遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
お久しぶりです! まさか1年も更新を途絶えさせてしまうとは……!
大変お待たせしてしまいましたが、今回は2万字の大ボリュームでお届けさせていただきます! 楽しんでいただければ幸いです!
アリーナ・カップ決勝戦── 当日。
現在、その開催地であるセンター・アリーナの場内では……
「── 食らいやがれ狼城! 【リボルバー・ドラゴン】で攻撃だっ! 『ガン・キャノン・ショット』!!」
「ぐおっ……! っ…… へへっ…… やるねぇキョーゴ」
〝学園最強〟
ジャルダン校きっての実力を
ここで── 狼城が切り札を切る。
「お次ぁこっちの主役のお
【コスモクイーン】攻撃力 2900
「ちぃっ……!」
「【リボルバー・ドラゴン】にはご退場願おうか。【コスモクイーン】で攻撃! 『コズミック・ノヴァ』!!」
「っ!! くそがっ……!」
九頭竜
『おぉーっとッ!! 狼城選手の鮮やかな反撃が決まったァーッ! 九頭竜選手のエースモンスターが倒され、形勢は一転だぁーッ!!』
(ちっ…… さすがに手こずらせやがる……!)
「オレぁカードを1枚伏せて、ターン
「……あ"ぁっ?」
「ここでリベンジを果たして、アンタの〝学園最強〟っつー大層な
「……ハッ! んな
「おっ? なんだよ諦めちゃう感じ? キョーゴらしくもね──」
「笑わせんな」
「っ……!?」
九頭竜がその
「俺は奴を…… 鷹山の野郎を撃ち殺すまで……! 誰が相手だろうが── 負けてる場合じゃねぇんだよっ!!」
「!」
「俺のターン! 【
【X-ヘッド・キャノン】攻撃力 1800
「さらに【前線基地】の効果で、【
【Y-ドラゴン・ヘッド】攻撃力 1500
「まだだっ! 【アイアンコール】発動! 墓地の【
【Z-メタル・キャタピラー】攻撃力 1600
「一気に3体も並べただと……! しかもこいつらは……!」
「どうやら知ってるみてぇだな? 行くぜッ! 【X】、【Y】、【Z】を合体させ──」
3体の戦闘機が機体を分離・変形させ、下から順に【Z】、【Y】、【X】と、
「合体召喚ッ! 【
【XYZ-ドラゴン・キャノン】攻撃力 2800
「【XYZ】……! 【ABC】に次ぐ、新たな合体モンスターのお出ましかっ……!」
「永続
「!」
「こいつは俺のフィールドに【XYZ-ドラゴン・キャノン】が存在する場合、自分と相手のターンで、異なる効果を発動できる! 俺のターンの効果は、除外された自分のユニオンモンスター1体をデッキの一番下に戻し、1枚ドローする効果だ! 俺は【Y】と【Z】をデッキに戻し、2枚ドロー!」
「手札を全部使い切った
「さらに! 【XYZ】のモンスター効果を発動! 手札を1枚捨てる
「なにぃ!?」
「撃ち殺せ! 『ハイパー・デストラクション』!!」
【X】の
「うおぉっ!?」
(ヤッベぇ、頼みの
「くっ、やられたぜ…… さっき手札を2枚増やしたのは、このためってわけかい」
「これで、フィールドは
- X・Y・Z ハイパー・キャノン!! -
追撃で撃ち放たれた合計5発のレーザーが、丸腰の狼城に全弾命中する。
「ぐあぁっ!!」
狼城
『決着ゥゥーッ!! ウィナー・九頭竜 響吾!!
「……あーあ、オレぁ今年は4位止まりか…… けどまっ、楽しかったぜキョーゴ。3位おめっとさん」
狼城が九頭竜に笑いかけながら、
「……くだらねぇ」
しかし九頭竜は狼城の手を取らず、そう吐き捨てて
「あれま、やっぱ3位なんかじゃ喜べねぇってかい?」
どこか茶化すような口調での狼城の問いに、九頭竜は振り返ることなく、こう答えた。
「3位だろうが1位だろうが……
「……!」
九頭竜が
「好きだねぇホント。つくづく
そして、
「まっ、
満足
さながら、ショーを締めくくる
観客は死闘を演じた両選手への、称賛の意を込めた惜しみない拍手で、狼城の
「── ほんじゃ、フィナーレは主演のお二人に任せて…… 出番を終えた演者は、とっとと
3位決定戦が九頭竜の勝利で幕を下ろし、大会はいよいよ、終幕の決勝戦を残すのみとなった。
その
「なぁ蛇喰の
「そうさねぇ…… あのセツナって子も、かなりのやり手だけど…… 正直、学園最凶が負けるところなんて、アタイには想像できんわさ」
「キキッ!
「あん?」
「んなもんトーゼン、鷹山が勝つに決まってるっつーの! なんせこの俺と互角に
「シャシャシャシャッ! なぁ~にが互角だよ? 一方的にボコられてただけじゃねぇか!」
「キッ!? うるせぇっつーの! 俺を舐めてっと承知しねぇっつーの! このニワトリ頭っ!」
「ニ、ニワトリだとぉ!? エテ公てめぇ! そりゃモヒカンに一番言っちゃなんねぇ禁句だぞゴラぁっ!!」
座席から身を乗り出して、火花を散らしながら
その
「うるさいよアンタら!」
「ムキャッ!?」
「おぶっ!?」
二人の後ろ首に腕を回してグイッと引き寄せた。
鮫牙と猿爪の顔は、蛇喰の豊満な胸に強く押し当てられる。
「いででっ! 何すんだっつーの離せっ!」
「い、いや、オレサマはもうちょいこのままッ……!」
「全く…… これから大一番の
「ウィッス姉御!」
「わ、分かったから離せっつーの!」
一方、蛇喰ら三人とは別の客席には……
── 学園が定める実技の成績ランキングにおいて、最高位の
「ムシャムシャ…… ヨウ
「食べながら喋るなんて美しくないわよ、キスケちゃん。それに今から買いに行ったら、どんなに急いでも試合開始は見逃しちゃうけど良いのかしら?」
「ん~~…… じゃあいいや!」
「ウハハッ、食い
「
「ダーメー! コレはオイラのーっ!」
「えぇい騒がしい! 少しは大人しくできぬのかっ!」
「まぁええやん凰。祭りは賑わったモン
「ふん、くだらぬ。そもそも決勝戦の結果など、
「なんや、凰はセツナ君じゃ、鷹山の旦那には勝てへん言うんか?」
「当然であろう。ましてやあの少年は過去に一度、鷹山に
「それランク・Bの女子に負けたキヨっちが言っても説得力なくね~? もぐもぐ」
「ぐぬっ……! だ、黙れ虎丸! アレはほんの少し油断していただけだ!」
「まっ、凰の見立てもごもっともやで。ワイが耳にした限りでも、大半はお前と同意見やったわ。なんせ唯一の対抗
「……そう言う貴様はどうなのだ、豹堂よ」
「ん? ワイか?」
「2回戦で鷹山と
「んん~~~…… 分からん!」
「なに?」
豹堂のあっけらかんとした返答に、凰は
「確かに旦那は化けモンやった。あの強さはもう、学生レベルなんぞとうに超えとるやろなぁ…… 少なくともワイなんかとは次元が違ったわ。── せやけどな、凰…… ひとつ肝心なことを忘れてへんか?」
「何をだ」
「セツナ君は、その鷹山の旦那と対等に張り合うどころか、あと一歩のとこまで追い詰めおった── あの九頭竜に一度、勝っとるんやで」
「……そんなことは言われずとも分かっておる。だがそれはマグレの勝利だったと、風の噂に聞いておるぞ」
「ウハハッ、またまたぁ~~。九頭竜がマグレが起きたぐらいで負かされるタマとちゃうの、お前かてよう知っとるやないか」
「フフッ、ムサシちゃんの言う通りね。そもそもキヨマサちゃんだって、なんだかんだ言っても気になるから、ここにいるんでしょう?」
「ちっ…… 好きに言うがよい」
「
「まっ、ちゅうわけで、ワイにはこの決勝戦がどないなんのか、てんで予測がつかんわ。けどひょっとしたら…… 鷹山の旦那が
豹堂は、にこやかな曲線を
「── 期待しとるでぇ? ルーキー君」
観衆が思い思いに
間もなく始まる最終戦の模様をカメラに納めるべく
「そろそろ時間ですね、
「そうだな、
「へ?」
早瀬の言う通り新井は、両手に1枚ずつ団扇を握っていた。
その
「とりあえず没収だ」
「あーーん! なんでですかぁ~っ!?」
「アイドルのライブ観に来てんじゃねぇんだぞ! 仕事しろ仕事!」
「むぅ、分かってますよ~。ちゃんとやる事はやります。セツナ君があの学園最凶を倒して優勝するところを、バッチリカメラに納めてみせますよ!」
「……お前、本気でセツナ君が勝つって信じてるのか?」
「当たり前じゃないですかぁーッ! あの〝トリックスター〟にだって勝ったんですよ!?」
「あぁ確かにな。俺もこの
「ただ?」
「よく考えてみろ、新井。今日の決勝を観に来た観客は…… 鷹山 要の優勝に期待している人が大半のはずだ」
「そうなんですか?」
「ジャルダン校
「あっ……!」
「生半可なプレッシャーじゃねぇぞ。並みの
「……ですよね! セツナ君なら、きっと伝説になれますよねッ!!」
「都合の良い部分だけ取り上げやがって…… そんなんじゃジャーナリストとしては、まだまだ半人前だな」
「── セツナ、カードのチェックは
「うん。バッチリだよ、アマネ」
あの部屋、
……今頃、カナメも反対側の入場口で、出番を待ってることだろう。
もうすぐだ…… もう間もなく…… ボクとカナメの決勝戦が始まる……!
「あー、なんかドキドキしてきた……」
「いよいよね。セツナなら勝てるわよ、きっと」
「が、頑張ってください、セツナ先輩!」
「ぶちかましてくだせぇ! セツナの
アマネ、ルイくん、ケイくんが、
今ボクの
マキちゃんが結成(?)したグループ・『ファミレス仲良し連合』のメンバーが、一堂に
「スゥ…… フゥー………」
ボクが今日何度目かの深呼吸をすると、マキちゃんがからかうように話しかけてきた。
「セツナく~ん、今ので深呼吸何回目~? やっぱ緊張してるんだ~?」
「そ、そりゃあするでしょ…… だって初めての参加で本当に決勝戦まで来ちゃったし…… しかも相手は前回ボロ負けした、あのカナメだよ?」
「さすがのアゲマキでも、やっぱ今回ばかしは緊張するか」
「うん…… さっきから心臓もバクバクしちゃってて…… ほら、触ってみてよ」
「!?」
ボクはコータの手首を掴んで、その手の平を、ボク自身の胸に当てさせる。
「コータの手、おっきいね…… どう? 感じる?」
「っ~~~! お、おう、ホントだスゲーな……! も、もう良いだろ!?」
「待ってコータくん! そのまま! 動いちゃダメッ!!」
「ちょ、なに撮ってんだよ
「んっ……!」
「アゲマキも変な声出すんじゃねぇーっ!!」
「コー × セツいただきました~! ごちそうさまで~すッ!」
「……この場に蝶ヶ咲先輩がいたら大喜びしそうね」
とまぁ、冗談はこれくらいにして……
(……参ったな…… まだ手が震えてる……)
そう、ここに来てからボクの手は、ずっと緊張で震えっぱなしだった。
いや、これはただの緊張って言うより……
(
情けない話だけど…… あれほどカナメとの再戦を熱望していたにも関わらず、いざその時が来たら急に
どうやらボクは自分が思ってた以上に、カナメに負けたのがトラウマになってたらしい。
ただでさえ実力の差では向こうが格上なのに、それに加えてこっちはこれまでの試合で、手の内をほぼ全て
この上、気持ちでまで負けてるようじゃ……
どうしたものかと困り果てていると──
「……せっ…… 先輩!」
「ん? どうしたのルイく── わっ!?」
今度はルイくんがボクの胸に飛び込んできて、ひしっと
いつもながらルイくんの
「キャーッ! ルイちゃんったら大胆~ッ!」
「えっと…… ルイくん?」
「あ、あの、その…… 先輩、僕が金沢さんと
「抱いてくれたのでッ!?」
「マキちゃん静かに」
ルイくんが赤らめた顔を上げて、上目遣いで心配そうにボクを見つめた。
「ど、どうですか? 緊張……
「ッ~~~~!!」
なっ、なんだこの愛くるしい生き物は……! 間違って地上に落ちてきた天使なんじゃないか?
……ボクはルイくんの頭をなでなでしながら、
「フフフフッ、ルイくんありがとう~! すっごく緊張が
「解れ過ぎてゆるゆるのデレデレじゃない。大丈夫なの?」
「── おーおー、見せつけてくれんじゃん」
「!」
ボクら6人の誰でもない声が聞こえた。この声は確か……!
「狼城くん!?」
「よっ」
やって来たのは、さっきまで九頭竜くんと3位決定戦で闘っていた、狼城 暁くん本人だった。
「あ、狼城センパイだ~。こんちわ~」
「おう、お嬢ちゃんもいたんか」
「狼城くん試合お疲れ様。良い
「どーも。会場はしっかり
「き、兄弟?」
「おうよ。オレが兄貴分で、セツナ君は弟分な」
な、なんか勝手に兄弟に認定されちゃった……
「あはは…… じゃあ狼城の兄貴って呼んだら良い? それとも…… お兄ちゃん?」
「ハハッ、それも悪かねぇけど、そこは兄弟って呼んでくれや。そっちのが
「そっか。分かったよ、兄弟」
「セツナくんの
「おいおい嬢ちゃんよぉ~、オレとセツナ君で
「ボ、ボクもできればやめてほしいかな、それは……」
(にしても、兄弟、か……)
── 昔も、そんな感じの
(……〝
「ん? どうかしたか?」
「あっ、ごめん狼城くん。なんでもないよ」
「つーかセツナ君よぉ、試合前に女3人も
「べ、別にイチャついてるわけじゃ…… えっ?
「ん? そっちのお嬢ちゃん二人に、さっき抱き合ってたそこのチビッ子で3人だろ?」
「えぇっ!?」
ルイくんが狼城くんに
この流れ、もはや
「えーっとね狼城くん? ルイくんは実は男の子なんだよ。こう見えてね」
「……はっ? 男? こんな女顔してんのにっ!?」
「こんな可愛い子が女の子のはずがないでしょ? まぁ気持ちは激しく分かるけどね」
「というかなんで男子の制服を着てるのに、みんな気づかないのかしら?」
「アマネたんだって最初は勘違いしてたじゃ~ん」
「うっ、そ、そうだったわね……」
それだけルイくんの
ところが狼城くんは、まだ信じられていないみたいで……
「いやいや、オレの目をごまかそうったって、そうはいかねーよ」
ズイッとルイくんに急接近する狼城くん。そして──
「どれどれ?」
「きゃっ!?」
なんと、いきなりルイくんの胸をわし
「おっ、可愛い声じゃん」
「やっ、あ、あの……!」
「ちょ、狼城くん!?」
感触を確かめるように、いやらしい手つきでルイくんの
「ん~、確かに胸は男みてーにペタンコだがよ…… この柔らかさは男の身体じゃねーぞ?」
「あっ、んうっ……
「お、おいてめぇっ! 兄貴に何しやがるっ!? 痛がってんじゃねぇか離せやっ!」
ケイくんが狼城くんを引き
ルイくんはケイくんの後ろに隠れると、顔を半分だけ
「なんでぇ、良いじゃんよ別に減るもんじゃねーし。むしろデカくなんべ?」
「いや、ルイくんは男の子だから胸は大きくならないって……」
(……なんで私は1日に二度も、男が男の胸を揉むシーンを見せられてるのかしら……)
「つかオマエ今、『兄貴』っつった? なに? オマエとそのカワイ子ちゃんも兄弟分なのか?」
「『分』じゃねぇっ! れっきとした、血を分けた
「……マジで? うわ、似てねぇ~」
「てめっ……! ケンカ売ってんのかっ!?」
「ケイくん、どうどう」
こんなところで揉められちゃ
「ルイくん大丈夫?」
「は、はいっ……」
「怖かったよね、よしよし」
「
「「 キッ……!? 」」
狼城くんの爆弾発言を受けて、ボクとルイくんの
ボクは、3日前に自宅でルイくんのファーストキスを奪ってしまったあの事故の記憶が、
「はうぅっ……!」
ルイくんも同じことを思い出したのだろうか。赤くなった顔を両手で隠して、可愛らしい声で鳴いた。
「ろ、狼城くん! あんまりルイくんを怖がらせちゃダメだよ?」
「ハハッ、ジョーダンだっての。男ぁ
(うぅ…… 僕だって男なのに……)
「── ガッハッハッ!! なんじゃ狼城、お前さんまで来ておったかッ! みんな考えることは同じじゃのうッ!」
「!」
これまた聞き覚えのある声が飛んできた。この野太い笑い声は忘れようもない──
「あっ、
「おうッ! 1回戦以来じゃな、ボウズ!」
ちょっと背伸びすれば通路の天井に余裕で手が届きそうな長身を、
「そうだね、どうしてここに?」
「決まっておろう、お前さんを応援しに来たんじゃ! ワシに勝った男が鷹山と
「そうなんだ、ありがとう熊谷くん!」
「ちなみに── 来たのはワシだけではないぞぉ」
「えっ?」
熊谷くんはニカッと笑って、自分の後方を親指で指した。
何だろうと思い、そっちに目を
「アゲマキさーん! お久しぶりなのですー!」
「よぉッ!! 燃えているか我が友よッ! 熱血だぁーッ!!」
「クヒヒヒッ…… 決勝進出を
「アゲマキ先輩! こんにちは!」
(な、なんでこんなに人が多いんですのぉ~っ!?)
新たに5人── ボクと顔見知りの生徒が、
そして、
全員ボクが、過去に一度は
「みんな!?」
「アゲマキさん! 決勝進出おめでとうなのです! 初出場で決勝戦! しかも相手はリベンジを
ケイくんと同じ中等部の生徒である、丸メガネを掛けた黒髪の少女── 記文ちゃんがいの一番に駆け寄ってきて、
そう言えば彼女は新聞部の部員だったね。それでインタビューがしたいってわけか。
さて、なんと答えたものかな……
「そうだね…… 正直スゴく緊張してるけど、ここまで来たからには、全力を尽くそうと思うよ」
「おぉーッ! ステキなコメントありがとうなのですー!」
「ぬおおおおッ!! その意気だアゲマキ君ッ! だが俺との予選で見せた君の闘志は、まだまだそんなものではなかったはずだ! もっと熱くなれよぉぉぉぉおッッ!!!」
次はボクと同級生で、次期十傑候補の一人に選ばれている、黒い短髪に太い眉毛と、たくましい体格が特徴の熱血
この昔の少年マンガみたいな暑苦しいノリは相変わらずだね…… 元気そうで何より。
「う、うん、そうだね、がんばるよ」
「ン熱血だあああああッ!! うおーッ! うおーッ! うおーったらうおーッ!!」
「あはは…… ありがとう、猪上くん」
スゴいや、本当に猪上くんの全身から炎がメラメラと燃え上がってる…… ように見えてきた。
「クヒヒヒッ……」
「わっ!?」
猪上くん同様ボクの同級生である、顔の半分を長い黒髪で覆い隠した、
「ビ、ビックリしたぁ~…… どうしたの? 死骨崎くん」
「クヒヒッ、お前にコレをやろう……」
死骨崎くんはボクに、シルバーのアクセサリーらしき物を手渡した。
ピラミッドを逆さまにしたような、
なんだか、
「コレは?」
「なぁに、優勝
「……そっか、ありがたく
早速ネックレスを首に掛けてみる。
「……フフッ、なんか遊戯さんになった気分だよ」
「クヒヒッ、よく似合ってるじゃないか…… 気に入ってもらえたようで何よりだぁ、健闘を祈ってるぞぉ~? クヒヒヒヒヒヒッ……」
ボクがワイシャツの内側にネックレスをしまってると、続いては学年が1つ下の、緑色の髪をポニーテールに結んだ女の子── アカリちゃんが声をかけてきた。
「アゲマキ先輩、決勝戦がんばってくださいね! 応援してます!」
「アカリちゃんもありがとう。でも意外だね? 君はてっきり、カナメを応援するんだと思ってたけど」
「も、もちろんカナメ様も応援してますよ? でもたぶん、あの人は私のことなんて覚えてなさそうだし…… それに何より、私と予選で闘った人が決勝まで行ったんです。あいさつしないわけにはいかないじゃないですか」
「あはは、それは嬉しいね。アカリちゃんの分まで、がんばってくるよ!」
「はい! ……それにしても……」
「?」
(……
アカリちゃんの目線の先では、プラチナブロンドの長髪を両サイドでまとめて、ドリル状の縦ロールに巻いた髪型が印象的な
「いよぉミサキ嬢。1回戦ぶりだな」
「っ! ろ、狼城…… アナタまでいらしてたのね……」
「相変わらず胸デケーな、揉ませろよ?」
「なっ!? ち、近づかないでくださいまし! この
「くぅ……! これが
「ど、どうしたのアカリちゃん?」
自分の胸に手を当てて、どこか
何のことを言ってるのかはよく分からなかったけど…… とりあえず、ボクも鰐塚ちゃんにあいさつしとこう。
「こんにちは、鰐塚ちゃん」
「はうっ!?」
「君もボクの応援に来てくれたの?」
「そうだっつってたぜ、セツナ君」
「ちょ、ちょっと狼城!? なんで貴方が答え──」
「そうなんだ! ありがとう鰐塚ちゃん!」
ボクは両手で鰐塚ちゃんの右手を優しく握って、お礼を言う。
てっきり彼女には嫌われてるものとばかり思ってたから、なおのこと嬉しかった。
「あっ、あ、あわわわわわっ!?」
(セセセセ、セツナさんの手ががががっ!? ワタクシの手ををををっ!?)
「あれ? 鰐塚ちゃん? 顔が赤いけど大丈夫?」
「はふん……!」
鰐塚ちゃんは耳まで真っ赤になったかと思うと、突然フラついて
「わっととっ!? 危ない!」
ボクはとっさに鰐塚ちゃんの背中に右腕を回して、身体を
左手は彼女の右手をまだ握っていたので、まるで鰐塚ちゃんと社交ダンスでも踊ってるみたいなポーズになってしまう。
そして鰐塚ちゃんはと言うと…… 首をガクンと
どうやら気絶している様だ。ひょっとして手を触られたのが、気を失うほど嫌だったとか? だとしたらまた悪いことしちゃったな……
「おぉーッ!!
「ちょ、記文ちゃん!? 撮らなくていいから!?」
ミラーレス
マ、マズイ…… こんなところを撮られた写真が出回りでもして、鰐塚ちゃんの
と、その時──
「ダメでしょ、セツナを困らせちゃ」
「うひゃ!? お、大きいのです!?」
アマネがカメラの前に立ちはだかって、撮影を
あの身長差だと、レンズにはアマネの胸がドアップで映り込んだことだろうね。
「本人が嫌がってるんだから、写真は消してあげなさい」
「は、はいなのです! アゲマキさん、ごめんなさいなのです! あまりにも
アマネに
「ありがとうアマネ、助かっ──」
「エロ戦車出撃ィーッ!!」
狼城くんの大声が、ボクの言葉を
彼はどこから持ってきたのか、T字型の長い
「キャーーーっ!?」
黒いレースの下着に包まれた、アマネのお尻が丸見えになる。
「ヒュー♪ 黒たぁマセてんねぇ? にしても、良いケツしてんなぁ」
「うへへへッ、ナイスです狼城センパイ!」
マキちゃんも、狼城くんの両肩を掴んで真後ろに並び、一緒になって
仲良いね、この二人…… 自由
「何すんのよ変態っ!!」
「ぶべらっ!?」
案の定アマネは
鰐塚ちゃんにも同じイタズラしてたけど、狼城くんってスカートめくりが好きなのかな?
ちなみにその鰐塚ちゃんは、すぐに意識を取り戻した。彼女いわく、手を握られたのは別に嫌じゃなかったらしくてホッとした。
「あ、あの野郎っ……! く、くく、黒雲さんに、な、な、なんてことしやがるっ……! 俺だってまだ、あの絶対領域の中は見たことねぇのにぃぃぃっ……!!」
「まぁまぁ落ち着きなよコータ」
「うるせぇーっ!! お前もちゃっかりガン見してやがったなぁ!? うらやま…… けしからんぞアゲマキぃーっ!!」
「わぁーっ!? あれは不可抗力だよーっ!」
「ガッハッハッ! しっかし驚いたわい! お前さん、なかなか人望があるのぉ!」
コータにヘッドロックをかけられていると、熊谷くんが豪快に笑い出した。
「えっ? そ、そうかな?」
「そうじゃとも。でなきゃこんな大勢で、わざわざ応援のために駆けつけたりせんわ。これもお前さんの
「な、なんか照れるなぁ~、あははッ」
(……あ、でも……)
「
予選の準決勝で当たった次期十傑候補の筆頭── 豪炎寺
まぁ、彼がボクを応援してくれるってのは…… 考えづらいか。
「アゲマキ選手! 間もなく入場です!」
「あっ、もうそんな時間?」
「良かったねセツナくん。リラックスできたみたいじゃん」
「えっ? ……!」
マキちゃんに言われて気づいた。
いつの間にか…… 手の震えは、すっかり止まっていた。
(………)
ボクはフッと笑みをこぼして、集まってくれた12人に呼び掛ける。
「みんな!」
みんなは水を打った様に静まった。
そしてボクは震えの止まった手を強く握り締め──
「決勝戦…… 勝ってくるねッ!」
『『『 おうッ!!! 』』』
みんなが声を揃えて
(……本当に…… この学園に来て良かった……!)
ボクは身体の底から
(── よし! 行こう!)
気を引き締めて、一人一人とハイタッチしながら、入場口へと歩を進めていく。
そして── 最後にアマネと手を合わせる際、彼女はボクに
「セツナ、行ってらっしゃい」
「……!」
アマネの
昔お世話になった〝ある女性〟の顔が、アマネに
(……懐かしいな)
あの人も今のアマネみたいに優しい笑顔と声で、『行ってらっしゃい』って言って、いつも見送ってくれてたっけ……
「……うん。── 行ってきます!」
元気よくそう答えてアマネとハイタッチすると、ボクはいよいよ決戦の舞台へ続くゲートに、足を踏み入れた──
『── レディース・アーンド・ジェントルメーンッ!! 待たせたな諸君! 時は来た! これより選抜デュエル大会・本選、アリーナ・カップ! 決勝戦の
本選1回戦から今日までの4日間──
大会の司会進行を
最終日も安定のハイテンションで、
『例年に負けず
「待ってましたァーッ!!」
「期待してるぞぉーッ!!」
「最高の
詰めかけた観客も全員
アリーナはすっかり、最高潮の熱気に満ちていた。
『イェーイッ!! それじゃあオーディエンスのボルテージもマックスに
場内が暗転し、ボクの入場するゲートをスポットライトが照らし出した。やっぱり今日も、一番手はボクか。
『〝
名前を呼ばれてボクが歩み出ると──
『『『 キャアーーーッ!! セツナくぅ~~~んッ!!! 』』』
「わぁ!? なになにっ!?」
大歓声に混じって、女の子達の黄色い声援が、そこかしこから聞こえてきた。
『今大会での目覚ましい活躍と、その
「あ、あはは…… いつの間にこんなことになってたんだ……」
応援席に笑顔で手を振りつつ、ボクは
数秒後、今度は逆サイドの入場口に舞台照明が集中した。
『そしてッ! 快進撃の果て、ついに頂点まで
左腕にブルータイプのデュエルディスクを着けた、黒髪
(カナメ……!)
ボクの
「カナメ様ァーッ!!」
「カッコイイーッ!!」
「こっち向いてぇーッ!!」
カナメはボクと違って声援には
(……うぅ、そんな見ないでよ……)
男のボクでも
いや、耐えろボク、ここで逸らしたら負けだ……!
「……初めて会った時以来だね。こうして
「……そうだな」
あの時も思ったけど、カナメが放つ
このそびえ立つ山みたいに圧倒的な存在感…… 歴戦のプロ
「フッ……」
「? どうしたの?」
「控え室ではずいぶんと緊張していたようだが…… 俺に負けたトラウマは、無事に吹っ切れたようだな」
「うっ……! バレてた?」
ボクは後ろ髪を軽く
なるべく
「あれだけの大口を叩いておきながら、今さら
「……ここに来る前、友達にたくさん勇気を分けてもらったからね」
ついさっきまで、しっかり臆病風に吹かれてましたとは言えない……
でも、みんなが背中を押してくれたおかげで、ボクの中の弱気は解消できた。
今はむしろ試合開始が待ち切れなくて、ウズウズしてるぐらいだ。
「── お待たせ、カナメ。約束通り、君に勝ちに来たよ」
「待っていたぞ、総角 刹那。よくぞ
カナメは自分のデュエルディスクから、デッキを取り外してボクに差し出してきた。
「?」
「
「えっ…… 良いのッ!?」
光栄だなぁ……! カナメのデッキを触らせてもらえるなんて……!
ボクは目を輝かせて、デッキを手に取った。
すると、その途端──
「っ……!!」
デッキからほとばしる、持ち主と
(スゴいっ…… コレがカナメのデッキ……! 40枚のカードの
「……あ、そうだ、ちょっと待って」
カナメのデッキをシャッフルする前に、ボクも自分のデッキをカナメに手渡した。
「ボクだけ
「あぁ。良いだろう」
ボクとカナメはデッキを交換すると、ヒンズーシャッフルと呼ばれる一般的な手法で、カードを切り混ぜていく。
『おぉーっとッ! これはなんとも
海馬コーポレーションの技術の
だからこそ
相手のことを、魂を
優勝が
(フフッ、なんだかバトル・シティの決勝戦みたいで、テンションが上がるね)
(……このデッキ、ずいぶんと使い込まれているな。持ち主がカードを心から大切にしているのがよく分かる…… カードもまた、持ち主に
数回シャッフルした
正直あのカナメのデッキを触ってると思うと、入場前とはまた別な意味で手が震えた。うっかりカードを落としたりしなくてホント良かった……
「念入りにシャッフルしておいたか? 俺が手札事故を起こすように願いながらな」
「そんなので勝てても嬉しくないよ。君に本気を出させた上で勝たないとリベンジにならないしね」
「安心しろ、俺にとっては今年が最後のアリーナ・カップだ。その決勝戦で手を抜く気など
「!!」
カナメの目付きが変わり、サファイアの様に
(っ……! なんて威圧感っ……!)
九頭竜くんのプレッシャーが弾丸で撃ち抜いてくるような鋭さなら、カナメのそれは、上から押し潰してくる重圧って感じだ……!
ボクはたまらず打ち
──
「……良いねッ、ゾクゾクしてきたよ……!」
カナメの闘気にあてられて、ボクも
ボクって平和主義者を自負してる割りに、
「そう来なくっちゃッ!!」
自分も闘気を全開にして、カナメに思う存分ぶつけたい。
そんな衝動に駆られるがまま── ボクは、かけている赤メガネを取り外した。
『お、おぉぉ……っ!? す、凄まじいッ! アゲマキ選手と鷹山選手、両者の闘気が激しくぶつかり合って、会場の空気をビリビリと震わせているぅーッ!!』
「……フフッ、九頭竜にも引けを取らない
カナメは口角を
「上出来だ。今のお前なら、俺の本気を受け切れるかも知れないな」
「ご期待に添えるようがんばるよ。── 楽しい
「それはお前次第だ、総角 刹那。お前の持てる力、その全てを尽くして── この俺を
(あはは…… いっそ
── あいさつもそこそこに、ボクはカナメとの
これで準備は完了…… あとはこの
『さぁ役者が揃って、舞台は
今、
『アリーナ・カップ・トーナメント決勝戦!! 総角 刹那
「「
セツナ
カナメ
決戦の火蓋が切られた瞬間── 満員の大観衆が一斉に拳を突き上げ、
ここまでヒートアップされちゃったら、盛り下がるようなプレイは見せられないね……!
「先攻は
「オーケー、ボクのターン!」
(……! この手札…… フフッ、なるほどね)
まさかそう来るとは。カード達も、なかなか粋なことをしてくれるね。
「行くよカナメ! ボクは── 【ミンゲイドラゴン】を召喚!」
【ミンゲイドラゴン】攻撃力 400
「【ミンゲイドラゴン】か…… 確か前回の
「覚えててくれてたんだ? まだ数ヶ月前の話だけど、なんだか懐かしいね…… あの時は
「ほう?」
「【ミンゲイドラゴン】をリリースして── 手札から
『アゲマキ選手、いきなり仕掛けてきたァーッ! 【モンスターゲート】は、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキをめくっていき、出たモンスターを特殊召喚するカード! 果たして今回は、どんなモンスターが飛び出すのかぁーッ!?』
「なるほど…… だが半端なモンスターを引けば、敗北に繋がりかねないぞ?」
カナメの忠告に、ボクは不敵な笑みを返す。
「それはどうかな?」
「なに?」
「敗北に繋がるかどうかは── やってみれば分かるさ!」
言いながらボクは、1枚目のカードを思い切り引き抜く。
(!)
そして、そのカードが何かを確認……
(来てくれると思ってたよ── 相棒!)
そう、確認なんて必要ない。
見なくても〝あのカード〟だと確信したボクは、なんら
「出ておいでッ! 【ラビードラゴン】!!」
ボクの呼び掛けに応えるように── 白い体毛をまとった耳の長い
【ラビードラゴン】攻撃力 2950
『なっ、ななななんとぉーーーッ!? アゲマキ選手、まさかの1枚目で! し、しかも! 引いたカードを
カードに
【ラビードラゴン】の── 魂の鼓動が!
「ボクのデッキも、カナメとまた闘える日を楽しみにしてたみたい」
「……フッ…… いつもながら、大胆かつ予想外なことをしてくる奴だ。実におもしろい」
最高に
「ボクはカードを2枚伏せて、ターン
「相手にとって不足はない…… じっくりと愉しもうか── 最後の
※セツナくんはフォレッセ・ドローの使い手ではありません。
カナメが入場するシーンでハーモニカでも吹かせようかと考えましたが、さすがにやめときました(笑)
それにしても、これだけ女の子が集まっていながら、パイタッチされたのが男2人だけとはこれいかに(?)
約1年ぶりの投稿だったので、作者も緊張のあまり手が震えました……