麒麟児になりて   作:氷月

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20話

現れた100の兵士達の奥から一人の男が前に出てきた。並みならぬ巨体2メートルに届きそうな男だった。

 

「伯父貴!何のつもりだ!」

 

禅于がその男に向けて叫んだ。

 

「伯父?」

 

狼は禅于の方へ顔を向ける。それに禅于は頷いた。

 

「アイツは俺の伯父貴、先代禅于を決める際に選ばれず俺の親父が禅于になって以来、相談役になってくれてたんだが、まさかここに来て」

 

「無様だのう禅于、いや陸縁よ!災いを招き入れた挙げ句、そのざまでは王が勤まるわけもなかろう!ここは1つワシが代わりに王として立ち一族を守ってやらねばならんだろう!」

 

 

 

禅于の伯父はニヤニヤと笑いながら言った。

 

禅于の伯父の言葉を聞き狼は理解した。

 

『なるほどな。薄汚い野心を持った伯父が禅于が負けたのを良いことにここでまとめて葬り、自分が王になろうとそう言うことか』                         

 

「禅于、今戦えるのはここにいる連中だけか?」

 

「ああ、少し離れた方で怪しい集団がいたってんで、そっちに人を回しちまってる。それに元々俺達は少数で移動しながらの生活をしてるからな、だがあの程度の数なら心配ねえ」

 

しかし、そうは言ったものの禅于は疲労感を隠しきれていない。

しかも禅于側は20あまりの戦力、1人あたり5人計算と言えば希望が見えるが乱戦になれば厳しいだろう、そしてなにより……

 

「左の丘の向こう側に20人ばかり隠れてる、奇襲隊ってところだろうな。」

 

「……マジか、伯父貴のやつ本気も本気みてぇだな」

 

目撃者を殺し、遠方の者たちには狼が禅于を殺し、それを自分が殺したとでも言うつもりなのだろ。

 

「さて、長々と話をするつもりもないのでな、お別れじゃ。行け!1人として生かしておくなぁぁ!!」

 

禅于の伯父の掛け声により100の兵がこちらに向かい突撃を始めた。

 

狼はそれを見て3人に指示を出す。

 

「愛理、刹那を」

 

「こちらに」

 

「ありがと、流石だな。さてと、愛理!明命!」

 

「「はい!」」

 

「2人は左の丘の向こう側にいる、奇襲隊とおぼしき奴等の殲滅、終わり次第戦線に戻れ。だがもし万が一、非戦闘員だった場合安全の確保、愛理が護衛し明命は戦線に戻れ」

 

「「御意!」」

 

返事を返し直ぐに2人は動き出す。

 

「掵里!」

 

「は、はいぃぃ!」

 

「気を張るな、落ち着いてやればいい、掵里は禅于に治癒功をかけてやってくれ、禅于が戻るだけで士気が違う」

 

「は~、ふ~、……御意です!」

 

深呼吸をしたあと掵里は力強く返事をした。

 

「さてと、始めようか」

 

狼が刹那を抜き鞘を腰に指す。

 

「お、お前ら!?これは俺らの問題だ!手ぇ出すな!」

 

「喧しい、敗者は勝者に従え、だろ?治るまで大人しくしてろ。禅于が治るまでの間2人を守ってやってくれ、頼む。」

 

禅于を言葉を切り捨て回りにいた兵達に狼は頼んだ。

 

「確かに任された!」

 

「「だが我々も」」

 

「「「共に戦うぞ!!」」」

 

20人の内5人が前に出てきた。風格、闘気、間違いなくこの中のトップ5だろう。

 

「そう、か、死ぬなよ?あんたらが死んだら禅于が悲しむ」

 

「お前こそな!」

 

「後で酒でも飲もうじゃねぇか!」

 

「「「呑気なこと言ってないでいくぞ!」」」

 

 

 

 

そして6人は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弱いな、だがこれは」

 

戦いはすぐさま乱戦になった。

離れすぎず行動することにより互いが互いを助け合い戦いを続けていた狼達、だが数の暴力に立ち向かうのは難しく各自傷を負っていった。

狼とて例外とは言えず他者を気にしながらの戦いは余計に気を使い、神経をすり減らしていた。

 

「ちぃ、後ろだ!」

 

舌打ちをしながら背後に敵がせまることを知らせる。

 

「ぬぅ!?くぅ、おらぁ!」

 

「大丈夫か?」

 

疲労からか反応が遅れ刃が掠めたものの、敵を斬った禅于の兵に狼は近寄り声をかける。

 

「こんなもん傷のうちに入らねぇよ」

 

そう言った兵だが疲労感が酷くこのままではボロが出るのは時間の問題だと狼は思った。

ベストは禅于の伯父を斬り、相手を戦意喪失させることだろう。だがそれではこの5人を確実に見捨てることになるのは明らかで、狼は悩んでいた。

 

「なあ」

 

「どうした?」

 

いつのまにやら5人は背中合わせに集まっていた。

 

「お前なら、擂刃様、いや擂刃の所までいけるんじゃないのか?」

 

「行けると思う、たがそれは」

 

「本当は自分で取っ捕まえて!」

 

「禅于様の前に突きだしたい!」  

 

「だが、俺らじゃできないようだ」

 

「頼む!」

 

「アイツだけは許せんのだ!」

 

顔を合わせてはいないが本気なのはわかった。

例え自身らが死ぬことになろうとも。

 

狼はフッと口の端をあげた。

 

「わかった」

 

「すまん」

 

「だが死ぬなよ?」

 

「わかっている!」

 

「そう言うことだ、頼んだぞ!明命!愛理!」

 

そう言うと共に狼は走り出す、そして入れ替わるように明命と愛理が到着した。

 

「任せてください!」

 

「御意。さて、身のほどを教えてあげます。かかっておいでなさい反逆者ども!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、小僧が邪魔しおってからに」

 

「悪いなあんたの好き勝手させるわけにはいかないんでな、何よりあんたは王の器じゃない」

 

「ほざけ!」

 

ガァァァァァァン!!

 

擂刃が狼にめがけ戦斧を降り下ろした。

それを狼はバックステップでかわす。

 

「力だけはあるみたいだな」

 

「ふはは!貴様など我が戦斧の餌食じゃ!」

 

大声で笑いながら戦斧を再び肩に担ぐ。

 

「だが、あんたに構ってる暇はない。終わらせてもらうぞ!」

 

「ぬかせ!」  

 

狼は擂刃に接近、擂刃は狼目掛けて戦斧を振るった。それを狼は避けもせず右足を踏み込み愛刀、刹那を抜刀、戦斧の刃に滑らすように合わせ、斬った。

 

「な!?」

 

擂刃は信じられないと言った顔だった。自身の自慢の肉体が産み出す破壊力を乗せた戦斧が棒の用にか細い剣に破壊、ましてや斬られるなど想像すらしていなかったからだ。

 

「死ね」

 

しかし狼にとってそんなことはどうでもいいことだった。振り抜いた刀の勢いそのままに一回転し、擂刃を

左肩から斜めに切り捨てた。

 

「ば、ばか、な……」

 

擂刃は前のめりに倒れ、それ以降動くことはなかった。

 

「貴様らの偽王は死んだ!貴様らの敗けだ!!」

 

戦場に狼の声が響き、擂刃の兵達は動揺した。

 

「てめぇら覚悟はできてるな?」

 

「ひっ!」

 

掵里の治療により回復した禅于が右に折れた剣を左に新しい剣を持ち擂刃の兵に歩み寄る。

 

「さあ、死か服従か好きな方選べ!!!」

 

この瞬間、狼達の勝利が確定した。

 

 

 

 

 

 

 

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