「あっ、提督!」
「ん?お~、古鷹じゃん」
ある日に偶然廊下で出くわす提督と古鷹。
「今からどこかへお出かけですか?」
「うん、ちょっと町に出掛けようと思ってな」
普段は白い軍服を着ているが、今回は私服を着ている提督。
「そうですか、買い物とかですか?」
「それもあるけどちょっとした用も含めてな、古鷹はこれから何かあるの?」
「いえ、特にないですけど…提督がお見えになられたので声をかけようと」
「そっか…もし良かったら古鷹もこれから一緒にどう?」
「えっ?」
提督に誘われすこし驚く古鷹。
「いや、俺もそこまで大した用じゃないし、古鷹も暇そうならどうかな~と」
「暇とは言ってませんけど…」
「あぁ、でも古鷹がいいんなら別に無理にとは言わないけど」
「い、いえ!そんな事ありません!ご一緒させてもらいます!!」
「?お、おぅ…そうか」
古鷹の大きな声に驚く提督。
「で、では着替えてくるので少し待っていて下さいね?」
「おう、急がなくて大丈夫だからな~」
そう言って一旦自分の部屋に戻っていく古鷹。提督は近くのベンチに座り古鷹が戻ってくるのを待つ。
「…これってある意味デートじゃね?いやデートだな、うん」
ふとそんな事を思う提督。
「……一見普通のかわいい女に見える古鷹も、その実人間じゃないっていうんだから不思議だよな…どうやって生まれたのかその他諸々がすべて謎…艦娘と呼ばれる、戦艦だった頃の記憶を持った人ならざる者…」
艦娘。女の子の外見に艦装と呼ばれる装備を身に纏い、水上を航行し正体不明の敵、深海棲艦と戦う謎の存在。
「だがその生まれは元は人間だったとか、敵の深海棲艦が変貌した姿だとか色々と噂があるが……そもそも深海棲艦ってなによ?」
深海棲艦。これも艦娘同様、全てが謎に包まれた人類の敵と言われる存在。突如として現れた彼らは人類全てに対して突然攻撃を始めた。その目的も謎。
「すこし前まで何も無かった日常が、アイツら出てきたおかげで漫画のような世界になっちまったもんな~、ホント…人生って何があるか分からねーなー」
ベンチに寝ころがる提督。
「その時までは普通に会社に勤めて、毎日同じ仕事の繰り返しだったのに、気付けばどうだ?今はその艦娘を率いる提督なんて大した役職に大昇格だ」
「毎日同じ事の繰り返しで、日常に退屈を感じてはいた」
「ちょっと変わった事でも起きないかなって…考えてもいた」
「でも流石にさぁ~…コレはちっと変わりすぎじゃね?」
「何?このままじゃ深海棲艦に海を支配されちゃうって?ワン〇ース?大海賊時代か?」
「変わんねーかなって思ってたけど、ここまで変わらんでもいいよー、大袈裟なんだからー もー」
途端に愚痴りだす提督。
「俺そんじょそこらにいる普通の平社員だったんだよ?誰かの上に立つとか、そんな事したことねーって」
「上に立つ者として、それなりの責任は持たなくちゃいけねーじゃん?それこそ部下の面倒とか、鎮守府の事とか、etc」
「俺そもそも人に指示したりするのとかしたくねーし、言ってもし、相手が えぇ~ なんて思ったりしたら俺嫌だし」
「まぁ、もし他に誰か指示する人がいて、そのサポートをするっていうんならまだいいけど…要は補佐?」
「提督なんて、本心は今すぐにでも辞めたいよ……まぁ、任されてる以上?やる事はやるけどさ…」
「あーやだなー提督やだなー、提督代理とかが良かったなー……そもそも提督代理ってあるんだっけ?アレ?それは秘書艦の役割だっけ?…まぁいいか」
「俺は絶対、サポート役が向いてるはずなんだよ!頑張っている人の手助けをする!それこそ、俺の真価が発揮されるってもんなんだよ!自分で言ってるけどさぁ?」
「提督やれ?ふざけろや!ひょんな事で人様を勝手に提督なんかにしやがって!」
「降格届け出そうかな~?提督代理にしてくれって……そんな届け出ないか…はぁ~」
タッタッタッタ
「すみません!お待たせしました…って、どうしたんですか提督?」
ベンチにうつ伏せで寝ている提督に聞く古鷹。
「…お~、古鷹…お前提督やってよ」
「急に何なんですか…というか、そんなこと出来ませんよ、私達艦娘は命令を受けて戦うのが使命なんですから」
「そんなの大丈夫だって…むしろお前しっかりしてるから尚更向いてるよ、大丈夫」
「何ですかその理由…」
「俺お前のサポートするからさ?ほら、提督代理って役で」
「何秘書艦と同じような事言ってるんですか…はぁ」
提督の発言に呆れて溜め息をつく古鷹。
「…そもそも、私は貴方が提督じゃないと嫌ですよ…」
「え~?なんで~?」
「それは………提督は…とても優しい方ですし///」
「そんな言うほどじゃないって」
「そんなことありません!提督は本当に優しいんですよ…?」
「お、おぉ」
「私達をしっかり面倒見てくれますし…一人一人をちゃんと見てくれている…話しにも、相談にも乗ってくれますし…」
「……でも古鷹、それは当たり前の事なんだぞ?俺は特別いい事はやってないよ…提督として、当然の事をしているだけだ」
「それでも、本当に嬉しいんです……前の大戦で戦う事しかできなかった私達にも、艦娘となった今では、こうしてちゃんと私達を思ってくれる提督がいてくれる…それがどれだけ幸せな事か…」
「!……記憶があるのか?」
「皆が皆そうではないですけど、一部の艦娘は私みたいに戦艦だった頃の記憶を持って生まれる事があるんですよ?」
「そうだったのか…それは知らなかったな」
まさかの古鷹の一言に驚く提督。
「だから、私達には提督が必要なんです…今の提督が…///」
「古鷹…」
顔が若干赤くなる古鷹。
「………そうか…なら、俺もお前達のその気持ちに応えてやらないとな!(そんな風に思われてたなんてな…)」
「ふふ♪だから、提督変わろうなんて言わないで下さいね?」
「ははっ、ああ…」
笑顔で言う古鷹に笑って答える提督。
「よし!そんじゃ、ここでずっと話してても仕方ない!そろそろ行くか!」
「はい!」
「古鷹と初めてのデートだぜー!!」
「そ、そんな大きな声で言わないでくださいよぉ~!///」
鎮守府を後にする提督と古鷹。
(案外、提督業も悪くない?かもな)
(私の提督が、今の提督で本当に良かった…)
お互いにそんなことを思っていた。