遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
十傑だよ! 全員集合ーッ!!
結局平成の内に更新できなかったよちくしょー!!
デュエルアカデミア・ジャルダン校、主催──『選抜デュエル大会』。
その予選トーナメント・D-ブロックの
セツナは宝石の騎士・【ジェムナイト】を操る
見事、予選を優勝で飾り、本選の出場権を勝ち得た。
そして同時刻……他のブロックでの決勝も、次々と決着を迎えようとしていた──
「……!」
アマネ LP 1700
【ヴァンパイア・ロード】 攻撃力 2000
「どうだ俺の鉄壁は! これだけ守備を固めれば、もはや俺にダメージを与えるなど不可能!」
男子生徒 LP 4000
【ライトレイ・マドール】 守備力 3000
【マシュマロン】 守備力 500
【光の追放者】 守備力 2000
光属性の壁モンスターで徹底的に守りを固める防御型デッキ。
さらに【光の追放者】の効果で、墓地に送られるカードは全て除外され、それがアマネを苦しめていた。
「確かに大した防御力ね……でも、突破口はあるわ!」
「なに?」
「魔法発動! 【威圧する
「っ!」
「バトルよ! 行け、【ヴァンパイア・ロード】!」
「させるか! 永続
「!?」
「このカードの発動時に1000の倍数のライフを払う! そしてこのカードが存在する限り、払った数値より低い攻撃力の相手モンスターは攻撃できない! 俺は3000ポイントのライフを払う!」
男子生徒 LP 4000 → 1000
顕現した光の壁は、
「くっ……ターン
これで敵モンスターはおろか、相手プレイヤーへの直接攻撃をも封じられてしまった。
アマネは苦虫を噛み潰した様な表情を見せ、渋々ターンを明け渡す。冷静さこそ失ってはいないが、度重なる妨害を受けて、相当フラストレーションが溜まっているのが窺える。
一方、男子生徒は対照的に、したり顔で意気揚々とカードを引く。払った代償こそ大きかったものの、より強固な鉄壁を築き上げた事で、すっかり安心しきっていた。
そして、たった今ドローしたカードが彼に勝利を確信させた。
「フフフ、だが守るだけではないぞ! 出でよ俺のエース! 【ガーディアン・オブ・オーダー】!!」
【ガーディアン・オブ・オーダー】 攻撃力 2500
「こいつは自分のフィールドに光属性が2体以上いる時、特殊召喚できる!」
「攻撃力2500……!」
「バトルだ! 【ガーディアン・オブ・オーダー】で、【ヴァンパイア・ロード】を攻撃!」
「うぅっ!!」
アマネ LP 1700 → 1200
「
(──!)
「……私は【ヴァンパイア・レディ】を召喚」
【ヴァンパイア・レディ】 攻撃力 1550
「カードを1枚伏せて、ターン
「いよいよ手が無くなった様だな? 言い忘れていたが、俺は女が相手でも決して容赦はしないぞ。このターンで終わらせてやる! 俺のターン!」
「……ええ、このターンで終わるわ」
「ん?」
「──あなたの敗北でね!!」
「なにぃ!?」
「
【ヴァンパイア・レディ】の左手の人差し指に、小型の爆弾が付いた指輪が
「【破壊
「な、なんだとっ!?」
「【光の護封壁】でライフを削ったのが
アマネの謝辞に【ヴァンパイア・レディ】は口元に笑みを浮かべ、『構わない』と言う様に手を軽く振って応えた。
直後、指輪がサイズに見合わぬ大爆発を起こし、爆風がアマネと男子生徒を同時に襲う。
「ッ……!」
「うわぁああああっ!?」
アマネ LP 1200 → 200
男子生徒 LP 0
「……私もひとつ言い忘れてたけど……私が一番得意な戦術は、効果ダメージなの」
(勝った……ついに本選まで来れた……!)
マキノ
男子生徒
「行っくよーっ! あたしは【鬼タンクT-34】と【ガトリングバギー】をリリースして、【TM-1 ランチャースパイダー】をアドバンス召喚!」
【TM-1 ランチャースパイダー】 攻撃力 2200
「へっ! それがどうした! いくら強いモンスターを出してきたところで、俺の【死霊ゾーマ】を攻撃した途端、お前は終わりだ!」
【死霊ゾーマ】 守備力 500
「う~ん、確かに【ゾーマ】を戦闘で破壊したら、その効果であたしが【ランチャースパイダー】の攻撃力分のダメージを受けて負けちゃうけど……だったら、戦闘以外で破壊しちゃうだけだもんねー!」
「なに?」
「魔法発動! 【ブラック・ホール】! フィールドのモンスターを全部破壊だぁーっ!」
フィールド中央の空間が
「【ブラック・ホール】だと!? だ、だが! せっかく召喚したお前のモンスターも巻き添えだぜっ!」
【死霊ゾーマ】が【ブラック・ホール】に呑まれて消えていく。同じ様にマキノの【ランチャースパイダー】も、渦に引きずり込まれたものと思われたが……
「……!? な、なんでだ!? なんで【ランチャースパイダー】が破壊されてねぇんだ!?」
「フッフッフー。あたしは【ブラック・ホール】にチェーンして、永続
「ポ……【ポールポジション】だとぉ!?」
「このカードの効果で、フィールドに存在する、攻撃力が一番高いモンスターは魔法の効果を受けなくなる。だから【ランチャースパイダー】は生き残れたってわけ」
「ば、バカな……!」
「さぁバトルだよ! 【ランチャースパイダー】で、プレイヤーにダイレクトアタック! 『ショック・ロケット・アタック』!!」
クモ型の巨大戦闘兵器がロケットランチャーによる
「どひゃああぁ~~~っ!?」
男子生徒 LP 0
「やったーっ!! 勝っちゃったよあたしーっ!!」
こうして、N-ブロックではアマネが、M-ブロックではマキノが優勝を果たし、共に念願の本選進出が決定した。
さらにA-ブロックでは……
「どうした? もう終わりか?」
「く、くそっ……!」
カナメ LP 4000
学園最凶・
「まだだ……!
「おい!! お嬢様の右腕は俺だぞ!!」
「うるさいぞ
「なんだとぉぉぉっ!?」
「行くぞ鷹山! 本当の勝負はここからだ!」
「……」
「
【ヒーロー・キッズ】 守備力 600
「【ヒーロー・キッズ】の効果! こいつが特殊召喚に成功した時、デッキから同名カードを任意の数だけ特殊召喚できる! さらに2体の【ヒーロー・キッズ】を特殊召喚だ!」
【ヒーロー・キッズ】 守備力 600
【ヒーロー・キッズ】 守備力 600
「そして俺のターン! 3体の【ヒーロー・キッズ】をリリース! ──アドバンス召喚! 現れろ、
【ギルフォード・ザ・ライトニング】 攻撃力 2800
「それがお前のエースモンスターか。だが攻撃力は俺の【
【爆炎帝テスタロス】 攻撃力 2800
「それはどうかな? 今から目に物を見せてやる! 【ギルフォード・ザ・ライトニング】の、効果発動!」
筋骨たくましい剛健な剣士が、背負った大剣を片手で引き抜き、天に切っ先を向けた。次の瞬間──
「『ライトニング・サンダー』!!」
剣身から雷電が
「………」
「見たか! 【ギルフォード・ザ・ライトニング】には、3体のリリースで召喚された時、相手モンスターを全て破壊する特殊能力があるのだ!」
「……なるほどな」
(っ……こいつ……! この状況で、顔色ひとつ変えないだと……!)
「余裕ぶりやがって……これを食らっても涼しい顔していられるか!! 【ギルフォード・ザ・ライトニング】で、ダイレクトアタック! 『ライトニング・クラッシュ・ソード』!!」
自身の身の丈ほどもある大剣を構え、【ギルフォード・ザ・ライトニング】が切り込む。
しかしカナメは眉ひとつ動かさず、腕を組んだまま平静とした声音で告げた。
「……ここまでよく頑張ったと褒めておいてやろう。だが、もうお遊びは終わりだ」
「なに!?」
「永続
「
「このカードは発動後モンスターカードとなり、俺のフィールドに特殊召喚される」
【始源の帝王】 守備力 2400
「
「フッ……浅はかだな。俺が一時しのぎなどの為に、こいつを発動するわけがないだろう」
「っ!?」
「2枚目の永続
「俺のターンのバトルフェイズにアドバンス召喚だとっ!? インチキ効果もいい加減にしろ!」
「【始源の帝王】をリリースし、【
【雷帝ザボルグ】 攻撃力 2400
「【ザボルグ】が召喚に成功した時、モンスター1体を破壊する。俺は【ギルフォード・ザ・ライトニング】を破壊」
「なんだとっ!?」
「目には目を。
「ぐわあっ!!」
(そ、そんなバカな……俺の戦術が全く通じない……!
「さぁ次はどうする?」
「くっ……!」
(俺の手札は【イシュザーク】1枚……もう……何もできない……どのみち次のターン、【ザボルグ】のダイレクトアタックで、俺のライフは……)
もはや打つ手はない。詰みだ──京川の心は、この時点で完全に折れてしまった。
実力にはそれなりの自負があった。たゆまぬ努力の末、学園のトップランカーにまで駆け上がり、目の前の鷹山 要と同じく十傑の一人である、鰐塚 ミサキに腕を買われ、相棒の広瀬と共に風紀委員会の副委員長に着任という目覚ましい
だから──例え相手が学園最凶の
もしかしたら運が向いて、勝ててしまうかも知れないと、そんな棚ぼたも心のどこかで期待していた。
いや、それが高望みなのは分かっている。しかし、だとしても、少なくとも対等には渡り合える筈だ、と……そう考えていた。
だが甘かった。現実は、あまりに非情であった。
こちらの戦術はことごとく潰され、対等どころか1ポイントのダメージさえ与えられないではないか。
強い……強すぎる……
この男と自分の間には、どれだけ努力しても埋まらない、絶対的な『才能』の差があるのだ。
──闘志の炎が消えた京川は膝を折り、デュエルディスクにセットしたデッキの上に、そっと手を乗せた。
その行為が意味するのは、
京川 LP 0
「俺の……負けだ……」
「……ふん。
「っ……!!」
(やはり……だと……! お、俺は……俺は闘う前から……!)
対戦者が白旗を掲げた事で、このブロックの決勝は、カナメの優勝で幕を降ろした。
やがて、満席になっても溢れ返るほど詰めかけた観客達の、興奮気味な歓声が沸き起こる。
「すげぇ……ランク・Aがまるで子ども扱い……」
「バッカお前、それどころじゃねぇよ! 鷹山のライフ……見ただろ?」
「今年も一度もライフが減らないまま、無傷で予選突破……これで3年連続──ノーダメージでの本選出場だ!!」
「こんなの今まで聞いた事ねぇぞ……!」
「とんでもねぇ奴と同じ時代に生まれちまったぜ……!」
カナメに対する
極めて順当に本選へと駒を進めたカナメだったが、彼にとっては何の事はない、至極当然の結果であった。今のカナメが
(渇く……こんな
退屈。ただそれだけだった。
「おぉ~っ、賑やかだねー」
ボクが居る場所はどこかと言うと、なんと学園の敷地内に建てられている、パーティー会場の中。
広々とした
ちなみにボクの格好はと言うと、
──昼間、決勝戦で明里ちゃんに勝ったボクは、このパーティーの招待状を受け取った。
なんでも選抜試験の予選で優勝した生徒──つまり、本選に出場する選手は全員招待されているらしい。
そして今からここで、その本選のトーナメントの組み合わせを決める、抽選会を開催するんだそうだ。
「セツナ!」
「やぁ、アマネ。マキちゃんも」
「ヤッホー!」
「セツナも来たのね、おめでとう」
「ありがとう。二人もね」
本選で彼女達と闘えるのが楽しみだ。
……ん? 何やら背後に誰かが立ってる気配が──
「会いたかったわ、セツナちゃん♡」
「!」
「うひゃ!?」
全身の産毛が急激に逆立ち、
そこでボクは痴漢の正体を見た。紺色の髪を揺らす、長身の
「ヨ、ヨウカちゃん……!?」
「ハァイ、予選2日目以来ね。また会えて嬉しいわ」
「アナタ、イイお尻してるわね。ウフフ♡」
「 」
繰り返すけど、この人は男で、オカマである(震え声)。
「さっすがセツナくん、オトコにもモテモテだね!」
「いやマジやめてマキちゃん。ボクにソッチの趣味ないから」
「えぇ~本当かな~? いつもルイちゃんとイチャイチャしてるじゃ~ん」
「ルイくんをそんな目で見た事ないからね!?」
確かにルイくんは可愛いけど! お持ち帰りしたいとか弟に欲しかったとか何千回と思ったけど!
あ、あれ? おかしいな、いや、まさか、そんな筈は……
「あぁーっ!! クマ
「じゃかあしいっ!! 早いモン勝ちじゃあっ!!」
「?」
騒がしいな……どうしたんだろ?
「──!?」
(デカッ!?)
なんだアレ!? スキンヘッドでタンクトップ姿の巨漢がテーブルに並んだ料理をガツガツと
早食い選手権みたいな一心不乱な食いっぷりに、周りの人達ドン引きしてる!
「あらあら、リキオちゃんにキスケちゃんね? 華やかなパーティーの場で美しくないわよ」
「むおっ?」
「あ、ヨウ
ヨウカちゃんが呆れた様子で話しかけると、巨漢は厚切りローストビーフを口に
彼は知ってる。ヨウカちゃんと同じ十傑の、
「おう、蝶ヶ咲。お前さんも来とったか。んん? 横のメガネは確か……」
「おっ! セッちゃんじゃーん! おひさー! オイラのこと覚えてるー?」
「もちろん覚えてるよ虎丸くん。相変わらず元気そうだね」
「リキオちゃん、この子が
「おうそうじゃったそうじゃった! なるほど、お前さんが九頭竜を負かしたっちゅー噂の転入生か!」
ヨウカちゃんに『リキオちゃん』と呼ばれた大男が、ズンズンと大股で歩いてボクの前まで接近してくる。
えっ、ウソ、立ち上がると想像以上にデカ……デカ過ぎない!? ケイくんや九頭竜くんよりもさらに……2メートルは越えてる!!
しかも体格は、ボディビルダー顔負けの超・筋肉質。とても同じ高校生とは思えない。
上着がタンクトップ1枚だけという、TPOガン無視の服装だから、丸太の様に極太な上腕二頭筋がありありと見える。
「ワシは3年の
「う、うん。よろしく、熊谷くん」
「ふぅむ……しっかし細いのぉ。ちゃんと
熊谷くんは自分のアゴに大きい手を添えながらボクを見下ろした。彼のアゴは縦に二つに割れていた。
いやいや、君が大き過ぎるんだって。
「むっ、細いとは失礼な。ボクだって脱いだら凄いんだよ!」
「脱ぐなっ!!」
ネクタイをほどいてシャツを開こうとしたら、アマネに頭をひっぱたかれた。
うん、ナイスツッコミ。正直ノリに任せて脱ごうとしてたから、止めてくれなかったらどうしようかと思ってた。
「ガッハッハッ!! 面白い奴じゃ!」
野太い声で豪快に笑う熊谷くん。ところで、ボクはさっきからソワソワしているんだ。どうしてかって? それは──
「ね、ねぇ熊谷くん。ちょっと腕……触ってみてもいい?」
「ん? おう、構わんぞい」
快諾を貰ったので、恐る恐る熊谷くんのぶっとい二の腕に触れてみる。こんなムキムキな身体を見たら誰だって触ってみたくなるんじゃないかな。ならない?
「……うっわー、すごく固いし、おっきい……」
「ガッハッハッ! そうじゃろぉそうじゃろぉ! 毎日
質感はもはや鉄のそれだ。ここまで鍛え上げるのに、一体どれほどの年月を費やしたんだろう。
「……ねーねーアマネたん。セツナくんってもしかしてー……」
「……さすがにそれは無いでしょ、たぶん……」
「でもあたしも触りたーい! 触らせてー!」
「あ、ちょっと、マキちゃん!?」
マキちゃんも一緒になって、熊谷くんの豪腕をベタベタと触り始める。ついでに腹筋も。
「わぁーホントだぁ! 太いし固ぁーい!」
「よぉーし! それじゃあワシの特技を見せてやろう! 二人とも、ワシの腕に捕まれい!」
「「?」」
言われた通り、ボクは熊谷くんの右腕に、マキちゃんは左腕にしがみつく。
「しっかり捕まっとるんじゃぞぉ~? フンッ!!」
その状態のまま、熊谷くんは両腕を目いっぱい振り上げた。当然ボク達の身体も持ち上げられ、足が床を離れて宙に浮く形になる。
「「おぉ~~~っ!?」」
「ガッハッハッハッ! 軽い軽い!」
有り余る筋力を披露した熊谷くんに、周囲で見ていた人々は感嘆しながら拍手を送った。
「──ハハハッ。いつ見てもスゲー筋肉だなぁ、リキオ」
と、そこへ見知らぬ青年が声をかけてきた。
細身で背が高く、スマートな美男子だった。もうイケメンはお腹いっぱいだよ……
特徴は癖っ毛が目立つ長めな灰色の髪と、両の耳たぶに付けた小さなトランプ型のピアス。右耳には赤のダイヤ。左耳には黒のスペード。
あと何故か指先で、ルービックキューブをクルクル回している。
そしてその青年の
一人は笑ってるかの様に細められた糸目が印象的で、髪は黒みがかった短い茶髪。
もう一人は見たところハーフだろうか? 外見は金髪リーゼントと、三人の中で一番ハデだ。
「おう、お前さん方もやっぱ来ておったか。ガッハッハッ、ますます本選が楽しみになってきおったのぉ」
「そんで? そこにぶら下がってるメガネくんが、噂に聞く総角 刹那くん?」
灰髪の青年がボクの名前を呼んだ。ボクとマキちゃんは熊谷くんの腕を離して着地する。
「そうだけど、君は?」
「おっと失礼、自己紹介が先だったな。オレぁ3年の
見かけはチャラそうだけど、気さくなお兄さんって感じだね。
「狼城くんか。こちらこそよろしく」
「んで、こっちのキツネが
「ウハハ。だ~れがキツネやねん」
「こっちのリーゼントが
「ハロー! ミーの事は『ベンジャミン』と呼んでくれ。Nice to meet you !!(よろしく!)」
「豹堂くんにベンジャミンくんだね。よろしく」
熊谷くんも含め、みんな強者のオーラがビンビンでいらっしゃる。
「……もしかして、みんな十傑だったりする?」
「おっ、正解。一目で見抜くたぁ、なかなかやるじゃねぇのよ」
狼城くんはニッと笑って肯定した。
今ここに集まっている十傑は全部で6人か。
残るは
最後の一人は、まだ会った事ないな。一体どんな人なんだろ。
「そこを
「あ、ごめん……余?」
張りのある声が背中にぶつけられた。そちらに顔を向けると、腰まで伸びた
「
「え、えぇーっと?」
この場合「ははぁ~っ」って言って、しゃがむのが正解なのかな?
ボクがリアクションに困っていると、狼城くんが凰くんの肩を抱いた。
「よっ、キヨマサ」
「ムッ、狼城。馴れ馴れしいぞ」
「そーツンケンすんなよ。十傑同士、仲良くやろうぜ?」
(!)
どうやら凰くんこそが最後の十傑らしい。にしても……
(本当にいたんだ、一人称が『余』の人って……)
ボクは謎の感動を覚えた。
(……ううぅ、目の前にセツナさんがいるのに話しかけづらいですわ~~~っ!)
「おやおや~? どうしたんですかワニ嬢さーん」
「きゃ!? あ、貴女はセツ……総角さんと一緒にいた……!」
「どうもー、観月 マキノです☆」
「おどかさないでくださいまし……! それとその呼び方はお止めと言った筈でしてよ!」
「まぁまぁ、そんな事より~」
「な、なんですの?」
「知ってますよ~。セツナくんとお友達になりたいんでしょ?」
「んなっ!? な、なななな、何を!?」
(うひゃー、分かりやすい反応。こんなにイジり甲斐のある人だったなんて)
「手伝ってあげましょうか?」
「え?」
「まずは連絡先の交換から!」
「ちょ!? 引っ張らないでくださらない!?」
「セツナくーん!」
「ん?」
マキちゃんの声だ。あ、鰐塚ちゃんも一緒にいる。
「やぁ鰐塚ちゃん、久しぶりだね」
「あ、は、はい! ごごごご機嫌
「それではごゆっくり~」
(観月さんんんんんっ!? 今ここで二人っきりにされても困りますわぁーっ!!)
「あれ? マキちゃん行っちゃった。どうしたんだろ?」
まぁいいや、あの子がフラフラと
鰐塚ちゃんと向かい合う。相変わらず綺麗な人だ。心なしか初めて会った時の
「っ……!」
(こ、こうなったら……ヤケですわ!)
「あ、あの! セ……総角さん!!」
「なんだい?」
(まずは連絡先の交換から……でしたわね!)
「っ……そ、その……もしよろしければ、わ、ワタクシと──」
鰐塚ちゃんが何かを言いかけた時だった。場内が緩やかに消灯され、直後、奥にあるステージがライトアップされた。
『皆様お待たせ致しました。只今より、デュエルアカデミア・ジャルダン校・選抜デュエル大会──本選トーナメントの抽選会を開催します!』
マイクを持った司会の挨拶に、来賓の人達が拍手で応える。
『それでは早速ですが、本選に出場する選手の皆様は、ステージ上にお集まりください!』
「だってさ。行こ、鰐塚ちゃん」
「え、えぇ……」
(キーッ!! なんて
「……あっちゃー、ワニ嬢ちゃんダメだったかー」
ボク達が登壇すると、砲列していたカメラのフラッシュが待ってましたとばかりに一斉に焚かれた。
まさか自分がテレビに映る日が来るなんて夢にも思わなかった。しかもこれ生中継なんだって。みんな観てるー?
『3日間に
1年生は全滅で、4分の3が3年か。さすが最上級生、レベルが高い。
壇上に続々と本選の出場者が参列する。十傑が全員来ているなら、
(……! ようやくお出ましか……)
その二人が登場した途端、会場が
片や紫色の髪と瞳に褐色の肌が特徴的な、厳つい雰囲気だけど端整な顔立ちの美男子──
「ケッ!」
片や黒髪で、氷の様に冷たい
「…………」
学園のツートップが注目を一気に独占し、この場の空気は彼らに持ってかれた。
(
これでついに十傑のメンバー全員が一堂に会した。
野生児にお嬢様にオネエにマッチョに色男に関西弁にハーフに王族にヤンキーに……学園最凶。
キャラの濃い
『では2年生から順に、一人ずつ紹介していきましょう! まず、
(うわ、いきなり来た!?)
気の利いたパフォーマンスとかはできないので、とりあえず一歩前に出て笑顔で手を振っておいた。
『
「わ、私そんな風に見られてたの?」
『可愛い見た目とは裏腹に
「イエーイッ!」
どこか気恥ずかしそうなアマネと、満面の笑顔を咲かせてダブルピースするマキちゃん。
『2年生最後の一人は次期十傑候補! 自称・東海の人喰い
「シャアッ!!」
モヒカンヘアーで鼻ピアスを付けた、奇抜な風貌の男が声を上げた。
「どいつもこいつもオレサマの牙で食い散らかしてやるぜ!」
そう言い放ち、鮫牙くんはニヤリと笑うと、鮫の牙の様に鋭く
今さらだけど十傑も次期十傑候補も、本当イロモノ揃いだよね。
『続いて3年生の選手の紹介です! 一人目は今年で二年連続の本選出場! IQ180の頭脳を誇る秀才
「フッ」
3年生で最初に紹介を受けたのは、掛けているメガネを指先でクイッと押し上げたインテリ風の青年。髪は深緑色で、前髪をセンター分けしている。
『二人目は3年目の大会出場にして、今年ついに本選進出! 不屈のチャレンジ・スピリッツ──
「
茶髪を後ろで結んだ精悍な顔つきの好青年が声を張る。横目でも、その瞳には熱い情熱が秘められているのが感じ取れた。
『さぁここからはアカデミアが認めた十人の強豪──〝十傑〟の紹介です!』
途端に賑わう場内。ボク達、あからさまに前座扱いされてるね。
『野生の勘で
「ニハハハーッ!」
『十傑の紅一点! 気高き絶世の美女──鰐塚 ミサキ!!』
(これが終わったらすぐにセツナさんのところに行きますわよ!)
「あら、紅
「貴方はニューハーフでしょう?」
『蝶のように舞い、蜂のように刺す! 戦場に咲く一輪の華──蝶ヶ咲 妖華!!』
「チュ♡」
『
「
身長2メートル越えの巨人が吠える。存在感は抜群だ。
『未だ底を見せない笑顔の勝負師──豹堂 武蔵!!』
「ウハッ、なんや照れるわ~。まっ、よろしゅう」
『海外からの刺客! 犬居 ベンジャミン!!』
「地獄で会おうぜ、ベイベー!」
『伝統ある
「うむ」
『去年の選抜デュエル大会、第3位! 通称・トリックスター! 狼城 暁!!』
「どーも」
3位!? 驚いた……まさかカナメや九頭竜くんに次いで、トップ
『そして……去年、一昨年と2年連続、準優勝。学園最強の二つ名で恐れられた天才
九頭竜くんは不機嫌そうにしかめっ面をしているだけで、何の反応も示さない。
『最後は優勝候補筆頭! 選抜デュエル大会2年連続優勝! 今年は前代未聞の3年連続ノーダメージでの予選突破を達成! いよいよ今年、大会3連覇に〝王手〟をかけた、ジャルダンの生ける伝説と呼ばれる無敗の
ちょっとちょっと。カナメだけ無駄に持ち上げ過ぎじゃない?
ほら、他のみんな何かピリピリしてるよ。九頭竜くんなんて殺気立ってるし。おっかないおっかない。
にしても、今年優勝したら3連覇って凄いな。そりゃ世間の注目度も期待値も高いわけだ。
『それでは、
カナメがマイクスタンドの前に立つ。はてさて何を言い出すやら。
『……挨拶か……ちょうどいい機会だ、ひとつだけ言わせてもらおう。俺にとってこの大会は──ただの暇潰しに過ぎない』
「!!」
わぁお、いきなり爆弾発言。華やかなパーティー会場は、一瞬にして殺伐とした空気に包まれた。
『何故なら俺に勝てる
……!! いやぁ、言うねぇ……諸君の健闘を祈る、なんて、大会に参加する側のセリフじゃないでしょ。大口を叩かせたら右に出る者はいないね。
大胆不敵な物言いに圧倒されたのか拍手は起こらなかった。カナメの挨拶という名の挑発は、他の選手を
「……ニハハ。オイラ達も舐められたもんだね」
「気に入りませんわ……!」
「あらあら、言ってくれるじゃない」
「ガッハッハッ! 上等上等っ!」
「ずいぶん見くびられたもんやな~?」
「Oh~!! こういうの日本語で『ケンカ売ってる』って言うのかい?」
「
「ヒュウ♪」
「くだらねぇ……鷹山を倒すのはこの俺だ!」
十傑を始め、みんなカナメに対し憤りや敵意を露にしている。学園きっての一大イベントである選抜デュエル大会を暇潰し呼ばわりしたとなれば、反感を買うのは当然と言えば当然だ。誰もが特別な想いを
『あ……ありがとうございました……そ、それではこれより、トーナメントの組み合わせを決定したいと思います!』
司会者さんは気を取り直して、十枚とちょっとくらいのカードの束を取り出した。
『今から私がここにあるカードをシャッフルして1枚ずつ横に並べます。カードの枚数は16枚。選手の皆様には、この中から好きなカードを1枚だけ引いて頂きます!』
……なるほどね。
『カードには1から16まで、番号が描かれています。その番号によって組み合わせが決まります!』
要するにくじ引きか。誰と当たるかは自分のドロー運で決まると。
でもどうせなら、ブルーアイズのビンゴマシーンとか使えば面白いのに。
『では名前を呼ばれた選手から順に一人ずつカードを引いてください。まずは鷹山選手!』
カナメからスタートして、一人ずつテーブルの上に並んだカードを引いていく。次はボクの番だ。
「……んじゃ、ボクはこれ」
選んだのは、たまたま手近にあった1枚。番号は……
(10番……右のブロック、5試合目か)
もしカナメが『9番』を引いていれば、緒戦で当たれる。さぁどうなる……?
『──それでは皆様! カードを表にしてください!』
一斉にカードをオープンする。結果は──この通り。
【選抜デュエル大会・本選──トーナメント1回戦】
第1試合 鷹山 要 vs 大間 三郎太
第2試合 鮫牙 丈 vs 豹堂 武蔵
第3試合 九頭竜 響吾 vs 壬生 和正
第4試合 蝶ヶ咲 妖華 vs 虎丸 喜助
第5試合 熊谷 力雄 vs 総角 刹那
第6試合 黒雲 雨音 vs 犬居 ベンジャミン
第7試合 凰 聖将 vs 観月 マキノ
第8試合 狼城 暁 vs 鰐塚 ミサキ
『トーナメント1回戦の組み合わせが決定いたしました!!』
(えぇ~~~~~っ!?)
ボクは膝から崩れ落ちたい気分になった。カメラの前なので、どうにか
カナメ……よりにもよって反対側のブロックって……じゃあカナメと
やっとの思いで
(まぁでも……いっか)
同じ右ブロックに、アマネとマキちゃんもいるからね。
……ん? これ、カナメと九頭竜くんは左のブロックという事は……
「……フッ、なるほどな。九頭竜、どうやらお前との学園での最後の決戦は……準決勝に決まった様だ」
「ハッ! どこだろうと関係ねぇ。今度こそテメェを撃ち殺してやる!!」
「……おうおう、お前ら、俺達なんて眼中にねぇって言い草だな?」
二人の会話に割って入ったのは、大間くんだ。隣では壬生くんがメガネを上げながら立っている。
「鷹山! お前の最初の相手は俺だって事を忘れんな? あんまし余裕ぶっこいてっと、痛い目に遭うぜ!?」
「貴様もだ九頭竜。この私の頭脳を甘く見るなよ?」
おー、どこもかしこも本選は明日からなのに、早くも火花を散らしてるよ。
「ガッハッハッハッ!! 早速お前さんと
「もちろん。楽しもうね、熊谷くん!」
(私の相手は十傑の犬居か……望むところよ!)
「ユーみたいなステキなレディと闘えるなんて、ミーはシアワセだね!」
「ウハ~、鷹山の旦那と同じブロックかいな。こりゃ参るわ~」
「シャアッ!! 〝最強〟の座も〝最凶〟の座も、全部オレサマが頂くぜぇ!!」
(せせせ、セツナさんと同じブロックですわぁ~!! カメラが無かったら飛び上がっていたかも……!)
「ふーん? ま、いーんじゃね?」
「フフ……キスケちゃんなら相手にとって不足なし……ネ♡」
「ヨウ姉が相手かー! 負けないかんねー!」
「余の緒戦は小娘か」
「お手柔らかに~♪」
もうこうなったら本気で優勝するつもりで挑むしかないね。この際、行けるところまで行ってやるさ!
ついに十傑が出揃いました。全員クセが強い(白目)
何名か名前で使用デッキバレそう。
キャラが多いと書き分けが本当に大変ですな(汗)
一応セリフだけでも、どのキャラが喋ってるか分かる様に普段から気をつけて書いていますが、もし『このセリフ誰や!!』という箇所がありましたら遠慮なくご指摘ください。
P.S.令和でもどうぞよろしくお願いします!