遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 前回の第4話を投稿した翌日の昼食が『カツカレー』でした。なんだこの偶然。



TURN - 5 Machinery Evils

 

「では!これより実技の授業を始めます!各自、位置に()いて!」

 

 

 

 広大な決闘(デュエル)フィールドに、女性の張った声が明瞭に響き渡る。

 号令を掛けたのは、ボクが所属している高等部2年生の担任を務める、美人と評判な、若い女の先生だ。

 

 現在ここには、ボクを含め、その2年生の生徒のみ(・ ・)が集められている。

 

 筆記と同等に重要、()つ、筆記以上に自身の評価を左右するのが『実技』の成績らしい。

 それ(ゆえ)、全員が普段とは目の色を変えて、これから()(おこな)われる授業に(のぞ)んでいた。

 自分達の決闘者(デュエリスト)としての強さ(レベル)を示す最大の要素・『階級(ランク)』にも関わってくる授業(も の)だから、当然と言えば当然かもしれない。

 

 この学園は、『プロの世界に最も近い』と世評が高いだけあって、トップ争いが特に激しい事でも有名だ。

 ランクが低い生徒(デュエリスト)は、たちまち(とう)()されてしまう。

 デュエルの負け星が重なると、それだけで立場が危ぶまれて、最悪の場合、ランクの降格(こうかく)も有り得る。

 だから、勝ち上がって、誰よりも上位(う え)を目指そうと、誰もが必死なんだ。

 

 何とも緊張感のある校風だけど、ボクは大好きな決闘(デュエル)が出来て、こうして平穏(へいおん)に暮らせるなら、それで良いって思ってる。やるからには楽しまなくちゃね!

 

 同級生の(みんな)は先生の指示を受けて()()りに移動を始め、それぞれ指定された番号が振ってある、長方形の決闘(デュエル)スペースへと足を運んでいく。

 ボクも決闘盤(デュエルディスク)を左腕に付けながら、あらかじめ先生に言い渡されていた、所定の位置に立つ。

 

 今、ボクの前に対峙しているのは、同学年の男子生徒だ。デュエルディスクを装着した左腕を、ボクに向けて突き出している。どうやら彼も、やる気満々(マンマン)みたい。

 

 

 

総角(アゲマキ)!ランク・Aの九頭竜(くずりゅう)に勝ったお前の実力、見せてもらおうじゃねーか!」

 

 

 

 ジャルダン校に転入して、今日で3日目。そろそろ、そういう覚えられ(かた)にも、()れてきちゃったな。

 

 

 

「お手柔らかに」

 

 

 

 それだけ言葉を返してから、ボクはディスクを起動させる。

 やる事は今までと何も変わらない。いつも通り、自分のデュエルをするだけだ!

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --- 総角(アゲマキ) (セツ)()が授業での決闘(デュエル)奮励(ふんれい)している頃と、同時刻。

 

 学園の校舎内、別の場所でも、一人の青年が決闘(デュエル)を開始していた。

 

 

 

「……話にならないな。この程度で選抜試験に挑むつもりだったのか?」

 

 

 

 青年は(うるし)の様な黒髪(くろかみ)の下に(うかが)える碧眼(へきがん)で、対戦相手の男子生徒を静かに見据(み す)えながら、そう冷たく言い放つ。

 

 

 

「うっ…ぐ…!」

 

「本来のデッキでは瞬殺(しゅんさつ)してしまうからと、わざわざ適当に組んだ低レベルのデッキを使っているのに……俺のライフに、傷ひとつ付ける事も出来(で き)ないとは…」

 

「な…なんだと!?」

 

「もう終わりだ。モンスターで攻撃」

 

 

 

 青年が召喚したモンスターの攻撃によって、男子生徒のライフポイントは(ゼロ)となり、青年の完勝で決闘(デュエル)は決着した。

 

 

 

「……ッ…!」

 

 

 

 手も足も出ないまま完敗した男子生徒は、(ちから)なく(ひざ)を折り、圧倒的な実力差に打ちのめされて、ただ絶句していた。

 

 

 

「お前も失格(・ ・)だな」

 

 

 

 感情の無い冷淡な声色で、その一言を(くち)にした後、青年は(きびす)を返して男子生徒の前から立ち去ろうとする。だが青年(か れ)の足は、不意に停止した。

 

 そこには灰色(グレー)背広(スーツ)を折り目正しく着こなした、年長の男性が立っていた。

 男性は落ち着いた口調で、青年に話しかける。

 

 

 

「…今の決闘(デュエル)で、何人目(・ ・ ・)になるのかね?鷹山(ヨウザン) (カナメ)くん」

 

「……お久し振りです。高御堂(たか み どう)教諭」

 

 

 

 青年こと、鷹山(ヨウザン) (カナメ)は薄く笑みを(たた)えて、眼前に現れた男性の名を、高御堂(たか み どう)と呼んだ。

 

 

 

鷹山(ヨウザン)くん。(きみ)決闘(デュエル)(おこな)ったという生徒達が…次々に『選抜試験デュエル』の参加表明(エ ン ト リ ー)を、辞退していると報告があった」

 

「それは良かった。手ずから間引(ま び)きした甲斐(か い)があったというもの」

 

「……また例の『選別』か?」

 

「そう、選別(・ ・)です。俺は(かれ)()に、(おのれ)の力量を思い知らせてやっているのです。所詮(しょせん)は『選抜試験』を受ける、資格すらも無いとね。大会に弱者をのさばらせる事は、ジャルダン校の名声にも(ドロ)を塗りかねません」

 

「生徒には無限の可能性がある。その可能性の()を、無闇に潰すような真似(ま ね)を、私は教育者として、(かん)()する事は出来ん」

 

「……高御堂(たか み どう)教諭。貴方は結果に(おも)きを置く、ジャルダン校(この学園)()いて、実に珍しいタイプの教師だ。最弱(ランク・E)の生徒も差別せず、分け(へだ)てなく接している。そんな貴方を(した)う者も、逆に、理解の外だと批判する者もいる」

 

「…………」

 

 

 

 (カナメ)は再び歩き出し、高御堂の横を通り過ぎていく。

 

 

 

「俺が今回の選抜試験で、証明してみせましょう。『才能』の無い決闘者(デュエリスト)には、可能性など存在しないということを」

 

 

 

 すれ違い様に不穏な言葉を残して、鷹山 要は今度こそ、この場から姿を消した。

 

 高御堂は遠ざかっていく(カナメ)の靴音を聞きながら、小さく息を吐く。

 

 

 

(……やれやれ…相も変わらず末恐(すえおそ)ろしい男だな、鷹山 要…。…選抜試験が荒れる事にならなければ()いが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --- ごきげんよう、セツナです!デュエル開始から、早くも5ターンが経過したよ。

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 1900

 

 男子生徒 LP(ライフポイント) 750

 

 

 

 相手もなかなか()(ごわ)かったけど、この決闘(デュエル)は…ボクが貰った!

 

 

 

「行くよ!【ラビードラゴン】で、プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

「うわぁあーっ!?」

 

 

 

 ボクのエース・モンスターの一撃が決まり、相手のライフポイントが(ゼロ)になった(こと)(しら)せる、ディスクの機械音が鳴った。やったー!何とか勝てたー!

 デュエルが終了した事で、立体映像(ソリッドビジョン)のモンスター達も消失する。

 

 

 

()決闘(デュエル)だったよ。ありがとう!」

 

 

 

「セツナは今日も絶好調みたいね」

 

「おっ、アマネ」

 

 

 

 クラスメートの()(れん)な少女・黒雲(くろくも) 雨音(アマネ)が話しかけて来てくれた。

 彼女も丁度、デュエルを終えたばかりの(よう)で、左腕には赤色(あかいろ)に光る、レッドタイプのデュエルディスクを装着していた。

 ……そう言えば、アマネの決闘(デュエル)って、まだ一度も見た事ないな。

 

 

 

「アマネの方は、どんな感じ?」

 

「さっきの決闘(デュエル)で、3連勝したところ」

 

「うへぇ~っ、凄いや!流石(さすが)は『ランク・B』だね!」

 

「ありがとう。……ねぇ、セツナ?もし良かったら今ここで、私と一戦(いっせん)…」

 

 

 

 アマネが赤い(ひとみ)でボクを真っ直ぐ見つめながら、何かを言いかけた、……その時だった。

 

 

 

「ア~マ~ネ~ちゃーーーん!!」

 

「ひゃあっ!?」

 

 

 

 突然アマネの背後から、何者かが飛び掛かり、彼女の大きな(むね)を、両手で鷲掴(わしづか)みにした。

 

 その正体は、ピンク色のショートヘアが印象深い女の子だった。アマネに負けず劣らず、可愛い顔をしている。

 

 

 

「ンフフ~!今日も()(ちち)ですな~、アマネたん?」

 

「ちょ、こら…!マキちゃん!やめてってば!」

 

 

 

 『マキちゃん』と名前を呼ばれた女の子は、アマネの制止の訴えを無視(スルー)し、張りがあって良い形をしたアマネの(むね)を、楽しそうに気持ち良さそうに、大胆な手付きで遠慮なく()みしだいて堪能(たんのう)している。

 

 

 

(なんと(うらや)ま…けしから……(うらや)ましいぞ!!)

 

 

 

 ボクの脳内で、理性より煩悩(ぼんのう)の方が(まさ)った瞬間であった。

 

 

 

「ほれほれ~どうじゃどうじゃ~?」

 

「んっ、もう…変な(さわ)(かた)しちゃ…や…あん…!」

 

 

 

 アマネの顔が真っ赤に染まり、次第に声も()(いき)()じりで、エロ……色っぽくなってきた。あっ、これはそろそろ離れとかないと、なんかマズイ気がする。

 

 

 

「あ、あはは…じゃあボクは行くから、後は二人(ふたり)で楽しんで…」

 

 

 

 右手を広げて軽く振りながら、そーっと後ろ歩きで退散しようとした瞬間、マキちゃんの目が(するど)い眼光を放ってきたのが分かった。

 

 

 

「特別大サービスだよ転入生くん!」

 

「きゃあ!?」

 

「わあっ!?」

 

 

 

 マキちゃんは元気な声でボクに告げると、アマネの背中を思い切り突き飛ばした。

 当然ボクとアマネは正面から衝突し、ボクは勢いに圧されて、後方へと身体が退()がる。

 

 (さいわ)()ぐ後ろは(カベ)だったので、ボクの背中は壁面(へきめん)にぶつかって止まり、アマネと仲良く床に倒れ込むという事態は()けられた。

 アマネに押し倒されるなら、それも悪くないとか思ったりしたけど、まぁとにかく良かった。

 

 ……でも、新たな問題が浮上した。

 

 ボクは今、アマネの身体を抱き止めている状態なんだけど、先程から、ボクの右手には、むにっと、(やわ)らかい感触が伝わってきている。

 

 恐る恐る、視線を下に落とすと……なんということでしょう。

 アマネの(むね)を、右手で(つか)んで、しっかりと(さわ)って、()んでいるではありませんか!

 

 しかもこれって状況的に、アマネがボクの手に(むね)を押し付けてきてるという…いやいや、何を言ってるの、ボク。

 

 

 

(や、(やわ)らか…!…あっ…女の子って、良いにおいがする…)

 

 

 

 恥ずかしながら、17年の人生で、ここまで異性と密着するという経験が全くと言って良いほど無かったので、そんな変態チックな感想を心中(しんちゅう)(いだ)いてしまっていると、アマネが顔を上げて、ボクと目を合わせた。上目(づか)可愛(かわい)いヤッター。

 

 

 

「い…いっ…!いつまで触ってんのよ!!」

 

「ごふうっ!?」

 

 

 

 アマネは、ボクが彼女の(むね)からずっと手を離さない(離せない)事に気づいて、羞恥(しゅうち)に身を震わせ始めたかと思うと、ボクの脇腹(わきばら)に左の(こぶし)で、ストレート殴打(パンチ)を叩き込んだ。見事に入った(・ ・ ・)ボクは、(たま)らずその場にうずくまる。

 

 

 

「アマネたん相変わらずスッゴいパンチだねー」

 

「こ…んの!変態セクハラ親父(オヤジ)!!そこに直れ!私が成敗してやる!」

 

「ななっ!?現役(げんえき)ピチピチの女子高生を親父(オヤジ)()ばわりとは、これ如何(い か)に!」

 

「デュエルよ!今日こそ叩きのめして…」

 

「んー…あたしも、アマネちゃんと()りたいのは山々なんだけど……ざんねん。先約が出来ちゃったみたい」

 

「え?」

 

 

 

「次!総角(アゲマキ)くんと、()(づき)さん!!ステージに上がってください!」

 

「……あれ……ボクの番…?」

 

「そういうこと。()(づき)ってのは、あたし。フルネームは()(づき) マキノって言うんだ!よろしくね、総角(アゲマキ)くん」

 

「マキノ、で、マキちゃんか。了解!ボクの事はセツナで良いよ。こちらこそ、よろしくね」

 

 

 

 まだ殴られたダメージは残ってるけど、早く行かないと怒られちゃう。ボクはマキちゃんに挨拶(あいさつ)をしてから、早足(はやあし)決闘(デュエル)スペースに直行した。

 

 

 

「アマネちゃん、ごめんね?アマネちゃんが(ねら)ってたセツナくん、横取りしちゃって」

 

「誤解を招く言い方は()めろー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、色々あったけど、気を取り直して決闘(デュエル)に集中しよう。

 ボクとマキちゃんは、互いのデュエルディスクを同時に構えて、臨戦態勢を取る。

 マキちゃんのディスクは髪とお揃いの、ピンク色だった。

 

 

 

「んーじゃ、始めよっか!セツナくん!」

 

「そうだね!」

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 マキノ LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「あたしの先攻!カードを1枚セット!さらに…【()(シン)アーク・マキナ】を召喚!」

 

 

 

()(シン)アーク・マキナ】 攻撃力 100

 

 

 

(…!攻撃力、たった100のモンスターを攻撃表示?……ボクの攻撃を誘ってるのかな…)

 

「あたしはこれで、ターン終了(エンド)!」

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

(……おもしろいね。(きみ)(わな)に乗ってあげるよ!)

 

「ボクは【暗黒の竜王(ドラゴン)】を召喚!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500

 

 

 

「バトル!【暗黒の竜王(ドラゴン)】で、【()(シン)アーク・マキナ】を攻撃!」

 

 

 

 竜王は大きく(ひら)いた(くち)から、炎の息吹(い ぶ)きを吐き出す。この攻撃が通れば、マキちゃんのライフは大幅に削れる。

 

 

 

「甘いよ!リバースカード・オープン!(トラップ)カード・【反転世界(リバーサル・ワールド)】!」

 

「ッ!?…なるほど…!そう来たか!」

 

「この(トラップ)の効果により、アーク・マキナの攻撃力と守備力は()()わる!」

 

 

 

【魔神アーク・マキナ】 攻撃力 100 → 2100

 

 

 

(竜王の攻撃力を越えられた…!)

 

「アーク・マキナの反撃!」

 

 

 

 攻撃力の差が逆転した事で、暗黒の竜王は、アーク・マキナとの戦闘に(やぶ)れて、破壊されてしまう。

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 3400

 

 

 

「くっ!…やるね…マキちゃん…!」

 

「アーク・マキナの、モンスター効果を発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、手札か墓地から通常モンスターを特殊召喚できる!あたしは手札から、【スロットマシーンAM(エーエム)(セブン)】を、特殊召喚!」

 

 

 

【スロットマシーンAM(エーエム)(セブン)】 攻撃力 2000

 

 

 

「げっ!?」

 

「フッフッフ。迂闊(うかつ)な攻撃だったねー、セツナくん」

 

 

 

 もしかして、これは非常にヤバイのでは?とりあえず、()をガラ()きにしてターンを渡すわけには行かない!

 

 

 

「…ボクはカードを1枚()せて、ターンエンド!」

 

「あたしのターン!ドロー!そして、このまま戦闘(バトル)!」

 

(はや)っ!?」

 

「まずは【アーク・マキナ】から、セツナくんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

 

 

 アーク・マキナの攻撃力は、【反転世界(リバーサル・ワールド)】の効力を受けて、2100にまで上昇している。しかも戦闘ダメージを与えると、新たに通常モンスターをフィールドに呼び出す事が出来(で き)る。

 常識的に考えて、攻撃を()めない理由は無い。

 

 

 

(…………でも、ここは……ライフで受ける!)

 

 

 

(はな)て!『ディストーション・ウェーブ』!!」

 

 

 

 重い衝撃波がボクを襲った。

 

 

 

「うああぁぁっ!!くっ…ッ…!」

 

 

 

 セツナ LP 3400 → 1300

 

 

 

「……なんだ、てっきり伏せ(リバース)カードで対抗してくると思ったのに…ブラフだったのかな?」

 

「…どう…だろうね…それより……アーク・マキナの効果は、使わないのかい?」

 

「フフン、上手(う ま)口車(くちぐるま)に乗せようったって、そうは行かないよ。大方(おおかた)、【激流葬(げきりゅうそう)】みたいな、召喚に反応する(トラップ)でも仕掛けてるんでしょー?」

 

「…!」

 

「お?図星かな?セツナくん」

 

「……はぁ…参ったな…ボクは律儀にマキちゃんの誘いに乗って攻撃したのに、(きみ)はボクの誘いを、あっさりと蹴ってしまうんだね…しくしく…」

 

「まっ、あたしに当たったのが運の尽きだったねー。セツナくんの初・黒星は、この()(づき) マキノが(いただ)くよ!【スロットマシーンAM(エーエム)(セブン)】で攻撃!『プラズマ・レーザー(キャノン)』!!」

 

 

 

 スロットマシーンが高圧電力の光線を発射する。攻撃力は2000ポイント。これを受けたら、ボクの敗北(ま け)だ。

 

 

 

 ……だけど、ボクは不敵に微笑(ほほえ)んだ。ボクの運は、まだ尽きちゃいない!

 

 

 

「誘いを蹴ってくれて、ありがとう!トラップ発動!【コンフュージョン・チャフ】!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 ボクがリバースカードを発動した途端、スロットマシーンは攻撃の標的(ターゲット)を、味方(・ ・)のアーク・マキナに変更した。

 

 しかし攻撃力では、アーク・マキナが(わず)かに上。スロットマシーンは(ぎゃく)に撃破されて、墓地へと送られた。

 

 

 

「い…一体なにが…!なんで、あたしのモンスター同士が戦闘(バトル)してるの…!?」

 

(トラップ)カード・【コンフュージョン・チャフ】の効果だよ。2回目の直接攻撃が宣言された時、そのモンスターは、1回目に直接攻撃をしたモンスターと、バトルを(おこな)う!」

 

「くぅ…!」

 

 

 

 マキノ LP 4000 → 3900

 

 

 

「…もし、あたしが素直に、アーク・マキナの効果でモンスターを召喚していたら…?」

 

「そしたら、コンフュージョン・チャフを使っても(ふせ)ぎ切れなかった。多分ボクの負けだったよ」

 

「………フッ…フフフ…!」

 

 

 

 ボクが「あははっ」と、笑っていると、マキちゃんも大声で笑い出した。

 

 

 

「あははははっ!!変わった攻撃の()め方するね!良いよ!面白(おもしろ)くなってきた!あたしはカードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

「ボクのターン!」

 

 

 

 ドローしたカードを横目で確認する。

 …おおっ!今日の手札は絶好調だね!

 

 

 

「手札から魔法(マジック)カード・【トレード・イン】を発動!手札の(やっ)(ぼし)モンスターを墓地に捨て、2枚ドローする!ボクは【ラビードラゴン】を墓地へ!」

 

「むっ…!上級レベルの通常モンスターを、墓地に落としたか…!」

 

「さらに【復活の福音(ふくいん)】を発動!この効果で、墓地から【ラビードラゴン】を特殊召喚する!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

「やっぱり!早速お出座(で ま)しかー!」

 

「セツナのフェイバリット…!」

 

「まだまだ!手札から【デビル・ドラゴン】を召喚!」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「バトルだ!【ラビードラゴン】で、アーク・マキナを攻撃!」

 

 

 

 ラビードラゴンは(きら)めく白銀の光線を、アーク・マキナに向けて(はな)つ!

 

 

 

「行け!『ホワイト・ラピッド・スト…!」

 

「リバースカード・オープン!!」

 

「え"ぇーっ!?ちょ、せめて技名(わざめい)は最後まで言わせてよ!?ボク今、超ダサい奴じゃん!」

 

「トラップ発動!【ライジング・エナジー】!手札1枚をコストに、【アーク・マキナ】の攻撃力を、1500ポイントアップする!」

 

 

 

()(シン)アーク・マキナ】 攻撃力 2100 + 1500 = 3600

 

 

 

(攻撃力3600!?)

 

「またまた返り討ちだね!セツナくん!」

 

「くっ…!墓地の【復活の福音(ふくいん)】を除外する事で、破壊を無効にする!」

 

 

 

 以前、九頭竜(くずりゅう)くんとの決闘(デュエル)で、魔法(マジック)カードを墓地から発動する技術(ワ ザ)を覚えといたのが(こう)(そう)した。

 これで、ラビードラゴンは、フィールドに残存できる!

 

 

 

「でも戦闘ダメージは受けてもらうよ!」

 

「うぅッ…!!」

 

 

 

 セツナ LP 1300 → 650

 

 

 

「そして、ダメージを与えた事により、アーク・マキナの効果が再び発動!手札の通常モンスターを、特殊召喚する!」

 

 

 

【TM-(ワン)ランチャースパイダー】 攻撃力 2200

 

 

 

(今度は攻撃力2200か…!)

 

 

 

 デビル・ドラゴンでは太刀打(た ち う)ち出来ない。

 ここは早々(そうそう)に『バトルフェイズ』を切り上げて、『メインフェイズ(ツー)』に移行しよう。

 

 

 

「……ボクはカードを2枚セットして、ターンエンド…!」

 

「エンドフェイズに、ライジング・エナジーの効果は切れる」

 

 

 

()(シン)アーク・マキナ】 攻撃力 3600 → 2100

 

 

 

「あたしのターン!」

 

(…このターンで【デビル・ドラゴン】を攻撃すれば、あたしの勝ちだけど……あの2枚の伏せカードが曲者(くせもの)だねぇ……除去カード来い!)

 

「ドロー!」

 

(…!やった、キター!)

 

「【トラップ処理班 Aチーム】を召喚!」

 

 

 

【トラップ処理班 Aチーム】 攻撃力 300

 

 

 

「ッ…!(トラップ)を無効化するモンスター…!」

 

「その通り!この決闘(デュエル)もらったァ!【ランチャースパイダー】で、【デビル・ドラゴン】を攻撃!『ショック・ロケット・アタック』!!」

 

 

 

 ランチャースパイダーの頭部から、ミサイルが乱射される。

 

 

 

「速攻()(ほう)・発動!【(そく)(しん)(ぶつ)】!」

 

「えっ!(トラップ)じゃないの!?」

 

「ボクは【デビル・ドラゴン】を、墓地に送る!」

 

 

 

 デビル・ドラゴンがフィールド上から消滅し、その跡地に敵のミサイルが着弾した。

 攻撃対象を見失った【ランチャースパイダー】の攻撃は無効となり、攻撃対象の再選択、いわゆる『巻き戻し』が発生する。

 

 

 

「さぁ、どうする?マキちゃん」

 

「むぅ、セツナくんのイジワル。ラビードラゴンに攻撃力で(かな)うわけないじゃん。ターンエンドだよ」

 

「それじゃ、ボクのターン!ドロー!」

 

(…よし!これなら!)

 

「ボクは【思い出のブランコ】を発動!墓地から【デビル・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「そして、デビル・ドラゴンで、トラップ処理班を攻撃!」

 

 

 

 デビル・ドラゴンの吐いた火球が派手(ハ デ)な音を()てて爆裂し、トラップ処理班 Aチームは、跡形も無く消し飛んだ。

 

 

 

「うっ…!しまった…!」

 

 

 

 マキノ LP 3900 → 2700

 

 

 

「これで、処理班は消えた!ボクは(トラップ)カードを発動する!」

 

「うそっ!?このタイミングで!?」

 

伏せ(リバース)カード・オープン!【反転世界(リバーサル・ワールド)】!!」

 

「ええええっ!!あたしと同じカード!?」

 

「もちろん効果は知ってるよね?効果モンスターの【アーク・マキナ】は、攻守(ステータス)が反転する。つまり、元々の数値に戻るんだ!」

 

 

 

【魔神アーク・マキナ】 攻撃力 2100 → 100

 

 

 

「あたしの、アーク・マキナの攻撃力が…また、100に…!」

 

「ラビードラゴンで、アーク・マキナを攻撃!!今度こそ決めさせてもらうよ!『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 二度目の正直!ラビードラゴンの攻撃は、ついにアーク・マキナを捉えた。

 

 

 

「チェックメイトだ…!」

 

「わあぁぁーっ!!」

 

 

 

 マキノ LP 0

 

 

 

「…はうぅ…負けちゃった…」

 

「危なかったー…!もうダメかと思った…」

 

 

 

 (から)くも勝利を(おさ)められた事に安堵して、ホッと胸を()()ろす。

 ギリギリの勝負は確かに楽しいけど、エネルギー消費が凄まじいから、けっこう疲れるね。

 

 

 

二人(ふたり)とも、お疲れさま。見応えのある決闘(デュエル)だったわよ」

 

「あ…アマネ…」

 

 

 

 アマネが普段(いつも)と変わらない笑顔で接してくれたけど、ボクは先刻(さっき)のラッキースケベが脳裏に(よぎ)って、何故(な ぜ)だか目を()らしてしまう。

 

 

 

「?…どうしたの?」

 

「い…いや、なんでも…」

 

「…………フフーン?」

 

 

 

 ボクがドギマギしていると、(となり)に来ていたマキちゃんが急に悪戯(イタズラ)っぽい笑みを浮かべて、ボクの耳元に顔を近づけ、こう(ささや)いてきた。

 

 

 

(どうだったー?アマネちゃんの……おっぱい♡)

 

「!!!?」

 

 

 

 顔が赤くなったのが自分で鏡を見ずとも分かった。マキちゃん…この小悪魔め…!

 

 

 

「じゃ、じゃあ!授業も終わったし!ボクはもう行くねぇー!!」

 

「えっ、セツナ!?どこ行くの!?」

 

「クスクス…かわいいー」

 

 

 

 脇目も振らずに決闘(デュエル)フィールドを走り去ったから、この時のボクは気づいていなかった。

 

 ボクの決闘(デュエル)を観戦していた、黒髪の青年(・ ・ ・ ・ ・)の存在に。

 

 

 

「……あれが総角(アゲマキ) (セツ)()か。……選抜試験まで、楽しみに取っておくつもりだったが……気が変わった。一足(ひとあし)先に、つまみ食い(・ ・ ・ ・ ・)させてもらうとしよう」

 

 

 

 





 ラッキースケベ回でしたー!!楽しかったー!!もっとヤりたい(ゲス顔)誰が何と言おうと今回の最大の見せ場はここです!という意気込みで書きました←
 マキちゃんグッジョブ!

 セツナ vs 要フラグが立ちましたね( °ω°)どうなることやら
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