やっと、いつも律が見たがってた桜を見に来ることができたな。
違いますよ、俺が見たかったんじゃなくて、高野さんに見せたかったんです。
確かに立派な桜だ。樹齢は何年ぐらいなんだろう。
俺が留学している時にはもう立派な桜だったので一体何年ここにいるんでしょうね。
二人で起業した出版社も放流しても大丈夫なほどちゃんとしているし、長期の休みなんて久しぶりだ。そしてやっとここまで来れた。
そうそう、会社のエンブレムにしたサクランボ、結婚しない俺たちのことをチェリーって陰口言う人たちがはじめはいたけど、今はその柄の本が書店に並んでいて壮観ですね。
お前が考えたサクランボの周りを五枚の桜の花びらが飾るそのマーク、可愛いよな。二人だからサクランボ柄だなんて少女趣味だ。ヤッパリお前も乙女な漫画編集だったってことだな。
本当は高野さんのイメージは桜の花びらの方だったんですよ。でも、二人で寄り添って生きていきたかったから実の方にしたんです。そして周りを花びらで飾ったのはいつもあなたに包み込んでもらいたかったから。ふふふ、本当に少女趣味ですね。俺にとっては高野さんは桜そのものでした。
桜の日に生まれたお前は俺にとって桜そのものだった。律はこの桜の前で泣いたんだな。
まあ、そうですけどそれは俺の早とちりだったから・・・。高野さんを、嵯峨先輩を信用できなかった俺が悪かったんです。あんなに好きな先輩のことを俺は悲しませてしまって、それだけは今でも心に痛みを感じます。
泣いているお前を抱きしめたい。違うんだと言い訳を山ほどしたい。ずっとそう思ってきた。
ふふふ、それは何度も聞きました。でももういいんです。だって先輩が俺のことを好きでいてくれたことはわかったんです。どんなに俺が拒否してもグイグイと俺の中に入ってきて俺は陥落したんだから。
後悔してるって言うとお前は苦しそうな顔したけど、それでも俺はお前に何度でも謝ってやり直せるものなら何度でもやり直したかった。
でもそれはできませんから、うじうじするだけ損です。
日本人の平均寿命は80歳を超えてるんだってさ。
さすが長寿国、平均でそれということは世の中の半分の人がそれ以上生きる計算ですね。すごい長生きですね。
俺もさ、折り返してかなり経つけど、100歳まで生きる人もいるし夭折する奴もいる。平均とか何パーセントの確立とか言うものは当てにならないな。
確かにそうですね。まったく統計とかいうやつはいつだって当たった自分は100%の確率なわけですし気休めにもなりません。
俺はきっちり長生きするぞ。
ふふふ、元俺様編集長は、案外繊細なハートでしたけど身体のパワーは有り余ってましたから長生きしそうです。徹夜明けで俺に迫っても平気な顔してたしね。
逆に俺はいつもすぐにヘロヘロになっちゃって、基礎体力の差かな?
だから律、俺のことは心配しないでしばらくそっちで楽しんでいてくれ・・・。
そうですね。どんな場所か行ったことないので少し不安ですけど。
できるだけ用心していたつもりでしたがごめんなさい。
「本当は二人で見に来たかった・・・。」
二人で来てるんですよ。気が付いてないかもしれないですけど。
ねえ、高野さん、俺は今ここにいます。もうすぐ行くけどあなたのすぐそばにいるんですよ。
「律・・・。愛してるよ。お願いだから最後に・・・。俺にキスして・・・。」
もちろん・・・。
「律、お誕生日おめでとう・・・。」
そんな未来の二人でした。
死ネタ、ごめんなさいと最後に謝ります。