遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 アリーナ・カップ編、最終話です!



TURN - 58 LAST RESORT

 

 ── 【()(めつ)へのクイック・ドロー】。

 

 このカードはボクのデッキの…… いわば禁じ手だ。

 

 

 

『ななな、なんとぉぉぉっ!? アゲマキ選手が発動したのは、永続(トラップ)・【破滅へのクイック・ドロー】!! その名の通り、持ち主を破滅へと急速に導いていく、ハイリスクな(トラップ)カードだぁーっ!!』

 

 

 

 MCのマック伊東さんは驚きに満ちた(こわ)()で、そう実況した。

 

 

 

「おいおい正気かよ……!?」

 

「あんなカード使うヤツ初めて見たぜ……!」

 

「もしかしてヤケになっちまったのか……!?」

 

 

 

 観客もボクが発動したカードを見て、どよめいているみたいだ。

 

 

 

(……まぁ、そうなるよね)

 

 

 

 予想通りな周囲の反応に、ボクは苦笑する。

 

 

 

「……このカードがフィールドにある限り、お互いのプレイヤーはドローフェイズに手札がゼロ枚だった場合、通常のドローに加えてもう1枚ドローすることができる。ただし、コントローラーであるボクは、自分のエンドフェイズ(ごと)に700ポイントのライフを払わないといけない。もしこの時ライフが700未満だったら、その時点でボクのライフはゼロになる。そして……」

 

「……そのカードがフィールドを離れた時、お前は3000ポイントのダメージを受ける…… そうだな?」

 

「そのとおりだよ」

 

 

 

 一度発動したら最後、1枚のドロー追加と引き換えに、重いライフコストと大きなデメリットを()()うことになる……

 

 まさにマック伊東さんも言っていた通り、破滅的な効果を持ったカードだ。

 

 

 

(実際、ボクはこのカードを使った決闘(デュエル)で、()()()()()()()()()()()…… アマネにも、さすがにそのカードは()めとけって忠告されたっけ)

 

「……フッ、ハハハハハッ!! なにが来るかと思えば【クイック・ドロー】か、これは予想外だったな! なるほど、それがお前の奥の手というわけか」

 

「君に勝とうと思ったら、これぐらいのリスクを負う覚悟でいかないとね…… ここまで来たら出し惜しみはしない。ボクの全てを出し切るよ!」

 

「おもしろいッ…… ならばお前の持てる力、全てを懸けて── この俺を倒してみせろッ!!」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 6200

 

軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】守備力 800

 

 カナメ LP(ライフポイント) 1200

 

【氷帝メビウス】攻撃力 2400

 

【地帝グランマーグ】攻撃力 2400

 

【アドバンス・ディボーター】守備力 2000

 

 

 

「── 【グランマーグ】の効果は対象のカードが表側表示になった場合、無効となる。そして【クロス・ソウル】を発動したターン、俺はバトルフェイズを行えない。カードを1枚伏せてターン終了(エンド)だ!」

 

「ボクのターン! ボクの手札はゼロ、よって【破滅へのクイック・ドロー】の効果で、通常ドローのあとに追加でもう1枚ドローする!」

 

(……【竜の転生】か、いいカードが来た。これで次のターンに【ホーリー・ナイト】を蘇生させれば……!)

 

「── カードを2枚伏せて…… ターンエンド!」

 

 

 

 エンド宣言をした瞬間── 頭上から電流が降り注いで、ボクに直撃した。

 

 

 

「ぐっ、ううぅっ……!!」

 

『【破滅へのクイック・ドロー】の効果で、アゲマキ選手のライフが700ダウン!』

 

 

 

 セツナ LP 6200 → 5500

 

 

 

(くうっ…… やっぱり何度食らってもキツいね、これっ……!)

 

「フフッ、いつまで耐えられるか見ものだな。俺のターン! ── バトルだ、【氷帝メビウス】で【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】を攻撃! 『アイス・ランス』!!」

 

(トラップ)発動、【竜の転生】! 自分フィールドのドラゴン族モンスター1体を除外し、手札か墓地からドラゴン族1体を特殊召喚する! ボクは【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】を除外して──」

 

「無駄だ! カウンター(トラップ)・【共同戦線】! 俺の場に同じレベルのモンスターが2体以上いる時、(トラップ)の発動を無効にし破壊する!」

 

「うっ……!?」

 

 

 

 ボクの(もく)()()は破られ、【メビウス】の攻撃でついに3体目の【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】も倒されてしまう。

 

 

 

「さらに【グランマーグ】で裏守備モンスターを攻撃! 『バスター・ロック』!!」

 

 

 

【デフラドラグーン】守備力 600

 

 

 

 続いて【グランマーグ】の剛腕(ごうわん)から繰り出された殴撃(おうげき)が、【デフラドラグーン】を粉砕した。

 

 

 

「俺はモンスターをセットし、1枚カードを伏せてターンエンドだ!」

 

「っ…… ボクのターン、ドロー! さらに【クイック・ドロー】の効果で、もう1枚カードを引く!」

 

(── ! ……フフッ、そろそろ来る頃だと思ってたよ)

 

「墓地の【デフラドラグーン】の効果! 自分の墓地から同名モンスターを3体除外することで、自身を特殊召喚できる! ボクは【軍隊竜(アーミー・ドラゴン)】3体を除外!」

 

 

 

【デフラドラグーン】攻撃力 1000

 

 

 

「そして【デフラドラグーン】をリリース! ── 【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】を、アドバンス召喚!!」

 

 

 

 召喚するのは、名前の通り白い一角(いっかく)がトレードマークの上級ドラゴン──

 

 

 

【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】攻撃力 2200

 

 

 

『ついに出たぁーッ!! アゲマキ選手が持つ5枚の切り札(エースカード)、その最後の1枚! 【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】だァァーッ!!』

 

「【ホワイト・ホーンズ】を召喚・特殊召喚した時、相手の墓地の魔法カードを5枚まで除外し、その枚数 × 300ポイント攻撃力をアップする!」

 

 

 

- アブソーブ・スペル!! -

 

 

 

 カナメの墓地にある魔法カードは、全部で6枚。

 

 その中から【真帝王領域】、【二重召喚(デュアルサモン)】、【星呼びの天儀台(セレスティアル・セクスタント)】、【ライバル・アライバル】、【クロス・ソウル】を除外して、【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】は攻撃力を最大限まで上昇させていく。

 

 

 

「【ホワイト・ホーンズ】の攻撃力を、1500ポイントアップ!」

 

 

 

【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】攻撃力 2200 → 3700

 

 

 

「攻撃力、3700……!」

 

「フルパワーで行くよ! 【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】! 【氷帝メビウス】を攻撃!!」

 

 

 

- ホーン・ドライブバスター!! -

 

 

 

『こ、この攻撃が通れば、鷹山選手のライフはゼロだぁーっ!?』

 

「これでチェックメイ──」

 

「いいぞッ! すばらしい攻撃だッ! だがまだ終わらせはしないッ!! (トラップ)発動、【ホーリーエルフの祝福】!」

 

「っ!」

 

「フィールドのモンスター1体につき、300ポイントのライフを回復する! フィールドにモンスターは5体! よって1500ポイント回復だ!」

 

 

 

 カナメ LP 1200 → 2700

 

 

 

 吸収した魔力を全て込めて放たれた【ホワイト・ホーンズ】の光線で、【氷帝メビウス】は撃破された。

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 

 カナメ LP 2700 → 1400

 

 

 

『鷹山選手、ライフ回復カードで間一髪(かんいっぱつ)、致命傷を回避したぁーッ!』

 

「そう簡単には勝たせてもらえないか…… ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

 ターンを終えると再び【クイック・ドロー】によって、ボクのライフが削られる。

 

 

 

「ううっ……!」

 

 

 

 セツナ LP 5500 → 4800

 

 

 

「俺のターン! ……俺もお前のカード効果、ありがたく使わせてもらおう」

 

「……!」

 

「【破滅へのクイック・ドロー】の効果により、俺は通常のドローに加えて、もう1枚カードをドローする!」

 

 

 

 そう…… このカードは条件さえ満たせば、相手にも追加ドローの権利を与えてしまう。当然ながら持ち主であるボクとは違いノーリスクで。

 

 

 

「……【グランマーグ】を守備表示に変更!」

 

 

 

【地帝グランマーグ】守備力 1000

 

 

 

『おっと! ここで鷹山選手が守りの態勢に入った!』

 

「フフッ、さすがに攻撃力3700が相手では()が悪い…… 俺はカードを1枚伏せる!」

 

(……これでまたカナメの場には、伏せカードが3枚……)

 

(今伏せたカードは【ミラーフォース】。うかつに攻撃すれば、お前のモンスターは全滅だ)

 

「ターンエンド!」

 

「……ボクのターン! 【クイック・ドロー】の効果と(あわ)せて、合計2枚ドロー!」

 

(……! これなら…… もしかすると、このターンで勝てるかもしれない!)

 

 

 

 引いたカード2枚と、フィールドに出ているカード達……

 

 それらがボクの脳裏で、1本の線で繋がっていき── ひとつの勝ち筋が()()だされた。

 

 

 

(うまく行くかは分からない…… けれど次のターンになったら、【予見通帳】でカナメの手札が増える……)

 

 

 

 きっと…… いや間違いなくこれは、最大にして最後の勝機……!

 

 

 

(賭けだけど…… ここが勝負所だ!)

 

(……来るかッ!)

 

「行くよカナメ! ボクは【暗黒の竜王(ドラゴン)】を召喚!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】攻撃力 1500

 

 

 

「ほう? この局面で、下級の通常モンスターを召喚してくるか」

 

 

 

 ボクは【ホワイト・ホーンズ】を召喚したターンにセットした伏せカードを発動させる。

 

 

 

(トラップ)発動! 【竜嵐(りょうらん)(かん)()】! 除外されている自分か相手のモンスター1体を、自分フィールドに特殊召喚する! ボクが召喚するのは── 【ラビードラゴン】!!」

 

「!」

 

「……だけど、その前に…… 【竜嵐還帰】にチェーンして、もう1枚の伏せカードも発動するよ!」

 

「なに……?」

 

(トラップ)カード── 【フルハウス】!! フィールドに表側表示で存在する、このカード以外の魔法・(トラップ)カード2枚と、セットされた魔法・(トラップ)カード3枚を破壊する! ボクは自分の【竜嵐還帰】と、君の場にある【進撃の帝王】、そして3枚の伏せカードを破壊!!」

 

 

 

 【破滅へのクイック・ドロー】を除いて、魔法・(トラップ)ゾーンのカードが次々と破壊されていく。

 

 

 

(カナメの伏せてたカードは、【無力の証明】に【破壊神の系譜】と…… うわ、さっき伏せたの【ミラフォ】だったんだっ!? よかった…… 【フルハウス】を使って正解だったね……!)

 

「── 続けて【竜嵐還帰】の効果! 戻ってきて! 【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

 上空に発生した嵐雲(あらしぐも)の中から、白い毛皮と大きな立ち耳が特徴の巨竜が舞い降りる──

 

 

 

【ラビードラゴン】攻撃力 2950

 

 

 

『来たァァーッ!! アゲマキ選手のデッキ最強のモンスターにして、彼が最も愛用するエースカード・【ラビードラゴン】が、フィールドに帰還したァーッ!!』

 

(おかえり、相棒!)

 

 

 

 【ラビードラゴン】はこちらに振り向いてボクと目を合わせ、コクリとうなずいた。

 

 

 

(トラップ)を消されたか…… だが俺の場には、3体の壁モンスターがいる! 総攻撃をしても、このターンでは俺にダメージは与えられないぞ!」

 

「……それはどうかな」

 

「なに?」

 

「ボクにはあと1枚、手札が残ってる…… この1枚が、ボクの勝利のパズルを完成させる、最後のピースだ! 永続魔法発動、【ドミノ】!!」

 

「!」

 

 

 

 勝利のピースは全てそろった……!

 

 あとは攻撃あるのみ!!

 

 

 

「バトル! まずは【暗黒の竜王(ドラゴン)】で、【地帝グランマーグ】を攻撃ッ! 『炎のブレス』!!」

 

 

 

 竜の王が帝王を、火炎の()()きで(ほうむ)り去る。

 

 

 

「【ドミノ】の効果発動! 戦闘で相手モンスターを破壊した時、自分のモンスター1体を墓地へ送り、相手モンスター1体を破壊する! ボクは【暗黒の竜王(ドラゴン)】を墓地に送って、カナメの裏守備モンスターを破壊!」

 

「……守備モンスターは【カイザー・サクリファイス】だ」

 

(よし…… 残るはあと1体!)

 

「【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】で、【アドバンス・ディボーター】を攻撃! 『ホーン・ドライブバスター』!!」

 

「くっ……! まさか、これほどとはっ……!」

 

『と、とうとう鷹山選手のモンスターが全滅ぅーっ!? 伏せカードもすでに無くなり、鷹山選手は完全に丸裸だぁーっ!!』

 

「ウソだろ!? あいつ本当に鷹山 要に勝っちまうぜ!?」

 

「し、信じらんねぇ……! あの〝学園最凶〟が…… ついに()けるっていうのかっ!?」

 

 

 

 【暗黒の竜王(ドラゴン)】と【ホワイトホーンズ・ドラゴン】が、道を切り開いてくれた……!

 

 この決闘(デュエル)── ボクの勝ちだ!!

 

 

 

「【ラビードラゴン】!! カナメにダイレクトアタック!!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

「チェックメイトだ!! カナメ!!」

 

「── !!」

 

 

 

 【ラビードラゴン】の放った白い光の奔流(ほんりゅう)が── カナメのフィールドで爆裂した。

 

 

 

『決まったァァァァッ!! 【ラビードラゴン】のダイレクトアタックが炸裂ゥーッ!!』

 

『『『 おぉおおおおぉぉぉォォォッ!!? 』』』

 

 

 

 観客は驚きと興奮が入り交じったような大歓声を上げる。

 

 

 

「勝ったッ……!!」

 

 

 

 勝利を確信して、ボクは右の拳を固く握りしめた。

 

 

 

「…………えっ……?」

 

 

 

 ── 異変を感じたのは、その数秒後だった。

 

 満場の歓声に紛れて、なにか…… 一定のリズムで響く、妙な音が聴こえる……

 

 それは観客の耳にも届いたのか、次第にみんな静まり返っていき…… やがて鮮明に聞き取れるようになった異音は、どうやらカナメのフィールドに立ち込める、白煙(はくえん)の中から鳴っているみたいだった。

 

 

 

(これは…… (かね)()……?)

 

「……まさしく(かみ)一重(ひとえ)だったな」

 

「!!」

 

 

 

 次にカナメの声がして、煙が晴れていく。

 

 再び姿を見せたカナメは…… まるで何事もなかったかのように、腕を組んで平然と立っていた。

 

 

 

 カナメ LP 1400

 

 

 

「なっ……!?」

 

(ライフが減ってない!?)

 

「ど、どうして……!」

 

「俺のフィールドをよく見てみろ」

 

「……!!」

 

 

 

 ガラ空きだったはずのカナメのフィールドに……

 

 いつの間にか、新たなモンスターが召喚されていた……!

 

 

 

【バトルフェーダー】攻撃力 0

 

 

 

「こいつは【バトルフェーダー】。相手がダイレクトアタックを宣言した時、その効果により手札から特殊召喚することで、バトルフェイズを強制終了させる」

 

「っ!?」

 

『なっ…… なんという大どんでん返し!? 鷹山選手、もはや勝負あったかに思われたあの状況で、アゲマキ選手の決定打を、手札1枚で止めてしまったァァーッ!!』

 

「す、スッゲぇーッ!?」

 

「なんて奴だ、あそこからまだ打つ手があったのかよッ……!」

 

「キャーッ!! カナメ様カッコ良すぎィーッ!!」

 

 

 

 絶体絶命のピンチを華麗にかわしてみせたカナメに、観客の誰もが魅了された。

 

 

 

「惜しかったな。前のターンに【バトルフェーダー】を引いていなければ、おそらく俺は敗けていただろう」

 

「っ……!」

 

「さて、お前のモンスターは全て攻撃を終了したが…… 次はどうする?」

 

「……ターン…… エンド……! 【竜嵐還帰】の効果で、【ラビードラゴン】はボクの手札に戻る……!」

 

『このエンドフェイズ、【破滅へのクイック・ドロー】のコストとして、アゲマキ選手のライフがまた700引かれる!』

 

「ぐあっ……!」

 

 

 

 セツナ LP 4800 → 4100

 

 

 

「手札が残ってしまったか。つまり次のターンが来ても、【クイック・ドロー】は使えないというわけだ」

 

「くっ……!」

 

「俺のターン、ドロー。俺は【クイック・ドロー】の効果で、さらに1枚ドローする。そして── 3回目のスタンバイフェイズだ。【予見通帳】の効果により、除外していた3枚が俺の手札に加わる」

 

(……! ほう、こいつは驚いた…… まさかこのカードが来るとはな)

 

(カナメの手札が5枚に……!)

 

「……先ほどの【ラビードラゴン】の攻撃…… この上なく美しい一撃だった。あの一撃で初めての敗北を味わえるなら、それも悪くないと思えたのだが…… どうやら勝利の()(がみ)は、俺に微笑(ほほえ)んでしまったらしい」

 

「……!」

 

「手札より【死者転生】を発動。手札を1枚墓地に送り、墓地のモンスター1体を手札に戻す。俺は手札の【天帝(てんてい)従騎(じゅうき)イデア】を捨て、墓地から【怨邪帝(おんじゃてい)ガイウス】を手札に戻す。── さらに【イデア】が墓地へ送られた場合、除外されている自分の【帝王】魔法・(トラップ)を1枚、手札に加えることができる。俺はフィールド魔法・【真帝王領域】を手札に加える」

 

「!」

 

 

 

 【怨邪帝ガイウス】に、【真帝王領域】…… あの2枚が手札にそろったってことはっ……!

 

 

 

「もう分かるだろう? 【真帝王領域】を発動し、その効果で手札の【ガイウス】のレベルを下げ、【バトルフェーダー】をリリースしてアドバンス召喚。モンスター効果により【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】と、【破滅へのクイック・ドロー】を除外し、【ガイウス】と【クイック・ドロー】の効果で合計4000のダメージを与え、トドメに【ガイウス】でダイレクトアタック…… それでこの決闘(デュエル)は俺の勝ちだ」

 

「っ……!!」

 

 

 

 カナメの言う通り…… そしてそれに対抗する手段は、もうボクにはない……

 

 もはやこの時点で、ボクの負けは確定したも同然だった……

 

 

 

「── だが…… この最終決戦の幕引きに、(もっと)もふさわしいモンスターが今、俺の手札にある」

 

「えっ……?」

 

「見せてやろう、まずは【真帝王領域】を発動。そして── 【冥帝(めいてい)従騎エイドス】を召喚!」

 

 

 

【冥帝従騎エイドス】攻撃力 800

 

 

 

「【エイドス】の効果発動! このモンスターの召喚・特殊召喚に成功したターン、俺は通常の召喚に加えて、一度だけアドバンス召喚ができる! さらに【真帝王領域】の効果! 手札の攻撃力2800、守備力1000のモンスター1体のレベルを2つ下げる! 俺がレベルを下げるのは── 【冥帝エレボス】!」

 

「!?」

 

『め、【冥帝】!? まさかここに来て、また新たな【帝】を召喚すると言うのかーッ!?』

 

「光栄に思うがいい。このカードは九頭竜にさえ、(いま)だ見せたことがない…… 俺のデッキの隠し玉にして、全ての【帝】の頂点に君臨する、最強の【帝王】だ!」

 

「全ての【帝】の…… 頂点……!?」

 

「俺は【エイドス】をリリース! レベル6となった【冥帝エレボス】を、アドバンス召喚!!」

 

 

 

 カナメが手札から1枚のカードを引き抜き、天に突き上げるように高く掲げた。その瞬間──

 

 

 

「っ── !?」

 

(な、なに、この…… (さむ)()は……!)

 

 

 

 まるで深い闇の底から、得体の知れない何かが近づいてくるような気配を感じて、ボクの()(すじ)にゾクッと()(かん)が走った。

 

 

 

「今こそ我が領域に降臨せよ!! 真帝王・【冥帝エレボス】!!」

 

 

 

 ── 現れたのは、【グランマーグ】すらはるかにしのぐ巨体を黒鉄(くろがね)(よろい)で包み、頭部から悪魔のような一対(いっつい)(つの)と、身の丈ほどもある乱れた黒い長髪を伸ばした威容の帝王。

 

 玉座(ぎょくざ)に腰かけ頬杖(ほおづえ)をつき、赤く光る眼でボクを見下ろしている……!

 

 

 

【冥帝エレボス】攻撃力 2800

 

 

 

『んなっ……!? こ、ここ、こんな巨大なモンスターが、いっ、いるのかぁーっ!?』

 

「これがっ…… 最強の【帝】……!」

 

 

 

 この桁外(けたはず)れの質量…… 息が詰まりそうな、尋常(じんじょう)じゃない圧迫感……

 

 たしかにこれまで見てきた【帝】とは、別格だ……!

 

 

 

「【エレボス】の効果発動! このモンスターをアドバンス召喚した場合、手札・デッキから【帝王】魔法・(トラップ)2種類を1枚ずつ墓地へ送り、相手の手札・フィールド・墓地からカード1枚をデッキに戻す! 俺はデッキから【帝王の溶撃(ようげき)】と【帝王の深怨(しんえん)】を墓地に送り、【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】をデッキに戻す! 『フォースド・バニッシュ』!!」

 

「ぐっ!? 【ホワイト・ホーンズ】が……!」

 

「さらに手札から魔法カード・【ダブルアタック】を発動! 手札のモンスターカード1枚を墓地に送り、そのモンスターよりレベルの低い自分フィールドのモンスター1体を選択する! 選択したモンスターはこのターン、2回攻撃することができる!」

 

『よ、鷹山選手の最後の手札はたしか、レベル8の【怨邪帝ガイウス】! ということは……!?』

 

「そう、【エレボス】は今、【真帝王領域】の効果でレベルが6に下がっている…… 手札の【怨邪帝ガイウス】を墓地に送り、【冥帝エレボス】を選択! これにより【エレボス】は2回の攻撃が可能となる!」

 

 

 

 フィールドにはリリースできるモンスターが2体そろっていたのに、わざわざレベルを下げたのはこれが狙いだったのか……!

 

 

 

「すっ…… すごい……!」

 

 

 

 非の打ち所もない、まさにパーフェクトな戦術に、ボクは心からの賞賛を禁じ得なかった。

 

 

 

「覚悟はいいな? ラストバトルだ!! 【冥帝エレボス】でダイレクトアタック!!」

 

 

 

- インペリアル・ドミネイト!! -

 

 

 

 【エレボス】が指先をパチンと鳴らす。

 

 すると真上に広大な魔法陣らしき、円形の模様が出現し、そこから漆黒(しっこく)の光線が放射されて、ボクのフィールドを蹂躙(じゅうりん)した。

 

 

 

「うわああああっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 4100 → 1300

 

 

 

「うぅっ……!」

 

 

 

 大ダメージを受けて、たまらずボクは片膝(かたひざ)を床につく。

 

 

 

(……悔しいな…… ここまで来て、あと一歩及ばなかった……)

 

 

 

 ふと、手札にある1枚のカードに視線が向いた。

 

 

 

(【ラビードラゴン】……)

 

 

 

 カードを通して、相棒からも悔やむ気持ちが伝わってきた気がした。

 

 

 

(……ごめんね…… ボクが()()()ないせいで……)

 

 

 

 もう勝負は決した…… でも……!

 

 

 

(こんなボクを応援して、立ち上がらせてくれたみんなの前で…… へたり込んだまま終わるわけには、いかないよねっ……!)

 

(……【冥帝】の一撃を受けてなお立ち上がるか…… 見上げたものだ)

 

「完敗だよ、カナメ…… だけど、次こそは勝つ……!」

 

 

 

 精一杯の強がりで笑みを作って、最後にそう言い残す。

 

 

 

「フッ…… ── 〝王手〟だ!!」

 

 

 

 【冥帝エレボス】の二度目の攻撃が、さながら終演を告げる暗幕のように降り落ちて…… ついに決勝戦に終止符が打たれた──

 

 

 

 セツナ LP 0

 

 

 

「……最高に愉しい決闘(デュエル)だったぞ、総角 刹那──」

 

 

 





 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

 このデュエルはセツナくんのデュエルの集大成にしたいと思い、自分なりに試行錯誤を重ねた結果、このような形となりました。

 ちなみに【冥帝エレボス】の技をどうするかギリギリまで悩みましたが、満足同盟のリーダーの「今にこいつを黒く塗り潰す!」というセリフから着想を得ました!

 また長い時間がかかってしまいましたが、無事に決着まで書き終えることができて満足したぜ……

 と言いたいところですが、物語はまだまだ続く予定です!
 次回からの新章も、お楽しみいただければ幸いです!
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