これからはもう少しあげていけるとおもいます。
馬で駆けながら閻鬼は馬上より矛を振りかぶる。
閻鬼が矛を振り上げたと同時に狼は馬に向けて殺気を放った。その殺気をうけた馬は本能からその危険を感じとり、前足を上げ止まりその反動で閻鬼は馬上から投げ出され地面に背中から叩き付けられるように落ちた。
「がはっ!」
背中を叩き付けられた閻鬼は肺の空気を吐き出した。馬はと言えば閻鬼を振り落とした後、逃げるように走って何処かへ行ってしまった。
「……おい」
地面に叩き付けられた閻鬼に狼が近づき話しかけた。
「ぐっ、てめぇ何を「黙れ」…」
話しかけられた閻鬼はよろよろとしながら立ち上がり何が起きたか判らず狼に問おうとしたがそれは狼の決して大きくはないが静かな怒りのこもった一言で止められてしまった。
「お前が李恊と名乗ろうが閻鬼と名乗ろうがどうでもいい。一つ聞かせろ、お前は詠から真名を預かってないな?」
「……」
狼の質問に閻鬼は答えなかった。
「無言は肯定とうけとる。例え本人の前でなくとも許可なく真名を呼ぶことの意味は当然理解してるよな?」
真名を許可なく呼ぶこと、それ即ち殺されても文句の言えぬ事である。例えそれが本人の前でなくとも例外ではない。狼は怒っていた、幼馴染みである詠の真名をこんな奴が許可なく呼んでいたことを、こいつは詠の名を真名を汚したのだと。
「は、ははははは!五月蝿い!確かに俺はまだ真名を預けられてない!わかるか?まだだ!俺はお前を殺す!そうすればきっと真名を預けてくれる!そして結ばれるんだ!お前さえ死ねばきっと、きっとまた、え「もう喋るな」ごふっ!」
閻鬼がまた詠の真名を口にしようとした時狼の蹴りが閻鬼の喉元を直撃した。そしてその一撃により閻鬼の喉はつぶれた声を出すことはできなくなった。
「お前が俺を恨もうが妬もうがお前の勝手だ。だがお前は直接俺に復讐せず天水に手をだし、関係のない人を巻き込んだ、関係のない人を傷つけた。さらには許されてもいない真名を意味もわからない理由で呼んだ」
狼はそう言いながら殺気を放つ、その殺気を浴びて閻鬼はガタガタと震え呼吸もうまくできなくなっていた。
「お前が犯した罪は死んだところでは償えない」
そう言って狼は殺気を止めた。殺気から解放された閻鬼は大きく息を吸い込んだ。
「が、死ぬ以外に償いようも無い」
チン
そんな閻鬼に狼がそう言い放つと同時に、チンと音がなった。
「自分の罪を償ってから生まれ変わってこい、もう聞こえてないだろうがな」
狼がそう言いながら閻鬼に背を向け歩き出すと同時に閻鬼の上半身と下半身が別れを告げた。
閻鬼が討たれ完全に統率が無くなった賊達は逃げる者、投降する者などだった。投降した者も初めは殺すという流れだったが狼の母、水仙によってとめられた。今の天水には人手が足りないことから償いとして無償で復興作業をすることで許すという形になった。
天水の復興作業を始め1週間がたった。
今のところ賊達は素直に働いている。が、数名は嫌気がさしてきているのがわかった狼はとある行動にでた。
「今日は山で猪狩りだ5人1組で最低2頭狩ってくれ」
そういって賊達を3組にわけ山に向かわせた。
山に入って行くのを見届けた狼は一緒に来ていた明命と羌瘣に話しかける。
「明命、羌瘣、手はず通りに頼むな」
「御意!」
「わかった」
そうして、3人もまた山へと入った。
山に入って一刻まだ猪は一頭もとれていない組の賊は既に嫌気がさしていた者がいた。
「毎日毎日こきつかいやがって」
「本当だぜ、朝から晩まで働きっぱなしこれじゃあからだが持たないぜ」
「全くだぜ」
5人のうちの3人がそんなことを言い始めた。
「なあ、今のうちなら逃げられるんじゃねぇか?」
「おお、このまま山を突っ切っちまえばいいだ」
「そうと決まれば!おい!お前らも来いよ」
3人は後ろからついてきている少し幼い二人にも声をかけた。
「…俺は、行かない」
「…俺もだ」
しかしそれを二人は断った。
「はぁ?お前らこのままでいいのかよ」
「行きたければ行けばいい俺はなんと言われようと行かない」
「いいも悪いも俺たちがいけなかったんだ、罪は償う」
「はっ!馬鹿馬鹿しい行こうぜお前ら!」
「一生こきつかわれてろ!」
「じゃあな!」
そういって3人は2人をおいて逃げていった。
「馬鹿なやつらだな」
「え?」
去っていく3人をみて1人がそういった。
「今俺たちが、生きてるのは天水の人達の慈悲あってのこだってのに」
「…そうだな、だから俺らはその恩を一生かけてもかえさなきゃいけないのにな」
2人は投降したあと殺されるものだとばかり思っていた。だがそうはならず生かされ復興の手伝いをさせられることになった。2日目辺りまでは不満はあった、だが、天水の人達をみていてそんな気持ちはすぐになくなった。失敗すれば怒られ上手くできれば褒められた。自分達が壊してしまったにもかかわらず、だ。
「人数は減ったけどなんとか2頭捕まえるぞ」
「だな」
そういって2人は再び猪を探し始めた。
そんなやり取りを木上から狼は視ていた。
「あの2人はやっぱり逃げなかったか」
狼が天水で視たかぎり彼等は逃げないであろうと判断していた。そして逃げた3人も予想道理であった。
「さてさて、愚か者の始末でもしますかね」
そう言い残し狼は木上から姿を消した。
「何とか2頭狩れた」
「うちは3頭だ!」
明命と羌瘣に任せた組が帰ってきて互いの成果を話している。両組とも1人少なく4人になっていた。
「「はぁ、はぁ」」
そんなとき山から狼が視ていた2人が山から出てきた。猪は一頭、がその大きさが他の組の倍以上の大きさだった。
「はぁ、すみません、あと一頭、はぁ、今から狩ってきますんで」
「もう少しだけ、はぁ、はぁ、待っててくだ、はぁ、さい」
2人で苦労して狩ったうえここまで運ぶのに大分疲れたのがうかがえた。
「その大きさなら2頭扱いでいいさ。お疲れさま」
その言葉を聞いて2人は地面に腰をおろした。