遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum - 作:箱庭の猫
アリーナ・カップ編、最終話です!
── 【
このカードはボクのデッキの…… いわば禁じ手だ。
『ななな、なんとぉぉぉっ!? アゲマキ選手が発動したのは、永続
MCのマック伊東さんは驚きに満ちた
「おいおい正気かよ……!?」
「あんなカード使うヤツ初めて見たぜ……!」
「もしかしてヤケになっちまったのか……!?」
観客もボクが発動したカードを見て、どよめいているみたいだ。
(……まぁ、そうなるよね)
予想通りな周囲の反応に、ボクは苦笑する。
「……このカードがフィールドにある限り、お互いのプレイヤーはドローフェイズに手札がゼロ枚だった場合、通常のドローに加えてもう1枚ドローすることができる。ただし、コントローラーであるボクは、自分のエンドフェイズ
「……そのカードがフィールドを離れた時、お前は3000ポイントのダメージを受ける…… そうだな?」
「そのとおりだよ」
一度発動したら最後、1枚のドロー追加と引き換えに、重いライフコストと大きなデメリットを
まさにマック伊東さんも言っていた通り、破滅的な効果を持ったカードだ。
(実際、ボクはこのカードを使った
「……フッ、ハハハハハッ!! なにが来るかと思えば【クイック・ドロー】か、これは予想外だったな! なるほど、それがお前の奥の手というわけか」
「君に勝とうと思ったら、これぐらいのリスクを負う覚悟でいかないとね…… ここまで来たら出し惜しみはしない。ボクの全てを出し切るよ!」
「おもしろいッ…… ならばお前の持てる力、全てを懸けて── この俺を倒してみせろッ!!」
セツナ
【
カナメ
【氷帝メビウス】攻撃力 2400
【地帝グランマーグ】攻撃力 2400
【アドバンス・ディボーター】守備力 2000
「── 【グランマーグ】の効果は対象のカードが表側表示になった場合、無効となる。そして【クロス・ソウル】を発動したターン、俺はバトルフェイズを行えない。カードを1枚伏せてターン
「ボクのターン! ボクの手札はゼロ、よって【破滅へのクイック・ドロー】の効果で、通常ドローのあとに追加でもう1枚ドローする!」
(……【竜の転生】か、いいカードが来た。これで次のターンに【ホーリー・ナイト】を蘇生させれば……!)
「── カードを2枚伏せて…… ターンエンド!」
エンド宣言をした瞬間── 頭上から電流が降り注いで、ボクに直撃した。
「ぐっ、ううぅっ……!!」
『【破滅へのクイック・ドロー】の効果で、アゲマキ選手のライフが700ダウン!』
セツナ LP 6200 → 5500
(くうっ…… やっぱり何度食らってもキツいね、これっ……!)
「フフッ、いつまで耐えられるか見ものだな。俺のターン! ── バトルだ、【氷帝メビウス】で【
「
「無駄だ! カウンター
「うっ……!?」
ボクの
「さらに【グランマーグ】で裏守備モンスターを攻撃! 『バスター・ロック』!!」
【デフラドラグーン】守備力 600
続いて【グランマーグ】の
「俺はモンスターをセットし、1枚カードを伏せてターンエンドだ!」
「っ…… ボクのターン、ドロー! さらに【クイック・ドロー】の効果で、もう1枚カードを引く!」
(── ! ……フフッ、そろそろ来る頃だと思ってたよ)
「墓地の【デフラドラグーン】の効果! 自分の墓地から同名モンスターを3体除外することで、自身を特殊召喚できる! ボクは【
【デフラドラグーン】攻撃力 1000
「そして【デフラドラグーン】をリリース! ── 【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】を、アドバンス召喚!!」
召喚するのは、名前の通り白い
【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】攻撃力 2200
『ついに出たぁーッ!! アゲマキ選手が持つ5枚の
「【ホワイト・ホーンズ】を召喚・特殊召喚した時、相手の墓地の魔法カードを5枚まで除外し、その枚数 × 300ポイント攻撃力をアップする!」
- アブソーブ・スペル!! -
カナメの墓地にある魔法カードは、全部で6枚。
その中から【真帝王領域】、【
「【ホワイト・ホーンズ】の攻撃力を、1500ポイントアップ!」
【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】攻撃力 2200 → 3700
「攻撃力、3700……!」
「フルパワーで行くよ! 【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】! 【氷帝メビウス】を攻撃!!」
- ホーン・ドライブバスター!! -
『こ、この攻撃が通れば、鷹山選手のライフはゼロだぁーっ!?』
「これでチェックメイ──」
「いいぞッ! すばらしい攻撃だッ! だがまだ終わらせはしないッ!!
「っ!」
「フィールドのモンスター1体につき、300ポイントのライフを回復する! フィールドにモンスターは5体! よって1500ポイント回復だ!」
カナメ LP 1200 → 2700
吸収した魔力を全て込めて放たれた【ホワイト・ホーンズ】の光線で、【氷帝メビウス】は撃破された。
「ぐっ……!」
カナメ LP 2700 → 1400
『鷹山選手、ライフ回復カードで
「そう簡単には勝たせてもらえないか…… ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
ターンを終えると再び【クイック・ドロー】によって、ボクのライフが削られる。
「ううっ……!」
セツナ LP 5500 → 4800
「俺のターン! ……俺もお前のカード効果、ありがたく使わせてもらおう」
「……!」
「【破滅へのクイック・ドロー】の効果により、俺は通常のドローに加えて、もう1枚カードをドローする!」
そう…… このカードは条件さえ満たせば、相手にも追加ドローの権利を与えてしまう。当然ながら持ち主であるボクとは違いノーリスクで。
「……【グランマーグ】を守備表示に変更!」
【地帝グランマーグ】守備力 1000
『おっと! ここで鷹山選手が守りの態勢に入った!』
「フフッ、さすがに攻撃力3700が相手では
(……これでまたカナメの場には、伏せカードが3枚……)
(今伏せたカードは【ミラーフォース】。うかつに攻撃すれば、お前のモンスターは全滅だ)
「ターンエンド!」
「……ボクのターン! 【クイック・ドロー】の効果と
(……! これなら…… もしかすると、このターンで勝てるかもしれない!)
引いたカード2枚と、フィールドに出ているカード達……
それらがボクの脳裏で、1本の線で繋がっていき── ひとつの勝ち筋が
(うまく行くかは分からない…… けれど次のターンになったら、【予見通帳】でカナメの手札が増える……)
きっと…… いや間違いなくこれは、最大にして最後の勝機……!
(賭けだけど…… ここが勝負所だ!)
(……来るかッ!)
「行くよカナメ! ボクは【暗黒の
【暗黒の
「ほう? この局面で、下級の通常モンスターを召喚してくるか」
ボクは【ホワイト・ホーンズ】を召喚したターンにセットした伏せカードを発動させる。
「
「!」
「……だけど、その前に…… 【竜嵐還帰】にチェーンして、もう1枚の伏せカードも発動するよ!」
「なに……?」
「
【破滅へのクイック・ドロー】を除いて、魔法・
(カナメの伏せてたカードは、【無力の証明】に【破壊神の系譜】と…… うわ、さっき伏せたの【ミラフォ】だったんだっ!? よかった…… 【フルハウス】を使って正解だったね……!)
「── 続けて【竜嵐還帰】の効果! 戻ってきて! 【ラビードラゴン】!!」
上空に発生した
【ラビードラゴン】攻撃力 2950
『来たァァーッ!! アゲマキ選手のデッキ最強のモンスターにして、彼が最も愛用するエースカード・【ラビードラゴン】が、フィールドに帰還したァーッ!!』
(おかえり、相棒!)
【ラビードラゴン】はこちらに振り向いてボクと目を合わせ、コクリとうなずいた。
「
「……それはどうかな」
「なに?」
「ボクにはあと1枚、手札が残ってる…… この1枚が、ボクの勝利のパズルを完成させる、最後のピースだ! 永続魔法発動、【ドミノ】!!」
「!」
勝利のピースは全てそろった……!
あとは攻撃あるのみ!!
「バトル! まずは【暗黒の
竜の王が帝王を、火炎の
「【ドミノ】の効果発動! 戦闘で相手モンスターを破壊した時、自分のモンスター1体を墓地へ送り、相手モンスター1体を破壊する! ボクは【暗黒の
「……守備モンスターは【カイザー・サクリファイス】だ」
(よし…… 残るはあと1体!)
「【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】で、【アドバンス・ディボーター】を攻撃! 『ホーン・ドライブバスター』!!」
「くっ……! まさか、これほどとはっ……!」
『と、とうとう鷹山選手のモンスターが全滅ぅーっ!? 伏せカードもすでに無くなり、鷹山選手は完全に丸裸だぁーっ!!』
「ウソだろ!? あいつ本当に鷹山 要に勝っちまうぜ!?」
「し、信じらんねぇ……! あの〝学園最凶〟が…… ついに
【暗黒の
この
「【ラビードラゴン】!! カナメにダイレクトアタック!!」
- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -
「チェックメイトだ!! カナメ!!」
「── !!」
【ラビードラゴン】の放った白い光の
『決まったァァァァッ!! 【ラビードラゴン】のダイレクトアタックが炸裂ゥーッ!!』
『『『 おぉおおおおぉぉぉォォォッ!!? 』』』
観客は驚きと興奮が入り交じったような大歓声を上げる。
「勝ったッ……!!」
勝利を確信して、ボクは右の拳を固く握りしめた。
「…………えっ……?」
── 異変を感じたのは、その数秒後だった。
満場の歓声に紛れて、なにか…… 一定のリズムで響く、妙な音が聴こえる……
それは観客の耳にも届いたのか、次第にみんな静まり返っていき…… やがて鮮明に聞き取れるようになった異音は、どうやらカナメのフィールドに立ち込める、
(これは……
「……まさしく
「!!」
次にカナメの声がして、煙が晴れていく。
再び姿を見せたカナメは…… まるで何事もなかったかのように、腕を組んで平然と立っていた。
カナメ LP 1400
「なっ……!?」
(ライフが減ってない!?)
「ど、どうして……!」
「俺のフィールドをよく見てみろ」
「……!!」
ガラ空きだったはずのカナメのフィールドに……
いつの間にか、新たなモンスターが召喚されていた……!
【バトルフェーダー】攻撃力 0
「こいつは【バトルフェーダー】。相手がダイレクトアタックを宣言した時、その効果により手札から特殊召喚することで、バトルフェイズを強制終了させる」
「っ!?」
『なっ…… なんという大どんでん返し!? 鷹山選手、もはや勝負あったかに思われたあの状況で、アゲマキ選手の決定打を、手札1枚で止めてしまったァァーッ!!』
「す、スッゲぇーッ!?」
「なんて奴だ、あそこからまだ打つ手があったのかよッ……!」
「キャーッ!! カナメ様カッコ良すぎィーッ!!」
絶体絶命のピンチを華麗にかわしてみせたカナメに、観客の誰もが魅了された。
「惜しかったな。前のターンに【バトルフェーダー】を引いていなければ、おそらく俺は敗けていただろう」
「っ……!」
「さて、お前のモンスターは全て攻撃を終了したが…… 次はどうする?」
「……ターン…… エンド……! 【竜嵐還帰】の効果で、【ラビードラゴン】はボクの手札に戻る……!」
『このエンドフェイズ、【破滅へのクイック・ドロー】のコストとして、アゲマキ選手のライフがまた700引かれる!』
「ぐあっ……!」
セツナ LP 4800 → 4100
「手札が残ってしまったか。つまり次のターンが来ても、【クイック・ドロー】は使えないというわけだ」
「くっ……!」
「俺のターン、ドロー。俺は【クイック・ドロー】の効果で、さらに1枚ドローする。そして── 3回目のスタンバイフェイズだ。【予見通帳】の効果により、除外していた3枚が俺の手札に加わる」
(……! ほう、こいつは驚いた…… まさかこのカードが来るとはな)
(カナメの手札が5枚に……!)
「……先ほどの【ラビードラゴン】の攻撃…… この上なく美しい一撃だった。あの一撃で初めての敗北を味わえるなら、それも悪くないと思えたのだが…… どうやら勝利の
「……!」
「手札より【死者転生】を発動。手札を1枚墓地に送り、墓地のモンスター1体を手札に戻す。俺は手札の【
「!」
【怨邪帝ガイウス】に、【真帝王領域】…… あの2枚が手札にそろったってことはっ……!
「もう分かるだろう? 【真帝王領域】を発動し、その効果で手札の【ガイウス】のレベルを下げ、【バトルフェーダー】をリリースしてアドバンス召喚。モンスター効果により【ホワイト・ホーンズ・ドラゴン】と、【破滅へのクイック・ドロー】を除外し、【ガイウス】と【クイック・ドロー】の効果で合計4000のダメージを与え、トドメに【ガイウス】でダイレクトアタック…… それでこの
「っ……!!」
カナメの言う通り…… そしてそれに対抗する手段は、もうボクにはない……
もはやこの時点で、ボクの負けは確定したも同然だった……
「── だが…… この最終決戦の幕引きに、
「えっ……?」
「見せてやろう、まずは【真帝王領域】を発動。そして── 【
【冥帝従騎エイドス】攻撃力 800
「【エイドス】の効果発動! このモンスターの召喚・特殊召喚に成功したターン、俺は通常の召喚に加えて、一度だけアドバンス召喚ができる! さらに【真帝王領域】の効果! 手札の攻撃力2800、守備力1000のモンスター1体のレベルを2つ下げる! 俺がレベルを下げるのは── 【冥帝エレボス】!」
「!?」
『め、【冥帝】!? まさかここに来て、また新たな【帝】を召喚すると言うのかーッ!?』
「光栄に思うがいい。このカードは九頭竜にさえ、
「全ての【帝】の…… 頂点……!?」
「俺は【エイドス】をリリース! レベル6となった【冥帝エレボス】を、アドバンス召喚!!」
カナメが手札から1枚のカードを引き抜き、天に突き上げるように高く掲げた。その瞬間──
「っ── !?」
(な、なに、この……
まるで深い闇の底から、得体の知れない何かが近づいてくるような気配を感じて、ボクの
「今こそ我が領域に降臨せよ!! 真帝王・【冥帝エレボス】!!」
── 現れたのは、【グランマーグ】すらはるかにしのぐ巨体を
【冥帝エレボス】攻撃力 2800
『んなっ……!? こ、ここ、こんな巨大なモンスターが、いっ、いるのかぁーっ!?』
「これがっ…… 最強の【帝】……!」
この
たしかにこれまで見てきた【帝】とは、別格だ……!
「【エレボス】の効果発動! このモンスターをアドバンス召喚した場合、手札・デッキから【帝王】魔法・
「ぐっ!? 【ホワイト・ホーンズ】が……!」
「さらに手札から魔法カード・【ダブルアタック】を発動! 手札のモンスターカード1枚を墓地に送り、そのモンスターよりレベルの低い自分フィールドのモンスター1体を選択する! 選択したモンスターはこのターン、2回攻撃することができる!」
『よ、鷹山選手の最後の手札はたしか、レベル8の【怨邪帝ガイウス】! ということは……!?』
「そう、【エレボス】は今、【真帝王領域】の効果でレベルが6に下がっている…… 手札の【怨邪帝ガイウス】を墓地に送り、【冥帝エレボス】を選択! これにより【エレボス】は2回の攻撃が可能となる!」
フィールドにはリリースできるモンスターが2体そろっていたのに、わざわざレベルを下げたのはこれが狙いだったのか……!
「すっ…… すごい……!」
非の打ち所もない、まさにパーフェクトな戦術に、ボクは心からの賞賛を禁じ得なかった。
「覚悟はいいな? ラストバトルだ!! 【冥帝エレボス】でダイレクトアタック!!」
- インペリアル・ドミネイト!! -
【エレボス】が指先をパチンと鳴らす。
すると真上に広大な魔法陣らしき、円形の模様が出現し、そこから
「うわああああっ!!」
セツナ LP 4100 → 1300
「うぅっ……!」
大ダメージを受けて、たまらずボクは
(……悔しいな…… ここまで来て、あと一歩及ばなかった……)
ふと、手札にある1枚のカードに視線が向いた。
(【ラビードラゴン】……)
カードを通して、相棒からも悔やむ気持ちが伝わってきた気がした。
(……ごめんね…… ボクが
もう勝負は決した…… でも……!
(こんなボクを応援して、立ち上がらせてくれたみんなの前で…… へたり込んだまま終わるわけには、いかないよねっ……!)
(……【冥帝】の一撃を受けてなお立ち上がるか…… 見上げたものだ)
「完敗だよ、カナメ…… だけど、次こそは勝つ……!」
精一杯の強がりで笑みを作って、最後にそう言い残す。
「フッ…… ── 〝王手〟だ!!」
【冥帝エレボス】の二度目の攻撃が、さながら終演を告げる暗幕のように降り落ちて…… ついに決勝戦に終止符が打たれた──
セツナ LP 0
「……最高に愉しい
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
このデュエルはセツナくんのデュエルの集大成にしたいと思い、自分なりに試行錯誤を重ねた結果、このような形となりました。
ちなみに【冥帝エレボス】の技をどうするかギリギリまで悩みましたが、満足同盟のリーダーの「今にこいつを黒く塗り潰す!」というセリフから着想を得ました!
また長い時間がかかってしまいましたが、無事に決着まで書き終えることができて満足したぜ……
と言いたいところですが、物語はまだまだ続く予定です!
次回からの新章も、お楽しみいただければ幸いです!