遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 あ、あけましておめでとうございます、そしてお久しぶりです……!(震え声)

 遅筆なのはいつもの事とは言え、さすがに今回は時間がかかり過ぎました(汗)

 ※前回のデュエルの内容を一部修正した為、セツナの手札が2枚増えてます。



TURN - 53 Clowns Laughing At You - 2

 

「【ラビードラゴン】で攻撃! 『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 ボクの自慢の相棒である【ラビードラゴン】の必殺技が、狼城くんの切り札(エース)モンスター・【コスモクイーン】に炸裂(さくれつ)した。

 

 

 

「【コスモクイーン】撃破ッ! やっとダメージが通ったね」

 

「へっ…… やってくれんじゃん」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 1100

 

 狼城 LP(ライフポイント) 3450

 

 

 

『おぉーっとォッ!! あわや敗北かと思われたアゲマキ選手が、ここでついに反撃に出たッ! 果たしてこのまま押し切れるかっ!?』

 

 

 

 いやぁ~正直ボクも、「あっ、これ下手したら負けるかも」って焦ったけど、なんとか巻き返せて良かっ──

 

 

 

「勢いづいたとこ悪ぃけどな…… 詰めが甘いぜ、セツナ君」

 

「!?」

 

(トラップ)発動、【復活の墓穴(はかあな)】! オレのモンスターが戦闘(バトル)で破壊された時、互いに自分の墓地からモンスター1体を、守備表示で特殊召喚できる。ただし、表示形式の変更はできなくなるがな」

 

「えっ、ボクのモンスターも復活させてくれるの?」

 

「オレぁ当然── 【コスモクイーン】を呼び戻すぜ」

 

 

 

【コスモクイーン】守備力 2400

 

 

 

「じゃあボクは【ラヴァ・ドラゴン】を!」

 

 

 

【ラヴァ・ドラゴン】守備力 1200

 

 

 

「ボクはこれで、ターン終了(エンド)!」

 

 

 

 結局【コスモクイーン】は戻ってきちゃったか…… けれど、決闘(デュエル)の流れはボクの方に傾いてきている筈。

 

 

 

「オレのターン。……オレ、リキオとセツナ君の決闘(デュエル)観てた時よぉ……」

 

(リキオ? あぁ、熊谷(クマガイ)くんの事ね)

 

「── セツナ君にちぃとばかし、親近感(しんきんかん)を覚えたんだよな」

 

「親近感?」

 

「そっ。なんつーの? 根本的(こんぽんてき)なデッキの仕組みってヤツ? オレとよぉーく似てたもんだからよ。── それと…… 引きの強さもな」

 

「!」

 

 

 

 そういえば昨日(きのう)、アマネも言ってたっけ…… ボクと狼城くんの決闘(デュエル)スタイルは、どこか似てるって。

 

 

 

「オレぁ【ミスティック・パイパー】を召喚!」

 

 

 

【ミスティック・パイパー】攻撃力 0

 

 

 

「モンスター効果発動だ。こいつをリリースして、デッキから1枚ドローする」

 

 

 

 出てきたばかりの笛吹きおじさんが10秒足らずで退場してしまう。

 ……何故かサムズアップしながら。

 

 

 

「んで、ドローしたのがレベル1のモンスターだったら、ボーナスでもう1枚ドローできる。── オレが引いたのぁ【ジェスター・コンフィ】、レベル1だ。つーわけで、もう1枚引かせてもらうぜ」

 

 

 

 これで狼城くんの手札も2枚…… それに、今ドローしていたモンスターは見覚えがある……!

 

 

 

「【ジェスター・コンフィ】を特殊召喚!」

 

 

 

【ジェスター・コンフィ】攻撃力 0

 

 

 

「さらに装備魔法・【ワンダー・ワンド】を、【ジェスター・コンフィ】に装備!」

 

 

 

【ジェスター・コンフィ】攻撃力 0 + 500 = 500

 

 

 

 ……【コスモクイーン】が攻撃表示にできないとは言え、わざわざ攻撃力(ゼロ)のモンスターに装備? しかも上昇値は500ポイントって……

 

 

 

「オレの目的はモンスターの強化じゃねーよ。【ワンダー・ワンド】の効果発動! 装備モンスターとこのカードを墓地に送る事で、カードを2枚ドローする!」

 

「なっ……!? またドローするの!?」

 

「言ったろ? オマエと同じで、オレも引きの強さにゃあ、ちぃとばかし自信があんのよ。── くくっ。しかも、最高のカードが来てくれやがったぜ」

 

「っ……!」

 

「しっかし驚いたぜ。まさか後輩相手に、こいつまで使う事になるたぁな」

 

 

 

 狼城くんの口振りからして…… どうやら、彼も奥の手を引いたみたいだ……!

 

 

 

「行くぜ…… オレぁ【コスモクイーン】を墓地へ送り── 【コスモブレイン】を特殊召喚ッ!!」

 

 

 

 【コスモクイーン】と入れ替わる様に舞台上(ステージ)へ現れたのは、ワインレッドのマーメイドラインのドレスに青い外套(がいとう)を重ね着し、とんがったフードを頭に被った人形(ひとがた)のモンスター。

 着物みたいに広い袖口(そでぐち)から伸びる、薄い紫色の細腕(ほそうで)には、身の丈ほどもある長大な杖を携えていて、その()で立ちは魔女を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 

 

 

【コスモブレイン】攻撃力 1500

 

 

 

「【コスモブレイン】の攻撃力は、召喚時に墓地に送ったモンスターのレベル × 200ポイントアップする! 【コスモクイーン】はレベル8、よって1600のアップだ!」

 

 

 

【コスモブレイン】攻撃力 1500 + 1600 = 3100

 

 

 

「さっ…… 3100っ!?」

 

「バトルだ。【コスモブレイン】で【ラビードラゴン】を攻撃! 『コズミック・サージ』!!」

 

( ── っ! どうして!? 【-ミラーメール-】が伏せてあるのに……!)

 

 

 

 ボクのフィールドには、攻撃反応型の(トラップ)が1枚伏せてある。その事は狼城くんも、事前に【マインド・ハック】で覗き見(ピーピング)してきたんだから知ってる筈なのに……!

 

 

 

(っ…… 考えてるヒマは無いか!)

 

(トラップ)発動! 【聖なる鎧 -ミラーメール-】! 【ラビードラゴン】の攻撃力を、【コスモブレイン】と同じにする!」

 

「手札から速攻魔法・【禁じられた聖槍(せいそう)】発動! このターン、【ラビードラゴン】は攻撃力が800ダウンし、他の魔法と(トラップ)の効果を受けなくなるぜ!」

 

 

 

【ラビードラゴン】攻撃力 2950 - 800 = 2150

 

 

 

「しまった……!?」

 

「消し飛びなッ! 【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

 【コスモブレイン】が手に持った杖を高々(たかだか)(かか)げると、衝撃波が()(もん)状に広がって、【ラビードラゴン】を粉砕した。

 

 

 

「うあぁっ!」

 

 

 

 セツナ LP 1100 → 150

 

 

 

『アゲマキ選手がやっとの思いで召喚した上級モンスターが、あっさりと破壊されてしまったァァーッ!! これは精神的にもかなり(こた)えるダメージだぁっ!』

 

「せっかくこっからって時に残念だったなぁ? これでオレぁターンエンドするぜ」

 

『エースモンスターを失いライフも残り150! 並みの決闘者(デュエリスト)なら折れてもおかしくない絶望的状況だが…… どうするアゲマキ選手!?』

 

「くっ…… まだ終わりじゃないよ! ボクのターン、ドロー!」

 

「イイねぇ、その調子でまだまだ張り切ってくれよ。カンタンに終わっちゃあ、つまんねーからな」

 

「………」

 

 

 

 【コスモブレイン】…… まさか【コスモクイーン】の上を往く切り札を隠し持ってたとはね…… さて、どうしたものか……

 

 

 

「── 【ラヴァ・ドラゴン】の効果発動! 守備表示のこのモンスターをリリースして、手札と墓地からレベル3以下のドラゴン族を特殊召喚する! よみがえれ! 【ミンゲイドラゴン】!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】守備力 200

 

 

 

「そして手札からは、【プチリュウ】を特殊召喚!」

 

 

 

【プチリュウ】守備力 700

 

 

 

「ハッ、なるほどねぇ? てこたぁ次に出てくんのは…… アレだな?」

 

「その通りだよ。── 再び【ミンゲイドラゴン】をリリース! レベル7の【ホーリー・ナイト・ドラゴン】を、アドバンス召喚!!」

 

 

 

【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 2500

 

 

 

『アゲマキ選手、エースを倒された直後にすぐさま新たな上級モンスターを召喚したァーッ!! さすがここまで勝ち上がってきた期待の新星! まだまだ闘志の炎は消えていないッ!!』

 

「だが、そいつの攻撃力じゃあ【コスモブレイン】にゃ勝てねーぜ?」

 

(そうなんだよね……)

 

「……ボクは手札から装備魔法・【ドラゴン・シールド】を【ホーリー・ナイト】に装備!」

 

 

 

 【ホーリー・ナイト】の(からだ)に頑強な装甲(アーマー)が装着された。

 

 

 

「これで【ホーリー・ナイト】は戦闘・効果で破壊されず、バトルによる互いへのダメージは(ゼロ)になる!」

 

「守備を固めてきたか。(ねば)るねぇ」

 

「……ターンエンド……!」

 

「オレのターン、ドロー。……くくっ、オレぁ【ジェスター・ロード】を召喚!」

 

 

 

【ジェスター・ロード】攻撃力 0

 

 

 

「【コスモブレイン】の効果発動! 1ターンに一度、自分フィールドの効果モンスター1体をリリースし、手札・デッキから通常モンスター1体を特殊召喚する! オレぁ【ジェスター・ロード】をリリース!」

 

「っ!」

 

「くくくっ、オレがデッキから呼び出すのぁな…… こいつだ」

 

「!?」

 

 

 

【コスモクイーン】攻撃力 2950

 

 

 

「なっ…… 2体目の【コスモクイーン】!?」

 

「驚いたかい? オレのデッキには、【コスモクイーン】が2枚入れてあるんでね」

 

『なんという事だぁぁーっ!? この局面で、高攻撃力の上級モンスターが2体!! 狼城選手、ただでさえ土俵際(どひょうぎわ)スレスレのアゲマキ選手を、さらに容赦なく追い詰めていくぅーッ!』

 

「いよいよショーのクライマックスってとこだなぁ?」

 

「っ……!」

 

「バトル! 【コスモクイーン】で【プチリュウ】を攻撃! 『コズミック・ノヴァ』!!」

 

「うぐっ……!」

 

 

 

 【ホーリー・ナイト】は【ドラゴン・シールド】で守られているから、攻撃される心配はない……

 

 とは言えこのままじゃジリ貧だ、どうする……!

 

 

 

「ターンエンドだぜ。さぁ~て…… そのドラゴン1体で、どこまで()つかねぇ?」

 

「ボクのターン…… ドロー!」

 

(── よし!)

 

「手札から【トレード・イン】を発動! 手札のレベル8モンスター・【トライホーン・ドラゴン】を墓地に送って、新たに2枚ドローする!」

 

 

 

 良いタイミングで【トライホーン】が来てくれたおかげで、やっと発動できた。

 

 そのうえ、今ボクが引いたこのカード…… コレを上手く使えば、もしかしたら……!

 

 

 

「……ボクは、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「なんでぇ、そんだけか? もうちょい見応えがねぇと客が盛り下がっちまうぜ?」

 

 

 

 大丈夫…… 勝機はある。

 

 あとは必要なピースさえ揃えれば…… それまで耐えてくれ、【ホーリー・ナイト】……!

 

 

 

「オレのターン! ……くくっ、なぁセツナ君よぉ」

 

「ん? なんだい?」

 

「オマエはそのシールドさえあれば、ダメージを(ふせ)げると思ってるみてぇだが…… 果たしてそうかな?」

 

「っ……!?」

 

「手札から魔法(マジック)カード・【ミスフォーチュン】発動! このターン、オレの攻撃を放棄する代わりに、相手モンスター1体の元々の攻撃力の、半分のダメージを相手に与える! 対象は当然── 【ホーリー・ナイト】だ!」

 

「!!」

 

 

 

 マズイ…… 【ドラゴン・シールド】は、効果ダメージまでは(ゼロ)にできない! そこを上手いこと突いてきたか……!

 

 【ホーリー・ナイト】の攻撃力は2500。その半分って事は、受けるダメージは1250ポイント。食らったら終わりだ──

 

 

 

「くっ! (トラップ)発動! 【副作用?】!」

 

『アゲマキ選手、ついに最後の命綱を使ったァーッ! 【副作用?】は相手に最大3枚まで、任意の枚数ドローさせ、1枚につき2000ポイントも回復できる、ハイリスク・ハイリターンな(トラップ)カードだぁッ!』

 

「もち、オレが引くのぁ1枚だけだ」

 

 

 

 セツナ LP 150 → 2150

 

 

 

「来いよ、【ホーリー・ナイト・ドラゴン】! 『シャイニング・ファイヤー・ブラスト』!!」

 

「えぇっ!?」

 

 

 

 狼城くんに技名(わざめい)を叫ばれて、【ホーリー・ナイト】はボクの指示なしに、聖なる炎を狼城くんに向けて吐き出した。

 

 ところが炎は【ミスフォーチュン】のエフェクトによって、狼城くんを覆う様に張られたバリアに跳ね返され、ボクを直撃する。

 

 

 

「うわああああっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 2150 → 900

 

 

 

「ま、またボクのカードを勝手に……」

 

「悪いねぇセツナ君、オマケにこんな良いカードまで引かせてくれてよ」

 

「!」

 

魔法(マジック)カード・【貪欲な壺】! 墓地からモンスターを5枚デッキに戻して、2枚引くぜ」

 

 

 

 ぐっ、よりによって、またドロー増強カードを引かれてしまった……

 

 狼城くんは墓地に眠る【魔道化リジョン】、【ミュータント・ハイブレイン】、【コスモクイーン】、【ミスティック・パイパー】、【ジェスター・コンフィ】の5体をデッキに戻してシャッフルし、2枚のカードを引く。

 

 

 

「これでオレぁターンエンドだ」

 

(くくっ…… 次のオレのターンで、このショーは幕引きだ。なんせオレの手札にゃあ…… 【()(ほう)(せき)採掘(さいくつ)】がある! こいつで墓地の【ミスフォーチュン】を回収してもっかい発動。それで『ゲーム・オーバー』だ!)

 

 

 

 バトルがダメなら効果ダメージと来たか……

 

 こっちの出方に対応して臨機応変に戦法を変えてくる。さすが〝トリック・スター〟と呼ばれるだけあるね……!

 

 カナメの待つ決勝まで、あと一歩なのに…… その一歩が遠い……!

 

 

 

(でも…… 諦めるもんか!)

 

「ボクのターン、ドローッ!」

 

 

 

 ── ! 来た、まず1枚! あともう一声(ひとこえ)……!

 

 

 

(トラップ)発動! 【無謀な欲張り】! この効果で、さらに2枚ドローする! ただしそれと引き換えに、次の自分のドローフェイズを2回スキップする!」

 

「知ってるぜ、昨日も使ってたもんな。くくっ、良いカードが引けると良いな?」

 

 

 

 引けなければ…… ボクの負けだ。絶対に引き当ててみせる!

 

 

 

「ドローッ!!」

 

 

 

 ── !

 

 

 

「……フフッ、狼城くん。── たった今、勝利のピースが全て揃ったよ!」

 

「!」

 

「この1ターンに、ボクの命運を賭ける!!」

 

「……へぇ? おもしれぇ、お次はどんな踊りを見せてくれんのかな?」

 

「手札から魔法(マジック)カード発動! 【思い出のブランコ】!!」

 

「っ!」

 

「効果の説明は…… ()らないよね? なんせ君も昨日、使ってたんだから。── 墓地から【ラビードラゴン】を特殊召喚!」

 

 

 

【ラビードラゴン】攻撃力 2950

 

 

 

「さらに! 【DMZ(ディーエムゼット)ドラゴン】を通常召喚!」

 

 

 

【DMZドラゴン】攻撃力 0

 

 

 

「【DMZ】の効果発動! 1ターンに一度、自分の墓地のレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を、攻撃力500アップの装備カード扱いとして、自分フィールドのドラゴン族に装備できる! ボクは墓地の【デビル・ドラゴン】を、【ホーリー・ナイト】に装備!」

 

 

 

【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 2500 + 500 = 3000

 

 

 

(……なんのつもりだ? 【ラビードラゴン】を強化すりゃあ【コスモブレイン】にも勝てるってのに、わざわざダメージを与えらんねぇ【ホーリー・ナイト】に装備するたぁ……)

 

「── そして手札からもう1枚、()(ほう)発動! 【即神仏】! 【DMZ】を墓地へ!」

 

「なんだと?」

 

『こ、これはどういう事か!? アゲマキ選手、召喚したばかりのモンスターを即座に墓地へ送ってしまったぞぉっ!?』

 

「……オレの真似っこのつもりか? さっきから何を企んでやがる? とことん食えねぇ野郎だぜ」

 

「それはお互い様でしょ? さぁ── ここからはボクのショータイムだよッ!! バトル! 【ラビードラゴン】で攻撃!」

 

「あん? 【ホーリー・ナイト】じゃねぇのか?」

 

「攻撃するのは…… 【コスモブレイン】!!」

 

「!?」

 

『ま、またしてもどういう事かぁーっ!? よりにもよって【コスモクイーン】ではなく、攻撃力で負けている【コスモブレイン】に攻撃ィーッ!?』

 

 

 

 ボクの攻撃宣言に応えて、【ラビードラゴン】が飛翔し、攻撃の構えを取る。── ここだ!

 

 

 

「そしてこれこそが、ボクを勝利に導く希望のカード!! ── (トラップ)カード・オープン! 【燃える闘志】!!」

 

(【燃える闘志】だと!? ヤッベ……!)

 

「このカードを【ラビードラゴン】に装備! 相手フィールドに元々の攻撃力より高い攻撃力のモンスターがいる時、装備モンスターの攻撃力は、ダメージステップの間だけ倍になる! つまり── 【コスモブレイン】の事さ!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

【ラビードラゴン】攻撃力 2950 → 5900

 

 

 

 【ラビードラゴン】は数ターン前に倒されたお返しとばかりに、【コスモブレイン】を白銀の光線で吹き飛ばした。

 

 

 

「くそっ……!」

 

 

 

 狼城 LP 3450 → 650

 

 

 

「続けて【ホーリー・ナイト】で、【コスモクイーン】を攻撃! 『シャイニング・ファイヤー・ブラスト』!!」

 

 

 

 【ホーリー・ナイト】も再び(くち)から火炎を放射して、【コスモクイーン】を撃破する。

 

 

 

「っ……! だがな! 【ドラゴン・シールド】の効果でオレにダメージは無いぜっ!」

 

(危ねぇ危ねぇ…… 一瞬ヒヤヒヤしたが、どうにか凌ぎ切ったな。次のターンが来れば、オレの勝ちだ!)

 

「この瞬間! 墓地の【DMZドラゴン】を除外して、効果発動! 【ホーリー・ナイト】の装備カードを、全て破壊する!」

 

「!」

 

 

 

 【ホーリー・ナイト】に装備していた【デビル・ドラゴン】と【ドラゴン・シールド】が破壊され、その身を守っていたアーマーは砕け散る。

 

 

 

「これで【ホーリー・ナイト】は、もう一度だけ続けて攻撃できる!!」

 

「なっ…… 連続攻撃だとっ……!?」

 

「確かに似てたねボクら。考える事は一緒だったよ」

 

 

 

 ラストターンでモンスター1体の2回攻撃── ()しくも昨日の狼城くんと同じ戦術を取る結果となった。

 

 

 

「装備カードを失った事で、【ホーリー・ナイト】の攻撃力は元に戻る!」

 

 

 

【ホーリー・ナイト・ドラゴン】攻撃力 3000 → 2500

 

 

 

「チェックメイトだッ!! 【ホーリー・ナイト・ドラゴン】で、狼城くんにダイレクトアタック!!」

 

 

 

- シャイニング・ファイヤー・ブラスト!! -

 

 

 

 さっきは【ミスフォーチュン】に弾き返された炎が── 今度こそ、狼城くんのライフポイントを焼き尽くした。

 

 

 

「っ……!! ……チッ…… もうちょいだったのによっ……」

 

 

 

 狼城くんは…… 悔しさを(にじ)ませつつも、笑みを浮かべていた。

 

 

 

 狼城 LP 0

 

 

 

『けっ、決着ゥゥーッ!! ウィナーッ! 総角 刹那ッ!! まさに驚きの展開ッ!! アリーナ・カップ初参戦のルーキーが、去年の第3位、〝トリック・スター〟を(やぶ)り、とうとう決勝戦にまで勝ち進んだァァーッ!!』

 

「やったぁッ!!」

 

 

 

 嬉しさのあまりガッツポーズして声を上げてしまったボクは、直後に「ハッ」となって気恥ずかしさから目線を下げた。

 

 だけど勝てて嬉しいのは本当だし、ここで喜ばない方が相手に失礼な気もするし、しょうがないよね、うん。

 

 

 

「あーあ、まさかオレが負けっとはな。カナメが注目するわけだぜ」

 

 

 

 後ろ髪を掻いて呟く狼城くんに、ボクは右手を差し出す。

 

 

 

「対戦ありがとう、狼城くん。楽しかったよ」

 

「おう。オレも楽しかったぜ、あんがとな」

 

 

 

 ボクらが握手を交わすと、観客は拍手と歓声で讃えてくれた。

 

 

 

「決勝進出、おめっとさん」

 

「!」

 

 

 

 狼城くんはボクの背中を手の平で軽めに叩くと、ステージから降りるべく歩き出した。

 

 

 

「じゃーな。明日(あした)も精々、がんばれよ」

 

 

 

 去り際、こちらに背を向けたままヒラヒラと手を振って、そう言い残していく狼城くん。彼なりの激励(げきれい)、なのかな。

 

 

 

「うん…… 頑張るよ」

 

 

 

 ボクは胸の前で、拳を固く握る。

 

 やっと…… やっとだ。ついに決勝まで来れたんだ。

 

 

 

「ようやく追いついたよ── カナメ」

 

 

 

 メガネを掛け直し、ポツリと独り言を口にする。

 

 ()()の対戦相手にして…… この大会で、ボクが最も闘いたかったライバルに向けて──

 

 

 

 





 似た者同士だからか、チートドロー合戦になってしまった。いや、これもいつもの事か……

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