遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
筋肉は全てを解決してくれる(至言)
選抜デュエル大会・本選──『アリーナ・カップ』の1日目。
午前中の4試合が全て終了し、残すは午後の4試合のみとなった。
今はその合間のランチタイムという事で、ボクら生徒は平時と変わらず、学園内の大食堂に集まって昼食を
午後の最初の試合──第5試合目がボクの出番だ。それに備えて、午前中の
アマネ、マキちゃん、ルイくんの3人にボクも同席して、お馴染みの4人組で食卓を囲み、談笑を交えつつ食事を楽しんでいた。
ケイくんは中等部の生徒なので、中等部用の食堂に行ってる為、不在。
『勝つ』という願掛けも兼ねて注文したカツカレーのトンカツを頬張っていると、アマネの
「アマネどうしたの? もしかして食欲ない?」
「あ、ううん。そういうわけじゃないんだけど……もうすぐ試合だって思うとちょっとね……」
「アマネたんでも緊張するんだね~、珍しい~。あたしがセツナくんに
「絶対ハグだけで済まない気がするから遠慮するわ」
両手の指をワキワキと動かしながらジリジリ迫り来るマキちゃんをいなして、アマネはトマトで煮込んだ
「……セツナもマキちゃんも、そんな呑気にしてて良いの?」
「「 ? 」」
「私達全員、これから『
アマネの最もな意見に、ボクは
「うーん、それは言えてるけど、ご飯の時くらいはねぇ?」
「そうそう、アマネたんも今から気ぃ張ってたら本番の前に疲れちゃうよ~?」
「……まぁいいわ」
アマネの好物はトマトと血の滴る肉類で、ニンニクが苦手らしい。吸血鬼かな?
「ごちそうさま。私デッキの調整してくるから」
「あ、うん。また後でね」
「行ってら~」
席を立ち、トレーを持って食器の返却に向かうアマネを見送ると、ルイくんが呟いた。
「なんだか……ピリピリしてましたね、アマネさん」
「アマネたんは去年の選抜試験、十傑に負けて予選落ちしてるからね~。本気でプロを目指してるあの子にとっては、越えなきゃいけない壁にぶつかってるって感じかな~?」
「そうだったんですか……」
「まっ、そういうあたしはその1個前の試合で、アマネたんに負けたんだけどさ」
「えっ、そうなの!?」
「うん。だからあたしにとって今年の選抜試験は、アマネたんにリベンジするチャンスでもあるんだよね」
ボクがカナメにリベンジするのと同じ理由か。
「あ、もちろんセツナくんとも決着つけるつもりだから覚悟しといてね~?」
「望むところだよ。ボクもマキちゃんやアマネと闘いたいし、今日はみんな絶対に勝とうね!」
「てわけで、あたしも
「あーっ!? ボクのトンカツなのにーっ!」
「ほら、あたしのエビフライあげるから
「
そんなこんなで
──いよいよアリーナ・カップの後半戦が始まろうとしていた。
「
「はーい」
スタッフさんに呼ばれたのでソファーから立ち上がる。
「セツナくんがんばー!」
「負けるんじゃないわよ」
アマネとマキちゃんのエールにVサインで答えて、ボクは控え室を出る。
「行ってくるね!」
「……ワニ嬢ちゃ~ん、声かけとかなくて良かったんですかぁ~?」
「よよよ余計なお世話ですわっ!」
『諸君ッ!! しっかりと昼飯は済ませてきたかーっ!? 間もなく選抜デュエル大会・本選! アリーナ・カップ1日目の後半戦を始めるぞぉーッ!!』
「「「「 おおおおおおおおおおっ!!!!!! 」」」」
実況を担当するマック伊東さんのマイクを介した大声と、お腹を満たして元気いっぱいになったのだろう観客の皆さんの前半に劣らない大歓声が、入場口で合図を待つボクの鼓膜を叩く。
(……さすがに緊張してきたな……)
心臓が強く脈打つ。ボクは深呼吸すると左腕にデュエルディスクを取り付け、
『それでは第5試合の出場者の紹介と行こう! みんな拍手で迎えてくれっ! まずは今年の
「たはは……そんな大層なもんじゃないって」
スモークに焚かれた道を落ち着いた足取りで歩き、大観衆の前に姿を見せた途端──爆竹みたいにけたたましい拍手の音と、より熱量を増した歓声がボクを出迎えた。
「っ……!」
(すごっ……こんな中で
当たり前だけど、のしかかってくる
固唾を飲んで、胸に手を当てて、出来る限り気持ちを乱さない様に
セツナが入場し、
「…………」
そんな彼に、一人の生徒が歩み寄り声をかけた。
「アンタが他の奴の試合を観るなんて珍しーじゃねぇのよ?」
「……
髪が灰色の
名は、
カナメと同じく、ここ、デュエルアカデミア・ジャルダン校が、トップクラスの実力を有する
「そんなにあのメガネのルーキーちゃんが気になんの?」
「あぁ……まぁな。あの男は面白い
「ふ~ん? アンタがそこまで注目するたぁね……んじゃ、オレもお手並み拝見させてもらおっかな?」
そしてセツナに注目しているのは彼らだけではない。
同じ頃、メディア関係者専用の撮影フロアでは──
「来た来た! 来ましたよ
「うるせぇぞ
「だって私、総角くんがタイプなんですよ~! めちゃくちゃ可愛くないですか!?」
「男に男が可愛いかどうかなんて分かるか。……つうかお前、朝校門通った時いただろ、そいつ」
「えっ、ウソッ!? どこに!? 全然気づかなかった悔し~~~っ!」
「お前な……」
(だがまぁ確かに……あの〝学園最強〟・
「私のジャーナリストとしての勘が告げています。総角 刹那くん……彼は要チェックです!」
「新人が何いっちょ前に言ってんだかな」
『そしてその対戦相手はぁーっ! 人呼んで剛力無双!! どんな時でも
向こう側に見える入場口を、噴出したスモークが覆い隠す。その煙幕から、スキンヘッドの大男が抜け出てきた。
ゴツい身体つきで
1つ気になるのは……昨日、トーナメント抽選会で初めて会った時はタンクトップ一丁だったのに、今は普通に制服を着ている事だ。体格のせいか、だいぶピッチピチだけど。
「ガッハッハッ! お前さんと闘うのを楽しみに待っとったわい! よろしくな
「セツナで良いよ。こちらこそよろしくね、熊谷くん」
熊谷くんと握手。ボクのより一回り大きい手に握り潰されるんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、一瞬『ミシッ』て言った程度で骨は無事だった。ちょっと痛かった。
「ふい~~~っ。全く、この制服っちゅうもんはどうにも着苦しいわい」
「?」
おもむろに息を大きく吸った熊谷くん。すると次の瞬間──
「ほおぉぉぉぉぁぁぁああああ"あ"あ"あ"っ"!!!!!!」
「!?!?!?」
やがて制服は
ラリアットしたら人の首なんて一発でへし折れるんじゃないかってぐらい膨張した太すぎる腕や、バッキバキのシックスパックに割れた腹筋と分厚い胸板を、惜し
(き、筋力で服を破くって……どこの暗殺拳法の使い手!?)
『きッ、強烈なデモンストレーションだッッ!! これ見よがしの逆三角形ッッ!! 強さとは力だッッ! 強さとは筋肉だと言わんばかりの!! 剛力無双……否、もはや怪力無双! こんな怪力は見たことがないッ!!』
これがしたくてわざわざ制服を着てきたのか……こんな威嚇の仕方されたら野生の
「さぁ~て……おっ
「あはは……お手柔らかにね」
デュエルディスクの
『試合開始前から早くもプレッシャーをかける熊谷選手! 十傑の一角として、ニューフェイスに年季の差を見せつけるのか!? それともスーパールーキー総角選手が古豪に引導を渡すのか!? 注目の一戦、刮目して見よ! イ~~~ッツ! タイム・トゥ──』
「「
セツナ
「どれ、先攻は後輩に譲ってやるとするかの。どっからでもかかってきんしゃい!」
「それじゃあ先輩の厚意に甘えさせてもらおうかな、ボクのターン!」
十傑と闘うのは久々だ。会場の熱に浮かされてるのか不思議とテンションが上がるのを感じる。
「最初から飛ばしていくよ! ボクは
【暗黒の
「さらに【ポケ・ドラ】を召喚!」
【ポケ・ドラ】 攻撃力 200
「この子が召喚に成功した時、デッキから【ポケ・ドラ】を手札に加える! そして【ドラゴニック・タクティクス】発動! 2体のドラゴンをリリースして──デッキから【ラビードラゴン】を特殊召喚!!」
【ラビードラゴン】 攻撃力 2950
『総角選手、
「今日もよろしく頼むよ相棒。ボクはカードを1枚伏せて、ターン
「ほほぉ、やりおるわ。さすが九頭竜の奴を倒しただけはあるのぉ。ワシのターンじゃ、ドロー!」
こっちは準備万端。さて、熊谷くんはどんな
「ワシは【モンク・ファイター】を召喚じゃい!」
【モンク・ファイター】 攻撃力 1300
「さらに【モンク・ファイター】をリリースし、【マスターモンク】を特殊召喚じゃあっ!!」
【マスターモンク】 攻撃力 1900
「手札から魔法カード・【一騎加勢】を発動!」
【マスターモンク】 攻撃力 1900 + 1500 = 3400
(いやそんな事なかった!?)
「まだじゃ! ワシは【マスターモンク】に、【伝説の
黒帯を腰に巻いた老練の格闘家が、両足で【ラビードラゴン】に飛び蹴りを食らわせて粉砕した。
「うぐっ……!」
セツナ LP 4000 → 3550
「ガッハッハッ!!
「力こそパワーて……同じじゃん」
「ここで【マスターモンク】に装備した【伝説の黒帯】の効果! 装備モンスターが戦闘で破壊した相手モンスターの、守備力分のダメージを与える!」
「!? うわぁっ!」
【ラビードラゴン】を撃退したあと、【マスターモンク】はそのままボクの前に着地して、強烈なキックでボクを蹴り飛ばした。蹴られるのはこれで2回目だ、暴力反対!
セツナ LP 3550 → 650
「じゃがこれで終わりではないぞぉ! 【マスターモンク】は一度のバトルで2回攻撃が出来るんじゃ!」
「ウソぉ! そんなのアリ!?」
「あっけないもんじゃったのぉ。トドメじゃ【マスターモンク】! セツナに
『この攻撃が決まれば終わりだぁーッ!!』
「っ……
ゲート状のバリアが出現して、【マスターモンク】の追撃を
「ほぉ、防ぎおったか」
「ふう、危ない危ない……【カウンター・ゲート】はダイレクトアタックを無効にした後、デッキから1枚ドローして、それがモンスターだったら攻撃表示で通常召喚できる。ドロー!」
(……おっ)
【命削りの宝札】を引いた。モンスターではなかったけど十分ありがたいカードだ。
「……何も出さんところを見ると、召喚できるモンスターは引けなかった様じゃな。ワシはカードを2枚伏せてターンエンドじゃ! 【マスターモンク】の攻撃力は元に戻る」
【マスターモンク】 攻撃力 3400 → 1900
「ボクのターン!」
にしても厄介なモンスターだな……2回も攻撃できる上に【伝説の黒帯】の効果で守備モンスターを破壊してもダメージを与えてくる……何とかして
(今ドローしたのは【竜の転生】……これを使えば!)
「ボクは【ポケ・ドラ】を召喚!」
【ポケ・ドラ】 攻撃力 200
「その効果でデッキから3枚目の【ポケ・ドラ】を手札に──」
「させぬわっ! カウンター
「っ!?」
【ポケ・ドラ】が破壊されサーチ効果も封じられた。ボクが2体目を召喚するのは読まれてたってわけか……!
「何をするつもりじゃったか知らんが、ワシに小細工は通用せんぞ」
「みたいだね……ならボクはカードを2枚伏せて、
一気に3枚の手札を補充。引き換えに相手は発動ターン中ダメージを受けず、自分は特殊召喚ができなくなるから、ボクはこのターンもうモンスターを出せないけれど、問題はない!
「ボクは、もう2枚カードを伏せてターンエンド! このエンドフェイズに【命削りの宝札】の効果で、ボクは手札を全て捨てる。と言っても、1枚しかないけどね」
『これで総角選手の場には4枚の伏せカード! モンスターはいないが迂闊には踏み込めない布陣となった! さぁどうする熊谷選手!』
「ふん、面白い。ワシのターン、ドロー! バトルじゃ! 【マスターモンク】でダイレクトアタック!」
「
「ワシが伏せカードなんぞにビビると思ったかぁ! 今度こそ
「いいや、まだだよ! 速攻魔法・【銀龍の
【ラビードラゴン】 攻撃力 2950
「なんじゃとっ!? おのれ……バトルは中止じゃ! ワシはこのままターンエンド!」
(よし、今がチャンスだ!)
「ボクのターン、ドロー! バトル! 【ラビードラゴン】で【マスターモンク】を攻撃! 『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」
「やらせはせん! 永続
「!」
「【マスターモンク】は戦闘では破壊されず、相手モンスターの効果も受けん!」
【ラビードラゴン】がさっきやられたお返しと言わんばかりに全力で
「そう来たか……でもダメージは受けてもらうよ!」
「チィッ!」
熊谷 LP 4000 → 2950
本当はこのターンで畳み掛けたかったけど……しょうがない!
「
【トライホーン・ドラゴン】 攻撃力 2850
「ぬっ! そうか……【命削りの宝札】で捨てたのはこやつじゃったか!」
「大正解。【トライホーン】、【マスターモンク】を攻撃だ! 『イービル・ラセレーション』!!」
悪魔の竜が鋭い爪を振るい、三日月の形状に
「ぐぬうぅぅぅっ!!」
熊谷 LP 2950 → 2000
「ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
『ライフ差はまだ熊谷選手に
(どうかな……十傑がこのまま黙ってるとは思えない……!)
「……クックックッ……ガッハッハッハッ!! 面白くなってきたわっ! それでこそワシも──闘い
──! 目付きが変わった……やっぱり本番はここからか!
「行くぞぉ! ドゥオロォーッ!!」
「!」
「──手札から魔法発動! 【ゴッドハンド・スマッシュ】! バトル! 【マスターモンク】で【トライホーン・ドラゴン】を攻撃ィ!」
「攻撃力はこっちの方が高いのに攻撃!? っ……迎撃だ【トライホーン】!」
- イービル・ラセレーション!! -
「
熊谷 LP 2000 → 1050
「【孤高の格闘家】の効果により【マスターモンク】は破壊されん! そして! ここで発動した【ゴッドハンド・スマッシュ】の効果! このターン、【マスターモンク】とバトルしたモンスターを、ダメージステップ終了と同時に破壊するッ!!」
「なっ──!?」
【マスターモンク】は『イービル・ラセレーション』を力ずくで突破し──
「叩き込めっ! 『ゴッドハンド・スマァァァッシュッ』!!」
そのまま【トライホーン】との間合いを詰め、渾身の正拳を炸裂させた。
「【トライホーン】!?」
「さぁ、【マスターモンク】には二度目の攻撃が残っとるぞ! こいつを
「うっ……」
あの~、おじいちゃん……殺気を放ちながら拳をボキボキ鳴らすの
「観念せぇぇぇっ!! 『マスター・パンチ』!!」
「──ボクはカナメと闘うんだ……こんなところで負けられない!
「なぬっ!? なんじゃあそのヘンテコなカードは!?」
「相手に1枚から3枚まで、任意の枚数ドローさせて、1枚につき2000ポイント回復するカードさ。さぁ好きなだけ引きなよ熊谷くん!」
「
(ですよねー!)
セツナ LP 650 → 2650
ライフを回復した直後に【マスターモンク】がボクを殴りつける。
「ぐうっ!!」
セツナ LP 2650 → 750
「全くしぶといのぉ。ワシはカードを1枚伏せてターンエンドじゃ!」
(礼を言わせてもらうぞいセツナよ……お前さんのおかげで良いカードを引けたわい!)
「ボクのターン……」
今更ながら、十傑って強いな、やっぱり。いよいよ崖っぷちに追い詰められた……
手札
──このターンが勝負どころだ!
「行くよ熊谷くん……」
ボクは──メガネを外して、カードをドローする構えに入る。
「──!?」
(な、なんじゃ……! この、刺す様な気迫は……!?)
「ドローッ!!」
……この魔法カードは……!
すっっっごく良いタイミングで来てくれたねッ!!
「手札から
「!」
「手札のレベル8モンスター・【トライホーン】を再び墓地に送って、カードを2枚ドローする!」
実を言うと【トレード・イン】は初手から握っていて、【命削りの宝札】を発動する前に【竜の転生】と一緒に伏せておいたんだ。やっと使えたよ。
「……ボクは【暗黒の
【暗黒の
「熊谷くん。このドラゴンが君を倒す!」
「ほおぉっ! 抜かしおるっ! やれるもんならやってみぃ!」
「勝負だ! まずは手札から速攻魔法・【
【マスターモンク】 攻撃力 1900 - 1000 = 900
「小僧ッ……!」
「さらに装備カード・【進化する人類】を【暗黒の
【暗黒の
「これで攻撃が通ればボクの勝ちだ。バトル! 【暗黒の
「甘いわあっ!! 言った筈じゃっ! パワーでワシに勝つのは百年早いとっ!!
「!!」
「手札を1枚捨て、このターンのみ、モンスター1体の攻撃力を、1500ポイントアップする! ワシは手札から2枚目の【マスターモンク】を墓地に捨て、フィールドの【マスターモンク】をパワーアーップ!!」
【マスターモンク】 攻撃力 900 + 1500 = 2400
『これで両者の攻撃力は互角だぁーッ!! しかし……!』
「そうじゃ! 永続
「……!」
「そうなれば【マスターモンク】に装備した【伝説の黒帯】の効果が発動し、お前さんのライフは尽きる! この
弱体化していた【マスターモンク】がパワーを増幅させ、
それを見てボクは……
──
「君ならそう来ると思ったよ!」
「なぬっ!?」
「ボクはこの瞬間を待ってたんだ!
「も、【燃える闘志】じゃとっ!?」
「相手フィールドに元々の数値より攻撃力が上がってるモンスターがいる場合、装備モンスターの
【暗黒の
【暗黒の
「よ、4800じゃとぉぉおっ!?」
「チェックメイトだッ!!」
勢力を増した炎が【マスターモンク】の拳圧に
「ぬあああぁぁぁぁあっ!!」
熊谷 LP 0
『決まったァァーッ!! ウィナー・総角 刹那ッ!! 準々決勝、進出ぅーッ!!』
「ふう~……勝ったぁ」
勝てた喜びを噛み締めると同時に、安堵のため息が漏れる。
もし熊谷くんが【ライジング・エナジー】じゃなくて、普通に攻撃を妨害する
きっと熊谷くんの事だからコンバットトリックを狙ってくるだろうと踏んだのが的中して本当に良かった。
「こ、このワシが力負けするとは……っ。……フッ……ガァーッハッハッハッ!! 参った! ワシの完敗じゃ!」
「対戦ありがとう、熊谷くん。楽しかったよ」
「おうっ! 最高の
熊谷くんともう一度、固い握手を……交わすのはちょっと怖かったので、なるべく力を抜いてもらう様お願いしてから手を握り合った。なのにまたボクの右手が
何はともあれ、これで決勝まで一歩前進だ!
「へぇ~、マジでリキオに勝っちゃったよ。やんなぁ、あいつ」
上階にてセツナの試合をカナメと共に観戦していた狼城が、感心の
「それにアンタの言ってた通り、おもしれー
「……まだだな」
「ん? なんか言ったか? ……って、おーい。んだよ、もう帰っちまうのか?」
「早瀬先輩! 総角くん勝ちましたよ~!」
「だからはしゃぐな、みっともねぇ。見れば分かるっての」
(まさかこれほどの奴がいたとはな……なんで今まで無名だったんだ?)
「……こいつは新井の言う通り、要チェックかもな」
「セツナくん勝ったみたいだね~」
「そうね。まぁあいつが負けるなんて思ってなかったけど」
(次は私の番……勝てば明日、セツナと闘える……)
「……アマネたん?」
(去年の二の舞には絶対にならないわ……例え、相手が十傑だろうと──必ず勝ってみせる!)
当初の予定では……
作者「ラストターンは【ライジング・エナジー】に【あまのじゃくの呪い】をチェーンさせて逆転させよう」
遊戯王wiki「【あまのじゃく】はダメステじゃ発動できんで」
作者「ファ!?」
投稿する直前で知りました。危なかった……修正がホント大変でした。
結果的には熊谷のパワーを、セツナがさらに上回る展開にできたので、【燃える闘志】に変更して正解でした。
やはり遊戯王は一見複雑そうだけど複雑だぜ!