遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 だが俺はレアだぜ☆( `・ω・´ )



TURN - 4 Break of Break

 

 『昼休み』

 

 それは、日々勉学に励むボク達『アカデミア(せい)』にとって、学園で過ごす日程の中でも最も楽しみな時間だ。

 ボクの場合は授業中に爆睡を決め込んだりするから言うほど真面目に受けてないけど。

 

 この解放された1時間を利用して、生徒達は午前中までの授業で消費した精神的・肉体的ライフポイントを回復するべく、食堂に行って美味(お い)しい料理を注文したり、

 使用可能な場所(スペース)を見つけては決闘(デュエル)をしたり、

 学園の敷地内で自由気ままに遊んだり、

 なんだかんだで気がついたら決闘(デュエル)していたり、

 クラスメートと室内で仲良く談笑したり、

 

 他には……決闘(デュエル)したり決闘(デュエル)したり、やっぱり決闘(デュエル)したりして、

 みんな思い思いに束の間の休憩時間を満喫する。

 そうして鋭気を養って、午後からの授業(ラストスパート)に臨むのだ。

 

 そして、その貴重な自由時間は、誰にも邪魔されるべきではないんだ。例え【おジャマトリオ】であろうと、人間の休息を(おびや)かす事は大変よろしくない。

 

 つまり何が言いたいかというと……

 

 

 

「……ボク今、食事中だからさ。デュエルの申し出は放課後にしない?」

 

 

 

 食堂で席に座り、大好物のカレーをスプーンで口に運ぶ姿勢のまま、ボクは自分の横に立ち並ぶ3人の男子生徒を見上げて、そう提案した。

 

 

 

「ふざけんじゃねえ。マグレで九頭竜さんに勝てたからって調子に乗ってんじゃねーぞ!このメガネ(ざる)!」

 

「そーそー。あんなもんマグレっしょ」

 

「だから俺達がテメェを、ぶちのめしに来てやったんだよ!」

 

 

 

 モブ1号、2号、3号。ボクは彼等(かれら)を、そう呼んでいる。

 ボクが学園に転入して、最初に決闘(デュエル)した在校生・金沢(かなざわ)くんと一緒に居た3人組だ。

 

 3号が言った九頭竜(くずりゅう)くんとは、この『デュエルアカデミア・ジャルダン校』に()いて、生徒の決闘者(デュエリスト)としての実力を5段階ランクに序列した階級制度(カ ー ス ト)の最上位、『ランク・A』に位置する天才デュエリストの事で、高等部3年に在籍している有名人だ。

 

 実は昨日、ボクは紆余曲折あって、その九頭竜くんと決闘(デュエル)をして運よく勝ってしまった。

 

 それにより、どうやら転入2日目にして、ボクの存在は学園中に広く知れ渡ってしまったらしい(アマネ談)。

 どうも朝から周りの視線がおかしい気がしたけど、成程(なるほど)そういう事か。

 益々(ますます)もって、よろしくない。ボクの平穏が現在進行形で乱されてきてる。

 

 はてさて、ひとまずはこの現状を、どう()り過ごしたら良いものか。

 今日の献立(こんだて)が『カツカレー』だと聞いて、昼食(ランチ)タイムの訪れを今か今かとソワソワ待望して、やっと食事にありつけたのに。

 まさか一口(ひとくち)目を頂く寸前で、よりにもよって、このモブ達とエンカウントするなんて…いよいよ本気で天を呪いたくなる。せめて完食した後に来てほしい。

 

 

 

(こうなったら……よし!ボクは特殊能力・【現実逃避】を発動!)

 

「あー、このカレールーの風味がたまらなく食欲をそそる…」

 

「聞けぇ!!」

 

「無視すんなゴラァァァッ!!」

 

(うん、ダメでした)

 

 

 

 【現実逃避】の効果はモブ3人組の【暴君の威圧】によって無効化されました。食事中はお静かに!

 

 

 

「相手してあげれば?セツナ」

 

「この声はアマネ」

 

 

 

 ボクの向かいの席に、赤色のメッシュが入った黒髪を揺らす、赤目の女の子が着席して、ボクに微笑(ほほえ)みかけた。

 

 黒雲(くろくも) 雨音(アマネ)。ボクと同じ高等部2年生の生徒で、最強(ランク・A)の次席、ランク・Bを叙位(じょい)している美少女。

 新顔のボクに学園の事を色々と教えてくれて、九頭竜くんとの決闘(デュエル)で追い込まれたボクを激励(げきれい)してくれた。面倒見が良くて(みんな)に親しまれてる、クラスの人気者。

 

 

 

「セツナなら、そんな奴ら楽勝でしょ?」

 

「楽勝って…買い被り過ぎじゃない?」

 

「モタモタしてたら、せっかくのカレーが冷めちゃうよ?」

 

「うぐっ…!……OK、分かった。そのデュエル受けるよ。モブ1号、2号、3号くん」

 

「モブッ…!」

 

「2ご…!」

 

「3ッ…!?」

 

 

 

 3人組はボクが付けた名前が気に入らないのか顔を(しか)めて、ワナワナと身体を震わせた。

 

 ここで更に、ボクは火に油を注ぐ。

 

 

 

「でも時間が無いから……3人まとめて、かかってきて!」

 

「「「………ッ!上等だコラー!!!」」」

 

 

 

 完全に激怒した3人組と共に食堂を(あと)にした。カツカレーは一時的に保管してもらいました。

 

 あーっ、お腹すいたなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけで。ボク達が決闘(デュエル)舞台(フィールド)に選んだ場所は、食堂の近くにある『多目的ホール』。ここなら決闘(デュエル)が終わったら、すぐに戻れるし、広さも申し分ない。

 

 付き添いで来てくれたアマネが壁に背を預けて腕を組みながら、ボクに話しかけた。

 

 

 

「セツナの方から『3面打ち』を言い出すなんてね。ちょっと意外かも」

 

「カツカレーの風味が()かってるからね」

 

(なに)その執念…」

 

 

 

 ホワイトタイプの決闘盤(デュエルディスク)を左腕に装着して、デッキを差し込み、起動させる。

 ようやく修理が完了して、帰ってきました我が愛機!

 朝イチで引き取りに伺ったら、ディスクが細部まで丹念に研磨されていて、新品と見違えるくらいピカピカになって戻ってきた。修理工(メカニック)のおじさんに心から感謝!

 

 

 

「野郎…さっきから余裕かましやがって…!」

 

 

 

 そう声を荒げるのはモブ3号。3人組の中で一番ガタイの良い大男(おおおとこ)で、名前は厚村(アツムラ)くんと言うらしい。

 

 

 

「つーか舐めてね?」

 

 

 

 今時のチャラ男っぽい軽薄な喋り方をするのがモブ2号。特徴は赤茶色の髪と、吊り目の三白眼。名前は平林(ひらばやし)くん。

 

 

 

「なぁ~に。こっちは3人がかりだ、万に一つも負けはねぇ!」

 

 

 

 言いながら、デュエルディスクを構えたのはモブ1号。サングラスを掛けており、髪色はアッシュグレー。名前は小森(こもり)くんだそうだ。

 

 

 

「3人とも準備は良い?始めるよ」

 

 

 

「「「「決闘(デュエル)!!」」」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 厚村(アツムラ) LP(ライフポイント) 4000

 

 小森(こもり) LP(ライフポイント) 4000

 

 平林(ひらばやし) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「ボクの先攻!」

 

 

 

 ターンは『ボク → 厚村くん → 小森くん → 平林くん』の順で一周する流れとなった。よって最初にプレイを開始するのはボク。なお、全プレイヤーのライフポイントは『4000』。

 

 

 

「まずはカードを3枚セット!そして、手札から【グレイ・ウィング】を召喚!」

 

 

 

【グレイ・ウィング】 攻撃力 1300

 

 

 

「バトルロイヤルルールにより、最初のターンは全員、攻撃できない。ボクはこれで、ターン終了(エンド)!」

 

 

 

 ボクが『ターン終了(しゅうりょう)』を宣言した事で、次は厚村くんにターンが回る。

 

 

 

「俺のターン!【ジャイアント・オーク】を召喚!!」

 

 

 

【ジャイアント・オーク】 攻撃力 2200

 

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

(俺の伏せたカードは【落とし穴】!野郎が攻撃力1000以上のモンスターを召喚したら、その瞬間にドカン!っつーわけだ!)

 

 

 

 厚村くんのターンが終わった。次の手番は小森くん。

 

 

 

「俺のターン!【スカルナイト】を召喚!!」

 

 

 

【スカルナイト】 攻撃力 1000

 

 

 

「1枚カードを伏せて、ターンエンドだ!」

 

(セットしたのは【炸裂装甲(リアクティブアーマー)】!攻撃してきた相手モンスターを破壊する(トラップ)カードだ!)

 

 

 

 最後は平林くんのターン。

 

 

 

「俺のターン!【怨念のキラードール】を召喚!!」

 

 

 

【怨念のキラードール】 攻撃力 1600

 

 

 

「俺もカードを、1枚セットするぜ!」

 

(このカードは【次元幽閉】!敵の攻撃モンスターを、ゲームから除外する!)

 

「ターンエンド!」

 

 

 

 平林くんで一巡して、再びボクにターンが移る。ここからは互いに攻撃が可能となる。

 

 相手(がた)3人の場には、それぞれモンスター1体と伏せ(リバース)カード1枚か。

 

 

 

(…セツナがどう出るか…見物(みもの)ね。3対1の多勢に無勢で、どんな風に(たたか)うのか……昨日の決闘(デュエル)を観て以来、なんだか気になるのよね…彼のこと。あの九頭竜を倒す程の強さ……お手並み拝見と行こうじゃない…!)

 

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

 

(…………この手札なら…行ける!)

 

「ボクは(トラップ)カード・【無謀な欲張り】を発動!」

 

「!…なんだありゃ?」

 

「アレは2枚ドロー出来る代わりに、次のドローフェイズを2回スキップするカードだな…!」

 

「小森くん、ご明察。でも、その効果を使う前に…もう1枚、手札から(・ ・ ・ ・)発動させてもらうよ!」

 

「!?」

 

「【無謀な欲張り】の発動に『チェーン』して、速攻魔法・【鈍重(どんじゅう)】を発動!」

 

「ど、鈍重(どんじゅう)!?」

 

「そう。効果の説明をしたいところだけど、(じつ)連鎖(チェーン)したいカードが(あと)1枚だけあるんだ」

 

「「「!!!?」」」

 

「2枚目の伏せ(リバース)カードをオープン!(トラップ)カード・【フルハウス】!!」

 

「なっ…!一気に3枚も発動するだと!?」

 

「このカードは、フィールド上の表側表示の魔法(マジック)(トラップ)カード2枚と、セットされている魔法(マジック)(トラップ)カード3枚を破壊する!!」

 

 

 

 ここまでに積まれたチェーンブロックの数は3つ。最優先で処理されるのは、最後に発動した【フルハウス】の効果からだ。

 

 

 

「ボクのフィールドで(オモテ)になっている【鈍重】と【無謀な欲張り】、そして、君達3人のフィールドに1枚ずつ伏せられている、合計3枚のリバースカードを破壊!!」

 

 

 

 ボクが指定した計5枚のカードは、一斉に破壊されて墓地へと送られる。

 

 

 

「うっ、うわぁあああっ!?」

 

「お、俺達の…!」

 

(トラップ)カードが…!?」

 

 

 

 ふむふむ。【落とし穴】に【炸裂装甲(リアクティブアーマー)】に【次元幽閉】か。

 フリーチェーンのカードじゃなくて良かった。途中で発動されたりしたら、【フルハウス】使えなくなるからね。

 

 さて、これで安心して攻撃できる。

 

 

 

「ボクのカードも破壊されたけど、効果は適用するよ。次は【鈍重】の効果で…えーっと、そうだね……平林くん!(きみ)の場の【怨念のキラードール】の攻撃力を、守備力の数値だけ低下(ダウン)する!」

 

 

 

【怨念のキラードール】 攻撃力 1600 → 0

 

 

 

「げぇ!攻撃力(ゼロ)!?」

 

「最後に【無謀な欲張り】で、ボクはカードを2枚ドロー!」

 

「ちょ…ヤバくね?トラップもねぇし…!」

 

「も、問題ねぇ!このターンさえ凌げば、奴は2ターンの間ドロー出来ねぇんだ!その隙に潰すぞ!」

 

「……安心して。この(ワン)ターンで、終わりにするから」

 

「…なに…?」

 

 

 

 - ここから先は、ずっとボクのターン!! -

 

 

 

「グレイ・ウィングは手札を1枚()てる事で、2回攻撃する権利を得る!」

 

 

 

 自分の手札から、カードを1枚、デュエルディスクの墓地(セメタリー)ゾーンに()れる。

 これで、グレイ・ウィングはこのターン、2回連続で攻撃する事が出来る。

 

 

 

「ボクは【エレメント・ドラゴン】を召喚!」

 

 

 

【エレメント・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「さらに手札から、【復活の福音(ふくいん)】を発動!墓地の【ダークブレイズ・ドラゴン】を、特殊召喚する!」

 

 

 

 渦巻く業火の中から、ダークブレイズ・ドラゴンが姿を現す。

 さっき、グレイ・ウィングの効果を使用するコストとして、このモンスターカードを墓地に送っておいたんだ。

 

 

 

「墓地から復活したダークブレイズ・ドラゴンは、攻撃力が2(ばい)になる!」

 

 

 

【ダークブレイズ・ドラゴン】 攻撃力 2400

 

 

 

「攻撃力が…俺の【ジャイアント・オーク】を上回っただとぉ!?」

 

「驚くのはまだ早いよ!ここで、3枚目のリバースカード・【タイラント・ウィング】を発動!ダークブレイズ・ドラゴンの装備カードとなり、攻撃力を400ポイントアップする!」

 

 

 

【ダークブレイズ・ドラゴン】 攻撃力 2400 → 2800

 

 

 

「バトル!!ダークブレイズ・ドラゴンで、ジャイアント・オークを攻撃!『バーンズダウン・ヘルファイア』!!」

 

 

 

 ダークブレイズ・ドラゴンは(くち)の中から黒炎(こくえん)を放ち、厚村くんのフィールドにいる、ジャイアント・オークを焼き尽くす!

 

 

 

「ぐあっ!?ッ…この…!」

 

 

 

 厚村 LP 4000 → 3400

 

 

 

「ダークブレイズ・ドラゴンが相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与える!」

 

「ぬぁにぃー!?ってことは…!」

 

「ジャイアント・オークの攻撃力分、2200ポイントのダメージを受けてもらうよ、厚村くん!」

 

「あぎゃああああああっ!!!?」

 

 

 

 厚村 LP 3400 → 1200

 

 

 

「そして!グレイ・ウィングで、厚村くんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

 

 

 グレイ・ウィングが(キバ)()き、厚村くんを容赦なく強襲する。

 

 

 

「ぐえぇあァ…!!がふ…!」

 

 

 

 厚村 LP 0

 

 

 

「あ、厚村ー!?」

 

(まず一人(ひとり)!お次は平林くんだ!)

 

「続けて、エレメント・ドラゴンで、怨念のキラードールを攻撃!!」

 

「うげっ!」

 

「エレメント・ドラゴンは、フィールド上に『炎属性』モンスターが存在する時、攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 

 

【エレメント・ドラゴン】 攻撃力 1500 → 2000

 

 

 

 平林くんが操る【怨念のキラードール】は、【鈍重】の効果で攻撃力が(ゼロ)になっている。ダイレクトアタックと変わらない!

 

 

 

「ぎえぇーっ!!」

 

 

 

 平林 LP 4000 → 2000

 

 

 

「まだだよ!エレメント・ドラゴンの、もうひとつの効果!フィールドに『風属性』がいる場合、戦闘でモンスターを破壊した(あと)、二度目の攻撃が可能となる!」

 

「はぁーっ!?」

 

「エレメント・ドラゴン!平林くんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

「マジ()()ねえぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

 平林 LP 0

 

 

 

「ま…まさか…こんな事が…!」

 

 

 

 厚村くんと平林くん、味方二人(ふたり)を立て続けに(うしな)った小森くんは、すっかり(ひる)んでしまっている。

 ボクはそんな彼の方に振り向いて、ニッコリと笑顔を見せた。

 

 

 

最後(ラスト)は、(きみ)だね!小森くん!」

 

「くっ…!何を言ってやがる!グレイ・ウィングにスカルナイトが()られたとしても、ダメージは300程度!まだ俺のライフは…」

 

「残念だけど、タイラント・ウィングを装備したダークブレイズ・ドラゴンは、このターン、もう一度モンスターに攻撃できるんだよ」

 

「んなアホなぁーッ!?」

 

「行け!ダークブレイズ・ドラゴン!!スカルナイトを攻撃!」

 

 

 

 - バーンズダウン・ヘルファイア!! -

 

 

 

「ぐわーっ!!」

 

 

 

 小森 LP 4000 → 2200

 

 

 

「戦闘破壊した事で、ダークブレイズの効果が発動!スカルナイトの攻撃力分のダメージを与える!『ブレイジング・ストーム』!!」

 

「あつぅーいッ!?」

 

 

 

 小森 LP 2200 → 1200

 

 

 

「チェックメイトだよ!グレイ・ウィング!小森くんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

 

 

 フィニッシュだ。この攻撃を止める(すべ)は無い!

 

 

 

「バカなぁああああッ!?」

 

 

 

 小森 LP 0

 

 

 

 デュエル決着!ボクが一息ついて、ディスクを腕から外していると、アマネが何やら驚いた表情を見せながら、(くち)を開いた。

 

 

 

(ワン)ターン(スリー)キル…!(なま)で見るのは初めてね…」

 

「んじゃ!ボクはこれで!」

 

「ええっ!?早っ!もう行っちゃうの!?」

 

「止めないでアマネ!カツカレーが…ボクを待っているんだ…!」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいしいー!デュエルの後に食べると、より格別だね!」

 

 

 

 急いで食堂に帰還したボクは無事にカツカレーと再会し、ようやくその味を堪能する事が出来た。

 それにしても、このカレー、冗談(ジョーダン)抜きで美味(う ま)い。じっくり煮込まれたルーは、スパイシーでコクと深みのある濃厚な味わい。サクサクの(ころも)(まと)った、ジューシーな(トン)カツは、一口(ひとくち)噛めば脂身の上品な甘味(あま み)(くち)いっぱいに広がって、ボクの味覚を喜ばせる。カレーとの相性も抜群だ。

 こんなにレベルの高いカツカレーなら、毎日でも、お金を払ってでも食べに来たいくらいだよ。

 

 

 

「フフッ、ほんと幸せそうに食べるね~。見てて和むよ」

 

 

 

 アマネは先程までと同じ席に座って、ボクと向かい合っている。彼女もボクのオススメで、カツカレーを注文していた。

 

 

 

「それはもう!今日はこの為に登校した様なものだし」

 

「納得。凄い美味しいよね、これ」

 

「あっ、セツナ先輩に黒雲さん!」

 

 

 

 声をかけてきたのは、茶髪で緑色の(ひとみ)可愛(かわい)らしい少年・(いち)()() ルイくんだった。所属は高等部1年生。ボクに初めて出来た後輩くん。

 

 

 

「おっ!ルイくん!となり()いてるよー!おいでおいで」

 

「はっ、はい!失礼します…!」

 

 

 

 若干オドオドしながらも、ルイくんはボクの(となり)椅子(イ ス)に腰を落ち着けた。

 彼の昼食は、どうやらサンドイッチらしい。たまごサンドと野菜(やさい)サンド。何ともヘルシーなメニューだけど、ひとつ気になったので、(たず)ねてみた。

 

 

 

「ルイくんは、サンドイッチが2個だけ?足りるの~?もっと食べなよ~」

 

「あはは……ぼく、DP(ディーピー)が少なくて…あまり高い献立(も の)は注文できないんです…」

 

 

 

 DP(ディーピー)と言うのは『デュエルポイント』の略称で、決闘(デュエル)をすると、その都度、デュエルディスクに加算されるポイントの事を言う。

 決闘者(デュエリスト)のみが扱える、今や全世界共通の通貨とされていて、コレが貯まると究極的には現金なしでも生活が出来てしまう。

 デュエルに勝利すれば当然より多くのDPを稼げるけど、負けてしまっても、一応(いちおう)デュエルを(おこな)ったという事実はあるので、(わず)かだがDPは貰える。もちろん勝った(ほう)と比べれば、(スズメ)の涙ほどしか()まらないけれど。

 

 この食堂では、食券も、そのDPで購入する必要があり、DPが足りないと注文(オーダー)できるメニューも限られてくるというわけだ。厳しい事に普通のお金では受け付けてくれない。まぁ決闘(デュエル)の学園だし、そこは仕方ないのかもね。

 

 

 

「そっか。じゃあ…」

 

 

 

 ボクはフォークに(トン)カツを(ひと)切れ刺して、ルイくんの口元に運んだ。

 

 

 

「はい。あーん」

 

「えぇえっ!?そ、そそそんな!悪いですよ!ぼ…ぼくなんかに…」

 

「まぁまぁ、先輩の(おご)りって事でさ。ほら、ルイくん細いし、これ食べてパワーを付けな。めっさ美味しいよ」

 

 

 

 ルイくんが思わず唾液を飲んだのが分かった。フフフッ、この垂涎(すいぜん)モノの(かお)りには(あらが)えまい。

 

 

 

「良いじゃん、(いち)()()くん。そういうのは遠慮せずに(いただ)くものよ。育ち(ざか)りなんだから、もっと食べないと大きくなれないよ?」

 

(…アマネが言うと説得力あるなぁ…)

 

 

 

 チラッと、アマネの大きな(むね)に視線が移ったのは秘密だ。

 

 

 

「は…はい…いただきます…!」

 

 

 

 ルイくんは、その小さな(くち)を頑張って開き、豚カツを(くわ)えた。食べやすい様にフォークで少しだけ押し込んでやろう。

 

 

 

「んむっ…もぐもぐ…」

 

 

 

 何これヤバイ可愛い!餌付(え づ)けしてるみたい!飼って良い?ルイくん飼って良い!?

 

 パシャリッ

 

 …シャッター音?が聴こえて、そちらを見ると、アマネが自分の携帯端末(スマートフォン)を横向きにして、ボク達の方に構えていた。どうやら、カメラモードにして、ボクがルイくんに豚カツを与えている光景を撮影している(よう)だ。

 

 

 

「……アマネ?何してるの?」

 

「あっ、気にしないで。保存保存っと」

 

「???」

 

 

 

 よく分からないけど、まぁいっか。ルイくんが豚カツを全て口内に含んだところで、フォークを放してあげた。

 ルイくんは(しばら)咀嚼(そしゃく)して飲み込んだ後、キラキラと目を輝かせ始めた。

 

 

 

「おいしいです!」

 

「でしょー?ここのカツカレーは絶品だよ!」

 

「この写真あとで友達に送ってやろー」

 

 

 

 それからは3人で仲良くお喋りしながら、昼休みの残り時間を心()くまで楽しんだ。あぁ幸せだなぁ、こういう平穏(へいおん)が欲しかったんだよ。ずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --- 九頭竜(くずりゅう) 響吾(キョウゴ)は抑え切れない怒りを(こぶし)に乗せ、校舎の壁を乱暴に殴り付けた。

 

 

 

「くそっ!!なぜ負けた…!なんでこの俺があんな奴に…!」

 

 

 

 悔恨(かいこん)の思いを吐き捨てながら固く握り締めた拳からは血が(にじ)み出て、白い床に赤色の点を打つ。

 

 昨日(さくじつ)、九頭竜が(みずか)ら観客を集めてまで強行した、総角(あげまき) 刹那(セツナ)との野良(の ら)デュエル。

 そこで味わった、言い様の無い屈辱。

 所詮(しょせん)は自分の足下にも及ぶまいと軽視していた、名も知らぬ転入生に敗北を喫した事で、彼の矜持(プライド)粉々(こなごな)に打ち砕かれてしまった。

 

 

 

(手を抜いた覚えはねぇ…俺のカードプレイングに落ち度は無かった筈だ…!なのに…どうして俺が負けなきゃならねぇんだ!)

 

 

 

「…おい!お前、九頭竜だろ?ランク・Aの」

 

 

 

 デュエルディスクを装着した男子生徒が九頭竜を呼びつける。しかし九頭竜は振り返るどころか何の反応も示さない。

 

 気配だけで、今の声の(ぬし)以外にも、数人が九頭竜の背後に立っているのが把握できた。そして、その誰もが九頭竜に対して、敵意や害意を()()もなく放っているという事も。

 

 

 

「へへへへっ…!転入生に負けちまう様な現在(い ま)のテメーなんざ怖かねぇ!」

 

「今まで散々コケにしてくれたな。今日でその称号(ランク)は返上してもらうぜ!」

 

 

 

 またか。と、九頭竜は心の中で独り()ちた。

 

 最強の座を欲しいままにしてきた人間は、一度(ひとたび)その戦績に黒星が付けば、たちまち周囲から非難や攻撃を浴びる。

 特に彼は気性の荒い性格も相まって、敵を作りやすかったので尚更(なおさら)だ。

 

 

 

「勝負しやがれ九頭竜!叩きのめしてやる!」

 

「こっちを向けよ!ビビってんのか!」

 

「………………あ"?」

 

「「「…ひっ!?」」」

 

 

 

 しかし腐っても学園最強(ランク・A)決闘者(デュエリスト)。こんな集団心理に頼って仕掛けてくる浅はかな連中に、遅れを取る事は有り得ない。

 

 

 

「撃ち殺せ…!【リボルバードラゴン】!!」

 

 

 

 - 結局5分とかからず、九頭竜は彼等(かれら)を、決闘(デュエル)で完膚なきまでに蹴散(け ち)らした。

 

 

 

「ひぃぃぃぃっ!?」

 

「すいませんでしたァァァァ!!」

 

 

 

「……チッ!こんな(むな)しい勝利は、生まれて初めてだ…!」

 

 

 

 情けない悲鳴を上げながら、蜘蛛(く も)の子を散らす様に逃げ去っていく生徒(敗 者)達。だが勝利を収めても、九頭竜の気持ちは晴れなかった。

 

 

 

(あんな雑兵(ぞうひょう)どもじゃ駄目だ!やはり、あの転入生に勝つしか…!)

 

随分(ずいぶん)と荒れているね、九頭竜」

 

「!…お前は…!」

 

 

 

 その時、一人の青年が九頭竜に声をかけた。

 

 青年はナチュラルショートの黒髪と、()んだ青色の(ひとみ)が印象的で、眉目秀麗という讃詞が相応(ふさわ)しい貴公子然とした顔立ちをしており、妙々(みょうみょう)たる風格を備えていた。

 

 

 

「……戻ってきてやがったのか……鷹山(ヨウザン) (カナメ)…!」

 

「ついさっきね。それにしても驚いたよ。久々に母校に帰ってきたら、お前が負けてるなんてさ」

 

「てめっ…!」

 

何処(ど こ)に行っても俺の(かわ)きを満たしてくれる決闘者(デュエリスト)は居なかったけど……これは期待できそうだ。もうすぐ『選抜試験』も始まるしな」

 

「……なんだと?」

 

「転入生・総角(アゲマキ) 刹那(セツナ)か……彼なら俺を、(たの)しませてくれるかな?」

 

 

 

 青年・鷹山(ヨウザン) (カナメ)は、新しい玩具(オモチャ)を見つけた子供の様に、愉快そうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 





 カツカレー美味しい(^q^)

 3対1って難し過ぎィ!!頭がパーンするところだったよ!!でもどうしてもやってみたかった( °ω°)

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