「…………」ペラ
ある日、外は雲一つないまさに快晴といった天気のなか、木の木陰に座り込み読書をしている艦娘がいた。
「………」ペラ
彼女の名は武蔵。第二次世界大戦中に建造された大日本帝国海軍の大和型戦艦の二番艦である。一応、姉に一番艦の大和がいる。
「……」ペラ
容姿は、褐色肌で赤色のツリ目に21号対空電探の網目がコーティングされた眼鏡をかけている。髪型はやや薄目の金髪をヘアバンドでツインテールかつ獣耳風にしあげている。
「…」ペラ
そんな彼女は先程から黙って読書を続けている。視線を本から離さず夢中で読んでいるようだった。
「」パタン
どうやら読み終えたようだ。
「ふぅ…やはり、刃〇は見ていて面白いな」
ちなみに彼女が読んでいたのは、某格闘漫画である。
「殴りあいのシーンに一々回想を挟むのは、見ていて興味深い…だが、よくよく考えてみれば戦っている最中にあれだけの事が考えられるのか?実際はそんな事考えている途中で殴られて終わりだと思うのだが…」
ふと疑問に思う武蔵。
「まぁ、そういったところも興味深いんだがな、読むたびに次が気になってしょうがない」
「フンフフ~ン♪…あれ、武蔵じゃん」
「む?」
武蔵がそんな事を思っていると、偶々そこを通りかかった提督に声をかけられる。
「おぉ提督…いや、相棒じゃないか?どうしたんだこんな所で?」
「いや今日ってスゲー天気いいじゃん?だから何となく散歩でもしようかなーと思ってさ、そういう武蔵は?」
「私も今日は天気がいいと思って、外で読書でもしようかと思ってな」
ちなみに武蔵は提督と2人きりの時は、提督のことを相棒と読んでいる。武蔵も提督のことを信頼しているからだ。
「へぇ~武蔵も読書とかしたりするんだ…何読んでたの?」
「刃〇」
「それ読書っていうのか?漫画じゃん」クスッ
「漫画も本だ、なら読書だろう」
「いや、俺的読書って小説とかそっちの方って感じだからさ?」
「あんな文字列だけなんて、ずっと読んでいたら頭が禿げてくるよ」キリッ
「なんだそれ(笑)」
武蔵の発言に笑いだす提督。
「でも刃〇か~、確かにそれ面白いよな」
「相棒は分かってくれるか!…前に姉さんにも教えてやったんだが、よく分からないって感じで、少しガッカリしてたんだ」
「ま~大和はこんなの読まなそうだしな~、結構マニアックだしなコレも」
「ちなみに相棒はどこのシーンが一番面白いと感じた?」
「んー…一言にコレっては言えないかな?ほぼ全部のシーンが独特な感じがして面白かったから」
「ほぅ、相棒もそうなのか…私も実はそうでな、ほぼ全部が興味深くてなかなか決められん」
「戦闘シーンにちょいちょい挟んでくる回想とかな、あれ読んでて面白いなって思うもん」
「分かる!分かるぞ!今それを思っていたところだったんだ!」
「普通あんな事考えてたら、『前から相手の拳が迫ってk…ドゴォ!!』で、終わりだもんな(笑)」
「ハハハッ!そうそう!」
お互いに話が盛り上がる武蔵と提督。
「フフッ……あ、そうだ、実際にそのシーンやってみねーか?実写版だ実写版」
「うむ?実写版とは…まぁそれも面白そうだな」クスッ
「よし…んじゃこっちの方で立ってくれ武蔵」
「ああ、分かった」
お互いに木から少し離れた所に移動し向かい合う。
「「……………」」
風はふいておらず、聞こえるのは小鳥のさえずりと波の音。
「「…………」」
一触即発のような雰囲気。
「「……」」スッ
互いに拳を振り上げる。
「「…!」」フッ
振り上げた拳をお互いにゆっくりと相手の顔に近づけて寸前で止め………
ドゴォ!!!
「ぶぅるあああああぁぁ!!!」
「あ、しまった」
…られなかった、武蔵が。吹っ飛ぶ提督。
「イヤァーー!!イタイィー!!顎が!顎がぁーー!」ジタバタ
「すすす、スマン!!!相棒!!あぁどうしたら…!」アタフタ
あまりの痛さにもがく提督。
「と、とりあえず冷やさないと!冷たいもの!み、水とか…!」アタフタ
「おーっ!オーッ!ヲーッ!」ウズクマリ
「あぁ……はっ!」→海
何か思いついた武蔵。
「相棒よ」ガシッ
「な、何?ヲーッヲーッ…」顎サスサス
「……」グンッ
「うぇ?」
提督を持ち上げる武蔵。そのまま…
「今冷やしてやるぞぉ!」ブンッ!
海へ投げ込んだ。
「ナンデエェェェェェ!?」
ザァアン!!!
勢いよく海へダイブし大きな水しぶきが上がる。
「ど、どうだ!?」
提督を投げ込んでその身を心配する武蔵。
「………相…棒?」
少しすると…
プカァ~~
…提督が背中だけ出しながら浮かんできた。
「相棒?相棒ーーッ!!」
提督の名を叫びながら艦装を展開し海へ飛び込む武蔵。
「相棒!!大丈夫か!?相棒!!」ユサユサ
提督の近づき彼の体を起こす武蔵。
「…相棒?」
「…………」チーン
提督は口を開け、目を白くしながら気絶していた。
「相棒ーッ!!!あぁ…!クソッ!」
武蔵はとりあえず提督を浜辺まで運んで寝かせた。
「まずは心臓マッサージを!」
そういって胸の真ん中に両手を重ねてマッサージをする。
「ふっ!んっ!」ユサユサ
肘をまっすぐ伸ばし体重を加減しながらかけ、垂直に絶え間なく圧迫させる。
「ふっ!ふっ!…次は…!」クイッ
武蔵は提督の顎を指で軽く上へあげる。そして…
「スゥ~……んぅ」
息を吸い自身の唇を提督にあて、人工呼吸は始めた。
「ん…」フーッ
それを何度も繰り返す。
「プハァ!スゥ~…んむぅ…」フーッ
「……」ピクッ
何度も繰り返すうちに、提督の指がすこし動き始めた。すると…
「ゴホォッ!」
提督が息を吹き返した。
「うぅんっ!?…ゴホッ!ゴホッ!…あ、相棒!?」
唇をあわせて人工呼吸していた武蔵は、提督が吹き出した海水をすこし飲んでしまいむせる。
「ゴホッ!ゴホッ!…はぁ、はぁ…む、武蔵…?」
「相棒!良かった!…その、さっきは本当にすまん…」
「はぁ…はぁ…あぁ…大丈夫だよ、ハハッ…はぁ…」
「う…すまん、私としたことが…」サスサス
力なく笑ってみせる提督の背中を優しく擦る武蔵。
「武蔵、とりあえずさっきの木陰まで連れてってもらえないか?すこし体が重くてな…」ハハッ
そう武蔵に頼む提督。
「あ、あぁ…分かった…じ、じゃあ失礼するぞ…?」スッ
申し訳なさそうにしながら、武蔵は提督を抱えあげ木陰まで歩いていった。