あ、特に意味はありません。
ではどうぞ!
閻鬼は目の前で起きている状況に困惑していた部下から天水に青髪の女が現れ逃げ帰ってきたと聞き、今度は前回よりも多くの部下を連れ自分が率いて天水に赴いたのだが、天水に着いてみれば更に報告に無い女が二人いた。
その女達も部下達、そして自分自身でも勝てない武を持っていた。仕方ないと思いながらまた罠にはめてやるつもりでいたにも拘らず、山の麓まで来た閻鬼が見たものは慌てて森を抜け出てきた数人の部下だったからだ。
「おまえらどうした!なに慌ててんだ!」
閻鬼は森を抜け出てきた部下達に声をあげた問いかけた。
「た、助けてくれお頭!」
「天水の奴等が!妙な二人組が!」
「!?」
閻鬼は部下達の言動から何があったのかを悟った。
『まさか報告に無かった奴が他にもいたのか!?しかも二人で100近くいたこいつらを強襲したのか!?』
閻鬼は戸惑う、森から出てきた部下は数名、もしかしたら他は殺されたのではないかと。そうなるとそんな奴等と天水の奴等を今の戦力で戦わなければいけない。敵の強さに怯え、増援もない、それを連れてきた武かが知れば士気が低下するのは明らかであり、同様も免れないだろう。
「お、お前ら!他の奴等はどうした!?」
「大半はお前達が仕掛けた罠に掛かって死んだか行動不能、残りは俺らで斬った」
慌てて残りの部下の事を聞いた閻鬼の質問に答えたのは、森を抜け出てきた狼だった。
「で、で、出たぁぁ~!」
「お、お頭!こいつ等です!」
「!!その声、まさかてめぇ姜維伯約か!!?」
狼が現れ森を抜け出てきた賊達はあわてふためいた。しかし閻鬼はその声を聞き狼の正体に気がついた。
狼は何故閻鬼が声を聞き自分が姜維であると気がついたのか不思議に思ったが直ぐ様閻鬼に言い放った。
「??そうだ。お前が閻鬼だな?悪いなどとは思わない、お前が犯した罪を清算して貰うだけだからな」
狼がそう言ったとき閻鬼の連れてきた部下が閻鬼に追い付き、その後方に愛理たちの姿もあった。
「賊ども!貴様の根城にいた仲間はもういない!ここが貴様等の墓場だ!」
狼は追い付いてきた賊に向かいそう言った。
「何言ってんだあいつ?」
「おい、見ろよ頭の横にいんのって確か残ってたやつじゃないか?」
「じゃあ、あいつの言ってる事は本当なのか?!」
「お頭!どうすりゃいいですか!?」
「お頭!」
賊達は混乱し、閻鬼に詰め寄る。
自分達ではどうすればいいのかわからない、だが閻鬼なら、頭なら何か良い考えがあるかもしれないと。
だが、そんな部下の気持ちとは裏腹に閻鬼はいい放った。
「はは、ははははは!お前ら!彼奴を、あの男を殺せ!全員でかかれ!何がなんでも殺せぇぇぇ!!」
「か、頭?」
「頭どうしたで?」
「なんだ、頭はどうしちまったんだ?」
「わかんねぇよ」
「彼奴を殺せって言ってるのが聞こえなかったのかぁ?彼奴を殺せぇぇぇ!!」
「「「「「へ、へい!!!!」」」」」
自分達の頭である閻鬼の豹変ぶりに驚きながらも部下達は狼へと向かっていく。
狼は考えていた。閻鬼は自分を知っていて尚且つ恨みを持っている。だか、恨みをかった覚えもないし今まで賊達に名を名乗ったこともなかった。
だとすると閻鬼は何故自分をこんなにも殺したがっているのかが判らなかった。
「明命、敵の狙いは俺だ。今のうちに愛理と合流してその事を伝えてくれ、俺は奴等の足を狙って動きをとめる、そうなれば皆が戦う可能性が減る。愛理達が到着し次第賊を方位殲滅、武器を捨て命乞いした者はなるべく生かしておいてくれ」
「狼様、それは」
「心配するな大丈夫だ。俺を信じてくれ」
狼は明命に指示を出す。だがやはり明命はその指示に不安を抱いた。いくら狼が強くとも心配なものにはかわり無いからだ。
そんな明命に狼は頭を撫でながら自分を信じろと言った。そこまで言われ明命が小さく頷き駆け出した。
「さて、と、何故こんなにも恨まれてるかは知らないが、今は些細なことだ。死にたくなかったら武器を捨てろ、それが嫌なら俺を殺してみろ!」
狼は向かってくる賊に突っ込む、打ち合うつもりは毛頭なく一人を斬りつけてはすぐ他の者を狙う。
一対多において足をとめることは悪手である。常に動き回り相手に武器を振らせ同士討ちを狙う。そうすることにより相手が武器を振るう際に躊躇が生まれるのだ。密集地帯、狭い空間で武器を振るう際に必要とされるのは辺りの状況を把握する空間把握力である。
それがない者が無闇に武器を振り回せば結果は判りきったものだ。
「は、はえぇ!」
「痛てぇ!」
「おい!お前ら!気をつけろよ!」
「ぎゃっ!」
「っ、おい!俺は味方だぞ!!」
「こ、こんなやつに勝てるわけねぇよ!」
同士討ちを恐れ手を止める者、錯乱し剣を振り回す者、勝てぬとわかり逃げ出す者が現れ始めた。
『逃げようとする奴等は足を斬りつけて動けなくさせるとして、他の奴らもある程度痛め付けた。それに愛理達ももう着く、閻鬼をとるか』
狼は賊達の状況を見てそう考えて行動を起こした。賊達の合間をすり抜け、閻鬼に接近する。
「くそ!くそくそくそくそくそ!役にたたない奴等め!」
「…閻鬼何故そんなにも俺を憎んでいる?」
狼が部下達の合間をすり抜け接近してくると閻鬼は声をあらげた。
そんな閻鬼を見て狼は閻鬼に自身を恨む訳を聞く。
「お前が!お前さえいなければ俺は詠さんと結ばれていたんだ!」
「!?」
「幼いながらに30を越える賊を1人で殺し、天水の麒麟児と呼ばれるようになったお前が私塾に来てから全てが変わってしまったんだよ!嘗ては俺と競いあっていた詠さんは、自身より優れるお前と競うようになった!私塾抜け出るお前を探しに行くようになった!」
狼は閻鬼の言葉を聞き驚いた。
況してやここで詠の名前が出てくるとは思っても見なかったからである。
「お前が天水から消えた時、俺は喜んだ!これでまた以前の用に戻れるとな!…だが現実は違った。詠さんは消えたお前に負けない為にそれまで以上に励んだ、お前だけを見ていた!側にいる俺じゃなく、何処にいるかも判らないお前を見ていた!嫉妬したさ!何故俺じゃないのかと!何故ここにいないお前なんだとな!」
「……」
閻鬼は吠えるように喋り続け、狼は記憶をたどり思い出していた。自分達の世代の私塾で三番目に位置していた人物、山向こうにある街から来た、それを狼は思い出した。
「李恊」
「思い出したか?ああそうだ!俺は李恊だった、だがもうその名は捨てた!お前へ復讐すると決め賊になった時にな!お前にわかるか姜維?!俺の気持ちが!天水の麒麟児と持て囃され、私塾を抜け出てばかりのお前が!何故詠さんに真名をあずけられた?!何故お前が!お前ばかりがああぁぁぁ!!」
「!!」
閻鬼は叫びながら狼へと馬を走らせ斬りかかる。
狼はその閻鬼の言葉を聞き理解した。
李恊は詠から真名を預かっていない、と。