遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
ついに50話まで来ましたァーッ!!
50話目にして、この二人の決戦を書けるとは……何とも
アリーナ・カップ6日目。
準決勝・第1試合 ── カナメ vs
まず九頭竜くんが自分の意志で後攻を選択して、さらに ──
「俺のターン行くぜ! このモンスターを召喚!」
【
今まで使っていた竜の姿をした銃器・【
「よく聞け
「フッ、面白い……。ならば、どれほどの進化を遂げたのか……この学園〝最凶〟・鷹山
カナメ
九頭竜
── 鷹山 要と、九頭竜 響吾。
そんな二人が初めて出会ったのは、今から5年ほど前…… ── 中等部1年の時分だった。
「 ── 【リミッター解除】発動! 撃ち殺せ、【リボルバー・ドラゴン】!」
「ぐわああああっ!?」
九頭竜のエースモンスターの一撃により、対戦相手はライフポイントを一瞬で
「そ、そんなバカなっ……この俺が中坊なんかに……!」
「ケッ、この程度が高等部の実力かよ。三流もいいとこじゃねぇか」
そう、当時13歳の九頭竜が
本来であれば勝つどころか闘う事さえ叶わない年齢差の相手を、赤子の手でも
「す、スゲぇ……高等部の先輩をワンショット・キルかよ……なんなんだあいつ……!」
「な、なぁ、お前ちょっと挑んでみろよ」
「じょ、冗談じゃねぇ! あんな強くて怖そうなの、勝てっこねぇって……!」
そんな彼らを
それを見て九頭竜は、優越感から笑みを
「……ハッ」
(どいつもこいつもヘボ
この時点で彼は確信した。自分に勝てる
しかし……
その自信は次の瞬間、粉々に打ち砕かれる事となる。
「……あ?」
九頭竜の耳に届いたのは、歓声。
目を向ければ、そこには大勢の生徒達が集まり、何やら熱狂していた。
興味は湧かず、九頭竜はその場を通り過ぎようとした。 ── ところが……
「スッゲーっ!! なんて強さだっ!
「さっきの奴もヤバかったけど、
( ── !?)
何せ、間違いなく「さっきの奴」というのは、九頭竜本人の事を指して言っているのだから。
それはすなわち自分と同じ中等部に、
(どういうことだ!? どこのどいつだっ!!)
最強を自負する九頭竜にとっては、到底ガマンならない事態だ。
「どけっ!! 邪魔なんだよっ!!」
彼は激情に駆られるまま、
そして、そこで目にしたのは ──
「 ── 〝
「う、嘘だっ! 俺は『
小柄な黒髪の少年が、ちょうど
「……こんなものか、学園が認めた10人のエリート……十傑とやらの
周りが興奮気味に騒ぎ出す
(まさか……あの十傑を倒したって言うのか!? こんなガキが……!)
「この程度が学園のトップクラスなら、俺が頂点に立つ日も、そう遠くないな」
(!!)
自分が高等部1年の
( ── 気に入らねぇっ!!)
九頭竜がキレるには、もはや充分過ぎる理由だ。
「おいてめぇっ!!」
気づけば九頭竜は、立ち去ろうとする少年を、怒鳴り声で呼び止めていた。
「………俺のことか?」
対し少年は、九頭竜の怒声にさして驚いた様子も見せず、ゆっくりとそちらへ振り向き……
突然
「っ!?」
少年と目が合った、その途端 ── 九頭竜の総身は
(こいつ……
九頭竜も
だが ──
生まれてこの方、
人生で初めて、他者への『恐れ』を経験させるほどの
最も、当人がそんな屈辱的な事実を認められる筈もなく ──
(っ……ふざけんな……この俺がこんな奴にビビるわけねぇだろうがっ!! そうだ、最強は俺だ……! 俺より強ぇ
そう自分を鼓舞し、九頭竜は
「 ── 俺と勝負しろっ!!」
「…………良いだろう、相手になってやる」
かくして ──
結果は……
「っ……!!」
九頭竜
カナメ
(俺が……負けたっ……!?)
初めて味わった敗北のショックに、九頭竜は
「あー、やっぱこうなるかぁ」
「そりゃそうだよな、良い線行ってたけど」
「やっぱり、十傑に勝つ様な奴に勝てるわけがねぇよな」
「……ぐっ……!」
その言葉の一つ一つが九頭竜のプライドをズタズタにしているとも知らずに。
そんな九頭竜に少年は歩み寄ると、そっと手を差し伸べた。
「そう気を落とすな。ここまでライフを削られたのは初めてだ。少なくとも ── さっき倒した、
「……あ"ぁ……!? ざけんなっ!! 哀れみのつもりかてめぇ!!」
九頭竜は少年の手を乱暴に振り払うと、怒りと気力で闘志を震い起こし、フラつきながらも立ち上がる。
そして血走った眼で少年を
「もう一度だぜっ……もう一度、俺と闘えっ……!」
「………」
(フッ……まるで飢えた猛獣だな)
「断る。今のお前では、これ以上は愉しめそうにないのでな。どうしてもと言うのなら、腕を磨いて出直してこい」
「くっ……くそがぁ……!」
少年の率直な物言いに、反論の余地は無く……
食い下がれなくなった九頭竜は、ただただ拳を握り締め、歯噛みする他なかった。
「……てめぇ……名前は?」
「……鷹山。鷹山 要だ」
「鷹山か……覚えとくぜ。俺は九頭竜……九頭竜 響吾だ!! 忘れんなよ……てめぇを撃ち殺す男の名だっ!!」
ここでようやく、お互いの名前を知った二人。
そして九頭竜の宣戦布告を受けた少年 ── 鷹山 要は、口元に手を当てた上品な仕草で、何故だか笑い出す。
「フッ、フフフッ……」
「てめぇ! なに笑ってやがるっ!!」
「いや、すまない。この俺に負けても
カナメはそれまで冷めた眼差しとポーカーフェイスで固定していた表情を
「良いだろう……覚えておいてやる、九頭竜 響吾。自信がついたならいつでも挑んでこい。 ── 愉しみにしているぞ」
最後にそれだけ言い残し、カナメは
「……鷹山 要……」
(今に見てやがれ……必ずてめぇを撃ち殺して、俺の前に這いつくばらせてやるっ!!)
この時より、九頭竜 響吾と鷹山 要は、追う者と追われる者の深い因縁で結ばれる事となった。
それから5年の月日が流れ……
ついに二人は、この学園での『最終決戦』の時を迎える ──
「………思い出すな」
「あ?」
「覚えているか九頭竜? 俺とお前が、初めて
「……忘れたくても忘れらんねぇよ、今思い出してもムカつくぜ。てめぇの
「そうかも知れないな。だが九頭竜……お前から感じる
「……くだらねぇ。そういうとこがムカつくっつってんだ」
「だからこそ、お前が
「俺と
……えーっと……ボク達は今、何を聞かされてるんだろう? ノロケ話?
「フッ……これは失礼した、続けてくれ」
「 ── 俺は手札から永続魔法・【前線基地】を発動! メインフェイズに一度、手札のレベル4以下のユニオンモンスター1体を特殊召喚できる! 出撃しろ、【
【
「さらに
九頭竜くんの右手に鋼鉄のグローブが装着され、その手で2枚デッキから引いた。
「まだまだ行くぜッ! 【B-バスター・ドレイク】のモンスター効果発動! 【アサルト・コア】に【バスター・ドレイク】を合体!」
2体の
『これぞユニオンモンスターの真骨頂! 自らを装備カードとして、別のモンスターに装備できるのだッ!』
「バトルだッ……! 【アサルト・コア】で攻撃!」
【A-アサルト・コア】がカナメの裏守備モンスターに、ビームライフルの
「永続
「!」
『あぁーっとッ! やはり鷹山選手は
「俺のデッキの特徴を踏まえて、後攻有利と見たのだろうが……詰めが甘いな、九頭竜。 ── 俺はセットモンスター・【カイザー・サクリファイス】をリリースし……現れろ、【
【
「チッ、出やがったか……!」
「【カイザー・サクリファイス】をリリースしてアドバンス召喚に成功した時、このカードは手札に戻る。そして【ザボルグ】の効果。召喚に成功した場合、モンスター1体を破壊する。 ── 消え去れ、【アサルト・コア】。『デス・サンダー』」
【ザボルグ】は天から
ところが……落雷による煙が晴れると、消滅したのは装備されていた【B-バスター・ドレイク】だけで、【アサルト・コア】はまだフィールドに生存していた。
「……装備した【バスター・ドレイク】を身代わりにさせてもらったぜ。さらに【バスター・ドレイク】がフィールドから墓地へ送られた場合、デッキからユニオンモンスターを1枚、手札に加える事ができる。俺は【
「……なるほど、俺への対策は万全ということか」
「当たり前だろうが。てめぇと何年
『さぁ九頭竜選手、鷹山選手に上級モンスターの召喚を許しはしたが、
……カナメにとって、九頭竜くんのデッキ
逆に九頭竜くんは、カナメのデッキを知り尽くして圧倒的なアドバンテージを得ているかも知れない。
この
「俺のターン。【ザボルグ】で【アサルト・コア】を攻撃。『ローリング・サンダー』」
【ザボルグ】は
「っ……!」
九頭竜 LP 4000 → 3500
『おぉーっとッ! この試合、最初にダメージを受けたのは、九頭竜選手となったァ!』
「……ケッ、たかが500程度のライフ、くれてやるよ」
「ずいぶんと余裕だな?」
「【アサルト・コア】が墓地へ行った事で、効果発動だ。墓地からこいつ以外のユニオンモンスターを1体、手札に加える。俺は【バスター・ドレイク】を加えるぜ」
これで九頭竜くんは次のターン、【前線基地】も使って、また2体のユニオンモンスターを並べられる。
「……俺はカードを1枚伏せ、モンスターをセット。ターンエンドだ」
あのセットモンスターは間違いなく、【カイザー・サクリファイス】だろうね。
放置しておくと、またアドバンス召喚の為のリリース要員になりかねない。地味に厄介なモンスターだ。
「俺のターン! 【C-クラッシュ・ワイバーン】を召喚!」
【
「さらに【前線基地】の効果で、もう一度【バスター・ドレイク】を特殊召喚!」
【B-バスター・ドレイク】 攻撃力 1500
「くくくっ……鷹山。今からてめぇに、おもしれぇモンを見せてやる!」
「ほう、それは愉しみだ」
「俺はフィールドの【クラッシュ・ワイバーン】と【バスター・ドレイク】、そして墓地の【アサルト・コア】をゲームから除外し ── こいつらを合体融合する!!」
「!」
おぉ、今度は3体で合体か!
【アサルト・コア】の砲身の右側に【バスター・ドレイク】が、左側に【クラッシュ・ワイバーン】がドッキングし、さながら2つの首と
「融合召喚!! レベル8・【
【ABC-ドラゴン・バスター】 攻撃力 3000
『こ……攻撃力3000~ッ!?』
「それがお前の新たなエースモンスターか……」
墓地のモンスターまで素材に出来て、その上【融合】カードを必要としないだって!?
こうも手も無く最上級モンスターを呼び出せるのか、進化した九頭竜くんのデッキは……!
「モンスター効果発動! 【ABC】は1ターンに一度、手札を1枚捨てる事で、フィールドのカード1枚を除外できる! 失せな! 【雷帝ザボルグ】!」
「……誰に
「!!」
「【ザボルグ】をリリースし、【ABC-ドラゴン・バスター】の効果を、このターンの終わりまで無効にする」
【ザボルグ】は自分の身体に
除外される前に、カードのコストとして墓地に送って有効活用するとは、抜け目ないね。
「その
「ハッ、しゃらくせぇ! 【ABC-ドラゴン・バスター】! 奴の守備モンスターを蹴散らせっ! 『A・B・C トランセンド・バスター』!!」
文字通り
「……!」
「オラァどうした鷹山! てめぇの
「……フフッ、さすがだ九頭竜……。お前の
「あぁ? まだ余裕があるって言いてぇのか!」
「お前のその輝きに応える為にも、俺も全力で行かせてもらおう。俺のターン」
……いよいよカナメも、スイッチが入ったみたいだね。
「……手札より永続魔法・【
(……うぜぇカード出してきやがったな……どうする、消しとくか?)
「………」
「……チッ! 【ABC】の効果! 手札を捨てて、【進撃の帝王】を除外するぜ!」
「!」
『え、永続魔法まで除外されたァーッ!? あの効果は相手ターンでも発動できるのか!? なんと恐るべき制圧力ッ!!』
……! いや、これは ──
「あぁ、そう来るだろうと思っていた」
「!?」
「【進撃の帝王】はただの
「てめぇ……わざと使わせやがったのか!」
「その通りだ。これで心置きなく、
【雷帝ザボルグ】 守備力 1000
「そして装備モンスターをアドバンス召喚の為にリリースする場合、1体で2体分として扱える。【雷帝ザボルグ】をリリースし……現れろ ── 【
カナメも負けじと最上級クラスのモンスターを召喚した。
【雷帝ザボルグ】よりも、さらに
【
「【轟雷帝ザボルグ】の効果。アドバンス召喚した場合、モンスター1体を破壊する。対象は当然 ── 【ABC-ドラゴン・バスター】だ」
「っ!」
「『サンダー・デストラクション』」
いくつもの
(クソがぁ!)
「【ABC】! 分離しろっ!」
破壊される直前、【ABC】は合体を解除。
バラけた3体が九頭竜くんのフィールドに帰還した。
【A-アサルト・コア】 守備力 200
【B-バスター・ドレイク】 守備力 1800
【C-クラッシュ・ワイバーン】 守備力 2000
「おっと、かわされたか……まぁいい。永続
名の通り
攻撃力が一番高いからか、もう3回も雷に打たれてる【アサルト・コア】。そろそろ
「チィ……!」
「カードを1枚伏せ、俺のターンは終了だ」
(上等じゃねぇか……ぶっ潰してやるッ!!)
「俺のターンだ! ……鷹山、【ABC】が消えて良い気になってんのか知らねぇがな……
「……!」
「墓地の【
── ! そうか、【ABC】の効果のコストとして、あらかじめ墓地に送ってたのか!
これでまた【ABC】の召喚が可能になった。転んでもタダでは起きないってわけだね。
「俺は【バスター・ドレイク】と【クラッシュ・ワイバーン】をリリースし、【
【可変機獣 ガンナードラゴン】 攻撃力 2800
「さらに! 墓地の【A】、【B】、【C】 ── 3体のユニオンモンスターを除外し、【ABC-ドラゴン・バスター】を再び合体召喚だッ!!」
【ABC-ドラゴン・バスター】 攻撃力 3000
「モンスター効果発動! 手札を1枚捨て、【轟雷帝ザボルグ】を除外だ!」
「!」
【轟雷帝ザボルグ】の姿がフィールドから消えて無くなる。
これでカナメの壁モンスターは居なくなった。九頭竜くんにとっては恐らく、またとない大チャンスだ。
「このターンで撃ち殺してやる ── バトルだっ! 【ABC】でダイレクトアタック!!」
- トランセンド・バスター!! -
「っ……ぐあぁっ!」
カナメ LP 4000 → 1000
倒れはしなかったものの、カナメの身体は大きく後退させられた。靴の
『き、決まったァァーーーッ!? なんと凄まじい一撃! 鷹山選手のライフが、一気に3000も削られてしまったァァーッ!!』
「っ……!」
でも次の瞬間、さらに驚くべき事が起こった。
衝撃に耐え切れなかったのか、カナメが体勢を崩し ──
「くっ……!」
そのまま、床に
『なっ……なっ、なんという事だァァァッ!? あの鷹山選手が、対戦相手の前で
マック伊東さんの口振りから察するに、きっとカナメのこんな姿を見た者は、今まで誰もいなかったんだろう。
観客席は一気に騒然とし、何なら軽くパニックになりかけていた。
「…………素晴らしい……ッ!」
── !
「この痛みだ……この痛みこそが俺を本気にさせるッ……!」
その時、カナメが顔を上げ……今まで見た事のない笑みで、表情を
今回は九頭竜とカナメの馴れ初め……ではなく、過去編も交えての頂上決戦パート1でした!
この二人の過去については、これだけ語れば事足りるでしょう。
最後のカナメさんは、マンガ版の黒咲さんみたいな顔芸をイメージして頂ければと思います(笑)
次回、因縁の対決 ── ついに決着です!