思いもよらない形で司馬懿と出会いをはたした狼は、いくらか驚いたもののすぐに冷静になる。
「俺も知ってるよ司馬八達、その中で最も優れた者」
「よくその名をご存じですね」
「まあ、有名だから、ね。しかし何で長安に?」
「父親の知り合いが私塾を開いているので」
狼の質問にそうかえす司馬懿。
狼はその答えが史実通りなのかは知識になかった。
「立ち話もなんですし、私の家に来ませんか?まあ借り屋ですが。」
思考をしている狼に司馬懿からそんな提案があげられた。
断る理由もないため狼は頷き司馬懿に着いていく。
暫くして一軒の屋敷の前で司馬懿が立ち止まった。
借り屋と言っていたが十分な大きさの屋敷であった。
司馬懿に案内され屋敷に入ると侍女であろう二人の女性が出迎えた。
「「お帰りなさいませ」」
「ええ、お客様を連れてきたから部屋にお茶をお願い」
「畏まりました」
「お荷物をお持ちいたします」
司馬懿に指示され一人はお茶を入れに、一人は荷物を司馬懿から受け取り歩きだした。
「それでは失礼します」
そういってお茶を持ってきた侍女が退室していった。
「さて、わざわざ家まで連れてきて何を話すんだ?」
「貴方は今後の世がどうなるとおもっていますか?」
わざわざ自分の家に連れてきたからには何かあるだろうとふんだ狼の質問に、司馬懿はそう問いかけてきた。
「今後の世、ね・・・だから家に連れてきたわけか、大方想像してるんじゃないのか?」
「ええ、確かに。ですが貴方の口から聞きたいんです。」
「・・・今後の世は戦乱になる、あと十年もしないうちにさ。その中で俺はどうするかそれを見極めるために今旅をしているところだよ」
「そうですか、ところでその目を隠しているのは嫌いだからですか?」
「いや違う、この目はお袋がくれた大切な目だ。嫌いになんてならない。」
「なら外して見せてください」
目の事を知った上で見せてほしいと言われたのは初めてだった。狼は物好きだなと思いながらも布をほどいた。
「・・・・」
「怖じ気づいたか?」
その目をみた司馬懿は黙ってしまった。怖れたと思い問いかけた、しかし狼の想像とは異なる返答が待っていた。
「・・綺麗な目。」
「綺麗?」
「目の色なんて関係ない。目を見ればその人の心の有りようがわかると、私はそう思っています。」
この目を見て綺麗と言われたのは初めてだった。
気味が悪いなどの罵倒をされたことは幾度もあった。
だから狼は嬉しかった大好きな母親からもらった目を誉められたことが。
「そう言われたのは初めてだよ、ありがとう司馬懿」
「////」
狼がニッコリと笑いながらお礼を言うと司馬懿は顔を赤くして俯いた。
司馬懿は幼いながらも綺麗な顔立ちで将来は美人になるだろう。
そんな彼女が顔を赤くして俯いている様子はとても可愛らしいと狼は感じていた。
「顔が赤いが大丈夫か?」
「ぇ、ええ、大丈夫よ。それよりも一局お願いできませんか?」
少し動揺したように見えた司馬懿だが、すぐに切り替え碁盤をゆびさし、対局をねがいでた。
「あまり期待しないでくれよ?」
「それは出来ない相談ですね。」
そんな軽口を叩きながら二人は対局を始めた。
対局の最中司馬懿は食い逃げを捕まえた狼の動きを思い出していた。
『素人の攻撃とはいえ、目隠しをしたまま紙一重でかわしあまつさえ私の鋼糸を見抜いた武、噂にたがいません、更に知略においても並みではないですね。』
今現在中盤でやや司馬懿の優勢、しかしこのままでは終わらないと司馬懿は感じていた。
対局の結果は司馬懿の半目負け、しかし司馬懿は久しぶりにら本当に久しぶりに楽しかった思った。
私塾には相手になる者がおらず、退屈していた。姜維伯約噂にたがわぬ実力。
司馬懿はそれが嬉しくてたまらなかった。
「お嬢様」
司馬懿がそんなことを考えていた時、侍女の司馬懿を呼ぶ声が扉の外からした。
「入っていいですよ」
「失礼いたします。お食事の準備ができましたがどうなさいますか?」
そう言われ外を見ると外は暗くなっていた。
対局に集中して時間がたったことに二人は気がつかなかった。
「そうですね。姜維さん、もしよければ今日はうちにお泊まりになりませんか?」
「いや、それは迷惑じゃないか?」
「そんなことありません。それに私が招いてお付き合いしてもらったのですし。」
狼は司馬懿の申し出を断ろうとしたが、駄目だった。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうか」
「はい♪」
狼がそう言うと司馬懿は嬉しそうに笑った。