「…………」ポン ポン ポン
「……Zzz」
ある日、提督は書類等に判子を押す作業をしていた。作業としては難しくはないことだがその分、数が多いので提督一人でやるには忙しいように見えた。
「…………」ポン ポン
「……Zzz」
そのような事の為に、必ず提督には誰かしらの秘書艦が就くようになっているのだが、今回は加古が秘書艦であった。
「…………」ポン
「……Zzz」
その秘書艦である加古は先程からソファの上で気持ち良さそうに寝息を立て眠っていた。
「…………」スッ
「……てーとく~…Zzz」
作業の手を止め立ち上がり加古の元へ近づく提督。加古は寝言で提督の名を言っていた。
「お~い加古?起きろ~?」
「んぅ~……Zzz」
見かねた提督は加古を起こそうと声をかける。だが起きる気配はない。
「加~古~?さすがに起きろ~?」
「ん~…まだ眠ぃ…Zzz」
「お~い~起きろよ加古~」ユサユサ
「う~ん……なぁに提督ぅ…?まだ眠いよぉ…」
提督は体を揺するとようやく目を覚ましたか、体を起こす加古。
「起きたか?まだ寝るには早いぞ?」
「ふわぁ~~…ぅん?な~に~?」サスサス
目を掻きながら大きなあくびをする加古。
「お前今日の秘書艦だろーが、仕事手伝えよ?」
「ひしょかん~?…あぁ…そういえば、そうだったっけ?」
「書類の数が多くて一人じゃ間に合わねーんだ。寝てないで手伝ってくれ」
「う~ん…じゃあ、こっちに書類持ってきて~」
「お前なぁ……ったく」
提督はデスクに置いてある書類をソファがあるテーブルの上に移動させると、何枚かまとめて加古へ渡す。
「ホレ、とりあえずお互いに半分に分けてやれば何とかなるだろ」
「うわ~提督多いよぉ、もう少し減らしてよぉ~」
「わがまま言うな、俺だってこんなのやりたくないんだから」
とりあえず作業を再開させたが、加古は相変わらず眠そうにしていて作業の手があまり進んでいないようだった。
「ぁ~」ポン
「………」ポン ポン ポン
「ぅ~」ポン
「………」ポン ポン ポン
「うぅ~」ポン
「………」ポン ポン ポン
「う~~~ん」ポン
「うるせーよ!頼むからちゃんと仕事してくれよぉ!」
さすがの提督も我慢できずに大声で叫ぶ。
「うぇ?やってるじゃ~ん?大きな声出さないでよぉ~」
「もっとペース上げてやってくれよ!これじゃ俺が終わってもお前の方が終わらなくなるじゃんよぉ!」
「だってぇ~ものすごく眠いんだもん、仕事なんか逆に集中できないよぉ~」
「はぁぁぁ……古鷹の気持ちが今なら痛いほど分かる…」
大きな溜め息をつく提督。
「ふわぁ~…眠い~」
「……つーか、お前いつにも増して眠そうだな、何かあったのか?」
「んぅ?いや昨日の夜さ?ダンスの動画ずっと見てたら寝れなくなっちゃってさ、寝不足…ふわぁ」
「寝不足て……普段寝てばっかのお前がそんな事言うなんて変な話しだな」
「うぅ~提督そんな言い方ないだろぉ~?そんなに寝てないよぉ~」
「寝とるわ………まぁお前に趣味ができたのはいいが、あまり熱中しすぎるのも良くはないぞ?」
「でもぉ、次は何踊ろうかなって考えると、気になって調べちゃうんだよぉ」
「ふぅ、全く…」
また作業の手が止まり喋りはじめる提督と加古。
「…提督といろんなダンス踊ってみたいんだもん…」
「ん…まぁそれはいいけどよ…今は頑張って仕事終わらせような?」
「う~ん……提督、こっちきて」ポスポス
「うん?」
自分の隣に座るよう提督を促す加古。提督は立ち上がり加古の隣に座る。
「何だよっと」ボスッ
「ん~~」スッ
「おぅ?」
提督が隣に座ると、加古が体を預けてきた。
「加古?」
「んぅ~…Zzz」
そのままの体勢で眠り始める加古。
「おい加古?おい!」
「Zzz…」
「また寝やがった…もうこれじゃいつ終わるか分かんねーよぉ~」ハァ
仕事が終わらないと考えると自然と溜め息つく提督。
「はぁ………んっ?」
ふと、あることに気づく提督それは…
「マジ?」
寝ているはずの加古が、手だけを動かし作業をしていた。
「Zzz」シュパパパパッ
まるで手だけは別の生き物のように動き、量があったはずの書類がみるみるその数を減らしてゆく。
「Zzz」シュパパパパッ
ただ呆然とその光景を見ている提督。
数十分後、あれほどあったはずの書類がすべて判子が押し終わり、今日の仕事は終わりを迎えた。
「スゥ~…ふぅー」
提督はポッキーで煙草を吸っているかのような仕草をしている。ちなみに提督は煙草は全く吸わない。
「……前に古鷹が言ってたっけ?コイツ寝ながら食事することもあるって」
前に古鷹が言っていた事を思い出す提督。
「…普通はありえないことだが、実際目にすると信じるしかないな」
「Zzz………んぅぅ…ふわぁ~~…あ~おはよ~提督~」
「ああ、おはよう加古」
加古がようやく目を覚ます。不思議と提督は加古を注意しようという気持ちにはならなかった。
「あれー?仕事はー?」
すっかり目を覚ましたようで、先程の様子が嘘のように思えるくらいだった。
「終わったよ…いや、終わらせてもらった…だな」
「え?提督一人で終わらせたの?」
「いや、その逆だよ」
「えっ?あたし?」
「うん、覚えてないのか?」
「あはは…寝てたもんで何にも覚えてない」
「そっか……寝ながら手だけ動かしてたんだよ、見てたけどスゲー違和感あったぞ?」
「ふーん、そうなんだ…でも、ちゃんと終わらせられるアタシってば、さっすがだね♪」
「あーそうだねー…てか、そろそろこの体勢何とかならねーか?」
「え?あぁ…」
ずっと自分を支えていたことに気づく加古、提督はさすがにこの体勢に限界を迎えようとしていた。
「………折角だからもうちょっとこの体勢で…」
「いや俺キツいて」
「…もう一眠りしてもいい?」
「だから俺もう限界だって…」
「Zzz…」
「何で起きたばっかでまた寝てんだ!この仮眠症野郎がぁ!!いい加減にしろやぁぁぁ!!」
提督の声が虚しく執務室に響く、そんな中でも加古は気持ち良さそうに提督に身を預けて眠っていた。
「んふふ~♪提督~♪」
彼女がどんな夢を見ているかは本人にしか分からなかった。