遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
あ、あけましておめでとうございます、そしてお久しぶりです……!(震え声)
遅筆なのはいつもの事とは言え、さすがに今回は時間がかかり過ぎました(汗)
※前回のデュエルの内容を一部修正した為、セツナの手札が2枚増えてます。
「【ラビードラゴン】で攻撃! 『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」
ボクの自慢の相棒である【ラビードラゴン】の必殺技が、狼城くんの
「【コスモクイーン】撃破ッ! やっとダメージが通ったね」
「へっ…… やってくれんじゃん」
セツナ
狼城
『おぉーっとォッ!! あわや敗北かと思われたアゲマキ選手が、ここでついに反撃に出たッ! 果たしてこのまま押し切れるかっ!?』
いやぁ~正直ボクも、「あっ、これ下手したら負けるかも」って焦ったけど、なんとか巻き返せて良かっ──
「勢いづいたとこ悪ぃけどな…… 詰めが甘いぜ、セツナ君」
「!?」
「
「えっ、ボクのモンスターも復活させてくれるの?」
「オレぁ当然── 【コスモクイーン】を呼び戻すぜ」
【コスモクイーン】守備力 2400
「じゃあボクは【ラヴァ・ドラゴン】を!」
【ラヴァ・ドラゴン】守備力 1200
「ボクはこれで、ターン
結局【コスモクイーン】は戻ってきちゃったか…… けれど、
「オレのターン。……オレ、リキオとセツナ君の
(リキオ? あぁ、
「── セツナ君にちぃとばかし、
「親近感?」
「そっ。なんつーの?
「!」
そういえば
「オレぁ【ミスティック・パイパー】を召喚!」
【ミスティック・パイパー】攻撃力 0
「モンスター効果発動だ。こいつをリリースして、デッキから1枚ドローする」
出てきたばかりの笛吹きおじさんが10秒足らずで退場してしまう。
……何故かサムズアップしながら。
「んで、ドローしたのがレベル1のモンスターだったら、ボーナスでもう1枚ドローできる。── オレが引いたのぁ【ジェスター・コンフィ】、レベル1だ。つーわけで、もう1枚引かせてもらうぜ」
これで狼城くんの手札も2枚…… それに、今ドローしていたモンスターは見覚えがある……!
「【ジェスター・コンフィ】を特殊召喚!」
【ジェスター・コンフィ】攻撃力 0
「さらに装備魔法・【ワンダー・ワンド】を、【ジェスター・コンフィ】に装備!」
【ジェスター・コンフィ】攻撃力 0 + 500 = 500
……【コスモクイーン】が攻撃表示にできないとは言え、わざわざ攻撃力
「オレの目的はモンスターの強化じゃねーよ。【ワンダー・ワンド】の効果発動! 装備モンスターとこのカードを墓地に送る事で、カードを2枚ドローする!」
「なっ……!? またドローするの!?」
「言ったろ? オマエと同じで、オレも引きの強さにゃあ、ちぃとばかし自信があんのよ。── くくっ。しかも、最高のカードが来てくれやがったぜ」
「っ……!」
「しっかし驚いたぜ。まさか後輩相手に、こいつまで使う事になるたぁな」
狼城くんの口振りからして…… どうやら、彼も奥の手を引いたみたいだ……!
「行くぜ…… オレぁ【コスモクイーン】を墓地へ送り── 【コスモブレイン】を特殊召喚ッ!!」
【コスモクイーン】と入れ替わる様に
着物みたいに広い
【コスモブレイン】攻撃力 1500
「【コスモブレイン】の攻撃力は、召喚時に墓地に送ったモンスターのレベル × 200ポイントアップする! 【コスモクイーン】はレベル8、よって1600のアップだ!」
【コスモブレイン】攻撃力 1500 + 1600 = 3100
「さっ…… 3100っ!?」
「バトルだ。【コスモブレイン】で【ラビードラゴン】を攻撃! 『コズミック・サージ』!!」
( ── っ! どうして!? 【-ミラーメール-】が伏せてあるのに……!)
ボクのフィールドには、攻撃反応型の
(っ…… 考えてるヒマは無いか!)
「
「手札から速攻魔法・【禁じられた
【ラビードラゴン】攻撃力 2950 - 800 = 2150
「しまった……!?」
「消し飛びなッ! 【ラビードラゴン】!!」
【コスモブレイン】が手に持った杖を
「うあぁっ!」
セツナ LP 1100 → 150
『アゲマキ選手がやっとの思いで召喚した上級モンスターが、あっさりと破壊されてしまったァァーッ!! これは精神的にもかなり
「せっかくこっからって時に残念だったなぁ? これでオレぁターンエンドするぜ」
『エースモンスターを失いライフも残り150! 並みの
「くっ…… まだ終わりじゃないよ! ボクのターン、ドロー!」
「イイねぇ、その調子でまだまだ張り切ってくれよ。カンタンに終わっちゃあ、つまんねーからな」
「………」
【コスモブレイン】…… まさか【コスモクイーン】の上を往く切り札を隠し持ってたとはね…… さて、どうしたものか……
「── 【ラヴァ・ドラゴン】の効果発動! 守備表示のこのモンスターをリリースして、手札と墓地からレベル3以下のドラゴン族を特殊召喚する! よみがえれ! 【ミンゲイドラゴン】!」
【ミンゲイドラゴン】守備力 200
「そして手札からは、【プチリュウ】を特殊召喚!」
【プチリュウ】守備力 700
「ハッ、なるほどねぇ? てこたぁ次に出てくんのは…… アレだな?」
「その通りだよ。── 再び【ミンゲイドラゴン】をリリース! レベル7の【ホーリー・ナイト・ドラゴン】を、アドバンス召喚!!」
【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 2500
『アゲマキ選手、エースを倒された直後にすぐさま新たな上級モンスターを召喚したァーッ!! さすがここまで勝ち上がってきた期待の新星! まだまだ闘志の炎は消えていないッ!!』
「だが、そいつの攻撃力じゃあ【コスモブレイン】にゃ勝てねーぜ?」
(そうなんだよね……)
「……ボクは手札から装備魔法・【ドラゴン・シールド】を【ホーリー・ナイト】に装備!」
【ホーリー・ナイト】の
「これで【ホーリー・ナイト】は戦闘・効果で破壊されず、バトルによる互いへのダメージは
「守備を固めてきたか。
「……ターンエンド……!」
「オレのターン、ドロー。……くくっ、オレぁ【ジェスター・ロード】を召喚!」
【ジェスター・ロード】攻撃力 0
「【コスモブレイン】の効果発動! 1ターンに一度、自分フィールドの効果モンスター1体をリリースし、手札・デッキから通常モンスター1体を特殊召喚する! オレぁ【ジェスター・ロード】をリリース!」
「っ!」
「くくくっ、オレがデッキから呼び出すのぁな…… こいつだ」
「!?」
【コスモクイーン】攻撃力 2950
「なっ…… 2体目の【コスモクイーン】!?」
「驚いたかい? オレのデッキには、【コスモクイーン】が2枚入れてあるんでね」
『なんという事だぁぁーっ!? この局面で、高攻撃力の上級モンスターが2体!! 狼城選手、ただでさえ
「いよいよショーのクライマックスってとこだなぁ?」
「っ……!」
「バトル! 【コスモクイーン】で【プチリュウ】を攻撃! 『コズミック・ノヴァ』!!」
「うぐっ……!」
【ホーリー・ナイト】は【ドラゴン・シールド】で守られているから、攻撃される心配はない……
とは言えこのままじゃジリ貧だ、どうする……!
「ターンエンドだぜ。さぁ~て…… そのドラゴン1体で、どこまで
「ボクのターン…… ドロー!」
(── よし!)
「手札から【トレード・イン】を発動! 手札のレベル8モンスター・【トライホーン・ドラゴン】を墓地に送って、新たに2枚ドローする!」
良いタイミングで【トライホーン】が来てくれたおかげで、やっと発動できた。
そのうえ、今ボクが引いたこのカード…… コレを上手く使えば、もしかしたら……!
「……ボクは、カードを2枚伏せてターンエンド!」
「なんでぇ、そんだけか? もうちょい見応えがねぇと客が盛り下がっちまうぜ?」
大丈夫…… 勝機はある。
あとは必要なピースさえ揃えれば…… それまで耐えてくれ、【ホーリー・ナイト】……!
「オレのターン! ……くくっ、なぁセツナ君よぉ」
「ん? なんだい?」
「オマエはそのシールドさえあれば、ダメージを
「っ……!?」
「手札から
「!!」
マズイ…… 【ドラゴン・シールド】は、効果ダメージまでは
【ホーリー・ナイト】の攻撃力は2500。その半分って事は、受けるダメージは1250ポイント。食らったら終わりだ──
「くっ!
『アゲマキ選手、ついに最後の命綱を使ったァーッ! 【副作用?】は相手に最大3枚まで、任意の枚数ドローさせ、1枚につき2000ポイントも回復できる、ハイリスク・ハイリターンな
「もち、オレが引くのぁ1枚だけだ」
セツナ LP 150 → 2150
「来いよ、【ホーリー・ナイト・ドラゴン】! 『シャイニング・ファイヤー・ブラスト』!!」
「えぇっ!?」
狼城くんに
ところが炎は【ミスフォーチュン】のエフェクトによって、狼城くんを覆う様に張られたバリアに跳ね返され、ボクを直撃する。
「うわああああっ!!」
セツナ LP 2150 → 900
「ま、またボクのカードを勝手に……」
「悪いねぇセツナ君、オマケにこんな良いカードまで引かせてくれてよ」
「!」
「
ぐっ、よりによって、またドロー増強カードを引かれてしまった……
狼城くんは墓地に眠る【魔道化リジョン】、【ミュータント・ハイブレイン】、【コスモクイーン】、【ミスティック・パイパー】、【ジェスター・コンフィ】の5体をデッキに戻してシャッフルし、2枚のカードを引く。
「これでオレぁターンエンドだ」
(くくっ…… 次のオレのターンで、このショーは幕引きだ。なんせオレの手札にゃあ…… 【
バトルがダメなら効果ダメージと来たか……
こっちの出方に対応して臨機応変に戦法を変えてくる。さすが〝トリック・スター〟と呼ばれるだけあるね……!
カナメの待つ決勝まで、あと一歩なのに…… その一歩が遠い……!
(でも…… 諦めるもんか!)
「ボクのターン、ドローッ!」
── ! 来た、まず1枚! あともう
「
「知ってるぜ、昨日も使ってたもんな。くくっ、良いカードが引けると良いな?」
引けなければ…… ボクの負けだ。絶対に引き当ててみせる!
「ドローッ!!」
── !
「……フフッ、狼城くん。── たった今、勝利のピースが全て揃ったよ!」
「!」
「この1ターンに、ボクの命運を賭ける!!」
「……へぇ? おもしれぇ、お次はどんな踊りを見せてくれんのかな?」
「手札から
「っ!」
「効果の説明は……
【ラビードラゴン】攻撃力 2950
「さらに! 【
【DMZドラゴン】攻撃力 0
「【DMZ】の効果発動! 1ターンに一度、自分の墓地のレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を、攻撃力500アップの装備カード扱いとして、自分フィールドのドラゴン族に装備できる! ボクは墓地の【デビル・ドラゴン】を、【ホーリー・ナイト】に装備!」
【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 2500 + 500 = 3000
(……なんのつもりだ? 【ラビードラゴン】を強化すりゃあ【コスモブレイン】にも勝てるってのに、わざわざダメージを与えらんねぇ【ホーリー・ナイト】に装備するたぁ……)
「── そして手札からもう1枚、
「なんだと?」
『こ、これはどういう事か!? アゲマキ選手、召喚したばかりのモンスターを即座に墓地へ送ってしまったぞぉっ!?』
「……オレの真似っこのつもりか? さっきから何を企んでやがる? とことん食えねぇ野郎だぜ」
「それはお互い様でしょ? さぁ── ここからはボクのショータイムだよッ!! バトル! 【ラビードラゴン】で攻撃!」
「あん? 【ホーリー・ナイト】じゃねぇのか?」
「攻撃するのは…… 【コスモブレイン】!!」
「!?」
『ま、またしてもどういう事かぁーっ!? よりにもよって【コスモクイーン】ではなく、攻撃力で負けている【コスモブレイン】に攻撃ィーッ!?』
ボクの攻撃宣言に応えて、【ラビードラゴン】が飛翔し、攻撃の構えを取る。── ここだ!
「そしてこれこそが、ボクを勝利に導く希望のカード!! ──
(【燃える闘志】だと!? ヤッベ……!)
「このカードを【ラビードラゴン】に装備! 相手フィールドに元々の攻撃力より高い攻撃力のモンスターがいる時、装備モンスターの攻撃力は、ダメージステップの間だけ倍になる! つまり── 【コスモブレイン】の事さ!」
- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -
【ラビードラゴン】攻撃力 2950 → 5900
【ラビードラゴン】は数ターン前に倒されたお返しとばかりに、【コスモブレイン】を白銀の光線で吹き飛ばした。
「くそっ……!」
狼城 LP 3450 → 650
「続けて【ホーリー・ナイト】で、【コスモクイーン】を攻撃! 『シャイニング・ファイヤー・ブラスト』!!」
【ホーリー・ナイト】も再び
「っ……! だがな! 【ドラゴン・シールド】の効果でオレにダメージは無いぜっ!」
(危ねぇ危ねぇ…… 一瞬ヒヤヒヤしたが、どうにか凌ぎ切ったな。次のターンが来れば、オレの勝ちだ!)
「この瞬間! 墓地の【DMZドラゴン】を除外して、効果発動! 【ホーリー・ナイト】の装備カードを、全て破壊する!」
「!」
【ホーリー・ナイト】に装備していた【デビル・ドラゴン】と【ドラゴン・シールド】が破壊され、その身を守っていたアーマーは砕け散る。
「これで【ホーリー・ナイト】は、もう一度だけ続けて攻撃できる!!」
「なっ…… 連続攻撃だとっ……!?」
「確かに似てたねボクら。考える事は一緒だったよ」
ラストターンでモンスター1体の2回攻撃──
「装備カードを失った事で、【ホーリー・ナイト】の攻撃力は元に戻る!」
【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 3000 → 2500
「チェックメイトだッ!! 【ホーリー・ナイト・ドラゴン】で、狼城くんにダイレクトアタック!!」
- シャイニング・ファイヤー・ブラスト!! -
さっきは【ミスフォーチュン】に弾き返された炎が── 今度こそ、狼城くんのライフポイントを焼き尽くした。
「っ……!! ……チッ…… もうちょいだったのによっ……」
狼城くんは…… 悔しさを
狼城 LP 0
『けっ、決着ゥゥーッ!! ウィナーッ! 総角 刹那ッ!! まさに驚きの展開ッ!! アリーナ・カップ初参戦のルーキーが、去年の第3位、〝トリック・スター〟を
「やったぁッ!!」
嬉しさのあまりガッツポーズして声を上げてしまったボクは、直後に「ハッ」となって気恥ずかしさから目線を下げた。
だけど勝てて嬉しいのは本当だし、ここで喜ばない方が相手に失礼な気もするし、しょうがないよね、うん。
「あーあ、まさかオレが負けっとはな。カナメが注目するわけだぜ」
後ろ髪を掻いて呟く狼城くんに、ボクは右手を差し出す。
「対戦ありがとう、狼城くん。楽しかったよ」
「おう。オレも楽しかったぜ、あんがとな」
ボクらが握手を交わすと、観客は拍手と歓声で讃えてくれた。
「決勝進出、おめっとさん」
「!」
狼城くんはボクの背中を手の平で軽めに叩くと、ステージから降りるべく歩き出した。
「じゃーな。
去り際、こちらに背を向けたままヒラヒラと手を振って、そう言い残していく狼城くん。彼なりの
「うん…… 頑張るよ」
ボクは胸の前で、拳を固く握る。
やっと…… やっとだ。ついに決勝まで来れたんだ。
「ようやく追いついたよ── カナメ」
メガネを掛け直し、ポツリと独り言を口にする。
似た者同士だからか、チートドロー合戦になってしまった。いや、これもいつもの事か……