「なんつーか乙女なキャラ設定だな。」
美濃の担当する作家の漫画のキャラの設定書を見てついそう言ってしまった。
髪の毛は茶色くてさらさらでお目目がきらきら、まつげがバサバサしてるし目の色がグリーン。
洋服はゴスロリ?いやシロロリっつうんだっけ?白いヤツって。
「何でまたこんな現実にいないようなキャラに?」
「俺もそう言ったんだけど、これ実際にいた子がモデルなんだ。」
美濃はいつもの涼やかな笑顔は崩さずでも少しだけこまった風に眉だけゆがめた。
「アイドル?」
「うーん・・・、高野さんは覚えてるかな?十何年か前の子なんだけど・・・。」
美濃は切れ長の目を俺の右側の席ににちらりと向け、
「小野寺出版のイメージキャラクターで、当時ポスターとかに出てた子。」
そして少しだけ遠慮がちにそう言ったのだった。
「あ!俺覚えてる。子役の子?」
「人形ではないかと言われた子ですよね?」
木佐と羽鳥も覚えているらしく口々に語る。
「あの時代だったからそう思わなかったけど、結局あのあと他には何にも出なかったしCGとか合成とかだったんじゃない?」
「でもたまにイベントとか出てただろ?しゃべらなかったけど動いてたのテレビで見たぞ。」
「それはさ、ジャの道はヘビニョロリなんじゃない?最先端技術とかだったかもね。今だってミクとかあるじゃん。」
「でもさ、かわいい子だったよな。今だったら可愛すぎる何とかとか言われるかもしれないな。」
「え、その言い方もうちょっと古くないか?」
みんなでどっと笑った。
そして収まった頃俺から一言・・・。
「俺、本人に会ったことある。」
「え!?」
ほらな、驚くだろう。
「な、なんで?」
「何でって・・・、あの頃俺もあの子を見たくてさ、イベント行ったんだけど始まる前にトイレに行きたくなってさ。」
「うん。」
何でそんなにみんな真剣なんだよ。
「トイレから出たところで見かけてさ。」
「見ただけ?」
なに期待してんだよ。
「しゃべった。」
「しゃべった!?」
「なんかさ、逃げようとしてたみたいでかくまって欲しいって言われてさ。」
「うん、それで?」
「男子トイレにかくまった。」
「わーやるね。」
そしてさ、まだ続きがあるんだぜ。
「ほっぺたにキスしてもらった。」
「え!?」
小野寺がワナワナして変な声を上げた。悪い、昔のことだから時効な。
「本当にいる子だったんだね。今なにしてんだろう?」
「かわいかったからモデルとかになればよかったのにね。」
「でもさ、嫌だって言って逃げてたんだからそういうことに興味ねー子だったんだろうぜ。」
「そっか・・・。」
っで、話戻すけどさ。
「でも今の漫画のキャラクターとしてはどうなんだ?」
「先生はあの子の未来みたいな感じでイメージしているらしいけど。」
「まあ、考えてる話があるんだったら一度ラフ起こしてもらう?」
「ええ、分かりました。」
とまあ、話はコレで終わったんだけど・・・。
そのあと小野寺がずっとむすっとしたままで気になってた。
調子に乗ってキスしたとか言ったのがまずかったんだろうな。
別に恋したわけでもなくて、単に有名人に会いたいぐらいのテンションだったんだけどな。
「なんか怒ってる?」
夕飯を食いながらいつもにも増して無口な小野寺にそう聞くと
「なんですか?怒ることなんて何にもないです。」
といつもにも増して増して増してそっけない答えが帰ってきた。
このごろは食事のときにはおいしいとか好きだとかという感想も聞くことができてたのに、やっぱり昼間のあれが失敗だったかな・・・。
「昼間のアレさ・・・。別にそんなんじゃないから。」
後悔で懺悔を口にすると小野寺が笑えるぐらいびくりと飛び跳ねた。
「ななな、何のことですか!?」
「別にあの子が好きだったとかそう言うことじゃなくてさ。」
「え!?」
なに?そのがっかりした顔は?ワケわかんない?
「じゃなに?」
「何でもないです・・・。」
「小野寺?」
「・・・。」
「リーツ。」
何度かそんなやり取りをするとあきらめたように一息ため息をついて
「俺の王子さまが高野さんだったって知ってちょっと感動してたのに・・・。」
と言った。
「は?」
「あの子は・・・。俺です・・・。」
「はあぁああぁ!?」
「無理やり女装させられて!いくら子どもでもすごく嫌だったのに好きな作家のサイン本で懐柔されたんです。」
「はいぃ!?」
「まさかあんなに評判になるなんて思わなくて。」
さっきまでの不機嫌顔が見る見る赤くなる。
ああ・・・、なんてこったい。
俺とお前って本当に運命の二人だな。
そう思ったら笑いがこみ上げてきた。
「なに笑ってるんですか・・・。」
「なあ、写真持ってる?」
「・・・。」
「今度ちょーだい。」
「あんたって人は・・・。」
「リツのかわいいところは全部抑えておきたいからな。」
また小野寺の顔が真っ赤になって行くのが分かった。
ホント運命だな。俺たちって♪
お前と俺の初ほっぺキスに乾杯。