明命が帰ってきた報告を聞く限り禅于は戦闘狂だったようだ。戦闘狂が求めるはじゃは強者との戦いおけるスリル、もしくは死の恐怖を感じたいと言ったものがほとんどである。
「何はともあれ、よくやってくれた明命」
「はい!」
「ですが狼様」
「解ってるさ愛理、戦闘は避けられないだろうし、相手は殺すつもりで来るだろうさ」
「けど。こちらはそうはいかない、そうですね狼様」
掵里の言うとおり友好関係を築きに来た此方は殺す訳にもいかず、更に相手に納得させるだけの内容の戦いをしなくてはいけなかった。
「相手を待たせるわけにもいかないし行くとするか」
どうやってこの場を切り抜けるかを考えながら狼は歩を進め始めた。
「よく来たな。目隠ししてるお前がそいつの言ってた主か?」
「ああ、初めまして南匈奴の王禅于殿、俺は姜維伯約、今回の目通りk」
感謝すると続けようとしたがそれは叶わなかった。
何故なら禅于が斬りかかってきたからだ。
「今のを避けるか期待通りだ」
「熱烈な歓迎だな。これは敬意もいらんか」
今の狼は刹那を持っていない、愛理に預けたからだ。
刀での斬り合いになれば峰打ちしか相手を切らず満足させるのさ難しいと判断した狼は、無手での戦闘を選択したのだ。
「俺と無手でやろうってのか?」
相手は狼が無手であることにやはり不満を抱いた。
だがそれも一瞬だった。
「無手だったら俺が弱いとでも?」
その言葉は決して強いものではなかった、が、その言葉に乗せられた殺気は禅于が今までに感じたことのないほどの殺気だった。
「ふ、ふはははは、良いね!実に良い!この死を直感出来るような殺気!俺はなぁ!生きている実感が欲しいんだよ!!だらだら生きていてなんの意味がある!!」
「そうかい、なあ、賭けをしないか?」
「あぁん?賭けだと?」
狼の言葉に焦れったくも禅于は返事を返した。
「勝った方の願いを負けた方が聞くただそれだけだ」
「勝者に敗者が従うのは当然だろう、がぁ!!」
待ちきれないと言わんばかりに禅于は再び狼に斬りかかる。
禅于の刃をギリギリまで引き付け左足を一歩引いて避けると同時に狼は右拳を顔目掛けて放つ、が、禅于はそれを屈んでかわした。
次に禅于が狼の足を狙い剣を薙ぐが狼は跳んでかわしそのまま空中で回転、禅于目掛けて踵落としを放つが、禅于は横に転がるように回避した。
そして禅于がいた場所は狼の踵落としにり2メートル範囲ほど陥没いていた。
「おうおう、こえぁなぁーおい。」
「軽々避けといてそれはないだろ」
両者共に様子見だと言うことはわかっていた。
禅于は思った。長くこの時間を楽しみたいが、死ぬつもりはない、だが実力的に長期戦は不利だと、ならば答えは簡単だ、短期決戦でより濃い時間を楽しもうと。
「お前相手に余裕なんざみせられそうにないんでな!悪いが全力で行くぜ!」
そう言い終わると禅于は右手に剣を持ち両手を下げたまま軽くその場で跳んだ、そして着地した時その場にいる者の目から消えた。
次に現れたときには既に狼の首元に刃を振り抜いていた。
「「「狼様!!」」」
愛理、明命、掵里は叫んだ。自身たちもそれなりの武を持っていると思っていたが、禅于の動きに着いていけなかったからだ。
しかし、刃を振り抜いていた禅于はあるべき筈のものを感じとれず、困惑していた。
『おい、なんでだ?確かに俺はこいつを斬った、斬ったはずだ!一歩も反応できちゃいなかった!ならなんで!』
「斬った感触がないんだってか?」
「ぐっ!?」
狼からの言葉でなんとか我にかえり、咄嗟に剣を盾にした、しかし狼の放った回し蹴りは先程の踵落としの非ではない破壊力を発揮し剣を折り禅于を吹き飛ばした。
「愛理達も心配しすぎたぞ、まったく。」
ふう、とため息をつきながら愛理達の方へと体を向けた。
「で、ですが」
「そ、そうです」
「禅于さんが消えて」
「ん、そう言うことか。俺にははっきり視えてたぞ?」
この場においてただ一人狼だけが禅于の動きを捕らえていた。
「がぁぁぁ!!」
吹き飛ばされた禅于が自身の体に渇をいられるように
叫びながら立ち上がった。
「はぁ、はぁ、てめぇ、俺の動きをが視えてたのか?
そんな目隠しをして!どうやって避けた!」
「ああ、視えてたさ、お前の中に……いや、お前の持つその剣から何かが流れ込んでいくのもな。どう避けたかは秘密だ、その方が楽しいだろ?」
「!!」
禅于は驚きを隠せなかった、自身の持つ剣、緑猿(リョクエン)は代々禅于が受け継いできた剣で、逆に言えば緑猿を扱えぬ者に禅于の資格はないと言えた。
緑猿は初代禅于の魂が宿るとされ強き匈奴の者に反応し、その体に初代の力を降ろすことができたのだ。
「さてまだやるか禅于?」
狼はスッと腰を少し落とし構えた。
「……ふ、ふはははは!!当然だろうが!こんな楽しい事、こんな簡単に終わらせてたまるかよ!!」
禅于は歓喜していた、この力を手にしてから自分の周りには自分と競える者どころか立ち向かってくる奴さえいなかった。だが今目の前に全力で挑んでも勝てないであろうやつがいる。
『こんなに嬉しいことはない。お前の強さを俺に見せてくれ、そして、俺の!』
「く、はぁ、はぁ…………俺の負け、か」
「そうだな」
ドサリと仰向けで禅于が倒れた。
2人の闘いは4半刻ほど続いたが狼に傷らしい傷はなく対照的に禅于はボロボロだった。
が、禅于はニヤリと笑い右手に掴んだ物を見ながら言った。
「だけど、一矢報いたぜ」
その右手には狼眼を隠す布が握られていた。
「さて、殺るなら殺りな、だが他のやつらには手を出さないでくれると助かる。」
「「「「「禅于様!!!!」」」」」
そんなことをするつもりは狼には無かったが、禅于の言葉を聞いてきた回りの一族の者達が禅于に駆け寄った。
「禅于様を速く安全な所まで避難させろ!」
「その間の時間は我らが稼ぐ!」
「お、お前ら!?勝手な真似すんじゃねぇ!俺に約束を違えさせるつもりか!」
「なりません!例え約束を違えてでも貴方は生きなければならないのです!!」
「次なる王を育てるのは貴方の使命!」
「それが我ら一族の王の務めです!!」
「そんな簡単に命を投げたさせたりはさせませんぞ!」
「今この一族を纏められるのは禅于貴方だけなのです!」
禅于に対し大声で言い返す一族の者達、しかしそれでもやはり狼は彼等達は禅于のことを大切に思っているのだと思えた。
「悪いが、少し話を聞いてk……!?伏せろ!!」
落ち着いてもらおうと狼が話しかけた時、狼はあるものに気がついた少し離れた丘の上に弓を構えた者達がいたのだ。数は20人程だが既に弓からやが放たれた。
「焔舞!」
狼は禅于らの前にでて、氣を焔へと変換し纏いその場で舞う、そして、少しながらの上昇気流を作り出した。それにより矢の軌道がそれ禅于らの後方へ突き刺さった。
「お前なんで?」
「話はあれを片付けた後にしないか?」
狼がスッと指差した方、そこには武装した100程の匈奴の兵士がいた。