遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 今回のデュエルはカナメさんです! セツナとルイくんの対決は次回から!

 関係ないですが、デュエルリンクスに5D's実装おめでとうございます!! 『おい、デュエルしろよ』が決めゼリフになるとはww



TURN - 23 RIVAL ARRIVAL

 

 ルイくんが金沢(かなざわ)くんとの決闘(デュエル)で逆転勝利を収め、選抜デュエル大会、予選1回戦を突破。

 ()()、予選2回戦1試合目で、ボクと当たる事が確定した。

 

 別のブロックでは、マキちゃんやコータも勝ち上がり、順調に2回戦へとコマを進めていた。

 

 数時間後には大会初日に組まれた試合は全て消化され、512人もいた参加者は、この日1日で半数に絞られた。

 

 勝ち残った生徒の喜びの声と、敗退した生徒の悔恨に満ちた嘆きとが混じり合う中、1日目の予選は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それじゃあ、ルイくんの初勝利と、ボク達の2回戦進出を祝って──カンパイ!」

 

「「「「「 カンパーーーーイ!!!! 」」」」」

 

 

 

 昼下がり、街中のファミレスにて。

 

 ボクとアマネとマキちゃんとコータ、それからルイくんとケイくんの(いち)()()兄弟を含めた計6名でテーブルを囲い、各自が注文したドリンクが全員分揃ったところで、ボクが乾杯の音頭を取り、皆でグラスを打ち付け合う。

 

 

 

「ルイちゃんオメデトー!」

 

「あ、ありがとうございます、マキノさん。皆さんも……僕の為にわざわざ、本当に……」

 

「変に(かしこ)まる事ないんだよ? なんたってルイくんは、本日の主役なんだから」

 

 

 

 ボクはそう言いながら、ルイくんが肩から掛けている、『本日の主役』と書かれた(たすき)を指さす。

 

 

 

「こ、これはマキノさんが……」

 

「はーい! あたしがド○・キホーテで買ってきましたー!」

 

 

 

 マキちゃんが(いつもの事ながら)急にどっか行ったと思ったら、スキップしながらやたらキラキラした笑顔でこの(たすき)を持って戻ってきた時は、ルイくんもボク達も苦笑いしてたよね。

 

 

 

「良いじゃねーか兄貴、似合ってるぜ!」

 

「よ、喜んでいいのかな……」

 

「あははっ、ケイくんらしい不器用な褒め方だね」

 

「だ、誰が不器用だとぉーっ!?」

 

「でも、嬉しいよ。ありがとうケイちゃん」

 

「えっ!? お、おう、気にすんな! 兄貴の勝利を祝うのはトーゼンだろ?」

 

 

 

 ケイくんが「打ち上げしよーぜ!!」と叫んだのがキッカケで開かれた、今回の祝勝会。

 他の大会参加者から見たら、たかが予選で一勝した程度で(おお)()()なって思われるかも知れないけど、ルイくんにとってあの一勝は、今までずっと負けっぱなしだったコンプレックスを克服し、金沢くんへの雪辱を果たす事の出来た、偉大な一勝なんだ。

 会場で嬉しさの余り号泣して、後で落ち着いたら恥ずかしさが込み上げてきたのか耳まで真っ赤になっていたのは、ここだけの話。

 

 

 

「お金ならもちろんボクらが出すし、今日は好きなだけ食べてって良いよ」

 

「ええっ!? そ、それはさすがに悪いですよ!」

 

「気にしない気にしない。ほら、何でも頼みな?」

 

 

 

 メニュー表をルイくんに手渡すと、ケイくんと二人で食い入る様にしてページを捲り始めた。本当に仲の良い兄弟だなぁ。微笑(ほほえ)ましい。

 

 

 

(……なんで……なんで総角(アゲマキ)がアマネさんの隣なんだァァーーーッ!? しかも()(づき)も隣で両手に花って、どういう事だァァーーーッ!! ちくしょおぉぉ……アマネさんとお近づきになれると思って参加したのにぃぃぃ!)

 

「……? コータ、どうしたの?」

 

「うえっ!? や、なな、なんでもねーぜ!?」

 

(そこ代われ!! くっそー、総角(アゲマキ)……お前にだけは負けねぇぞ!)

 

 

 

 ……なんか向かいの席でケイくんの隣に座ってるコータから、おぞましいオーラが出てるのは気のせい?

 

 

 

 ────しばらくして、テーブルには皆の注文した、色とりどりの料理がところ狭しと並べられていた。

 パスタにピザにオムライス、ポテトにスープにサラダにグラタン、カレーにステーキにハンバーグ!

 

 

 

「僕オムライス大好物なんですよ~」

 

 

 

 と、言いながら、スプーンで一口(ひとくち)分すくったオムライスを、小さな口に運んで幸せそうに味わうルイくん。

 

 の、隣では。

 

 

 

「血が足りねぇ……!」

 

 

 

 と、ケイくんが肉厚なステーキにフォークを突き立てて、大口開けてガッついていた。

 

 教えてもらわなきゃ、この二人が血の繋がった兄弟だなんて、誰も予想だにしないだろう。オムライスをチビチビと食べている小動物の方が年上で兄だと知ったら、さらに驚くに違いない。

 

 ボク達もお互いの料理を味見し合ったりして食事を楽しみながら、時間も忘れて会話に華を咲かせていた。

 

 やがて話題はルイくんを(ねぎら)い誉めちぎり、その天使の様な可愛さに全員で悶える内容から、今日観戦した他の決闘(デュエル)について語る流れに変わっていった。

 

 

 

「今日一番スゴかった試合と言えば?」

 

 

 

 マキちゃんが切り出した。真っ先に手を上げて答えたのはケイくん。

 

 

 

「兄貴!!」

 

「それ以外で」

 

「ぬぅん」

 

「やっぱ……鷹山(ヨウザン)だろ」

 

「鷹山ね」

 

「カナメだね」

 

「ですね……」

 

 

 

 満場一致で初日の最優秀賞は、鷹山(ヨウザン) (カナメ)に決定した。

 今思い返しても、あの人の決闘(デュエル)は凄まじかった……

 

 時間は、選抜試験の予選1回戦の、最後の試合まで(さかのぼ)る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ボク達6人は、予選A-ブロックの会場である、第1決闘(デュエル)フィールドを訪れていた。

 

 

 

「なっ……なんじゃこりゃあぁぁぁっ!?」

 

 

 

 ケイくんが素っ頓狂な声を上げて仰天したのも無理はなかった。

 場内の座席はほぼ全て埋まっていて、まるでテレビで観るプロリーグの試合並みに大盛況していたんだ。

 

 

 

「スッゲ満席!? これ予選の初日だよな!?」

 

 

 

 コータも興奮気味に声を(はず)ませながら、キョロキョロと辺りを見渡している。

 

 これほどの注目度の中で今から始まるのは、予選1回戦・第8試合。

 出場するのは『ジャルダン十傑(じっけつ)』の称号を持ち、『学園最凶』という二つ名で恐れられている決闘者(デュエリスト)──鷹山(ヨウザン) (カナメ)だ。

 

 ボクが再戦(リベンジ)を誓ったライバルの初陣(ういじん)。見逃す手はない。

 席が空いてなかったので、仕方なく立ち見する事にした。

 

 ……5分ほど経過した頃だろうか。

 

 

 

「「「 ──オオオオオオオオオオッッッ!!!! 」」」

 

「!」

 

 

 

 前触れなく突如として沸き起こった、オーディエンスの大歓声。

 それは、この会場に詰めかけた観衆の大半が目当てにしていた選手が、ついに姿を現した事を知らせていた。

 

 入場口を抜けて、ひとり決闘(デュエル)フィールドへと歩を進めているのは、ミディアムショートの黒髪と碧眼(へきがん)が特徴的な美形の青年。

 

 大会1日目にして満員の生徒達で(あふ)れた観客席と、その集客数に比例した大音量の歓声にも全く動じず、むしろいつも通りだと言わんばかりに、彼は慣れた様子で平然と舞台の上に立った。

 

 

 

「出やがったぜ、学園最凶……!」

 

「やべぇッスね……こっから見ててもゾッとしちまう……」

 

(カナメ……)

 

「そう言えばアマネたん。ヨーザンさんの対戦相手って誰だったっけ?」

 

「んーっと、あぁ、猿爪(ましづめ)ね。2年の猿爪(ましづめ) ()(いち)

 

 

 

 アマネがPDAを操作しながら答えた。どのブロックで何試合目に誰が出るのかは、全て端末で確認できる。

 

 

 

「2年? 大丈夫なの? カナメ相手に」

 

「ただの2年じゃないわ。ランク・Aで、しかも次期十傑(じっけつ)候補よ」

 

「あ、じゃあボクが(たたか)った猪上(いのうえ)くんと(おんな)じか」

 

「やたら自信家で鼻持ちならねぇ野郎だが……悔しいけど腕は確かだ」

 

 

 

 苦々(にがにが)しい表情でコータが言った。あの猪上(いのうえ)くんと遜色(そんしょく)ないレベルの腕前だとすると……もしかしたらカナメでも、足を(すく)われる可能性があるかもね。

 

 少し遅れて、カナメが入ってきたのと反対側の入場口から、その猿爪(ましづめ)くんが登場した。

 

 髪型はオシャレに刈り上げたモンキーボウズで、髪の色はレッドブラウン(赤茶色)。細身で背丈はカナメと変わらないぐらい。目付きが鋭く、ニヒルな笑みを浮かべている。コータの言う通り、自信満々って感じの顔つきだ。

 

 

 

「……なるほど、かなりやるね。強いよあの人は」

 

「先輩、見ただけで分かるんですか?」

 

「ん~……なんとなく、だけどね。長いこと決闘(デュエル)やってると、見れば相手の強さは大体分かる様になってきた」

 

「す、すごいです……それにカッコいい……!」

 

 

 

 ルイくんが両目をキラキラさせて、尊敬の(まな)()しでボクを見つめてきた。しかも上目遣いで。やめてルイくん、その技はボクに効く(照)。

 

 

 

「キキキッ! 相手が学園最凶だろうと誰だろうと、俺の敵じゃねーっつーの!」

 

 

 

 おおっ、カナメに臆するどころか余裕の発言。何か勝算があるのだろうか。

 猿爪くんも決闘(デュエル)フィールドに上がり、カナメと正面から向かい合う。

 

 

 

鷹山(ヨウザン) (カナメ)! この俺がオメーの無敗神話に幕を下ろしてやるっつーの!」

 

(俺のデッキには、オメーを封殺する()()()()()が入ってるっつーの! キキキッ!)

 

「……()(たく)はいい。さっさと始めるぞ」

 

 

 

 カナメは猿爪くんの宣戦布告を軽く聞き流し、右腕に着けたブルータイプのデュエルディスクを起動、展開させる。

 

 

 

「キッ! すぐに吠え面かかせてやるっつーの!」

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 カナメ LP(ライフポイント) 4000

 

 猿爪(ましづめ) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「俺の先攻だっつーの! 俺は【ファイターズ・エイプ】を召喚ッ!」

 

 

 

【ファイターズ・エイプ】 攻撃力 1900

 

 

 

「さらに魔法(マジック)カード・【生け贄人形(ドール)】! 【ファイターズ・エイプ】をリリースし……」

 

 

 

 召喚されたばかりの【ファイターズ・エイプ】が、奇妙な人形に姿を変えられてリリースされる。

 

 あの()(ほう)カードはモンスター1体をコストに、手札からレベル7のモンスターを呼び出せる……十傑の九頭竜くんも使っていたカードだ。

 デメリットとして、この効果で特殊召喚されたモンスターは、そのターン攻撃できないけれど、先攻1ターン目であれば何ら問題じゃない。考えたね。

 

 

 

「出でよ! 【エンシェント・クリムゾン・エイプ】!!」

 

 

 

 そうして現れたのは──肌の赤い巨体に黒く頑強な鎧を纏い、巨大な(けん)と盾で武装した、金色(こんじき)のたてがみを持つ(サル)の戦士。

 

 

 

【エンシェント・クリムゾン・エイプ】 攻撃力 2600

 

 

 

「おー、1ターン目からいきなり上級モンスターを召喚かぁ」

 

「セツナはビビっちゃって出来なかったプレイングね」

 

「うっ……!」

 

 

 

 アマネの言葉がグサリと刺さった。ボクがカナメと初めて()った時の苦い記憶が思い起こされる。我ながら、らしくない決闘(デュエル)をしてしまったと反省しているよ。

 

 早速フィールドに現れた大型モンスター。その迫力に、観客席からは歓声が飛び交う。

 それに気を良くしたのか猿爪くんは、「キキキッ」と個性的な笑い声を漏らすと、手札のカードを1枚、魔法(マジック)(トラップ)ゾーンにセットした。

 

 

 

(こいつでオメーの息の根を止めてやるっつーの!)

 

「カードを2枚伏せて、ターン終了(エンド)だっつーの!」

 

 

 

 早くも手札を全部使い切って、理想的な盤面を整えた猿爪くん。

 並大抵の決闘者(デュエリスト)じゃ、これを攻略するのは困難だけど……さて、カナメはどう出るかな?

 

 

 

「……俺のターン、ドロー」

 

(今だッ!!)

 

「永続(トラップ)発動! 【生贄(いけにえ)封じの仮面】!!」

 

「──!」

 

 

 

 猿爪くんのフィールドに、不気味な仮面が出現した……!?

 

 

 

「キキキキッ! どうだぁーッ!! このカードがある限り、お互いにいかなる場合でも、カードをリリースできないっつーの!」

 

「…………」

 

「鷹山! オメーのデッキは『アドバンス召喚』によって効果を発揮する【(みかど)】モンスターを中心に構成されている! つまりその為に必要な『リリース』さえ封じてしまえば、オメーのデッキは完全に死んだも同然っつーわけだっつーの!!」

 

 

 

 リリースを封じる、これが猿爪くんの秘策だったのか……!

 確かにこれならカナメの戦力を大幅に削れる。

 

 

 

(キキッ、となれば次は特殊召喚を狙ってくるよな? だがそれも無駄だっつーの! 俺の場には、【奈落の落とし穴】も伏せてあるんだからなぁ……!)

 

「キィーーーッキッキッキッ!! もはや手も足も出まいっつーの!」

 

(勝てるッ!! ここで鷹山 要を倒せば、無条件でプロ入りが約束される!! それだけじゃねぇ! 学園最凶を倒した俺の名はジャルダン全土に知れ渡り、俺がこの街の頂点に立つ!! 富も名声も全て手に入り、俺の時代が来るっつーの!!)

 

 

 

 あからさまに有頂天な猿爪くん。一方、戦術の主軸となるアドバンス召喚を禁じられた、カナメ本人のリアクションはと言うと──

 

 

 

「…………フゥ」

 

 

 

 ……(あき)れ返った様な、ため息、だった。

 

 

 

「分かった……」

 

「はん?」

 

「貴様の決闘者(デュエリスト)としての腕は、所詮この程度」

 

「……っ……ッ!? なっ……なんだとッ!?」

 

 

 

 一瞬、何を言われてるか理解できなかったのか、猿爪くんは目に見えて動揺している。

 

 

 

「そんなに俺にアドバンス召喚されるのが嫌なら、望み通りにしてやる。俺は【トレード・イン】を発動。手札の【(ばく)(えん)(てい)テスタロス】を墓地に捨て、カードを2枚ドローする」

 

 

 

 手札の交換が完了すると、カナメは目を閉じて、こう告げた。

 

 

 

「これでもう、俺の手札に上級モンスターは無い」

 

「!?」

 

 

 

 ……もしかしてカナメ、アドバンス召喚どころか、【帝】を使わずに闘うつもり?

 

 

 

「お、オメー! 一体どういうつもり──」

 

「俺は【炎帝(えんてい)()(しん)ベルリネス】を通常召喚」

 

 

 

【炎帝家臣ベルリネス】 攻撃力 800

 

 

 

 あれ? 手札を捨てれば特殊召喚できる【ベルリネス】を、わざわざ通常召喚?

 

 

 

「手札の【氷帝(ひょうてい)家臣エッシャー】は、相手の場に魔法(マジック)(トラップ)カードが2枚以上ある時、特殊召喚できる」

 

 

 

【氷帝家臣エッシャー】 攻撃力 800

 

 

 

「さらに墓地の【テスタロス】を除外し、【邪帝(じゃてい)家臣ルキウス】を特殊召喚」

 

 

 

【邪帝家臣ルキウス】 攻撃力 800

 

 

 

「な、何体召喚する気だっつーの!?」

 

「まだだ。【()(てい)家臣ランドロープ】を特殊召喚」

 

 

 

【地帝家臣ランドロープ】 攻撃力 800

 

 

 

「その効果により、貴様のモンスターを裏側守備表示に変更する」

 

「キッ!?」

 

 

 

 【ランドロープ】が地面に拳を叩き込んだ衝撃で、【エンシェント・クリムゾン・エイプ】が怯み、裏側守備表示になってしまった。

 

 

 

「ぐっ……だが! オメーのモンスター共の攻撃力じゃ、【エンシェント・クリムゾン・エイプ】は倒せねーっつーの!」

 

「手札から【抹殺(まっさつ)の使徒】を発動。そのモンスターを破壊し、ゲームから除外する」

 

 

 

 金髪を長く伸ばし、甲冑に身を包んだハンサムな騎士が、裏側表示の【エンシェント・クリムゾン・エイプ】のカードを(つるぎ)でスパッと両断した。

 

 

 

「キィーーーッ!?」

 

 

 

 これで猿爪くんを守る壁モンスターはいない。

 

 

 

「バトルだ。全モンスターで総攻撃」

 

 

 

 カナメのフィールドに出揃った4体の家臣が、(あるじ)(めい)(もと)に一斉攻撃を開始する。

 

 炎を放ち、冷気で凍て付かせ、落石を降らし、闇の魔力を浴びせ、猿爪くんのライフを800ポイントずつ着実に奪っていった。

 

 

 

「ウギャーーーーーッ!!!?」

 

 

 

 猿爪 LP 4000 → 800

 

 

 

「く、くそぉ……!」

 

「これで終わりだ。魔法(マジック)カード発動、【サンダー・クラッシュ】」

 

 

 

 ──!! 【ベルリネス】を特殊召喚しなかったのは、最後の手札でトドメを刺す為……!

 

 

 

「俺の場のモンスターを全て破壊し、1体につき、300ポイントのダメージを、貴様に与える」

 

「なにィィーーーッ!?」

 

「……〝(おう)()〟だ」

 

 

 

 4体のモンスター全てが雷撃と化して、猿爪くんを襲った。与えるダメージは、1200ポイント。

 

 

 

「ギエエエェェェーーーッ!!!」

 

 

 

 猿爪 LP 0

 

 

 

 勝敗が決して会場が急激に沸く。たった2ターン。時間にして(わず)か3分足らずの短期決戦だった。

 

 

 

「ち、ちくしょお……完璧にやられちまったっつーの……」

 

「……貴様には最初から何も期待してなかったが……やはり俺のデッキの調整にすらならなかったな」

 

「ッ……!」

 

「凡人の(あさ)()()で、俺に勝てると思うな」

 

「お……俺が……凡人……!? ガハッ」

 

 

 

 メンタルにまでトドメを刺された猿爪くんは、ショックでひっくり返ってしまった。まぁ、相手が悪かったね……

 

 にしても、本当にアドバンス召喚しないで勝っちゃったよ。しかもワンターンキルって。

 同じランクでも、ここまで実力(チカラ)の差があるものなのか……やっぱり、カナメの強さは──次元が違う。

 

 

 

「ッ、カァ~……2年とは言え、仮にも次期十傑候補を、低レベルモンスターだけで瞬殺かよ……」

 

「スゲーな! 兄貴と同じ勝ち方だぜ!」

 

「ぼ、僕あんな風に闘えないよ……」

 

「サルくんボッコボコだったね~。お気の毒~」

 

「リリースを封じたくらいじゃ、鷹山にはハンデにもならないのね……」

 

「でも、今の決闘(デュエル)のおかげで、ひとつだけ(わか)ったよ。──カナメに下手なメタ張りは通用しない」

 

 

 

 勝つ為には、自分の決闘(デュエル)で挑むしかない。

 

 ……それからしばらく後に、カナメと猿爪くんの隣の決闘(デュエル)フィールドで行われていた試合も終わり、生徒達はゾロゾロと下校する事に。

 

 そして今の打ち上げに至る、というわけである。

 

 

 

「なぁ総角(アゲマキ)、本当にあの鷹山 要に勝てるつもりなのか?」

 

「……さぁね、でも……負ける気は毛頭ないよ」

 

「……お前のそういうところは素直に尊敬するわ」

 

「まぁ、とにもかくにも、まずは明日(あした)の2回戦に集中しなきゃ。他に気を逸らしながら勝てる相手じゃないよ──ルイくんは」

 

「!!」

 

 

 

 唐突にルイくんに視線を向けてみると、ルイくんは少しビクついて肩が跳ねたものの、すぐに顔つきが真剣になり、ボクを見つめ返した。

 

 闘志の宿った、ライバルを見る眼で。

 

 

 

(……力強い眼だね……これはボクも()めてかからないと)

 

 

 

 ランク・Cの金沢くんに勝ったという経験値で、ルイくんは著しい成長を遂げた筈。

 元々ポテンシャルを秘めているルイくんだ。今回の勝利で唯一足りなかった自信をつけた事で、その才能が開花したとしても、不思議じゃない。

 

 

 

「明日は楽しみにしてるよ、ルイくん」

 

「はい……僕もです、セツナ先輩!」

 

「私もマキちゃんも1試合目だから、二人の対決を観れないのは残念だけど、頑張ってね。応援してるわ」

 

「ルイちゃーん。セツナくんに遠慮しないで、勝てそうだったら勝っちゃって良いからね~?」

 

「か、勝てるかどうかは分からないですけど……がんばります!」

 

「セツナの(あに)さん。(ワリ)ィが明日(あした)は兄貴の応援をさせてもらうぜ」

 

「分かってるよ、ケイくん。全力でルイくんを応援してあげて」

 

「おっしゃーっ!! 兄貴!! 今日は鋭気を養う為にもガッツリ喰おうぜ! 肉だ肉ッ!!」

 

「ご、ごめん……もうお腹いっぱい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──気づけば2時間以上も店に滞在していた。(えん)もたけなわだけど、そろそろお開きにしようか。

 

 

 

「「「「「「 ごちそうさまでしたー!! 」」」」」」

 

 

 

 会計はボク達2年生4人で割り勘した。ケイくんがステーキをおかわりで6枚も食べるもんだから結構かかった。そりゃ、あれだけの大食漢ならここまで大きく育つのも納得だね。しかも「これでも抑えてる方だ」って言うんだから、恐ろしい食欲だよ。

 

 そのまま駅前で皆と解散して、ボクは家路についた。まだ夕方か……早く明日にならないかな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、(いち)()() ルイは寝つけずにいた。

 

 

 

(……うぅ……眠れない……)

 

 

 

 いよいよ()()は、待ち望んだ憧れの先輩──総角(アゲマキ) 刹那(セツナ)との決闘(デュエル)

 緊張と高揚で、どうしても目が冴えてしまうのは、致し方ない事と言えた。

 

 ベッドから身を起こして、机に置いてあった自分のデッキを手に取る。

 周囲にどれだけ『弱い』、『使えない』などと()き下ろされ、傷つけられ、負け続けても、決して手放さず、彼の元を片時も離れなかった、かけがえのない大切なデッキ。

 

 中身を1枚ずつ丁寧(ていねい)に確認していき、【バニーラ】のカードを引いたところで不意に、ルイの手が止まった。

 

 

 

「…………あっ……うぅん、大丈夫。ちょっとドキドキして眠れないだけだから」

 

 

 

 それは、誰に対しての言葉なのだろうか。

 

 ルイは顔を横に向けたかと思うと、何も無い虚空に話しかける様にして、独りで楽しげに喋り始めた。

 

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「今日はごめんね、焦って攻撃表示で出しちゃって…………許してくれるの? フフ、ありがとう」

 

 

 

 ルイが彼しか居ない筈の暗い室内で、誰かとの会話らしき言葉を紡いでいた時──

 

 

 

「ふわぁ~~~。あふっ……んあ?」

 

 

 

 トイレから戻ってきた弟のケイが、大あくびしながら自室に戻って寝直そうとしていた。すると、ルイの部屋の前を通り過ぎた際に、ケイは兄の話し声を聞き取った。

 

 

 

(……? 兄貴……こんな時間に誰かと電話か?)

 

「……今日勝てたのは、みんなが僕を信じて応えてくれたおかげだよ。本当に、ありがとう。……あはは、そんなにくっつかないでよ」

 

 

 

 身体に小さな動物でも擦り寄ってきたのか、端から見れば不自然な体勢を取るルイ。

 

 

 

「明日はきっと、今日よりも楽しい決闘(デュエル)が出来ると思うから……みんな、がんばろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 選抜デュエル大会2日目・予選2回戦。

 

 D-ブロック1試合目──総角 刹那 vs 一ノ瀬 ルイ

 

 

 

「……約束を果たしに来ました。セツナ先輩」

 

「待ってたよ、ルイくん。──楽しい決闘(デュエル)をしよう」

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 





 マンガ版GXの最終回みたいな締めになりました(笑)

 というわけで、次回ようやく仲良しな先輩後輩の真剣勝負です!

 |ω・`)<9月中に間に合って良かった……
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