世界一初恋 高律 SS集   作:bui

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駅の二人・ある日の二人

お、イケメンみっけ。

 

電車で移動するために空いた座席に座ったら、

到着した別の電車から降りる見知った顔を窓の外に見つけた。

 

姿勢がいいよな。

顔が小さい。

それに腰の位置が高くて手足が長い。

コートを軽く蹴るように歩く姿はなんと颯爽としていることだろう。

少しうつむくと髪がさらりと流れ落ちるのもいい。

あの睫の長さときたら、こんな遠くからだって顔に影が落ちてるのがわかる。

あ、髪を掻きあげた。

細くて長い指の舞うような動きもきれいだ。

 

あれは全部俺のものなんだぜ。

 

そう思うと妙にハイテンションになって憂鬱な日帰り出張もがんばれるような気がした。

 

 

 

締め切り間近の企画書やイラスト原稿のチェックをしていたら、

世間のお子様たちならすっかり本寝している時間になっていた。

 

編集長はまだ帰らないんだな・・・、

名残惜しいけど空の椅子に挨拶をして駅に着くとそこで見覚えのある黒い髪を見つけた。

あの人は今日は日帰り出張で一日不在だった。

 

お疲れさまって声をかけようとしたら数人の女性に囲まれている。

面倒そうにあしらうこともできるくせに妙に愛想がいい。

それにずいぶん親密そうで腕なんてパシパシ叩かれて・・・、

もう!なにニコニコ笑ってだよ。

そんなにいい顔他人に見せるなんて赦せない。

それ俺のもんだろ?

なのに安売りしてんじゃないよ!

減るから、それ目減りするから!

 

まったく油断も隙もない。

今日はたっぷりお仕置きだから!

 

疲れてるなんて言っても赦さないから。

 

 

 

 

 

 

 

ある日の二人

 

 

「人質に預かっといて。」

 

急に招集がかけられた緊急会議に行く間際、黒髪の恋人は俺にパーカーを放り投げて言った。

 

今日は土曜日で仕事は休み。

 

少し残っていた仕事をするために俺達は朝から出勤していたのだ。

 

 

 

昨晩は見惚れるほど月が綺麗で、それを告げると恋人は散歩しながら帰ろうと言った。

 

特別しゃべることもないけど月明かりの作る影が仲よさそうで、それだけでも幸せな気持ちになれた。

 

 

 

いつもよりほんの少しだけ早く帰った分、仕事は休日の今日にずれ込んで到着した職場は、

 

休みなのに何?って思うほど人が多く訝しくおもっていたら、実は事故が発生していたようで、

 

丁度良かったと編集長は呼ばれて行った。

 

 

 

 

それからもう2時間、編集長はまだ戻ってこない。

 

 

俺の仕事はもう片付いたのに・・・。

 

ついでにあなたの仕事も片付けたのに・・・。

 

 

 

仕事を終えてから、木佐さんが教えてくれた、リーズナブルなランチメニューのあるフレンチレストランで

 

遅めのお昼を食べるつもりにしていたのにとか、

 

お昼が楽しみだったから朝ごはんを軽くしたせいで、すっかりおなかが空いているのにとか、

 

そもそも何で他部署の事故にうちの編集長が呼ばれるんだ、とか・・・。

 

 

ぐるぐるイライラ考えて上着を握り締めたらそこからは恋人のタバコの香りがした。

 

 

タバコは吸ったことがない。

 

家族は吸わないし煙たいし喉が痛くなりそうだし・・・。

 

受動喫煙でも発がん性があるっていうし、

 

喫煙者は肩身の狭い思いをしてたりするし・・・。

 

 

 

だけどポケットに入っているその箱をそっと取り出すと香りは恋人の上着の香りとは少し違った。

 

 

そうか、上着の香りはタバコと高野さんの香りなんだ・・・。

 

 

あの、一番近くにいる瞬間、気持ちよさと苦しさが切なさになって襲ってくるあの瞬間・・・・、

 

何かに連れ去られそうになって、ぎゅっとしがみついて髪を引き寄せるときにいつもこの香りがする・・・。

 

 

そう、この匂いが一番安心するんだ・・・。

 

この匂いは俺を放さない。

 

 

この匂いに俺は囚われ続けるんだ・・・・。

 

 

 

 

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