麒麟児になりて   作:氷月

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2話

狼side

 

「ご馳走さまでした。」

俺はそう言って箸を置いた。

 

「詠ちゃんも、もうよかった?」

 

「はい、ご馳走さまでした」

 

「お粗末さまでした。」

 

今は俺と詠とお袋の三人で俺が獲ってきた猪と茸を使った鍋を食べたところだ。

 

「そう言えば狼、あなたまた私塾抜け出したらしいわね」

 

飯を食べ終えてから急にお袋がニコニコしながら話しかけてきた。

詠をみるとニヤリと笑っている。くそ、喋りやがったな!

 

「げ、詠!お袋に話したな!」

 

「げ、じゃありません!全くあなたときたらこれで何度目ですか!」

 

お袋は普段は優しいが怒ると説教が長いのが難点だ。

 

「狼!聞いてるの?!」

 

「聞いてるよ、お袋。」

 

「あなたにも考えるところがあるんだとは想うけれど。」

 

「……俺、私塾をやめて旅にでる」

 

「なっ!?」

 

「・・・」

 

俺が旅に出たいと口にすると詠は驚きの声をあげ、お袋は黙った。

 

「アンタなに考えてんのよ!?」

 

「詠、このあと世は何処に向かうと思う?」

 

「アンタなに言って・」

 

「10年以内に間違いなく戦乱の世がやってくる。」

 

俺の話をお袋と詠は黙って聞いている。

 

「言いたくないけど、朝廷はながくない。私利私欲にはしり、民を疎かにするやつが増えてるのは間違いない。そんなことにあと何年民達が耐えられる?考えるまでもなくすぐに限界はくる。そうなれば朝廷は崩れ、我こそはと諸侯が名乗りをあげて戦乱の世になる。だからこそ今から旅に出て自分の支える主がいるのか、自分が立ち上がるのかを見極めたいんだ!支えるにしても立ち上がるにしても仲間も探したいし。」

 

「そう、そこまで考えているならなにも言わないわ」

 

「水仙さん!?」

 

俺の言葉に仕方がないといった感じで許可をだしたお袋。その言葉に詠は驚いている。

正直俺も驚いている。

 

「あなたが天水の麒麟児と呼ばれるようになってから、薄々はおもっていたのよ。この子は大きな人になるってね。」

 

「お袋」

 

お袋はニッコリと笑いながらそう言ってくれた。

 

「・・狼、勝負よ」

 

さっきまで黙っていた詠が碁盤を指差しながら口を開いた。

 

「・・・何を賭けてだ?」

 

いつも俺と詠が碁を打つ時は何かを賭ける。

 

「ボクが勝ったらボクと一緒に仕官する」

 

詠の仕官先、月か。

 

月とは詠の幼なじみで董卓のことだ、初めて見た時は嘘だと思ったよ。

酒池肉林じゃ~はどこいったんだよ!どこの聖少女かと思たわ!といった感じだった。

 

「俺が勝てば旅にでる、と」

 

「そうよ!」

 

なんでそんな勝負をかけてきたのか。まあ、詠は月が大好きだからな。

 

「受けた、始めようぜ」

 

「負けないわよ!」

 

そう言って俺は碁盤を挟み詠と対峙した。

 

「・・・・」

 

「9目半差、惜しかったな詠」

 

結果は俺の勝利だった。

勝負を決めたのは中盤に打った一手、その一手が勝負を決めたのだ。

何気なく打ったように見えたであろう一手。その一手は全てを読みきったうえでの一手だった。

詠は俯き震えている。

 

「負けたんだから文句はいわない。何処にでも行っちゃいなさいよ!」

 

そう言って家を飛び出して行く詠。

 

「・・・・」

 

「追いかけなくていいの?」

 

飛び出して行く詠を無言で見ていた俺にお袋がそう言ったが・・

 

「無理だよ、」

 

そこで言葉を区切り立ち上がり詠の座っていた椅子をみて

 

「敗者に・・・・・慰めはいらないよ。」

 

その椅子に出来た新しい水の跡を見ながらそう言葉を続けた。。

 

狼sideout

 

 

 

 

 

 

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