遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 【ドリーム・ピエロ】と【ウッド・ジョーカー】と【仮面道化】……どうして魔法使い族じゃなくて戦士族なんや……

 狼城に使わせたかった……(泣)

 【2021/10/06 追記】 狼城が使った【奇跡のマジック・ゲート】を【精神操作】に変更して、その後のデュエルの内容も一部修正しました。

 【奇跡のマジック・ゲート】に破壊耐性付与の効果があるのをすっかり見落としていた……



TURN - 52 Clowns Laughing At You - 1

 

 アリーナ・カップの準決勝(セミ・ファイナル)・第1試合 ── 鷹山(ヨウザン) (カナメ)九頭竜(くずりゅう) 響吾(キョウゴ)決闘(デュエル)は、鷹山 要の勝利で大盛況の内に幕を閉じた。

 

 あれほどの激闘……最高潮まで沸き上がった観客達の興奮が早々(そうそう)に冷めるわけもなく、次の試合の開始を待っている間、観客席ではそこかしこで、第1試合の内容について人々が熱く語り合っていた。

 

 そしてそれは観客に限らず、ここに集まっている報道陣の人間も同様だった ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はや)()さ~んっ! スゴかったですねさっきの決闘(デュエル)ぅーッ!!」

 

 

 

 雑誌記者の腕章(わんしょう)を二の腕に巻いた二十代前半と思わしき女性が、同じ腕章を付けている中年の男性に、興奮気味な口調で試合の感想を告げた。

 

 

 

「声がデケぇぞ(あら)()。気持ちは分かるがちと落ち着け」

 

 

 

 (はた)から見ると、親子かの様な二人のやり取りを漏れ聞いた周囲の記者達は、微笑(ほほえ)ましそうにクスクスと笑う。

 

 

 

「ほれ見ろ、人目があんだからもう少し大人しくしとけ。生徒と間違われて追い出されても知らねぇぞ?」

 

「あ、すいませ~ん……でもでも! 観客も今まで以上にスッゴい盛り上がりだったじゃないですか~! あんなプロ並みの決闘(デュエル)を観せられて、興奮するなって方が無理ですよ~!」

 

「……まぁ確かにそうだな……俺も内容が()すぎて、決勝戦を観てる気分だったわ。これでまだ準決勝だってんだからな……」

 

「ですよね!? そしてそしてー! 次はいよいよ私の()しのセツナ君の出番! 全力で応援しちゃいますよ~!」

 

「またオタクが発動してるぞ新井。今は仕事中だ、抑えろ。……にしても、今日の相手は『十傑(じっけつ)』の狼城(ろうじょう) (アキラ)か……さすがに今回ばかりは相手が悪いだろうな」

 

「大丈夫ですッ! なんてったってセツナ君は、1回戦で同じ十傑に勝ってるんですから!」

 

「あのなぁ……仮にも相手は去年のアリーナ・カップ第3位 ── 〝トリック・スター〟だぞ? それに……」

 

「それに?」

 

「……昨日(きのう)一昨日(おととい)の試合を観てて思ったが……どうもあのセツナ君ってのは、腕は良いが場当たり的なプレイングが目立ってて、いかんせん安定さに欠ける。正直なんであんな危なっかしい闘い方で、ここまで勝ち上がれたのか不思議なくらいだ」

 

(まぁ、だからこそ……あの意外性に()んだ、相手にとっちゃ予測しづらい決闘(デュエル)ができるんだろうけどな)

 

「むっ、むむむぅ~! いくら早瀬さんでも、セツナ君をディスるのは許しません!」

 

「別にディスっちゃいねぇよ。ただ客観的に見た印象を()べたまでだ。はっきり言って、持ち前のセンスに頼った荒削(あらけず)りな戦術が通じるほど、狼城は甘い相手じゃない」

 

「むぅ……」

 

「……そうむくれるな。何も絶対勝てないと言ってるわけじゃねぇんだ。 ── 決闘(デュエル)に『絶対』なんて、ねぇんだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くしゅん!」

 

「どしたんセツナ君、()()? つか可愛いくしゃみだな」

 

「あー、ごめん狼城くん。誰か噂でもしてるのかな……」

 

 

 

 ボクは今、次に自分が出場する準決勝・第2試合の始まる時間まで、狼城くんと二人っきりで仲良く雑談しながら、係員さんが呼びに来るのを(ひか)え室で待っていた。

 

 向かいのソファーに座る狼城くんは、さっきからずっとルービックキューブを組み立てて、ヒマを潰している。

 ボクと喋ってる間も彼の両手は一切の(よど)みなく、スピーディーにキューブを(いじ)くり回し続けていた。

 

 

 

(……お? メッセージ、誰からだろ)

 

 

 

 ボクの携帯端末にメッセージが届いたので開くと、()()に作った『メッセージグループ』に、友達からの応援の言葉がズラリと(つづ)られていた。

 

 実はこれ、最近実装された端末の新機能で、グループに招待したメンバー全員に、一括(いっかつ)でメッセージを送れてスゴく便利なんだ。

 

 ちなみにこのグループのメンバーは、ボクとアマネとマキちゃん、そしてルイくんとケイくんとコータの6人で、グループ名はマキちゃんが提案した、『ファミレス仲良し連合』。

 

 由来は選抜試験1日目に、ルイくんの初勝利を祝ってファミレスで乾杯した時のメンツだからだそうで、何名か微妙な反応を示したものの、最終的にまぁいいかって感じで採用された。

 

 

 

(フフッ、なんか嬉しいなぁ、こういうの。 ── 『ありがとうみんな、がんばるよ!』……送信っと)

 

「おーおー、なぁにニヤニヤしてんのよ? 彼女からの応援メッセージかぁ?」

 

「へっ!? そ、そんなニヤニヤしてた!? ていうか彼女とかじゃないし!」

 

「ハハッ、照れんな照れんな。……つーかさ、セツナ君って、本命とかいんの?」

 

「え?」

 

「女とっかえひっかえしてるって噂で聞くけどよ、本命の子はいねーのかって話」

 

「ま、まだそんな風に言われてるんだ……ボクはそんなんじゃないし、本命どころか恋愛的な意味で好きな子は、まだいないよ」

 

「……ふーん?」

 

「な、なにその意味ありげな『ふーん』は?」

 

「うんにゃ? オレぁてっきり、あの黒髪のエロい身体(からだ)した(ねえ)ちゃんと、デキてんのかと思ってたわ」

 

「ア、アマネは友達だよ!」

 

「そうかい。そいつぁ何よりだ」

 

「?」

 

(良かったなミサキ嬢。まだフリーだってよ)

 

 

 

 ボク達が年頃の男子らしい話題でボーイズトークしていた時、不意にドアがノックされた。

 

 

 

総角(アゲマキ)選手、狼城選手。間もなく試合開始です。準備と待機をお願いします」

 

 

 

 入ってきたのはもちろん、ボクらを呼びに来てくれたスタッフさんだ。

 

 

 

「あ、うん。行こう、狼城くん」

 

「おう」

 

 

 

 狼城くんは返事してから、机の上にルービックキューブを置いた。

 

 ふとそれに目をやると……

 

 

 

「!」

 

 

 

 なんと6つの面が全て、同じ色に揃えられていた。

 

 

 

「 ── ほんじゃ、まっ……行こうか」

 

 

 

 そう言ってボクと目を合わせ、静かに微笑んだ狼城くんから……凄まじい威圧感が放たれた。

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

 昨日(きのう)マキちゃんとの試合を観客席で観てた時に感じた、あの身を切る様なプレッシャーを目の前でかけられて、たちまちボクは戦慄(せんりつ)する。

 どうやら……彼もスイッチが入ったみたいだ。

 

 

 

「手加減はしねーぜ?」

 

「……望むところだよ」

 

 

 

 ゴクッと生唾(なまつば)を飲んでそう答え、再び狼城くんと会場まで移動する。

 

 今回も今までと同じく……いや、下手したら今まで以上に厳しい闘いになるのは間違いないね……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 ── 第1試合の熱気がまだ冷めやらぬ中ではあるが、いよいよ第2試合の時間だッ!! これが本日最後の試合! みんなその高まった熱量を、次の闘いにも存分に注いでくれッ!! それでは! 選手入場ォォーッ!!』

 

 

 

 始まったか……。いつもの流れで、スモークがゲートの周りを覆い尽くしたのを合図として、ボクは場内へ踏み()った。

 

 

 

『まず現れたのは、今年の4強の中で唯一の2年生!! ()(とう)の快進撃は(とど)まる事を知らず、ついにこの準決勝にまで(コマ)を進めた驚異の新鋭(しんえい)だ! 2年・総角 刹那(セツナ)ァァーッ!!』

 

 

 

 おぉ、スゴい歓声。正直カナメと九頭竜くんの試合に比べたら、盛り上がりは(ひか)えめになるかと思ってたけど、全然そんな事なかったや。

 

 

 

(……カナメもどこかで観てるのかな?)

 

 

 

 お礼の意味を込めて観客席に手を振りながら決闘(デュエル)フィールドに到着すると、()もなく対戦者(がわ)の入場口からも、次の選手を出迎えるスモークが噴き出した。

 

 

 

『だが! そんなスーパールーキーの前に、最後の難関(なんかん)が立ちはだかる!! 人呼んで〝トリック・スター〟!! その異名に(たが)わぬ変幻自在のトリックプレイは、誰にも予測不可能! 果たして今日は我々に、どのようなショーを魅せてくれるのか!? 3年・十傑 ── 狼城 暁ァァーッ!!』

 

 

 

 ── 不敵な笑みを浮かべる狼城くんが、スラリとした長い(あし)で軽快にこちらへ歩いてくる。

 

 やがて舞台に上がった狼城くんは、ボクと向き合うと何故か小さく笑った。

 

 

 

「ハハッ、『最後の難関』だってよセツナ君。……イイねぇ、一度言ってみたかったセリフがあんだ」

 

 

 

 狼城くんは、シックなデザインが渋い、グレータイプのデュエルディスクを左腕に装着して起動させた(あと)、ボクにこう宣言した。

 

 

 

「 ── ここを通りたけりゃあ、オレを倒してからにしなッ!」

 

「……!」

 

 

 

 彼の勝ち気な言葉で、ボクの闘争心にも火が()いた。高揚(こうよう)感から自然と口角が上がり、ボクは威勢よく自分のディスクを構える。

 

 

 

「通らせてもらうよ、狼城くん!」

 

『さぁ両選手、共にいつでも決闘(デュエル)に入れる構えだ! 決勝戦の切符を勝ち取るのはトリックスターか!? それともスーパールーキーか!? ── アリーナ・カップ準決勝・第2試合! 総角 刹那 vs 狼城 暁!! イィ~~~ッツ! タイム・トゥ ──』

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 狼城(ろうじょう) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「ボクの先攻(ターン)! 魔法(マジック)カード・【予想GUY(ガイ)】を発動! デッキから【デビル・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】攻撃力 1500

 

 

 

「さらに【ラヴァ・ドラゴン】を通常召喚!」

 

 

 

【ラヴァ・ドラゴン】攻撃力 1600

 

 

 

(あとは次のターンで2体をリリースして……手札の【ホーリー・ナイト】を召喚だ!)

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了(エンド)!」

 

「オレのターン! 【()(どう)()】召喚!」

 

 

 

【魔道化リジョン】攻撃力 1300

 

 

 

 ……狼城くんのデッキは、モンスターが魔法使い族のみで統一された、魔法使い族(マジシャン)デッキ。

 

 魔法(マジック)カードと(トラップ)カードを巧みに操り、エキセントリックな戦術で相手を翻弄(ほんろう)する(さま)は、まさしく〝トリック・スター〟と言ったところ。

 

 とりあえず一番警戒すべきなのは……やっぱり【大逆転クイズ】だね。あのカードは本当におっかない。

 

 

 

「 ── 【魔道化リジョン】の効果で、オレはこのターン……魔法使い族をもう1体、アドバンス召喚で場に出せる」

 

「っ!」

 

 

 

 しまった、先を越されたか!?

 

 

 

「【リジョン】をリリース! 上級サイコキネシス使い(サイコキニート) ── 【ミュータント・ハイブレイン】召喚!!」

 

 

 

【ミュータント・ハイブレイン】攻撃力 0

 

 

 

「………えっ?」

 

(攻撃力1300のモンスターをリリースして召喚したのが……【ハイブレイン】……? 攻撃力(ゼロ)?)

 

 

 

 ……いや……あのモンスターから感じる、ただならない邪気(オーラ)……

 わざわざこの局面で出してきたんだ、きっと何かある……!

 

 

 

「墓地に送られた【リジョン】の効果で、オレはデッキから ── 【コスモクイーン】を手札に加えるぜ」

 

「!!」

 

 

 

 【コスモクイーン】……! マキちゃんとの決闘(デュエル)でフィニッシャーになった、狼城くんのエースカードか……!

 

 これはちょっと、開始2ターン目にして雲行きが怪しくなってきたかも……

 

 

 

「さてと……行くぜセツナ君。 ── バトル!」

 

(っ! 来るっ!?)

 

「【ハイブレイン】の攻撃! 『テレキネシス・ハンド・フォース』!」

 

 

 

 【ミュータント・ハイブレイン】は、念力(ねんりき)か何かで半透明の腕を2つ作り出して、こちらへ伸ばしてきた。

 

 

 

「【ハイブレイン(こいつ)】ぁ念動力(テレキネシス)の手で、相手モンスターを(あやつ)る事ができる。ターゲットは【ラヴァ・ドラゴン】だ!」

 

 

 

 『ハンド・フォース』が【ラヴァ・ドラゴン】の頭部を掴んで捕らえる。

 

 すると【ラヴァ・ドラゴン】は、その手に身体を無理やり動かされて、【デビル・ドラゴン】の方へと向かされた。

 

 

 

「なっ……!?」

 

「【ラヴァ・ドラゴン】で【デビル・ドラゴン】を攻撃!」

 

 

 

 【デビル・ドラゴン】は味方からの攻撃を受けて、倒れてしまう。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 3900

 

 

 

「安心しな。バトルフェイズが終われば、コントロールはオマエに戻るぜ」

 

「っ……ボクのモンスター同士で闘わせるなんて……いきなりトリッキーな()()をしてくるね……!」

 

 

 

 そう言えばトーナメント1回戦で、鰐塚(ワニヅカ)ちゃんにも同じ様な事してたっけ。

 

 

 

「誉め言葉と受け取ってやんよ。……おっと、忘れずに伏せ(リバース)カードを2枚伏せておくぜ。ターンエンドだ」

 

『早くもアゲマキ選手に100ポイントのダメージ! たかが100、されど100! この差が(のち)の展開に与える影響は(はか)り知れない!』

 

 

 

 実況さんの言葉はごもっともだ。ボクは改めて気を引き締める。

 

 

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

(攻撃力(ゼロ)の【ハイブレイン】が攻撃表示のまま……今がチャンスだ!)

 

「行くよ狼城くん! 【ラヴァ・ドラゴン】で、【ハイブレイン】を攻撃!」

 

 

 

 【ラヴァ・ドラゴン】が燃え盛る溶岩(ようがん)を吐き出す。

 

 

 

「まっ、そう来るわな。(トラップ)発動、【迎撃(げいげき)準備】! 【ハイブレイン】を裏側守備表示にするぜ!」

 

「あっ!?」

 

 

 

 【ハイブレイン】が裏側表示でセットされた事で姿を消す。

 攻撃は止められず、そのままダメージステップに突入。攻撃対象となっていた【ハイブレイン】は、再び表側表示になった。今度は守備で。

 

 

 

【ミュータント・ハイブレイン】守備力 2500

 

 

 

 【ラヴァ・ドラゴン】の攻撃は、【ハイブレイン】が張ったバリアに弾かれてしまう。

 

 

 

「うぐっ……!」

 

 

 

 セツナ LP 3900 → 3000

 

 

 

「攻撃力(ゼロ)で、棒立ちさせとくわけねーじゃん」

 

(やられた……!)

 

「おーい何やってんだぁーっ!」

 

「しっかりしろぉーっ!」

 

「何の用意もせず攻め込むなよーっ!」

 

『アゲマキ選手、立て続けに二度目のダメージ! これには観客もブーイングだぁーっ!』

 

 

 

 うっ、情けないところを見せて申し訳ない……

 

 

 

「ほらほらどうしたセツナ君よぉ? そんなんじゃカナメに追いつけねーぜ?」

 

(……落ち着け、ボク。……うん、大丈夫)

 

伏せ(リバース)カードをさらに1枚セット!」

 

 

 

 ボクのモンスターが1体だけなら、【ハイブレイン】も攻撃はできない。ひとまずはこれで様子見かな。

 

 

 

「よし、ボクはターンを終了するよ」

 

「………」

 

(リバースカードが2枚か……まぁ一応確認しとくかね)

 

「ちょい待ち、オレぁエンドフェイズに(トラップ)を発動するぜ。 ── 伏せカード・オープン! 【マインド・ハック】! ライフを500払って、オマエの手札と場の伏せカードを見せてもらおうか!」

 

「えっ……?」

 

 

 

 ディスクのスイッチは何も押してないのに、ボクの魔法・(トラップ)ゾーンにセットしていたカードが、2枚とも勝手にオープンした。

 

 

 

 狼城 LP 4000 → 3500

 

 

 

「ちょ、ちょっとぉ!?」

 

「ほれ、早く手札も見せなって」

 

「っ………」

 

 

 

 こっちのモンスターを操るだけに飽き足らず、手札と伏せカードを覗き見してくるなんて……

 

 仕方ない……ボクは渋々(しぶしぶ)、自分の手札を公開した。

 

 手札は【ホーリー・ナイト・ドラゴン】と【ヤマタノ(ドラゴン)絵巻】の2枚。両方モンスターカード。

 

 そして伏せカードは、(トラップ)カード・【副作用?】と、【聖なる(よろい) -ミラーメール-】だ。

 

 

 

「ふむふむ、ほぉ~? 手札はとりま、【ホーリー・ナイト】を警戒しときゃ良いとして……【副作用?】たぁ、またマイナーなカード入れてんねぇ~。まぁオレがドローできんのはありがてぇから、いつでも使ってくれて良いぜ。 ── それよか【-ミラーメール-】は地味に邪魔だな。さて、どーすっか……」

 

(うぅ……手の内を見られるのって、なんかスゴく恥ずかしいな……)

 

「……決めたぜ」

 

「!」

 

「オレのターン、まずはカードを1枚セット! そんで ── 【闇・道化師のサギー】召喚!」

 

 

 

【闇・道化師のサギー】攻撃力 600

 

 

 

 ── ! あのモンスターは知ってる……

 決闘王(デュエル・キング)・武藤 遊戯の永遠のライバル ── (かい)() ()()もデッキに入れていたカードだ……!

 

 けど、攻撃力では【ラヴァ・ドラゴン】の方が(まさ)ってるのに攻撃表示なんて……今度は何をするつもりなんだろう?

 

 

 

「さらに手札から魔法発動。【精神(そう)()】!」

 

「!」

 

(ワリ)ぃなセツナ君。もっかい【ラヴァ・ドラゴン】借りるぜ?」

 

 

 

 またもや【ラヴァ・ドラゴン】のコントロールを、狼城くんに奪取(だっしゅ)された。

 

 

 

「ま、またボクのモンスターを……! て言うか狼城くん、さっきからこっちのカード勝手に触り過ぎじゃない!?」

 

「立派な戦術と言ってほしいねぇ。何にせよ、これでオマエの場はガラ空きだ。モンスターがいねぇんじゃあ、【-ミラーメール-】も使い道ねぇよなぁ?」

 

「くっ……」

 

「バトルだ、【サギー】で直接攻撃(ダイレクトアタック)! 『ダーク・グライド』!」

 

 

 

 【サギー】は闇のエネルギーを圧縮させた球体で、ボクを攻撃した。

 

 

 

「ぐあっ……!」

 

 

 

 セツナ LP 3000 → 2400

 

 

 

 マズイ……ボクのライフが着々(ちゃくちゃく)と削られていく……!

 

 

 

「続けて【ラヴァ・ドラゴン】でダイレクトアタック! ……と、行きてぇとこだが……残念ながら【精神操作】で奪ったモンスターは攻撃できねぇ。オレぁターンエンドするぜ」

 

 

 

 エンドフェイズで【精神操作】の効果は切れ、【ラヴァ・ドラゴン】は無事にボクの場へ帰ってきた。二度もフィールドを往復させられて本当お疲れさま……

 

 にしてもヤバいな……狼城くんの場にはモンスターが2体(そろ)った。(ほう)っておいたら次のターン、【魔道化リジョン】の効果で手札に加えていた、【コスモクイーン】を召喚されてしまう……何とかしなくちゃ!

 

 

 

「ボクのターン!」

 

(さっきは失敗したけど、今度こそ!)

 

「バトル! 【ラヴァ・ドラゴン】、【闇・道化師のサギー】を攻撃だ!」

 

「 ── くくっ」

 

 

 

 【ラヴァ・ドラゴン】の発射した溶岩が【サギー】に迫る。

 

 

 

「残念だね、セツナ君」

 

「!」

 

 

 

 ところが ── 攻撃が当たる寸前、【サギー】の姿が一瞬にしてフィールド上から消え去った。

 

 

 

(なっ……消えた!?)

 

(トラップ)カード・【フォーチュン・スリップ】。【サギー】は次のオレのスタンバイフェイズに、時間移動した」

 

「じ、時間移動だって……!?」

 

「時間移動した【サギー】にダメージは与えらんねぇ。【コスモクイーン】の召喚を()()したかったんだろうが、無理だったねぇ」

 

「っ……ボクは、モンスターをセットして、ターンエンド……!」

 

「あーあ。結局2体とも残っちまったなぁ?」

 

「くぅ……」

 

「ほんじゃ、オレのターンだ。このスタンバイフェイズで、さっき除外した【サギー】が戻ってくる」

 

 

 

【闇・道化師のサギー】攻撃力 600

 

 

 

 一足先に狼城くんのターンへタイムスリップしていた【サギー】が、フィールドに帰還するや否や ──

 

 

 

『キャハハハハッ★ キャハッ★ キャハハハハッ★ ハハハ★』

 

 

 

 ボクを指差して高い声でケラケラと嘲笑(あざわら)ってきた。な、なんかヤな感じ……

 

 

 

「さぁ……ショータイムだ。 ── 【ハイブレイン】と【サギー】をリリース! 【コスモクイーン】をアドバンス召喚ッ!!」

 

 

 

【コスモクイーン】攻撃力 2900

 

 

 

『出たァァーッ!! 狼城選手のエース・【コスモクイーン】!!』

 

 

 

 とうとう切り札を出されちゃったか……でも、こっちの場には【-ミラーメール-】が伏せてあるのは狼城くんも分かってる筈。()(かつ)に攻めては……

 

 

 

「【コスモクイーン】で攻撃 ── の前に……手札より速攻魔法発動! 【(ふう)()の矢】!」

 

「!!」

 

 

 

 突然、無数の矢の雨が降り注いできて、ボクの伏せカード2枚を串刺しにした。

 

 これじゃ発動できないっ……!

 

 

 

「おやおや……よっぽど重要なカードだったかな?」

 

「ぐっ……よく言うよ、知ってたくせに……!」

 

「くくくっ、これで安心して攻撃できるな。 ── 【コスモクイーン】! 【ラヴァ・ドラゴン】を攻撃しろ! 『コズミック・ノヴァ』!!」

 

 

 

 宇宙を統べる女王は、巨大で黒いエネルギーの塊を【ラヴァ・ドラゴン】にぶつけ、一撃で粉砕する。

 

 

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 2400 → 1100

 

 

 

(つっ……強い!)

 

『【コスモクイーン】の強烈な攻撃が決まったァァーッ!! どうしたことか!? あのアゲマキ選手が、まるで歯が立たないっ! 一方、狼城選手はアゲマキ選手の攻撃をヒラリと(かわ)し続け、ライフも自らのカードコストで支払った500ポイントしか減っておらず、未だ余裕の表情! 戦況はもはや、トリック・スターの独壇場(どくだんじょう)だぁーッ!!』

 

「相手が悪かったなぁ、セツナ君。どうする? 諦めてサレンダーするってんなら、認めるぜ?」

 

「……あいにく、ボクの辞書に『サレンダー』とか『諦める』って文字は無くてね!」

 

 

 

 そうだ、ここまで来て負けられない。

 

 今が正念場だ ── 意を決してボクは、メガネを外す。

 

 集中モードに切り替わり、自分の身体から闘気が(せき)を切った様に(ほとばし)るのを感じながら、対峙する狼城くんを(せい)()した。

 

 

 

「っ!! ……ハハッ、こりゃスゲぇ……カナメが一目(いちもく)置くわけだわ。……ゾクゾクするぜ……!」

 

「ボクのターン……ドローッ! ── ボクは【ヤマタノ(ドラゴン)絵巻】を反転召喚!」

 

 

 

【ヤマタノ(ドラゴン)絵巻】守備力 300

 

 

 

「さらに手札から魔法(マジック)カード・【馬の骨の対価】を発動! 通常モンスターの【ヤマタノ(ドラゴン)絵巻】を墓地に送って、カードを2枚ドローする!」

 

「ここに来て手札増強か……持ってんねぇ」

 

「……ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「なんでぇ、本気モードになったって割りにゃあ、そんだけか? オレのターン、ドロー」

 

(……このターンで攻撃すりゃ、オレの勝ちだが……あの3枚目の伏せカードが()(ざわ)りだな)

 

「どうしたの狼城くん? ボクはこの通り、丸腰だよ?」

 

 

 

 言いながら、わざとらしく両手を広げて、ボクは狼城くんを(あお)ってみせる。

 

 

 

「……ハッ、このオレを挑発するたぁ良い度胸してんじゃねーの。……オーケー、乗ってやんよ。【コスモクイーン】でダイレクトアタック!」

 

 

 

- コズミック・ノヴァ!! -

 

 

 

 来たね……! 【コスモクイーン】の攻撃力は、2900。ボクのライフは残り1100。

 

 伏せカードの1枚 ── 【副作用?】で回復して持ち(こた)えるって手もあるけど、ここは新たに伏せた、3枚目を使うとしよう!

 

 

 

「 ── (トラップ)発動! 【カウンター・ゲート】! ダイレクトアタックを無効にして、デッキから1枚ドローする!」

 

 

 

 引いたカードは……やった!

 

 

 

「そのカードがモンスターだった時、攻撃表示で通常召喚できる! ドローしたのは、【ミンゲイドラゴン】! 召喚!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】攻撃力 400

 

 

 

「ケッ、何が丸腰だよ。つーか、つくづく悪運の(つえ)ぇこって。カードを伏せてエンドっと」

 

「ボクのターン!」

 

 

 

 【ミンゲイドラゴン】が来てくれたのは本当にラッキーだった。おかげで前のターンに引き当てた、このモンスターが出せる!

 

 

 

「【ミンゲイドラゴン】を自身の効果で、モンスター2体分としてリリース! 【ラビードラゴン】をアドバンス召喚!!」

 

 

 

 ウサギに似た長い耳と白い体毛を持ったドラゴンがフィールドに着地する。

 

 

 

【ラビードラゴン】攻撃力 2950

 

 

 

「バトル! 【コスモクイーン】を攻撃!!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

 【ラビードラゴン】は口から光線を放ち、【コスモクイーン】を撃破した。

 

 

 

「チッ……!」

 

 

 

 狼城 LP 3500 → 3450

 

 

 

「やっとダメージが(とお)ったね」

 

「……やってくれんじゃん」

 

 

 

 さぁ、ここから反撃開始だ!

 

 

 

 





 今回のタイトルは、2014年に公開された映画・『ピエロがお前を嘲笑う』から引用させていただきました。

 【マインド・ハック】も、それにちなんで使わせました。
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