遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 タイトルの由来は、ビートルズの名曲です!



TURN - 61 Can't Buy Me Love

 

「お断りですわ!!」

 

 

 

 鰐塚(わにづか) ミサキは豊満な胸の下で腕を組み、決然と言い放った。

 

 

 

「うぅむ…… どうしてもダメか?」

 

「お父様が珍しく『折り入って相談がある』と言うから、なんの話かと思えば…… よりによって秀隆(ひでたか)さん…… (わし)()()っちゃんとの縁談(えんだん)ですって? 冗談じゃなくてよ!」

 

 

 

 父いわく、昔から交流のある名家の跡取り息子が、縁談を申し込んできたらしい。

 

 鷲津 秀隆(ひでたか)── かつては鰐塚と同じく、デュエルアカデミア・ジャルダン校の〝十傑(じっけつ)〟に名を連ねていた高等部3年生。

 

 しかし狼城(ろうじょう) (アキラ)に敗北したことでその座を追われ、返り咲くべく挑んだ選抜デュエル大会も予選敗退。以降、戦績は(かんば)しくない様子だった。

 

 元より彼の鼻持ちならない性格を、あまり好ましく思っていなかった鰐塚にとっては、願い下げと言ったところだろう。

 

 

 

「だいたいわたくしにはもう心にきめた人が── あ、いえ、なんでもありませんわ!」

 

「ん?」

 

「と、とにかく! その件については(つつし)んで辞退いたします! 話は終わりですわ!」

 

「そうか…… まぁ正直そう言うだろうとは思っていた。実は相談というのはここからでな」

 

「え?」

 

「鷲津家からは、息子との縁談を受けるか(いな)か、決闘(デュエル)で決めさせてほしいと言われているんだ」

 

決闘(デュエル)で?」

 

「ジャルダンの決闘者(デュエリスト)は、決闘(デュエル)で全てを決めると言われているからな。だがミサキ、これはお前の将来に関わる大事なことだ。()()()いをするつもりはない」

 

「……ハァ、面倒ですけれど…… わたくしが勝てばそれで済む話ですのね? ……よろしくてよ。受けて立ちますわ、その決闘(デュエル)

 

「本当にいいのか?」

 

「わたくしも決闘者(デュエリスト)のはしくれ。決闘(デュエル)を挑まれて受けないわけにはいきませんもの、それに……」

 

 

 

 鰐塚は片手を腰に当てて小さく笑み、こう続けた。

 

 

 

「── わたくしの新しいデッキを試す、ちょうどよい機会でしてよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜になり、鰐塚はバスルームでシャワーを浴びて、(いっ)()まとわぬ()(しん)を洗い清めていた。

 

 チャームポイントであるドリル状に巻いたツインテールの髪型も、今は元のロングヘアーに戻り、温水で濡れそぼっている。

 

 みずみずしく健康的な白い素肌、Hカップの上向きな胸、きゅっと引き締まったくびれに美しい曲線を描く小さな尻、スラリと伸びる長い美脚まで──

 

 抜群のプロポーションを誇るグラマラスな裸体が、湯気の立ち上る空間で余すところなくさらけ出されていた。

 

 シャワーを止めると広いバスタブへと歩いていき、張られた湯の中にゆっくり身体を浸からせていく。

 

 

 

「フウッ……」

 

 

 

 心身ともにリラックスし、気持ちよさそうに息をつく鰐塚。

 

 

 

(……セツナさん……)

 

 

 

 湯船に浮く胸元に手を添えながら、鰐塚はひそかに恋心を抱いている、赤いメガネをかけた銀髪の少年の顔を思い浮かべる。

 

 

 

(正直、初めは気の迷いかとも思いましたわ、けれど…… アリーナ・カップで()()しく闘うあなたの姿を見ていたら、わたくしはますます、あなたのことが……!)

 

 

 

 いつか、この想いを彼に伝えたい。そのためにも──

 

 

 

(あんなお坊っちゃんなどに、負けるわけにはいかなくってよ!!)

 

 

 

 強く決意し、鰐塚は浴槽から立ち上がる。巨乳が、たゆんと弾むように揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、鰐塚は自身が暮らす豪邸の広い庭で、縁談の相手である鷲津 秀隆と相対した。

 

 

 

「やぁミサキ君。今日も良い天気だねぇ」

 

 

 

 ベージュ色のマッシュヘアの好青年が、にこやかにあいさつをする。

 

 

 

「……ごきげんよう、秀隆さん」

 

「フフフッ、今日という日を楽しみにしていたよ。僕がこの決闘(デュエル)で君に勝てば、君と僕は晴れて結ばれるんだからねぇ!」

 

(……この決闘(デュエル)、わたくしが負けることはまずありませんが、下手に接戦すると『次こそは!』などと言ってしつこく食い下がってきそうですわね…… 圧倒的な実力差を示して、負け惜しみを言う余地もないほど、完膚なきまでに叩き潰す必要がありますわ……!)

 

「それじゃあ早速、始めようじゃないかッ」

 

 

 

 鷲津はデュエルディスクを腕に着けながら、鰐塚の全身を舐めるように見つめる。

 

 

 

(勝てばミサキの身体(からだ)も僕のもの……! ムフフ♡ 何度あのわがままボディを()()()にしたことかッ……!)

 

(っ……!)

 

 

 

 そんないやらしい視線に鰐塚が気づかないわけもなく、嫌悪感から身震いして鷲津をキッとにらみつけた。

 

 かくして、鰐塚邸に仕える執事と数人のメイドたちが見守る中、令嬢と御曹(おんぞう)()決闘(デュエル)が開始される──

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 鰐塚 LP(ライフポイント) 4000

 

 鷲津 LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「僕から行くよ! 僕のターン!」

 

(秀隆さんのデッキは【ホルス】デッキ…… 【王宮のお()れ】とのコンボが少々やっかいですが、それさえ警戒しておけばさほど脅威ではなくてよ)

 

「手札から速攻魔法発動! 【白き宿命(さだめ)のエルドリクシル】!! 自分の手札・墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する! ただし、自分フィールドに【エルドリッチ】モンスターが存在しない場合は、【エルドリッチ】しか召喚できないがね」

 

「! 【エルドリッチ】……?」

 

「見せてあげようッ! 僕が大金をつぎ込んで手に入れた最強のカードを! 現れろ、【黄金卿(おうごんきょう)エルドリッチ】!!」

 

 

 

 純金製の(よろい)(きら)びやかな装飾品を身にまとったゴージャスなモンスターが、紫色の外套(がいとう)をひるがえして現れた。

 

 

 

【黄金卿エルドリッチ】攻撃力 2500

 

 

 

「フハハハーッ!! スゴいぞーッ! カッコいいぞッ!!」

 

「な、なんですの、このモンスターは……!?」

 

「見たまえこの黄金の輝き!! まさに勝ち組たる僕にふさわしいカードだと思わないかいッ!?」

 

「……少し驚きましたわ。【ホルス】デッキではないのですね?」

 

「【ホルス】? あぁ捨てたよ、あんなデッキ」

 

「!」

 

「この僕の才能を活かし切れないデッキなんて、必要ないんだよッ!」

 

「……どこまでも見下げ果てた御方ですこと。ご自身の実力不足を棚に上げて、勝てないのをデッキのせいにするなんて」

 

「……はぁ? なんだって?」

 

「あなたは決闘者(デュエリスト)風上(かざかみ)にも置けないと、そう言っているのですわよ」

 

「ふん! そういうのは僕に勝ってから言ってもらおうかッ! 僕はカードを2枚伏せて、ターン終了(エンド)だ!」

 

「わたくしのターン! ドローですわ! 手札から永続魔法・【一点着地】を発動!」

 

(【エルドリッチ】…… 得体の知れないモンスターですけれど、攻撃力は2500。このターンで倒せますわッ!)

 

「そして── 儀式魔法発動! 【リチュアの()(すい)(きょう)】!! レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるよう、手札・フィールドからモンスターをリリースし、【リチュア】の儀式モンスターを降臨させますわ!」

 

「【リチュア】?」

 

「わたくしは手札の【ヴィジョン・リチュア】をリリース!」

 

「なにっ……!? レベル2のモンスター1体で儀式召喚!?」

 

「【ヴィジョン・リチュア】は水属性を儀式召喚する場合、このモンスター1体で必要な分のリリースにできますのよ」

 

 

 

 鰐塚のフィールドに、装飾を(ほどこ)された大きな鏡が出現する。

 

 

 

「儀式召喚!! おいでなさい! わたくしの(あら)たなるしもべ── 【イビリチュア・テトラオーグル】!!」

 

 

 

 鏡面がひび割れて青白い閃光を放ちながら粉々に砕け散り、やがて光の中から筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な魚人が姿を現した。

 

 

 

【イビリチュア・テトラオーグル】攻撃力 2600

 

 

 

「……ハッ、なんだよ、君だってデッキを変えてきてるじゃないか」

 

「あなたと一緒にしないでいただきまして? 【一点着地】の効果! 1ターンに一度、自分か相手の手札から、モンスター1体が自分フィールドに特殊召喚された場合、1枚ドローします! さらに【テトラオーグル】の効果発動! 1ターンに一度、カードの種類を宣言し、お互いに自分のデッキからその種類のカードを1枚、墓地に送る! 相手は手札を1枚捨てることで、この効果を無効にできますわ。どうなさいますこと?」

 

「……フッ、構わないよ。未来の花嫁のワガママのひとつやふたつ、喜んで聞いてあげようじゃあないか」

 

(……イラッと来ますわね、この人)

 

「でしたら、魔法カードを墓地に送ってもらいますわよ。わたくしは…… 【リチュアの儀水鏡】・2枚目を墓地へ」

 

「おやおやぁ? 儀式魔法は君のデッキにとってキーカードなんじゃないのかい? 後悔しても知らないよ?」

 

「いいから早くカードを選びなさいっ!!」

 

「おぉ怖い怖い。じゃあ僕は…… 【黒き覚醒(めざめ)のエルドリクシル】を、墓地に送るとするよ」

 

 

 

 【テトラオーグル】の効果を処理し終えると、鰐塚は先ほど【一点着地】の効果でドローしたカードを手札から取り出す。

 

 

 

「わたくしは【リチュア・アビス】を通常召喚!」

 

 

 

【リチュア・アビス】攻撃力 800

 

 

 

「【アビス】の召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから守備力1000以下の【リチュア】を手札に加えますわ。わたくしは【シャドウ・リチュア】を手札に! さらに【シャドウ】を手札から捨てることで、デッキから【リチュア】儀式魔法を1枚手札に加える! わたくしが手札に加えるのは、【リチュアの(ひょう)()(きょう)】!」

 

「新しい儀式魔法……!?」

 

「さらに手札より【貪欲(どんよく)なウツボ】を発動! 自分フィールドの魚族・海竜族・水族モンスター1体を除外して2枚ドローします! 魚族の【リチュア・アビス】を除外!」

 

 

 

 引いた2枚のカードを見て、鰐塚は笑みを浮かべる。

 

 

 

「儀式魔法・【リチュアの氷魔鏡】を発動! このカードは自分のモンスターの代わりに、相手モンスター1体をリリースして儀式召喚が行えますわ!」

 

「なっ、なんだってぇ!?」

 

「【黄金卿エルドリッチ】をリリース!」

 

「くっ! ならばその前に(トラップ)カード・【黄金郷(おうごんきょう)のガーディアン】を発動!」

 

「!」

 

「この(トラップ)は発動後、通常モンスターとして僕の場に特殊召喚される!」

 

 

 

【黄金郷のガーディアン】守備力 2500

 

 

 

(トラップ)モンスター……!」

 

「さらに自分フィールドに【黄金卿エルドリッチ】がいる場合、相手モンスター1体の攻撃力をゼロにできる!」

 

 

 

【イビリチュア・テトラオーグル】攻撃力 2600 → 0

 

 

 

(【テトラオーグル】の攻撃力がゼロに……!)

 

「ですが【エルドリッチ】はいただきますわ! 儀式召喚! おいでなさい! 【イビリチュア・マインドオーガス】!!」

 

 

 

 【エルドリッチ】を生け贄として召喚されたのは、魔女風の服装で、先端に【リチュアの儀水鏡】が取りつけられた杖を握った青髪の少女が、巨大な魚と一体化したモンスター。

 

 

 

【イビリチュア・マインドオーガス】攻撃力 2500

 

 

 

「ただし、わたくしは【氷魔鏡】の効果で降臨したモンスターの、元々の攻撃力分のライフを失いますわ」

 

 

 

 鰐塚 LP 4000 → 1500

 

 

 

「こ、このっ……! よくも僕の【エルドリッチ】をぉ!」

 

「【マインドオーガス】を儀式召喚した時、お互いの墓地から合計5枚までカードを選択して、持ち主のデッキに戻す! わたくしはあなたの墓地にある3枚のカード全てと、自分の墓地の【貪欲なウツボ】を戻しますわ!」

 

「っ!?」

 

(く、くそっ! 3枚とも僕のターンに墓地で発動できる効果があったのにっ!)

 

「最後にカードを2枚伏せて、わたくしのターンは終了ですわ」

 

(上級儀式モンスターが2体……! い、いや、落ち着け! 1体の攻撃力はゼロだ!)

 

「フッ、フフフッ! これぐらいでいい気にならないでくれよっ……! 僕のターン! ドロー! ── 永続魔法・【呪われしエルドランド】発動! 1ターンに一度ライフを800払い、デッキから【エルドリッチ】モンスターか、【黄金郷】と名のつく魔法・(トラップ)を1枚、手札に加える!」

 

 

 

 鷲津 LP 4000 → 3200

 

 

 

「僕はデッキからもう一度、【黄金卿エルドリッチ】を手札に加える! そして手札の【エルドリッチ】の効果! 手札からこのカードと、魔法または(トラップ)カード1枚を捨てることで、フィールドのカード1枚を墓地に送る!」

 

「!」

 

「僕は【エルドリッチ】と、魔法カード・【死者への()()け】を手札から捨てて、【マインドオーガス】を墓地送りにしてやる! 『征服王葬送(アデランタード・エル・フェネラル)』!!」

 

「くっ……!」

 

「ハハハハッ! 不死の征服王を生け贄なんかにした罰だッ! 次は墓地に送った【エルドリッチ】の、2つ目の効果を発動! 自分フィールドの魔法・(トラップ)を1枚墓地へ送り、自身を手札に戻す! その後、手札のアンデット族モンスター1体を特殊召喚できる! 僕は【黄金郷のガーディアン】を墓地に送り、【エルドリッチ】を手札に戻してそのまま特殊召喚だッ!!」

 

 

 

【黄金卿エルドリッチ】攻撃力 2500

 

 

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターは、次の相手ターン終了時まで攻撃力・守備力が1000アップし、効果では破壊されない!」

 

 

 

【黄金卿エルドリッチ】攻撃力 2500 + 1000 = 3500 守備力 2800 + 1000 = 3800

 

 

 

「攻撃力3500……!!」

 

「バトルだ! 【エルドリッチ】で【テトラオーグル】を攻撃!!」

 

「そうは行かなくてよ! (トラップ)カード・【儀水鏡の反魂術(はんごんじゅつ)】! 自分フィールドの水属性モンスター1体をデッキに戻し、自分の墓地から水属性モンスターを2体手札に加える! 【テトラオーグル】をデッキに戻し、墓地の【シャドウ・リチュア】と【ヴィジョン・リチュア】を、手札に加えますわ!」

 

「だがこれで君を守るモンスターはいないッ! 行けぇ【エルドリッチ】よ! ミサキ君に直接攻撃(ダイレクトアタック)だぁーッ!!」

 

 

 

征服王撃掌(アデランタード・ウェイガ)!! -

 

 

 

 無防備となった鰐塚に強襲を仕掛ける【エルドリッチ】。この攻撃が通れば勝負は決する。

 

 

 

(僕の勝ちだぁッ!!)

 

 

 

 しかし対する鰐塚は── 余裕を崩すどころか、不敵にほほ笑んだ。

 

 

 

「甘いですわね、お坊っちゃん」

 

「へ?」

 

(トラップ)発動! 【()(もん)のバリア -ウェーブ・フォース-】!! 相手がダイレクトアタックを宣言した時、相手フィールドの攻撃表示モンスターを、全て持ち主のデッキに戻しますわ!」

 

「なっ、なにぃぃぃぃっ!?」

 

 

 

 波状(はじょう)のバリアに攻撃を受け止められた【エルドリッチ】は、そのまま鷲津のデッキへと弾き返され、あっけなくフィールドから退場した。

 

 

 

「ぼ、僕の【エルドリッチ】がぁぁぁぁっ!!」

 

「効果で破壊できないと言うなら、破壊以外の方法で対処するまででしてよ」

 

「ぐっ、ぐぎぎっ……!」

 

「さぁどうしますの? なにもできないのであれば、早くターンを終了してくださらない?」

 

「……ま、まだだ……! エンドフェイズに墓地の【黄金郷のガーディアン】を除外して、効果発動! デッキから【エルドリクシル】と名のついた魔法・(トラップ)を1枚セットする! 僕は【(とうと)き黄金郷のエルドリクシル】をセットだ!」

 

(このカードも(トラップ)モンスター、しかも守備力が2800もある! こいつを壁にして、態勢を立て直してやる……!)

 

「わたくしのターン、ドロー! 【ヴィジョン・リチュア】は手札から捨てることで、デッキから【リチュア】儀式モンスター1体を手札に加えることができますわ。わたくしが手札に加えるのは── 【イビリチュア・ジールギガス】!」

 

(っ!? レ、レベル10の儀式モンスターっ……!?)

 

「そして【シャドウ】も再び手札から捨て、デッキから3枚目の【リチュアの儀水鏡】を手札に加えますわ! さらに手札より魔法カード・【儀水鏡の集光】を発動! デッキの【リチュア】モンスター1体を手札に加える! わたくしは【グリム・リチュア】を手札に! このモンスターもレベルに関係なく、1体で水属性の儀式召喚が行えますわ」

 

「レベル10のモンスターをリリース1体で召喚だと!? インチキ効果もいい加減にしろっ!!」

 

「【リチュアの儀水鏡】発動! 【グリム】をリリースし── 降臨なさい! 【イビリチュア・ジールギガス】!!」

 

 

 

 新たに降臨した儀式モンスターは── 4本の腕を持つ、巨大な怪物だった。

 

 

 

【イビリチュア・ジールギガス】攻撃力 3200

 

 

 

「こ…… 攻撃力、3200……!?」

 

(いっ、いや、大丈夫、まだ大丈夫だ! 少なくともこのターンはしのげるっ!)

 

「【一点着地】の効果で1枚ドロー! ……あら、これは()いカードを引けましたわ」

 

「!?」

 

「魔法カード・【儀水鏡との交信】! 自分フィールドに水属性モンスターが表側表示で存在する時、2つの効果から1つを選択して発動! ただし、水属性の儀式モンスターが存在する場合には、両方の効果を使えますわ! まず1つ目の効果で、あなたの魔法・(トラップ)ゾーンの伏せカードを全て確認します!」

 

 

 

 鷲津の伏せカード2枚が鰐塚に公開される。

 

 

 

「……もう1枚の伏せカードは、【黄金の征服王(エル・ドラド・アデランタード)】…… なるほど、強力な効果を持った(トラップ)ですが、発動条件は満たしていないようですわね?」

 

「うっ……!」

 

「では次に2つ目の効果ですわ。自分または相手のデッキの上から2枚カードをめくって確認します。わたくしのカードを確認しますわ」

 

(……【サルベージ】に、【リチュア・エミリア】)

 

「めくったカードは任意の順で、デッキの上に戻しますわ。さらに【ジールギガス】の効果!」

 

 

 

 鰐塚 LP 1500 → 500

 

 

 

「1ターンに一度、1000ポイントのライフを払い、カードを1枚ドローします! そのカードが【リチュア】モンスターだった場合、フィールドのカード1枚をデッキに戻すことができますわ!」

 

「なっ……!? ま、まさかっ……!?」

 

「おや、あなたにしては察しがいいですわね。そう、わたくしが次に引くカードは、たった今【交信】の効果でデッキの上に置いた── 【リチュア・エミリア】!」

 

「そんなっ……!」

 

「よって【ジールギガス】の効果により、あなたの左の伏せカード・【貴き黄金郷のエルドリクシル】をデッキに戻しますわ!」

 

「ち、ちくしょおおおおっ!! なんでこうなるんだよぉぉぉっ!?」

 

(【エルドリッチ】さえフィールドにいれば、【貴き黄金郷】の効果で【ジールギガス】を手札に戻せたのにぃぃぃっ!!)

 

(念のためと思って確認しましたけれど、やはり()(ゆう)でしたわね。まぁもしなにかやっかいな(わな)を伏せてたとしても、【エミリア】を召喚して封じ込めるだけですが)

 

「さて…… お覚悟はよろしくて?」

 

「ぐっ……! ま、待ちたまえミサキ君! 考え直せ! 本当に僕との縁談をフイにしてもいいのかいっ!?」

 

「おあいにくさま。わたくし、自分より弱い殿方(とのがた)(とつ)ぐ気はありませんの」

 

「そんな固いこと言うなよ、僕と君の仲じゃないかッ! 国内でも有数の名家の御曹司、生まれながらにして勝ち組であるこの僕の妻になれるんだよッ!? な! 悪い話じゃないだろう!?」

 

「……そうやって、家柄(いえがら)や財力に物を言わせれば、なんでも手に入ると思ってらっしゃるのね。昔から変わりませんわね、あなたは」

 

 

 

 胸元に右手を当て、真剣な表情で鰐塚は告げる。

 

 

 

「── 覚えておきなさい。人の心は、お金で買えるものではなくてよ」

 

「なっ……!?」

 

「バトル! 【ジールギガス】でダイレクトアタックですわ!!」

 

 

 

- ギガンティック・ブルート・フォース!! -

 

 

 

 鷲津は【ジールギガス】が繰り出した4発のパンチに殴り飛ばされる。

 

 

 

「ふぎゃあああああっ!?」

 

 

 

 鷲津 LP 0

 

 

 

「チェックメイト、ですわね」

 

(キャ~ッ! わたくしったら勝手にセツナさんの決めゼリフを……!)

 

 

 

 決闘(デュエル)が決着し、鰐塚の使用人たちは「おぉ~ッ」と感嘆の声を上げながら拍手する。

 

 たった4ターンの短期決戦。ライフも自分の発動したカード効果で減らしただけで、鷲津からは1ポイントもダメージを受けていない。

 

 誰の目にも明らかな、鰐塚の完勝だった。

 

 

 

「な、なんでだ、なんで負けるんだ……! このデッキなら、絶対に勝てるはずだったのにぃ……!」

 

「………」

 

 

 

 うなだれて半べそをかく鷲津に、鰐塚はため息をついて話しかける。

 

 

 

「今の決闘(デュエル)で感じたのですけれど…… あなた、まだそのデッキをまともに使いこなせていないのではなくて?」

 

「なっ…… なんだと……!?」

 

「いくらデッキが強くても、そのポテンシャルを肝心の決闘者(デュエリスト)が発揮し切れないのでは、宝の持ち(ぐさ)れというものですわ。強いカードを持っているだけで勝てるほど、決闘(デュエル)は甘くなくてよ!」

 

「っ……! うっ…… くぅ……!」

 

「少なくとも昔のあなたは…… 十傑になる前までのあなたは、それくらいのことは理解できていたはずでしてよ。……昔()()みのよしみで忠告して差し上げますわ。初心に立ち返って、1から(きた)え直してはいかがかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鷲津との決闘(デュエル)を制した翌日、学園にて──

 

 

 

(はうっ!? セ、セツナさん!?)

 

 

 

 想い人を見かけ、とっさに鰐塚は物陰(ものかげ)に隠れて様子をのぞき見る。

 

 意中の相手・総角(アゲマキ) (セツ)()は現在、二人の女子生徒と談笑しているようだった。

 

 

 

(セツナさん…… わたくしもあんなふうに、(した)しげに声をかけられれば……)

 

「なにしてるんですか~鰐塚センパイ?」

 

「ひゃうっ!?」

 

 

 

 不意に背後から声をかけられ、鰐塚の肩と胸が跳ねる。

 

 話しかけてきたのはピンク色のショートヘアが特徴的で、鰐塚にも負けず劣らずスタイル抜群な美少女だった。

 

 

 

「あ、あなたはセツ…… あ、総角さんのご友人の……」

 

()(づき) マキノで~す! 会うのはアリーナ・カップの決勝戦以来ですかね?」

 

「え、えぇ、そうですわね……」

 

「ところでひょっとして~、セツナくんとお話したい感じですか~?」

 

「あっ、いえ、そのっ……!」

 

 

 

 図星を突かれ動揺する鰐塚。

 

 その時、セツナと話していた女子が「キャッ」と声を上げたのが聞こえた。

 

 

 

「や~んッ! セツナくんにおっぱい触られちゃった~ッ!」

 

「ご、ごめん!? うっかり手が滑って……!」

 

「ずるーい! ねぇねぇ私のも触っていいよ~! ていうか触ってーッ!」

 

「えぇーッ!? な、なんでそうなるのッ!?」

 

 

 

 女子二人がセツナの両腕に抱きついて、それぞれ自分の胸を押し当てる。

 

 

 

「な、なんですのアレは!? セツナさんにあんなに密着するなんて……!」

 

(おッ、下の名前で呼んじゃってる。かわいい~ッ)

 

「セツナくんはおっきなおっぱいが大好きですからね~。エロほ…… お宝も巨乳ものだったし~」

 

「おっぱ……!?」

 

「でもこれはチャンスですよ、鰐塚センパイ!」

 

「えっ?」

 

「セツナくんとお話する、大義名分ができたじゃないですか~。ね、風紀委員長さん?」

 

「……! た、たしかに、そうですわ!」

 

「胸を張って、ドーンと行っちゃってくださいッ!」

 

「む、胸を張ってドーンですわね!? わ、分かりましたわっ!」

 

 

 

 マキノに背中を押され、鰐塚はセツナの元へ早歩きで向かっていった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── ボクの両腕に、柔らかい感触が伝わってくる。

 

 

 

「どうセツナくん? 私のおっぱい」

 

「私のとどっちが気持ちいい? ねぇねぇ~」

 

「あ、ははッ、参ったな~……」

 

 

 

 さぁーて困ったぞ~…… 振り払うこともできないし、どうしたものか……

 

 

 

「そ、そこのあなた(がた)! なにをしていらっしゃるのっ!」

 

「!」

 

 

 

 と、そこへ聞き覚えのある声がかけられた。

 

 

 

「あ、鰐塚ちゃん」

 

「うげっ、風紀委員長!?」

 

「ヤバっ……!」

 

「公衆の面前で男性におっぱ…… む、胸を押しつけるだなんて、ハ、ハレンチでしてよっ!」

 

「す、すいませーん!」

 

「セツナくん、またねー!」

 

「え? あ、うん、またね~」

 

 

 

 二人の女の子は鰐塚ちゃんを見た途端、急にボクから離れて去っていった。

 

 

 

「やぁ鰐塚ちゃん、アリーナ・カップ以来だね」

 

「は、はひっ! そそそ、そうですわね総角さん……!」

 

「あの時は応援しに来てくれてありがとう。負けちゃったけど、鰐塚ちゃんやみんなのおかげで最後まで闘えたよ」

 

「そ、そんなふうに言っていただけるなんて、こ、光栄ですわ! えぇ本当に!」

 

(うぅ、勢いで出てきてしまったけれど、ここからどうしたらよいのかしら……!)

 

(センパイがんばって~ッ!)

 

「……どうしたの鰐塚ちゃん? なんだか顔が赤いけど」

 

「えっ!? あ、いえ、その……!」

 

(胸を張ってドーン、胸を張ってドーン……! む、胸…… セツナさんは、大きな胸が好き……!)

 

「あ、あの! セツナさん!!」

 

「えっ?」

 

 

 

 突然、鰐塚ちゃんはボクの腕を掴むと──

 

 自分の大きな胸に、その手のひらを押し当てさせた……!

 

 

 

「えっ、ええぇーっ!?」

 

「ッ~~~!! ど、どどどどうですか、わ、わ、わたくしの胸っ……!」

 

「ど、どうって……!」

 

 

 

 鰐塚ちゃんの、おっぱい……!

 

 触るのは初めて会った時以来だけど、相変わらずスゴく大きい……!

 

 ボクの手にも収まり切らない、たわわな膨らみの柔らかさが、手のひらいっぱいに感じられる。

 

 無意識というか抗えない本能というか、思わず指先に力が入って強く揉んでしまった。

 

 

 

「んあッ!」

 

「っ! ご、ごめん鰐塚ちゃん! 痛かった!?」

 

 

 

 ボクがあわてて手を引っ込めると鰐塚ちゃんはその場に座り込み、両手を頬に当ててプルプルと震え出した。

 

 

 

「わ…… わたくしったら、なんてはしたないことを……! ご、ごめんなさい! どうか今のは忘れてくださいましぃぃぃっ!!」

 

「えっ、ちょ、鰐塚ちゃーん!? ……行っちゃった」

 

 

 

 一人になったボクは、まだ感触が残っている自分の手をチラ見する。

 

 

 

(忘れてって言われても…… これはなかなか……)

 

「あ~んなイイおっぱい忘れらんないよ~! かな?」

 

「わっ!? マママ、マキちゃん!?」

 

 

 

 今度はマキちゃんがニヨニヨしながらやって来た。

 

 

 

「も、もしかして…… 今の見てた?」

 

側近(そっきん)のお二人がここにいたら殺されてたね~、セツナくん」

 

「あー、(ひろ)()くんと京川(けいかわ)くんか…… ほんとだね、命拾いしたよ…… でも急にどうしたんだろ、鰐塚ちゃん?」

 

「さぁね~。ま、今のうちにお手手の感触をじっくり堪能(たんのう)することだね、むっつりスケベのセツナくん♪」

 

「む、むっつりスケベって……!」

 

(ナイスファイトでしたよ~鰐塚センパイ! 恋のキューピッドとして、これからも応援してますッ!)

 

 

 





 (  ゚∀゚)o彡゜おっぱい! おっぱい!

 Vジャンプにて連載中の漫画・『遊戯王OCGストラクチャーズ』の作中で、【リチュア】と【エルドリッチ】が使用されていると聞き、使い方の参考にさせてもらえればと思って読んでみたところ、スゴくおもしろくてそのまま全巻購入しちゃいました!

 推しキャラはライト月子ちゃんです!
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