遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
ずいぶんと久しぶりに主人公のデュエルを書いた気がします。
昼食を済ませたボクは、しばしの休憩を挟んだ後、再び第4
そろそろ選抜デュエル大会の予選3回戦・1試合目が開始する時間だ。
3回戦──トーナメントの形式上で言えば、準々決勝。
当たり前だけど勝ち進めば進むほど、次は同じ様に勝ち抜いてきた実力の持ち主と当たる事になる。つまり突破の難易度も上へ行くにつれ、どんどんと高くなっていく。
2回戦のルイくんとの
……おっ、ステージの向こう側から階段を
「──い"っ!?」
「クヒッ、クヒヒヒヒヒ……オマエが俺の相手だなぁぁ~~~……!」
だらんと長く伸びた黒髪で顔の半分が隠れている不気味な男が、これまた気味の悪い笑い声を漏らしながらやって来た!?
普通にビビった! 何この人!? 今にもブラウン管テレビの中から這い出てきそうなんだけど! どこかから『きっと来る~♪』って聞こえてきた気もする!
「俺の名はぁ……
「う……うん。知っててもらえて光栄だよ」
長すぎる前髪の隙間から覗く、ハイライトの消えた黒い
これボク呪われない? 大丈夫? まさか7日後に死ぬヤツじゃないよね?
ゆらりゆらりと、ゾンビみたいな奇怪な動きで歩く死骨崎くん。顔色は青白いし、明らかに不健康な痩せ方をしていて見てて心配だ。ほんっと、ジャルダンって、色んな人がいるなぁ~……。
そう言えば、こんな噂を聞いた事がある。
かつてデュエルアカデミア本校──孤島に設立された、世界で最初のデュエルアカデミア──に、『デュエルゾンビ』と呼ばれる者が大量発生した事件があったらしい。
彼らは
まぁ
「クヒヒヒ、さぁ
「……お手柔らかに」
「「
セツナ
「セツナの
「がんばってくださーい!」
「ボクの
【ラヴァ・ドラゴン】 攻撃力 1600
「カードを1枚伏せて、ターン
至って月並みな出だし。まずは、これで様子見ってところだね。
「……俺のタァーン……ドロォ~……。クヒヒヒ、俺は
「!」
細長い指でカードを摘まみ取り、どんよりとした暗い声で、死骨崎くんは発動を宣言した。
まさかの、いきなり融合と来たか。はてさて何を出すのかな? 何となく想像つくけどさ……。
「【魂を削る
【ナイトメアを駆る死霊】 攻撃力 800
現れたのは馬の
うわぁ、やっぱり見かけ通り、オカルティックなカードを使ってくるね。
関係ないけど魂を削ると聞いて、以前カードの精霊に魂を奪い取られて、命の危機に
「さらにぃ、フィールド魔法・【アンデットワールド】発動ォ!」
「──! うわっ……何ここ……!」
フィールド全体が荒廃しきった、おどろおどろしい空間へと変貌した。
枯れ切った
地獄があるとしたら、こんな世界なのかな? 嫌だなぁ……死んだら天国に
「ここは死者の世界……全ての命は死に絶え、生きた
「……? 何を言って……──!?」
途端、【ラヴァ・ドラゴン】に異変が……!
肉体が見る見る内に朽ちていき、やがて無惨な屍へと成り果ててしまった。皮膚は溶け落ち、ところどころ骨とか見えてて、かなりグロい。
さらには──カードの種族がドラゴン族ではなく、アンデット族に変わっている。
「これは……!?」
「【ナイトメアを駆る死霊】は、相手プレイヤーに
「うげっ!?」
なんと【ナイトメアを駆る死霊】は【ラヴァ・ドラゴン】をすり抜けて、そのままボクに突撃してきた! そっか幽霊だからか……!
振り下ろされた鎌の切っ先が、ボクの身体を
「うわあっ!」
セツナ LP 4000 → 3200
「【ナイトメアを駆る死霊】がダイレクトアタックに成功した時……相手はランダムに手札を1枚捨てるぅ……!」
「えっ、ちょ、あーっ!?」
(しまった、【ホーリー・ナイト】が……!)
死霊は自陣に戻る間際に、ボクの手札を1枚、勝手に持ち去っていってしまった。
しかも墓地に送られたのは、ボクのデッキの5枚のエースカードの1枚──【ホーリー・ナイト・ドラゴン】だった。
だけど幸いな事に、ボクの手札にはレベル7・8のドラゴンを蘇生できる
「クヒヒヒ……墓地のドラゴンを復活させる事はできないぞぉ……」
「え?」
「そのカードをよく見てみろぉ」
「……もしかして……」
まさかと思いデュエルディスクの画面を操作して、墓地ゾーンに置かれたカードを確認してみると──
そのまさかだった。【ホーリー・ナイト・ドラゴン】の種族がフィールドの【ラヴァ・ドラゴン】と同じく、アンデット族に書き換えられていた。
「そんな……墓地のモンスターまで!?」
「クヒヒヒッ! 言った筈だぁ! ここは死者の……アンデットの世界だと! 【アンデットワールド】の中では、フィールド・墓地のモンスターは全てアンデットと化し、さらに互いにアンデット族モンスター以外は、アドバンス召喚できないっ!」
「!!」
それじゃあボクは上級ドラゴンの召喚を封じられた上、【復活の福音】の様な、ドラゴン族専用のサポートカードが全て使えなくなったって事!?
「クヒヒ、お前みたいに種族を統一しているデッキには、まさに天敵だろぉ?」
「くっ……」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだぁ……」
「……ボクのターン、ドロー!」
さてどうしたものか。あの厄介なフィールド魔法をどうにかできるカードは、まだ手札に無い……。
仕方ない。ひとまず先に、【ナイトメアを駆る死霊】を何とかしないと。
たとえモンスターの種族が変わっても、攻撃はできるからね!
「バトル! 【ラヴァ・ドラゴン】で、【ナイトメアを駆る死霊】を攻撃! 『マグマ・ショット』!!」
ゾンビになってもドラゴンとしての闘争本能までは死んではいない。文字通り、腐ってもドラゴンというわけだ。
【ラヴァ・ドラゴン】が口内から灼熱の溶岩を放つ。……あれ? 幽霊に物理攻撃って効くの?
「無駄だぁ! 【ナイトメアを駆る死霊】は、戦闘で破壊されない!」
「でもダメージは受けてもらうよ!」
案の定、溶岩は【ナイトメアを駆る死霊】を何も無かったみたいに通過して、奥に立っている死骨崎くんに流れ弾となって直撃した。
「ぐえぇっ! ク、クヒヒ……」
死骨崎 LP 4000 → 3200
戦闘破壊は失敗したけど、ライフは並んだ。
こうなると【ナイトメアを駆る死霊】は、次のターンで守備表示かな。
「ボクは1枚カードを伏せてターンエンド!」
「俺のタァーン……クヒヒ、良いカードを引いたぁ……!」
「!」
「
【ラヴァ・ドラゴン】が包帯で全身をグルグル巻きにされて地中へと引きずり込まれた……!
「バトルだぁ! 【ナイトメアを駆る死霊】で、ダイレクトアタックゥ!!」
再び馬を走らせ、鎌を振り回しながら突っ込んでくる死霊。これ以上ボクの手札を持ってかれても困るので、今度は止めさせてもらうよ!
「
「クヒ、あがくねぇ……」
「それだけじゃないよ。その後、デッキから1枚ドローして、それがモンスターなら通常召喚できる! ドロー!」
(──ラッキー!)
「【暗黒の
【暗黒の
ナイスタイミングで来てくれたとこ非常に申し訳ないけど……
召喚された【暗黒の
「悪運の強い……ターンエンドォ」
「ほっ。ボクのターンだね」
「……クヒヒ……クヒヒヒヒヒヒ……!」
……? 何だろう、あの今までと
なんか彼と
「……ドロー!」
「クヒャーーーッハッハッハッハッハッ!!!」
「っ!?」
心臓止まった!! 絶対寿命が縮んだよ!?
あまりにも突発的に
かと思ったら今度は、長髪を振り乱しながら両手を天に掲げ出した。
「──聴こえるッ、聴こえるぞぉ!! この地に
「そんな声ちっとも聴こえないけど……」
「今ここに! 死の世界の『王』が甦るっ!!」
「!」
空気が急激に張り詰めた。
何かが──とても恐ろしい『何か』が、現れようとしている……!
でも一体どこから? どうやって? 死骨崎くんの手札は
(──はっ! 墓地!?)
そうか。死骨崎くんは、デュエルディスクの
だとすると、あの時【死者への手向け】を発動した際に捨てた手札が……!
「出でよ! 【死霊王 ドーハスーラ】!!」
立ち込める暗雲の中から姿を現し、死屍累々の世界に降り立ったのは、
【死霊王 ドーハスーラ】 守備力 2000
ドクロの
すると観客席の方から、ルイくんの悲鳴混じりの声が耳に届いた。
「ひゃあぁ!? こ、怖いよぉ……!」
「落ち着け兄貴! 俺がついてる!」
「クヒヒヒヒヒヒッ!! 【ドーハスーラ】はフィールド魔法が存在する時、スタンバイフェイズに墓地から守備表示で特殊召喚できるのだぁ!」
「うっ……!」
なんて威圧感……! ルイくんが怖がるのも無理もない。
これが死骨崎くんのエースモンスターか。
「──ッ!」
ボクは
危なかった……
(守備力2000で攻撃力2800か……コレが使えれば倒せたんだけどな……)
チラッと手札にある【復活の福音】を見遣る。【アンデットワールド】のせいで【ホーリー・ナイト・ドラゴン】を復活できず、死に札になっている。
(……そうだ、あのカード! あのカードが来れば、この状況を打破できる!)
なら、それを引き当てるまでの辛抱だ!
「ボクはカードを2枚伏せる! そして【暗黒の
【暗黒の
「クヒヒ、いよいよ手が無くなったかぁ?」
「さぁ……どうだろうね?」
「俺のタァーン。【ドーハスーラ】を攻撃表示ッ!」
【死霊王 ドーハスーラ】 攻撃力 2800
「バトルッ! まずは【ナイトメアを駆る死霊】で、奴にダイレクトアタックゥ!」
同じモンスターによる
「ぐあっ……!」
セツナ LP 3200 → 2400
「クヒヒヒ! ダメージを与えた事で効果発動ォ! お前の手札を破壊するぅ!」
ボクの最後の手札を死霊が奪い取ろうとした時──【ドーハスーラ】の
「この瞬間! 【ドーハスーラ】の効果発動ォ! フィールドのアンデット族が効果を発動した時、その効果を無効にするか、フィールド・墓地のモンスター1体を除外するか、どちらかを選んで適用するぅ! 俺は当然──【暗黒の
「!!」
謎の閃光を浴びた竜王の姿がフィールドから
「や、ヤベぇぜ兄貴!
「……ううん……きっと、セツナ先輩なら大丈夫……!」
「兄貴……?」
チェーンの逆順処理によって後回しにされた、【ナイトメアを駆る死霊】の手札破壊も遂行され──ちなみに捨てられたのは【トレード・イン】──、ボクは手札のカードと、フィールドのモンスターを全て失った。
「クヒヒヒヒッ!! もはや勝負は決まったなぁ!」
「っ……」
「そうだ、もっと怯えろぉ! 人が恐怖に
このまま【ドーハスーラ】の直接攻撃を食らえば、ボクのライフは一撃で尽きる……!
「トドメだぁっ!! 【ドーハスーラ】で攻撃ィ! 『バロールの魔眼』!!」
見開かれた額の魔眼が漆黒の光線を放射した。
ボクは青ざめた表情を浮かべる。死骨崎くんからすれば、負けを悟って恐怖に怯える敗者の顔に見えた事だろう。
「やられる!!」
「クヒヒヒヒッ!! 終わりだぁぁあっ!!」
「──なーんてね☆」
「ッ!?」
「
ウィンクを決めたボクが発動したのは、先攻1ターン目にセットした
「君のモンスター同士でバトルしてもらうよ!」
「クヒッ!?」
【ドーハスーラ】はボクへの攻撃を取り止め、最初にダイレクトアタックを仕掛けた【ナイトメアを駆る死霊】を新たな標的に選ぶ。
【ナイトメアを駆る死霊】は魔眼のビームに貫かれるが、自身に備わっている耐性により、破壊はされなかった。その代わり死骨崎くんへの超過ダメージは、きちんと発生する。
「ギエエエエエエッ!!!?」
死骨崎 LP 3200 → 1200
「うぐぅぅ……! お……おのれぇ……モンスターを除外されるのは、計算の内だったと言うのかぁ……!」
「君が【ドーハスーラ】を出してきた時から、そっちの狙いなんてお見通しさ!」
「よ、よくもぉ……この恨み晴らさずでおくべきかぁ!」
「ボクのターン!」
ドローしたのは【移り気な仕立屋】。違う、このカードじゃない……
でも、もう一度だけチャンスはある!
「
これで意中のカードを引けなきゃ絶望的──どうだっ!
「…………フフッ、引いたよ」
「んん?」
「もう君のターンは回ってこないよ!」
「なんだとぉ!?」
「
そう、ボクはこのカードを待っていたんだ。
【アンデットワールド】が浄化され元の
「お、俺の世界があぁぁっ!」
「これでボクの墓地のモンスターは、全てドラゴンに戻る!」
「ぐぎぎぎぎぃ……!」
「リバースカード・オープン! 【復活の福音】! 墓地からレベル7、または8のドラゴンを特殊召喚する!」
残念ながら【ナイトメアを駆る死霊】を止める手立ては無かったので、【復活の福音】を捨てられる前に、あらかじめ場に伏せておいて正解だった。
「さぁ本日の主役の出番だよ! 【ホーリー・ナイト・ドラゴン】!!」
【ホーリー・ナイト・ドラゴン】 攻撃力 2500
「つ、ついにドラゴンの復活を許してしまったぁ……!」
「おっしゃ! これで【ナイトメアを駆る死霊】を攻撃すりゃあ、
「バトル! 【ホーリー・ナイト・ドラゴン】で、【ナイトメアを駆る死霊】を攻撃!」
聖夜の竜が天高く飛翔し、攻撃の態勢に入る。すると、死骨崎くんが口角を上げた。
「クヒヒヒヒッ!! かかったなぁ!」
「!」
「
霊の手招きに導かれた【ホーリー・ナイト・ドラゴン】は、誘われるまま【ドーハスーラ】へと標的を移し変えた。
「【ドーハスーラ】よ! 返り討ちにしてやれぇぇぇっ!!」
「そう来たか……でも残念だったね! 手札から速攻魔法・【鈍重】を発動!」
「なにぃ!?」
「【ドーハスーラ】はその守備力分、攻撃力がダウンする!」
【死霊王 ドーハスーラ】 攻撃力 2800 - 2000 = 800
「そ、そんなバカなぁ!」
「チェックメイトだ!! 行け、【ホーリー・ナイト・ドラゴン】! 『シャイニング・ファイヤー・ブラスト』!!」
聖なる炎が死霊の王を焼き払う!
「ギヒャアアアアアッ!!!」
死骨崎 LP 0
「先輩が勝ちました!」
「やったぜ
勝てた事に安堵していると、死骨崎くんはどこからか
「ゆ……許さないぃ……! 呪ってやる、オマエを呪ってやるうぅ……!」
「いや呪わないで!?
「……クヒヒヒ、冗談だぁ」
「え?」
「
よ、良かった。呪われずに済んだみたいだ。彼が言うと全く冗談に聞こえなかったから本気で焦ったよ。
とにもかくにも、これで予選の準決勝に進出か。明日の2試合を勝ち抜けば、ついに本選出場だ!
総角 刹那・予選3回戦──突破!!
死骨崎って岩手県にある岬の名前らしいですね。
というわけで、最近あちこちで活躍なされている【ドーハスーラ】様に、こちらでも出演して頂きました!
ちなみにセツナの「なーんてね☆」は、ブルーエンジェルの真似です☆