー】!!」

 

 

 

 その長身と同等サイズの大剣を軽々と操る屈強な剣士が、竜を狩るべく戦場(フィールド)に現れた。

 

 

 

【バスター・ブレイダー】 攻撃力 2600

 

 

 

「出たぁーっ!! 【バスター・ブレイダー】!!」

 

「カッケー! この目で見れる日が来るなんて……!」

 

「シャッターチャンス! 大スクープなのですーっ!」

 

 

 

 記文ちゃんまで熱狂する観客(ギャラリー)に紛れて無我夢中でカメラを構えてるし。連写の音がここまで聴こえるよ。

 まぁ無理もないか。ジャルダンでは強いカードや珍しいカードを所持しているだけでも、称賛に値するステータスになるからね。最も、そのカードに見合った実力が持ち主に伴ってなければ、「宝の持ち腐れだ」と笑われてしまうけど。ここはそういう街だ。

 

 

 

「【バスター・ブレイダー】の攻撃力は、相手フィールドと墓地のドラゴン族1体につき、500ポイントアップする!」

 

「!」

 

「今キサマの場にはドラゴン族が2体。よって攻撃力は、1000ポイントアップ!」

 

 

 

【バスター・ブレイダー】 攻撃力 2600 → 3600

 

 

 

「攻撃力3600……!?」

 

「まだだ! 私は手札から【竜殺しの(けん)】を【バスター・ブレイダー】に装備! 攻撃力をさらに700ポイントアップ!」

 

 

 

 【バスター・ブレイダー】の握る大剣が姿形を変えていく。

 

 

 

【バスター・ブレイダー】 攻撃力 3600 + 700 = 4300

 

 

 

『なんということだぁーっ! モンスター効果と装備魔法の効力が合わさり、【バスター・ブレイダー】の攻撃力が4300まで上昇したぞぉーっ!!』

 

「……っ」

 

『このままでは総角(アゲマキ)少年のモンスター、どちらに攻撃されてもライフが(ゼロ)になってしまう! ん? そうなったら私の店もオシマイ? ぬおーっ!! この歳で失業なんてしたくないぃぃぃぃいっ!!』

 

 

 

 なんか横で一人で盛り上がってる人がいるけど……そうか、これ負けたら責任重大の決闘(デュエル)だった。

 

 

 

「クククッ、呆気ないものだったな。──バトルだ!」

 

「ッ!」

 

「【バスター・ブレイダー】で【レッサー・ドラゴン】を攻撃! 『竜破壊の剣(ドラゴンバスターブレード)』!!」

 

 

 

 【バスター・ブレイダー】は鋭い眼光で【レッサー・ドラゴン】を捉えると、強化された大剣を高々と上段に掲げ、標的を切り裂こうと剣身を振り下ろす。

 

 

 

伏せ(リバース)カード・オープン! 速攻魔法・【(かい)()日蝕(にっしょく)(しょ)】!」

 

「!」

 

「この魔法効果で、フィールドの表側表示モンスターは全て裏守備になる!」

 

 

 

 ボクの場のモンスター2体と百野の【バスター・ブレイダー】が、一斉に表示形式を裏側守備表示に変更され、横向きの伏せカードへと姿を変えた。

 

 また、【バスター・ブレイダー】に装備されていた【竜殺しの剣】は、対象を失った事で破壊され墓地に送られた。

 

 

 

「……チッ、味な真似を」

 

『た、助かったぁ~……』

 

 

 

 司会者さんもホッと胸を撫で下ろしている。うん、それボクのセリフ。

 

 

 

「私はターンを終了する」

 

「エンドフェイズだね。【皆既日蝕の書】の効果で【バスター・ブレイダー】はリバースして、君は1枚ドローできるよ」

 

 

 

【バスター・ブレイダー】 守備力 2300

 

 

 

「ふん」

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

(よし!)

 

「まずは【暗黒の竜王(ドラゴン)】と【レッサー・ドラゴン】を攻撃表示に!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500

 

【レッサー・ドラゴン】 攻撃力 1200

 

 

 

「そして【レッサー・ドラゴン】に魔法(マジック)カード・【一騎加勢】を発動!」

 

 

 

【レッサー・ドラゴン】 攻撃力 1200 + 1500 = 2700

 

 

 

「なに!? 攻撃力が【バスター・ブレイダー】の守備力を越えただとっ!?」

 

「行くよ! 【レッサー・ドラゴン】で【バスター・ブレイダー】を攻撃!」

 

 

 

 パワーアップした【レッサー・ドラゴン】の攻撃が決まり、【バスター・ブレイダー】は破壊される。

 

 

 

「くそっ……! この【バスター・ブレイダー】がたかが低級ドラゴンごときに!」

 

「甘く見たね! お次は【暗黒の竜王(ドラゴン)】で直接攻撃(ダイレクトアタック)! 『炎のブレス』!」

 

「ぐあぁあっ!!」

 

 

 

 百野 真澄 LP 4000 → 2500

 

 

 

『ついに総角少年の攻撃が通ったァーッ!!』

 

「セツナさん凄いのですー!」

 

「いいぞー! ストア・ブレーカーなんてやっつけちまえーっ!」

 

 

 

「これで形勢逆転だね! ターンエンド!」

 

 

 

【レッサー・ドラゴン】 攻撃力 2700 → 1200

 

 

 

「調子に乗るなよ、私のターン!」

 

(せいぜい良い気になってな……このデッキには、まだ切り札があるんだよ!)

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

「ボクのターン!」

 

 

 

 ……百野の場には壁となるモンスターはいない。このまま2体のドラゴンで攻撃すればボクの勝ちだけど、リバースカードが2枚か……ちょっと怖いな。

 

 

 

(ククッ、キサマが攻撃しようがしまいが……次のターンで私が勝つ事に変わりはない!)

 

 

 

 ──いや、行くしかない!

 

 

 

「【暗黒の竜王(ドラゴン)】の攻撃!」

 

 

 

 再び【暗黒の竜王(ドラゴン)】が百野に向けて口から炎を放つ。さぁ、どう出る!?

 

 

 

「フッ、リバースカード・オープン! 【破壊剣の追憶(ついおく)】!」

 

「っ!」

 

「私は手札の【破壊剣一閃】を墓地に捨て、デッキから【破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー】を特殊召喚する!」

 

 

 

【破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー】 攻撃力 2600

 

 

 

「これは……新たな【バスター・ブレイダー】!?」

 

「さらに! 速攻魔法発動! 【破壊剣士融合】!!」

 

「!!」

 

「【破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー】は、フィールド上では名称を【バスター・ブレイダー】として扱う。私は【バスター・ブレイダー】と、キサマの場の【暗黒の竜王(ドラゴン)】を融合する!」

 

「なっ……ボクのモンスターを!?」

 

 

 

 ドラゴンと、それを破壊する宿命を背負った孤高の剣士。本来なら相容れない筈の二つの存在が、渦を巻く様にして混ざり合っていく。

 

 

 

「融合召喚!! 現れ出でよ! 【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】!!」

 

 

 

【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】 攻撃力 2800

 

 

 

 そうして召喚されたのは、竜と一体化した竜破壊の剣士(バスター・ブレイダー)。全身を白と蒼の鎧で武装し、竜の牙を思わせる巨大な(つるぎ)を携えている。

 

 

 

【レッサー・ドラゴン】 守備力 1000

 

 

 

(! 【レッサー・ドラゴン】が勝手に守備表示に!?)

 

「竜破壊の剣士の前に、ドラゴン族の攻撃と効果の発動は許されない!」

 

「くっ……」

 

「そしてこいつの攻撃力は、相手のフィールドと墓地のドラゴン1体につき、1000ポイントアップする!」

 

 

 

【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】 攻撃力 2800 → 4800

 

 

 

 攻撃力4800……!! ドラゴン2体分だけで最強クラスのモンスターに変貌した……!

 

 

 

「ククク……このモンスターには守備貫通効果も備わっている。分かるか? 次のターンでその()()ドラゴンを攻撃すれば、私の勝ちというわけだ!」

 

「……カードを2枚セット! ターンを終了するよ……」

 

「ハハハハハッ!! 戦意喪失してブラフを張るのが精一杯かぁ!?」

 

(まぁ仮に(わな)を仕掛けていても無駄だがな。私の墓地にある【破壊剣一閃】を除外すれば、【バスター・ブレイダー】を対象とした効果は無効に出来る!)

 

「私のターン! トドメだ! 【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】で攻撃!!」

 

 

 

 突貫してくる【バスター・ブレイダー】の進化形。斜めに切り払うつもりらしく、その剣撃は弧を描いて迫り来る。

 

 だけど、まだ終わりじゃない!

 

 

 

(トラップ)発動! 【ガード・ブロック】! ダメージを(ゼロ)にして、1枚ドローする!」

 

 

 

 【レッサー・ドラゴン】は倒されてしまったけど、ゲームエンドは何とか免れた。ボクはデッキから1枚カードを引く。

 

 

 

「チッ、さっさと負けていれば楽なものを」

 

「なに言ってるのさ──ここからが面白いんじゃない」

 

 

 

 メガネを取り外して上着の胸ポケットにしまう。これやると集中できて、カードの引きが強くなる気がする(・ ・ ・ ・)んだよね。所謂(いわゆる)『ルーティーン』ってやつだ。だったら最初から外せば良いじゃんって話だけど、すごい疲れるから頻繁には出来ないのが難点なんだ。

 

 

 

(……奴の場にモンスターはいないが、【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】は直接攻撃(ダイレクトアタック)は出来ない……だが手はある!)

 

「1枚カードを伏せてターンエンドだ!」

 

「ボクのターン、ドロー! まずは(トラップ)発動、【無謀な欲張り】! さらに2枚ドローする!」

 

 

 

 手札を4枚に増やす。このターンで状況を打開できなきゃ絶望的だ。さて……何を引けたかな?

 

 

 

「……おっ!」

 

 

 

 引いたカードの中の1枚を見て、ボクは小さく声を上げた。それはあの時、ボクが店内のストレージで偶然見つけて即買(そくばい)した、モンスターカードだった。

 

 一見ただの低レベルモンスター。でも、この子の力はボクのデッキで必ず役に立つ──直感的にそう確信して、新たにデッキに入れた1枚だ。良いタイミングで来てくれたね。

 

 

 

「歓迎するよ、新入りくん。──ボクはこのモンスターを召喚! 【コドモドラゴン】!!」

 

 

 

 ポンッとフィールドに現れた、つぶらな瞳が愛くるしい小型のドラゴン。【ポケ・ドラ】を彷彿とさせる可愛らしいモンスターの登場に、周りの皆は──ストア・ブレーカーも含めて──ポカンとした表情になった。

 

 

 

「可愛いのです~!」

 

「……キサマ、なんだその弱小モンスターは」

 

「カカカカッ!! もう勝てねぇと分かって勝負を投げたみてぇだなぁ! わざわざ、しかもそんなちっちぇードラゴンを召喚するなんてよぉ!」

 

 

 

 ……【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】の効果により【コドモドラゴン】は守備表示にされ、ドラゴン族が場に出た事で【バスター・ブレイダー】自身の攻撃力もアップする。

 

 

 

【コドモドラゴン】 守備力 200

 

【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】 攻撃力 4800 → 5800

 

 

 

『こここ、攻撃力5800っ!? この攻撃力の差は歴然だぁあーッ!!』

 

「ククッ、どうやら本気で諦めた様だな」

 

「……どうだろうね?」

 

「なに?」

 

「手札から魔法(マジック)カード発動! 【痛み分け】!」

 

「なっ!?」

 

「お互いに自分のモンスターを1体リリースする! ボクは発動コストとして【コドモドラゴン】をリリース! 君にも自分のモンスターを自分で(・ ・ ・)選んでリリースしてもらうよ!」

 

「ぐっ……!」

 

「──最も、君のフィールドには【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】しかいないから、選択の余地は無いんだけどね」

 

(自分で自分のモンスターをリリースだと……【破壊剣一閃】では無効に出来ない……くそっ!)

 

 

 

 百野がカードを墓地に送ると、【竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー】は光に包まれて消滅していった。百野は忌々しげに歯噛みする。

 

 

 

「そして、墓地に送られた【コドモドラゴン】の効果を発動! 手札のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる! 来て、ボクのエース、【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

 空高く──とは行かず、店の天井ギリギリまで飛翔した【ラビードラゴン】の巨影が、百野を覆い尽くす。

 

 

 

「わぁ~、セツナさんの【ラビードラゴン】、久しぶりに見たのです~!」

 

「【コドモドラゴン】の効果を使ったターン、バトルは行えない。ボクはカードを1枚伏せてターンエンド! さぁ、君のターンだよ!」

 

「………フッ……クッ、ククク……!」

 

「?」

 

「バカめ! これで勝ったと思うなよ! リバースカード・オープン! 【リビングデッドの呼び声】!」

 

「!」

 

「よみがえれ! 【バスター・ブレイダー】!!」

 

 

 

 墓地からフィールドに舞い戻った、元祖【バスター・ブレイダー】。再びボクのドラゴンと対峙し、剣尖(けんせん)を差し向ける。

 

 

 

『なんとー! ここに来て【バスター・ブレイダー】が復活だぁーッ!!』

 

「本来ならキサマへの直接攻撃(ダイレクトアタック)要員として呼び出すつもりだったが……まぁいい。今、キサマのフィールドと墓地にはドラゴン族が合計4体。よって【バスター・ブレイダー】の攻撃力は、2000ポイントアップ!」

 

 

 

【バスター・ブレイダー】 攻撃力 2600 → 4600

 

 

 

「クククッ、今度こそ終わりにしてやる……!」

 

「っ……」

 

「私のターン、ドロー! ……ふん! 【バスター・ブレイダー】で【ラビードラゴン】を攻撃!!」

 

 

 

- 破壊剣一閃!! -

 

 

 

(勝った!!)

 

「……残念だったね」

 

「!?」

 

「リバースカード・オープン! (トラップ)カード・【不屈の闘士】!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950 + 4600 = 7550

 

 

 

「! 攻撃力7550だと!?」

 

 

 

 うわぁ、これはボクもビックリ。ここまで攻撃力が跳ね上がったのは初めてかも。

 

 

 

「【不屈の闘士】は自分の場のモンスターが1体だけの時、そのモンスターの攻撃力を、相手の場の攻撃力が一番低いモンスターの攻撃力分アップする!」

 

(くっ、対抗手段が……!)

 

「これでチェックメイトだよ! 【ラビードラゴン】の迎撃!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

 【バスター・ブレイダー】は白い光の奔流を浴びて、瞬く間に消し飛ばされた。そして光線は勢いを止めずに百野にまで直撃し、超過ダメージを彼に与えた。

 

 

 

「うわああぁぁっ!!」

 

 

 

 百野 真澄 LP 0

 

 

 

『決まったァァァァッ!! 勝者(WINNER)総角(アゲマキ) 刹那(セツナ)ァアーッ!!』

 

「やったー! さすがセツナさんなのですーっ!!」

 

「あ、兄貴ィー!? そんなバカなぁ!」

 

 

 

 大歓声が店内を揺らす。あー疲れた。どうにか勝てて良かった~。正直こんな心臓に悪い決闘(デュエル)はもうやりたくないや……。

 

 百野は床に座り込んで、小太り男と細身の男に支えてもらっていた。ボクはメガネを掛け直すと彼らの前まで歩み寄り、百野の足下に落ちていた1枚のカードを拾った。ラストターンで百野がドローした唯一の手札で、【ラビードラゴン】の攻撃を食らって吹っ飛んだ拍子に手元から落としたカードだ。

 

 

 

(【ドラゴン・ライダー】か……あの局面で引いても、使いどころがなかったね)

 

「……その(・ ・)デッキが君を勝たせようと思っていたなら、ボクのカードを除去できるカードを引かせた(はず)だよ」

 

「なんだと……!」

 

「せっかく百個もデッキを扱える実力があるんだからさ、自分で1からデッキを作ってみなよ」

 

 

 

 それだけ言い残して、ボクは決闘(デュエル)フィールドから降りた。すると司会者さんがボクの両手をガッシリと握ってきた。

 

 

 

「ありがとう!! 君は我が店を救ってくれた恩人だーっ!!」

 

「わっ、そんな大袈裟な……」

 

「お前スゲー強ぇな! なぁ、次は俺と決闘(デュエル)しようぜ!」

 

「え?」

 

「なに言ってんだ、俺が先だ!」

 

「いや俺だ!」

 

「わたしもセツナさんにリベンジしたくなったのですー!」

 

「ええっ!?」

 

 

 

 どういうわけだか続々と挑戦者が増えてきている……いやいや多すぎ! この人数は手に負えないって! ただでさえ集中モードで決闘(デュエル)して消耗してるのに!

 

 

 

「ちょ、ちょちょ……ちょっとタンマーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんやかんやで最後の一人まで全員の相手をするハメになり、気づいたら本当に優勝していたのが今日のハイライト。マジで死ぬかと思ったよ。

 

 ちなみに優勝賞品は高額なDP(デュエルポイント)とレアカードでした。翌日、記文ちゃんの手により、この時の写真が学園のニュース記事に大きく掲載されて、余計に目立つ事になってしまったのはナイショ(苦笑)。

 

 

 

 





 というわけで、原作・遊戯王Rより、百野 真澄さんにご登場いただきました! タイトルで誰が出るのかバレバレでしたね(笑)

 今後も原作の様々なキャラを作品内でお借りする予定です!

 感想など、お待ちしております( ^ω^)
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