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狼と明命は森に入るなり木に登りその上を飛び移るように駆けていた。
そしてしばらくして狼があるものに気が付く。
「明命止まってくれ」
狼が見つけたのは恐らくこれから天水に向かうであろう賊達だった。数は100と言ったところだ。
狼の予想より多くの賊が天水に向かおうとしていたのだ。狼は空に慌てず懐から赤い布切れを鳥だして賊達が離れるのを待った。賊達との距離がとれたのを確認すると指笛を吹く。すると何処からともなく颯がやって来た。
「颯、此れを愛理に届けてくれ」
「ピュイ!」
そう言って赤い布切れを颯にくわえさせ放つ、それを見ていた明命が心配そうに狼に話しかけた
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。皆を信じよう。それに俺達が急げば皆と速く合流できる」
「はい!」
移動を再開しようとしたとき、狼は下にあるものを見つけた。
それは賊自身が罠に掛からないよう下山する側からしかみえない目印だった。
「なるほどな、これなら楽に嵌められる」
そして狼は木から降り天水に向かった賊達が通った道を外れるように目印の場所を変えた。
「これでよし、さて先を急ぐぞ明命」
「御意!」
そして二人は先を急いだ。
一方天水組は賊に備え準備をしていた。
農具や包丁を先端にくくりつけた棒など急ごしらえな武器ではあるが無いよりはましだろう。
それに戦いの素人ばかりで剣などで斬りかかるより間合いの広い武器で応戦する構えだ。
「いいですか前方では私達が戦います。それを抜ける賊達がいた場合、一人に対して五人で挑んでくだい。卑怯等と言うことはありません。この戦いは皆さんが協力し互いに助けながら生き残る戦いです!」
「「「「「「応!!」」」」」」
「子供さん達は絶対に家の中から出てはだめでしゅ!」
「「「「「は~い!!!!」」」」」
住民達に指示をだす愛理と掵里、そんな中、颯が愛理の肩に止まった。そして愛理は颯がくわえるものをみて皆に伝える。
「狼様からの報によると賊は100程の数で移動を始めているようです!」
その言葉に辺りがざわめく。しかし聞いた話よりも賊が多ければそれも当然のことだ。
「心配することはない、この趙子龍の槍で賊など一掃して見せよう!」
「抗え、覚悟を決めろ」
ざわめく辺りの者を趙雲と羌瘣が鼓舞する。
「そうだ、抗うんだ!」
「賊なんかに屈しない!」
「自衛団の仇をとるんだ!」
「今度は私達が彼らを守るのよ!」
いろんな声が飛び交う。
「俺一人じゃ出来る筈もない、だけど皆で協力すればなんとかなる!自分達の街を、今まで守ってきてくれた自衛団を、この街の未来である子供達を、自分達で守るんだ!!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」
誰かがそう叫び他の住民達も武器を持ち天に向かい突き上げた。士気は上々これならきっと大丈夫と愛理は思った。
「狼様、御武運を」
その愛理の言葉は風に流れていった。
「あれか」
暫くして賊の拠点を発見した狼と明命、息を殺し様子を伺う。
「全くなんだってんだよ天水に現れたあの青髪はよぉ」
「それでも問題ねぇって、今度は頭も行って前より数も多いんだぜ?今頃天水の奴ら震えあがってんじゃねぇのか?」
「違いねぇ!」
「「「「「「ぎゃははははは!!」」」」」」
その言葉を聞き狼は閻鬼と名乗る奴らの頭が天水に向かったことを知る。
「そいつの実力がどの程度かは知らないが俺らの情報は入ってないみたいだな」
「はい」
小さな声で明命と会話をする。頭のいない賊など統率のとれない阿呆の集まり、ならすぐに始めるかと狼は明命を見ると明命もそのつもりだったのか小さく頷いた。
「他の村とかなんかは大人しく従ってるのにな?」
「その話し詳しく聞かせてもらおうか?」
「「「「!?」」」」
「だ、誰だてめぇ!!?」
「お前らが言う震えあがってる奴ら、だ!」
そう言うと同時に賊の頸をはねる。
「て、てめ」
「遅いです!」
仲間が頸をはねられ、驚きながらも狼に斬りかかろうとするものを明命が斬る。
「さぁ覚悟はいいか?祈りはすんだか?ならもういいだろ、死ね」
「覚悟です!」
そう言って二人は賊を斬り始める。
「な、なんだよ!こいつら!」
「ぎゃあぁ!」
「速すぎ、ぐぎゃ!」
「こ、殺される!」
「に、逃げろ!」
「てめぇ!押すんじゃねぇ!」
「うるせぇ!てめぇこそ!」
賊は直ぐ様混乱した。中心になる人物の不在により統率などあったものではない。ましてや自分より強い者に立ち向かう有期など無い者ばかりだ。
「どうした?逃げることしか脳がないなら?お頭さんに助けてもらったらどうだ?」
「そ、そうだ!お頭だ!」
「助けてくれ!お頭!」
狼の言葉を聞き次々と天水の方向へ向かう賊達を見て狼はため息をついた。
「呆れる程の馬鹿だらけだな」
「ですが、これで予定通りなのです」
呆れる狼に明命がそう言った。狼は気を取り直して明命と賊を追い始めた。
「はぁはぁ、はぁ」
賊達の中で一番速くに逃げだした男が罠のある地帯へ辿り着いた。息を切らしながら目印を探す。
「あ、あった!」
急いで目印のある道を進もうとしたがあることに気がついた。
もしこの目印にあの二人が気が付いたら、罠の場所がばれてしまうのではないかと。
男は慌てて目印を外しそれを自身の懐にしまうと道を駆け出した。
その道が普段の道では無いとは知らずに。
「思いの外攻めてきますね」
「ああ」
狼と明命が賊を追い回しているとき、愛理と羌瘣は賊と戦いながらそんな話をしていた。
これであまり不信がられないように引くつもりならば中々役者だと愛理は思った。ふと一人だけ動きを見せない馬に乗った賊が目にはいった。
「あれが閻鬼、でしょうね」
「そのようですな」
ふと愛理が漏らした声に趙雲が答えた。
「趙雲殿単身突撃は駄目ですよ?」
「なに、そんなことは考えておりませぬよ。なにより、はぁぁぁ!」
そんな話をしながらも趙雲は賊を穿ち言葉を繋げる。
「たまった鬱憤は後で姜維殿に解消していただくゆえ」
ふふふ、と笑ながら趙雲は言った。
「くそぉ!青髪の他にこんな奴らがいたなんて知らねえぞ!?」
「コイツらさえいなけりゃ天水の奴らなんて震えてるだけの癖に!」
「お頭!どうしやすか!」
賊が悪態をつき、閻鬼へ話しかけた。
「青髪以外にもいたとはな」
そう答えながら閻鬼は別のことを考えていた。
『天水をこのまま落とせればそれでよかったんだが、コイツらあの三人の強さに驚いてまともに攻めれて無いな。数では此方のが上なんだから一気に攻めりゃいいものを、と言ってもあの三人の強じゃ今のコイツらじゃ無理な話しか。本当に予定外だ仕方ねぇ一旦引いて罠に誘い込むか』
「退くぞ!お前ら!」
そう言って閻鬼は撤退を指示する。
それを聞いた賊達は一斉に退き始めた。その退く速さは素早く相当叩き込んだのだと思わせるものだった。
「退き様が賊にしては速いですね」
「今まで何度も同じことをやって来たのでしょうな」
その退き様を見て素直な感想を述べる愛理の言葉に趙雲がそんなことを言った。
「あり得る話ですね」
「追わないのか?」
そんな二人の所に羌瘣が合流し愛理に問いかけた。
「いえ勿論追撃します。皆さん!賊は我々に敵わぬと悟り逃げ出しました!今こそ反撃の時!このまま賊を滅ぼしましょう!!」
「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」
愛理は住民たちを鼓舞するように声をあげた彼らもそれにこたえた。
賊の一人が罠の目印を外した為に罠の位置が判らず立ち往生する賊達を狼と明命が威圧し、あるものは自棄になり二人に向かっていきあるものは罠にかかり命を散らし、命を落とさずとも足に竹槍が刺さり動けなくなったりとなっていた。
罠は落とし穴の中に竹槍を仕掛けてあったり、紐にかかると竹槍が左右から襲ってきたりなど様々だった。
「よくもまあこんだけ仕掛けたもんだ」
「そうですね、驚きました」
二人も罠の多さに驚いた。向かって来たものは斬り伏せ怪我を負ったものは戦闘不能と判断し放置した。負傷した賊に情けをかけたわけではなく、それよりも今は運よく罠を抜けた賊と天水を襲っている賊を討伐することが優先されるからであった。
「明命仕上げにかかろうか」
「はい!」
二人は木に登り動き出した。
最後の仕上げに取りかかるために。