遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 4月から【レダメ】禁止!? 困る!!(豪炎寺くん涙目)

 【サンダー・ボルト】が制限復帰!? 高騰不可避!!

 ハッ、すみません。今回のリミットレギュレーションが色々と衝撃的過ぎて取り乱してしまいました。

 セツナ vs 豪炎寺 後半戦です! どうぞ!



TURN - 31 Timmy, Johnny, and Spike - 2 

 

『勝って当たり前みたいなデッキを使って、何が面白いの?』

 

 

 

 ──黙れ。

 

 

 

『誰が使っても勝てるデッキなんてつまんねーだろ』

 

『勝ちに固執して、カッコ悪い』

 

決闘(デュエル)は勝ち負けだけが全てじゃないよなー』

 

 

 

 ──ふざけるなっ!! キサマらそれでも決闘者(デュエリスト)か!!

 

 ──強い者が認められる……! それがジャルダン……それが決闘(デュエル)ではなかったのか!?

 

 ──アカデミアに入学してから常に勝つ事だけを考え、勝つ為のデッキを構築し、そして勝利の実績を積み重ねてきた……

 そうやって次期十傑候補の筆頭という地位まで、()()()登り詰めた!

 

 ──だと言うのに何故だ!? 何故勝てば勝つほど否定されるのだ!!

 

 ──〝勝利〟を追い求める事の、一体何が悪いと言うんだっ!!

 

 

 

『こっちはファンデッキなんだから、ガチデッキ相手じゃ負けて当然でしょ』

 

『ガチデッキは(つえ)ぇ強ぇ! パワーカード連打はさすがにゲームになりませんね! そりゃ勝ちますわな!』

 

 

 

 ──奴らは負ければ口を揃えて『デッキのせいだ』と言い訳を並べ立て、(おのれ)の無能さを棚に上げる。

 ──反吐が出る! どいつもこいつも、決闘者(デュエリスト)風上(かざかみ)にも置けないクズばかりだ!

 

 ──……いいだろう……キサマらが俺の決闘(デュエル)を否定するのなら、俺もキサマらの紙束デッキを、()()けた決闘(デュエル)を、キサマらの全てを否定してやる!!

 

 ──半端な気持ちで決闘(デュエル)の世界に入り込んだ者がどうなるか……骨の(ずい)まで思い知らせてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールドを制圧していた3体の【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】、そして【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】を、【ジェノサイド・ウォー】のコンボで一掃。豪炎寺くんのフィールドは一瞬にしてガラ空きとなり、ボード・アドバンテージの差は覆された。

 

 正直もうちょっと【真紅眼(レッドアイズ)】を眺めてたかったけど仕方ないね、決闘(デュエル)だもの。

 

 

 

「おのれ……この俺の【レッドアイズ】に、ザコを(けしか)けるとは……!」

 

 

 

 (ごう)(えん)() LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「まだ勝負はこれからだよ、豪炎寺くん」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 1000

 

 

 

「セツナ先輩すごいです!!」

 

「伝説の【真紅眼(レッドアイズ)】を、あっさり倒しちまうなんて……さすがは俺の兄貴が()れた男ですぜ!!」

 

「ほ、惚れたなんて、ケイちゃんやめてよ……!」

 

 

 

 えっ!? なになに! 今マキちゃんが聞いたら飛んで喜びそうな台詞(セリフ)が聞こえた気がするんだけど! もっかい言って!?

 

 

 

「……【黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)】がフィールドから墓地へ送られた場合……デッキから【レッドアイズ】カード1枚を手札に加える。俺は──【真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)】を手札に」

 

 

 

 【真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)】? 【レッドアイズ】専用の融合魔法か……まだ何か狙ってるみたいだね……

 

 

 

「……確か、豪炎寺くん言ってたね? この決闘(デュエル)で本当のドラゴンデッキってのが何か教えてやるってさ」

 

「……それがどうした」

 

「じゃあボクは、どんなに弱いカードでも、使い方次第で強いデッキにも勝てるって事を教えてあげるよ。この決闘(デュエル)でね!」

 

「……っ! キサマ……!」

 

 

 

 【アルケミー・サイクル】の効果で自分のモンスターの命と引き換えに補充した3枚の手札……このカード達の使いどころが勝敗を左右する。大事に使わないとね。

 

 

 

「ボクはカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「どこまでも勘に障る奴だ……調子に乗るなよ半端者が! 俺のターン! 俺は墓地の【伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)】の効果を発動! 墓地から【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】をデッキに戻し、このカードを手札に加える!」

 

「ッ! という事は……また【真紅眼(レッドアイズ)】が出てくるの!?」

 

「残念だが【伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)】の1つ目の効果はこのターン使えない。だが俺には次の手がある! 魔法(マジック)カード・【真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)】を発動!!」

 

「──! 早速来たか……!」

 

「手札の【真紅眼(レッドアイズ)凶星竜(きょうせいりゅう)-メテオ・ドラゴン】と、デッキの【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】を融合!!」

 

「デッキのモンスターまで融合素材に!?」

 

 

 

 最初に【真紅眼(レッドアイズ)】をデッキに戻したのは、この為か……!

 

 

 

(あか)()を持つ黒竜よ。(わざわい)をもたらす凶星をその身に宿し、森羅万象を滅ぼす流星となれ!! ──融合召喚!! 現れろ、レベル8! 【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】!!」

 

 

 

 身体の至るところから炎を噴き出した、【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】の融合体が上空に羽ばたく。胸部には融合素材となった【真紅眼(レッドアイズ)の凶星竜-メテオ・ドラゴン】の頭部と翼が残されており、まさに隕石と合体した【真紅眼(レッドアイズ)】と言えた。

 

 

 

【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】 攻撃力 3500

 

 

 

「攻撃力3500!? これが君の奥の手ってわけか……!」

 

「【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】は、融合召喚成功時に手札・デッキから【レッドアイズ】モンスターを墓地に送る事で、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える事ができる。……が」

 

「そう。【一時休戦】の効果で、このターン、ボクにダメージは無い」

 

「ならば──そこでチョロチョロしている鬱陶(うっとう)しいザコを()()らしてやる!!」

 

「!」

 

「【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】! 【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】を攻撃! 『メテオ・インフェルノ』!!」

 

 

 

 【流星竜】が咆哮を響かせると、天から無数の隕石が降り注いだ。隕石はフィールドを思うがまま蹂躙し、やがて守備表示の【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】の頭上に墜落(ついらく)。跡形もなく粉砕した。

 

 

 

「うわあぁっ!! くうっ……!」

 

 

 

 うひゃあー、たまげた。最近の立体映像(ソリッドビジョン)技術の向上具合は本当に凄まじいね。迫力と衝撃にリアリティーが有りすぎて、これを生身で食らったらと考えるとゾッとする。

 

 

 

「俺は1枚カードを伏せてターンエンドだ!」

 

(ククッ、俺が伏せたのは(トラップ)カード・【メテオ・レイン】。キサマに逃げ場は無い!)

 

「俺は負けない……! 〝勝利〟のみを追及し続けたこの俺が! 遊び半分で決闘(デュエル)しているキサマに負けるなど、あってはならないのだっ!!」

 

「…………ねぇ、豪炎寺くん」

 

「なんだ?」

 

「──最後に決闘(デュエル)を〝楽しい〟って思ったの……いつ?」

 

「……なんだと……!?」

 

「いや、いつもそんな風に肩肘(かたひじ)張って、苦しそうに決闘(デュエル)してるのかなって思ってさ。ちょっと気になってね」

 

「ふざけるなぁ!!」

 

「!」

 

決闘(デュエル)は真剣勝負だ!! 俺は今まで、決闘(デュエル)に〝楽しさ〟などと言うくだらない()()を求めた事は、ただの一度もないっ!!」

 

「……本当に?」

 

「やはりキサマも同じか……! 楽しければ勝ち負けはどうでもいいのか!?」

 

「誰もそんなこと言ってないよ」

 

「……なに?」

 

決闘(デュエル)なんだもの、勝ちに行かなくてどうするのさ。誰だって負けるのは嫌だろうし、ボクだって負けるよりは勝ちたい」

 

 

 

 そうでなきゃ人目につく場所で堂々と『打倒! 鷹山(ヨウザン) (カナメ)!』なんて宣言したりしない。

 ()()()……カナメに手も足も出せないまま負けた悔しさは、今でもボクの胸中に残り続けてる。

 このままじゃ終われない。

 もう一度カナメと闘いたい。

 次こそは勝つ!

 そんな内なる衝動が、ボクをこの大会に駆り立てたんだ。

 

 

 

「勝とうとするのはボクにとって()()。ボクは、その上で決闘(デュエル)を楽しみたい。言うなれば、楽しんで勝ちたいんだ!」

 

「……楽しんで勝つ……だと……!?」

 

「だからボクは豪炎寺くんの決闘(デュエル)に対する想いを否定はしない。むしろ決闘者(デュエリスト)として当たり前の欲求に正直なところはリスペクトしたいくらいさ」

 

「ッ……何が言いたい!?」

 

「だけど、皆が皆ボク達みたいに勝ちたいと思って決闘(デュエル)しているわけでもないと思うんだ。価値観は人それぞれ。だから君も……他の誰かのデッキや決闘(デュエル)を、否定しないであげてくれないかな?」

 

「……!」

 

(俺の決闘(デュエル)をリスペクトする、か……そんな事を言ってくる奴は初めてだ……)

 

「……ならば……俺に勝ってみせろ! キサマの言う、楽しんで勝つ決闘(デュエル)とやらで! この俺を打ち倒してみせろ!!」

 

「オーケー。男と男の──いや、決闘者(デュエリスト)決闘者(デュエリスト)の約束だよ。ボクのターン!」

 

 

 

 そう、ボク達は決闘者(デュエリスト)

 そしてここは、決闘(デュエル)で全てを決める街・ジャルダン。

 

 白黒つけたい時は、何よりも決闘(デュエル)に限る!

 

 

 

「このスタンバイフェイズに墓地の【ミンゲイドラゴン】の効果を発動! 自分フィールドにモンスターがいない場合、攻撃表示で復活できる!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】 攻撃力 400

 

 

 

「続いて(トラップ)カード・【無謀な欲張り】発動! カードを2枚ドロー!」

 

(──! これは……!)

 

(……確か奴の【ミンゲイドラゴン】は、ドラゴン族限定で2体分のリリースとして使えた筈……この局面で復活させてきたという事は……)

 

「フフッ……行くよ豪炎寺くん!」

 

(来るか!)

 

「ボクはこのモンスターを召喚する──攻撃表示でね!」

 

 

 

【ポケ・ドラ】 攻撃力 200

 

 

 

 ポンッと出てきたのは、小さくて愛らしいドラゴンの子ども。木の実を美味しそうにかじる姿は実に愛嬌たっぷりで、見ていると決闘(デュエル)の緊張感さえ(ほぐ)れて気持ちが(なご)んでくる。なんならずっと見てられる。

 

 

 

(なにっ!? 攻撃表示!? まさか……まさか攻撃力200の最弱モンスター・【ポケ・ドラ】だとぉぉぉっ……!!)

 

「くっ……ククク……! キサマが勝負を諦めるのは自由だ……だがよりによって、そんなザコモンスターを出すとは……!」

 

「……」

 

「そいつはデュエルモンスターズの中でも最も攻撃力の低い、最弱最低レベルのカード。そんなカードをデッキに入れている奴など見た事がない……そのカードに我々の決闘(デュエル)を汚す、侮辱の意味が込められているのなら、俺はキサマを許さん!」

 

「それは違うよ、豪炎寺くん。このカードこそ、君の【メテオ・ブラック】を倒す為のキーカードなのさ!」

 

(な、なんだと……!)

 

「さぁ、お楽しみはこれからだ! この子が召喚に成功した時、デッキから2枚目の【ポケ・ドラ】を、手札に加える事ができる! さらに魔法(マジック)カード・【トランスターン】を発動! 自分フィールドのモンスター1体を墓地に送り、そのモンスターと種族・属性が同じで、レベルが1つ高いモンスター1体を、デッキから特殊召喚する! ボクはフィールドの【ポケ・ドラ】を墓地に送って、デッキから【ラヴァ・ドラゴン】を、守備表示で特殊召喚!」

 

 

 

【ラヴァ・ドラゴン】 守備力 1200

 

 

 

「続けて【ラヴァ・ドラゴン】の効果! 表側守備表示のこのモンスターをリリースする事で、手札と墓地からレベル3以下のドラゴンを、1体ずつ特殊召喚できる! 出ておいで! 2体の【ポケ・ドラ】!」

 

 

 

【ポケ・ドラ】 攻撃力 200

 

【ポケ・ドラ】 攻撃力 200

 

 

 

「有象無象がゾロゾロと……!」

 

「さらに! 手札から魔法(マジック)カード・【ドラゴニック・タクティクス】発動!」

 

 

 

 フィールドに並んだ2体の【ポケ・ドラ】の姿がチェスの駒へと変わる。

 

 

 

「【ポケ・ドラ】2体をリリースして、デッキからレベル8のドラゴンを特殊召喚する! 現れろ! 【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

(ほう、ようやくマシなモンスターを出してきたか……)

 

「お次はエース対決と行こうか」

 

「ふん! だが【メテオ・ブラック】の攻撃力には届かん!」

 

「だったら届かせるまでさ。いよいよこのカードを使う時が来た!」

 

 

 

 そう言ってボクは、自分の足下に伏せられたリバースカードに手を(かざ)す。

 

 

 

「それは最初に伏せたカード……!」

 

「そのとーり。(トラップ)カード・【守護霊のお(まも)り】発動! 【ラビードラゴン】の攻撃力を、エンドフェイズまで自分の墓地のモンスター1体につき、100ポイントアップする!」

 

 

 

 墓地に眠る仲間のドラゴン達の魂が、【ラビードラゴン】に力を与えていく。

 

 

 

「ボクの墓地のモンスターは、7体。よって攻撃力は、700ポイントアップ!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950 + 700 = 3650

 

 

 

「バカな! 【メテオ・ブラック】を越えただとっ!?」

 

「まだまだ行くよ! (トラップ)発動! 【恐撃(きょうげき)】! 墓地のモンスター2体を除外し、フィールドの攻撃表示モンスター1体の攻撃力を、ターンの終わりまで(ゼロ)にする! 対象はもちろん──【メテオ・ブラック】!」

 

 

 

 除外するのは【ポケ・ドラ】2体。

 さっき【メテオ・ブラック】が【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】を攻撃した時に発動しても良かったんだけど、せっかく攻撃力を(ゼロ)にするなら戦闘破壊もしておきたいと思ってね。じゃないとほら、もったいないし。

 

 2体の【ポケ・ドラ】の霊魂が【メテオ・ブラック】を取り巻いて、【ラビードラゴン】の時とは逆に、力を奪っていく。

 

 

 

【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】 攻撃力 3500 → 0

 

 

 

「こ、このザコ共があぁぁぁっ!!」

 

「バトル! 【ラビードラゴン】で、【流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン】を攻撃! 『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 白い光の奔流が隕石と化した竜を葬り去る!

 強化した【ラビードラゴン】の攻撃力の数値が、まるまる超過ダメージとなって豪炎寺くんのライフを直撃する。

 

 

 

「うぐあああああっ!!」

 

 

 

 豪炎寺 LP 4000 → 350

 

 

 

(よし! 後は【ミンゲイドラゴン】で攻撃すれば──)

 

「まだだぁ!!」

 

「っ!」

 

「【メテオ・ブラック】がフィールドから墓地へ送られた事で、効果発動ッ! 墓地の通常モンスター1体を特殊召喚できる!」

 

(負けてたまるか……! 勝つのは俺だっ!!)

 

「よみがえれ──【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】!!」

 

 

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】 守備力 2000

 

 

 

 【真紅眼(レッドアイズ)】か……また拝めて嬉しいよ。

 再びフィールドに舞い戻った伝説の黒竜は、主人を守る様に防御の態勢を取る。

 

 

 

「クククッ……終わりだ総角(アゲマキ) 刹那(セツナ)! 次のターン、【真紅眼(レッドアイズ)】で【ミンゲイドラゴン】を攻撃すれば、キサマのライフは尽きる!」

 

「…………」

 

「これで解っただろう……? 楽しんで勝つなど、半端者の甘えに過ぎないという事が! 決闘(デュエル)は〝勝利〟が全てだ!! 勝たなければ何の意味もないのだっ!!」

 

 

 

 勝たなきゃ意味ない……か。なるほど、昨日アマネが言っていた、『豪炎寺くんは最もジャルダンの住人らしい決闘者(デュエリスト)』ってのは、こういう事だったんだね。

 

 確かにジャルダンのアカデミアの理念は『勝利至上主義』。結果を重視した教育方針で、強い決闘者(デュエリスト)()()が優遇される世界だ。

 だからこそ『ランク』という制度で、下位に格付けされた者を冷遇する事で生徒達のお尻に火をつけ、常に()()を目指す意欲を育てさせる。

 

 豪炎寺くんの勝利への貪欲さは、そうしたシビアな環境に、特に色濃く影響を受けている事から来ているのかも知れない。

 

 ──だけど。

 

 

 

「……悪いけど、君に次のターンは回ってこないよ」

 

「なに!?」

 

「手札から速攻魔法──【竜の闘志】発動! 君が特殊召喚したモンスターの数だけ、【ラビードラゴン】は攻撃回数を増やす!」

 

「連続攻撃だとっ!?」

 

「【ラビードラゴン】!! 【真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)】を攻撃!!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

 追撃で放たれた光線を受けた【真紅眼(レッドアイズ)】は、光に飲み込まれて消滅していく。

 

 

 

「うおおおっ!!」

 

(こ、これが本当にファンデッキの強さなのか……!?)

 

 

 

 【真紅眼(レッドアイズ)】が撃破され、とうとう豪炎寺くんを守るものは何も無くなった。

 いや、1枚だけ伏せカードがセットしてあるけど、これだけ攻めて発動してこないって事は心配しなくていいだろう。タブンネ。

 

 

 

「……チェックメイトだ」

 

「ぐっ……!」

 

「【ミンゲイドラゴン】で──プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

 

 

 トーテムポールを模した小型のドラゴンが、豪炎寺くんに突進攻撃を決め、この決闘(デュエル)のフィニッシャーとなった。

 

 

 

「ぐわぁあぁぁーっ!!」

 

(バカな……この俺が……負けるだと……!)

 

 

 

 豪炎寺 LP 0

 

 

 

「ボクの勝ちだね!!」

 

 

 

 決着がつき、広い場内が歓声に包まれる。

 チラリと客席に目をやると、ルイくんとケイくんがハイタッチしながら大喜びしてくれていた。

 ハイタッチと言っても背の高いケイくんがルイくんに合わせて(かが)んでいるので、端から見れば、大きなお兄さんが小学生くらいの男の子と手を合わせてあげてる、微笑ましい光景になっていた。

 実際は小さい方がお兄さんなんだけどね。あぁもういちいち可愛いなぁ!

 

 

 

「くそぉ!!」

 

 

 

 ガンッと固い音が聞こえて振り返ると、豪炎寺くんが床を拳で殴りつけていた。

 

 

 

「何故だ!! 何故俺が負けたんだっ!?」

 

「……今回は勝利の女神がボクに微笑んでくれただけだよ。あの土壇場で【竜の闘志】が手札になかったら、負けてたのはボクだった」

 

「ふざけるなっ!! これは勝つ為のデッキだったんだぞ!!」

 

「君のデッキが弱いわけじゃないよ。どんなに強いデッキでも、勝つ時もあれば、負ける時もある。たまたま今日がその時だった──それだけの事じゃないかな」

 

「っ……! ちくしょう……!」

 

 

 

 悔しさを噛み締め(うな)()れる豪炎寺くんに、ボクはスッと右手を差し出した。

 

 

 

「──決闘(デュエル)を通じて、君の【真紅眼(レッドアイズ)】に対する愛情が伝わってきたよ。そして、本当は君も決闘(デュエル)が大好きなんだって事も」

 

「……! 俺が……決闘(デュエル)が好きだと……?」

 

「うん。……好きだからこそ、そこまで勝ちにこだわって、本気になれるんだよ。でも、最初は君にだってあったんじゃないかな? 決闘(デュエル)を純粋に〝楽しい〟と思う気持ちが……」

 

「…………っ」

 

「真剣勝負も良いけどさ、ボクとの決闘(デュエル)も楽しんでくれた?」

 

 

 

 顔を上げ、ボクと目を合わせた豪炎寺くんは、少しの()を置いた後、握り過ぎて血の(にじ)んだ拳を()いて、ゆっくりと手を伸ばした。

 

 

 

(……ハッ!?)

 

「~~~っ! 敵の情けなど受けん!!」

 

「いてっ!?」

 

 

 

 そのまま快く握手──かと思いきや、またしても手をひっぱたかれた。本日二度目。

 

 

 

「負けた俺が楽しいわけがないだろう!! 俺は帰らせてもらう!」

 

(素直じゃないなぁ……)

 

 

 

 お(かんむり)な様子で決闘(デュエル)フィールドを足早に降りていく豪炎寺くん。……と、その足が急に止まった。

 

 

 

「……総角 刹那!!」

 

「ん?」

 

「俺に勝った以上、次の決勝で敗れる事は断じて許さん!!」

 

「……あはは、なんだそんな事か。言われなくても、必ず勝つよ!」

 

「……ふん、それでいい」

 

「?」

 

 

 

 最後に何か呟いてた気がするけど聞き取れなかった……まぁいいか。

 

 豪炎寺くんの背中を見送ってから、ボクも観客の皆に笑顔で手を振りつつ退場した。

 

 次は、いよいよ決勝戦か。長かった様な、あっという間だった様な……

 とにかく本選まで後一歩だ。ここまで来たら、絶対に負けたくない!

 

 待っていなよ、カナメ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……決闘(デュエル)を楽しむ、か……」

 

(認めたくはないが……確かに奴との決闘(デュエル)の中で、俺は自分の心が踊るのを感じた……こんな感覚、久しく忘れていたな……)

 

「ふん……完敗というわけか。だが次こそは俺が勝つ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12時から1時間の休憩時間(インターバル)を終え、ようやく予選の最終試合・決勝戦の始まる時刻が訪れた。

 

 昼食もしっかり済ませ、身体も十分に休めた。というか早く()りたくて、普段は短く思えてしまう昼休みが、ずいぶんと長く感じられた。

 

 入場してみると、観客の数は準決勝よりもさらに増えていた。同じく決勝進出を果たしたアマネやマキちゃんも、今頃はこうして大観衆に囲まれているんだろうか。

 

 デュエルディスクを着けて決闘(デュエル)フィールドに足を踏み入れる。

 そこにはすでに、予選最後の対戦相手が待ち構えていた。

 

 ボクは驚き、目を剥いた。

 

 

 

「──! 君は……!」

 

「お久しぶりです、総角先輩」

 

 

 

 ボクの前に立っていたのは、ポニーテールにした緑色の髪が特徴的な少女──

 

 

 

(アカ)()ちゃん……!?」

 

 

 

 以前、暴走族に絡まれていたところをカナメとボクで助け出した、高等部1年生の女子生徒──宝生(ほうしょう) (アカ)()ちゃんだった……!

 

 

 

 





 今回は『ガチデッカーとファンデッカーの価値観の違い』をテーマに書いてみました。

 セツナも言っていた様に、デュエルに対する考え方は人それぞれなので、ガチデッカーさんもファンデッカーさんも、互いのデッキを否定せず、自分のデッキに愛を持って全力でデュエルできれば、それがTCGの理想なのではないかと思うのです。(掲示板の荒れ具合を見るに、相容れるのはなかなか難しそうですが)

 価値観を押しつけず、負けてもデッキのせいにして言い訳したりせず、思いやりの心で遊べたら良いですね。
 思想はどうあれ、カードゲームが好きという部分は、全プレイヤー共通のはずですから。

 ルールとマナーを守って楽しくデュエルしよう!
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