ラブライブ!~女神に宿る嵐~   作:白銀の嵐Mk.2

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記念すべき第1話。

居場所を奪われた■■ ■■■とは誰か?(まあ、タグを見ればわかるけど…)

奪われた事により何が起きてしまったのか?


第1章 高坂 穂乃果 (時期:原作開始前~ファーストライブ)
狂わされた日常


 

気が付くとそこは"戦場"であった。

 

何て事のない、ただ普通に暮らしていた人々が突然"怪物"へと変貌するまでは…。

 

突如上空の飛行機から降り注いだ"霧"。

 

その"霧"を浴びた人々はもがき苦しみ、やがて手が、腕が、足が、体が、そして顔が……徐々に人間とは思えない、この世のものとは思えない"異物"へと姿を変えて行く。

 

 

───助けてくれ!

 

 

───死にたくない!

 

 

───こんなのは嫌だ!

 

 

姿が異物へと変わり行き、阿鼻叫喚に飛び交う人々の悲鳴。その悲鳴も虚しく、そこに住む人々……村、街、やがて大陸全体に"霧"が蒔かれ、その大陸に住む人々……およそ"10億"だろうか。

その大陸に生きる人間全てが怪物へと変わってしまった。

 

 

まただ……。

 

 

そこに一人立つ少女はこの光景を見慣れたかのようにウンザリする。

 

 

また、こんな"夢"を見てるんだ私…。

 

 

もう何度、この光景を見たのだろうか。ウンザリする少女はこの後の展開を知っている故に、溜め息を吐く。

 

怪物へと変貌した人々はやがて争いを起こす。

理性も知性も感じられない、獣と化した人間だった生物……"怪人"となって。

 

ある者は強靭に栄えた爪で同じ人間だった者を切り裂き、切られた者は血吹雪きをあげて倒れる。

 

ある者は鋭利に鋭くなった牙で同じ人間だった者を喰らい、己の血肉として骨も残さずに喰い千切る。

 

ある者は刃と化した腕で同じ人間だった者の胴体を真っ二つにし、事切れたその者の肉を喰らう。

 

ある者は銃器と化した体で同じ人間だった者を撃ち抜く、撃ち抜かれた者は体に風穴を開けて倒れる。

 

ある者は光の速さとなって同じ人間だった者を葬る、そしてその肉を喰らう。

 

ある者は異常なまでの肉体を得て、同じ人間だった者の四肢を引き千切る、そして喰らう。

 

ある者は魔力を得て、その魔法を持って同じ人間だった者を燃やし、凍らし、雷で穿ち、風を飛ばし、その者の肉を喰らう。

 

ある者は超能力を得て、その能力を持って同じ人間だった者を葬り、その肉を喰らう。

 

同じ人間だった者の肉を喰らう度、その人間だった怪人は力を増して行き、さらに同じ人間だった者同士で争い、喰らい合う。

所謂"共食い"と言うものが、少女の目に映っていた。

 

その光景を、少女は目を逸らす事なく見つめる。もう、"慣れて"しまったから。

 

激しい共食いによる争い。やがて10億もいた人間だった者達は9億、8億、7億、6億、5億、4億、3億、2億……と、数を減らして行き、最終的には"1億"へと数が達して来た。

 

 

「来る」

 

 

少女がそう呟いた瞬間、何処からかバイクのエンジン音が地獄絵図と化したこの場所に響き、共食いによる争いをしていた怪人達はその動きを止めてその方向へと異形となった顔を向ける。

それに合わせて少女も「やっと来たか」と言わんばかりの顔でそちらの方へと顔を向ける。

 

地獄絵図が繰り広げられるこの惨状を崖の上からバイクに跨がりながら見つめる一人の"仮面の戦士"。

 

ダイヤモンドの様に光輝く頑強な装甲と白いアンダースーツをした上半身。

 

紺色の下地とその脛に何枚も連なる銀色のプレートで覆われる下半身。

 

風と共に靡かれている首元の深紅のマフラー。

 

そして、何よりも目が行く……この地獄絵図を繰り広げる異形達を貫かんとばかりに睨みを効かせた…全てを射抜くようなオレンジの複眼の"バッタ"を模した仮面…。

 

 

その仮面の戦士は今にもこの地獄絵図に飛び行かんと、激しくバイクのエンジンを吹かす様にアクセルを回す。

 

「…………怒ってる」

 

何が、と聞かれたら……雰囲気?

 

そんな曖昧な表現で仮面の戦士の様子を捉える少女はゴクリと喉を鳴らす。

 

そんな少女を他所に仮面の戦士はアクセルを回してバイクと共に崖から飛び降り、異形同士による共食いを繰り広げる戦場へと自ら飛び込む。

戦場へと舞い降りた仮面の戦士は自身が跨がるバイクを駆使して異形達を撥ね飛ばす。

 

時に加速して突撃し、時に前輪を持ち上げて踏み潰し、時に後輪を持ち上げてターンする際にその後輪をぶつけて…。

1億もいる異形が蔓延る中で、仮面の戦士は一人果敢に挑み。次々とその異形を葬って行く。

 

「やっぱり怒ってる…」

 

その様子を見つめる少女はポツリと、勇猛果敢に戦う仮面の戦士を見てそう呟く。次々と異形を葬って行く戦士の背中が、何処か怒りが入っていると思って。

 

やがてバイクから飛び降りた仮面の戦士は異形の一体に飛び蹴りを放ち、蹴り飛ばされた異形はボーリングの如く他の異形達を巻き込んで吹き飛んで爆発する。爆発した異形はその四肢を、血を、肉片をあちこちに飛ばして絶命して行く。

仮面の戦士はその光景を見る事なく、その拳で、その足で、その頭で、ドミノ倒しのように異形達を倒す。

中には光の速さとなって動く異形や異常なまでの肉体を誇る異形の攻撃を受けて転倒したりするも、怯む事なく掴み、投げ、時には剣や銃を取り出して斬り、撃ち、その異形を葬る。

光の速さで動く異形も、異常なまでの肉体を誇る異形も、魔力に長けた異形も、超能力を得た異形も……その仮面の戦士の前に全て肉片へと変えられて行く。

ダイヤモンドのように光輝く装甲も、白いアンダースーツも、紺色の下地も、脛に何枚も連なる銀色のプレートも、その"白"を強調とした仮面も全て異形達の血に染まって行っても、仮面の戦士は立ち止まる事はない。

 

1億もいる人ならざる異形達をたった一人で葬る仮面の戦士の姿を一言で表すならそう……。

 

 

 

「……"嵐"」

 

 

そんな"嵐"の仮面の戦士の背中を、悲痛な思いで見つめる少女は思う。

 

 

何故あの戦士は戦うのか。

 

何故あの戦士はあんなに怒っているのか。

 

何故あの戦士は迷いもなく人間だった者達を殺せるのか。

 

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故……。

 

 

一々挙げたらキリがないほどの"何故"が頭の中に思い浮かぶ少女。気付けば1億もいた異形達は皆、地面に転がっていた。

 

「あっ……」

 

一人……そう、たった一人の仮面の戦士によって地獄絵図だった光景は一瞬にして通り魔殺人、爆破テロ等といったものが生温く感じる殺戮現場へと変えた。最早この場には少女と、異形達の返り血に染まった仮面の戦士のみとなり、仮面の戦士は少女に顔を向ける事なく、一人屍の山となったこの光景を見つめる。

 

「…………泣いてるの?」

 

隣に立ち、仮面の戦士に少女は声を掛けるが、仮面の戦士は顔を俯かせ、自身の拳を指が食い込むまでに握り締めながら震えていた。少女はそれを見つめる他しかなく……ただただ、その姿があまりにも悲しく感じた。

 

「…………ッッ!!」

 

顔を俯かせていた仮面の戦士はやがて、自分の両手を見つめて怯えだす。その両手には1億もいた異形……元人間だった者達の血で白かったグローブは真っ赤に染まっていた。

 

「……─────────ッッ!!」

 

「…………怯えてる…」

 

それを見つめ、恐怖を感じたのか、仮面の戦士は尻餅を着き、頭を抱え出す。まるで自分がしたことに恐怖するかのように、怯えるかのように、罪悪感を感じているかのように…。

あんなに勇猛果敢に戦っていた仮面の戦士の背中が、今はとても小さく少女は見えた。

 

すると仮面の戦士は徐に仮面に手を掛け、バッタを模した仮面を外し、乱暴に投げ捨てる。それにより仮面の戦士の素顔が露となる。

 

茶色い癖っ毛が目立つ髪型に、男性寄りな中性的な顔付き、その顔付きの割には目付きが若干鋭く、何色にも染まっていない綺麗な白い瞳をした……少女よりかは歳上だが、若く、まだ幼さが見える"青年"の顔。

 

「……!……ッ!!」

 

その青年は何かを叫んでいるが、少女には全く聞こえず、ただ酷く怯えきっている様子だけが伺える。

 

「……ねぇ…」

 

少女はその青年に声を掛けるが、青年からの反応は全くない。既に何度もこの"夢"を見て慣れてしまっているが、この時だけはどうしても声を掛けたくなってしまう。

 

「どうして怯えてるの?」

 

だから少女は青年に声を掛ける事をやめない。

 

「どうして泣いてるの?」

 

どうしても聞きたいから。聞きたい事がたくさんあるから。

 

「どうしてあんなに強いのに、急に弱くなるの?」

 

知りたい、どうしても知りたい。それでも全く反応を示さない青年に少女は次第に声を荒げる。

 

「ねぇどうして私の声が聞こえないの!どうして貴方は戦うの!こんな悲しい事を繰り返すの!ねぇ、なんで!!」

 

聞きたい、知りたい……でも聞いてくれない、教えてくれない。

何とももどかしい事に少女はただ苛立つ。

 

「ねぇ、どうして私に!」

 

 

 

───こんな"夢"をいつも見せるの!!

 

 

 

─────────────────

 

 

「ッ!?」

 

見慣れた木製の天井、見慣れたカーテンの隙間から微かに射し込む朝日の光。聞き慣れた時を刻む時計の針の音。

慣れた光景の中で少女"高坂 穂乃果"は目を覚ました。

 

「……また、あの"夢"…」

 

上半身を起こしてゆっくりと両腕を上げて背を伸ばし、寝惚けている脳と体を覚醒させながらいつも見る"夢"の事を思い出す。

 

───10億もいた人々が"霧"によって人ならざる"怪物"へと変貌し、共食いをし始める地獄絵図。

 

───そこに舞い降りし"嵐"のように戦う仮面の戦士。

 

───そして最後は素顔を露にした仮面の戦士、もとい青年に一方的に自分が問い詰めて目が覚める。

 

 

ウンザリする。ああ、本当にウンザリする。

 

そう思った穂乃果は額や背中にグッショリと滲む汗を近くに置いておいたタオルを手に取って拭く。

いつからだろうか、あんな"夢"を見るようになったのは。

 

中学生の時?小学生の時?それとも幼稚園児の時?はたまた幼児の時?

 

当たり前のように見るようになった"夢"に首を傾げながら穂乃果は起き上がり、何気なく屈伸運動やストレッチを行い、ふと枕元に置いてある目覚まし時計に目をやる。

正確に時を刻むこの時計を見る限り、確かこの時間帯は…。

 

「………………遅刻!?」

 

穂乃果は大慌てにパジャマを脱ぎ、近くにあった制服やブラウスを着込んで部屋を出て、階段を降りた。

 

 

 

「穂乃果!また寝坊したの!?全くあんたって子はぁ!」

 

「ご、ごめんなさいお母さん!」

 

急ぎ下の階に降りると、穂乃果の母親が酷く怒った様子でこちらに気付き、叫ぶ。

 

「もう雪穂も"椎名"も先に行ったわよ!お姉ちゃんがそんなんでどうするの!」

 

「っ!……ごめんなさい」

 

いつものように怒られ、いつものように急かされる。これがこの少女、高坂 穂乃果の朝の日課。

彼女の家、和菓子屋穂のかで穂乃果は長女に辺り、母親が言った雪穂はその1個下の妹、もう一人"高坂 椎名"は穂乃果の双子の"妹"に辺る。

 

「双子姉妹、どうしてこうも違うんかねぇ……椎名は勉強もスポーツも両方できてしっかりしてるのに。姉であるあんたは勉強もスポーツも両方できず、そんなにズボラなのかねぇ?」

 

「…………」

 

「とにかく、急がないと行けないんでしょ?ほら、さっさと早く行く!今日から登校するんでしょ?"音ノ木坂"」

 

「うん……」

 

双子の妹である椎名の名前を聞いた瞬間、穂乃果は表情を暗くする。

穂乃果の双子の妹、椎名は穂乃果の双子の妹と言う関係ながらも、姉である穂乃果とは性格も何もかも全く違う。勉強もスポーツも得意であり、常に周りを気遣う優しさを持ち、将来有望とも言える程の美貌を持ち合わせた"完璧人間"。

そんなクラスの人気者になる彼女だが、姉の穂乃果に対しては冷めた態度で距離を取り、同じ家に住んでるにも関わらず、同じクラスにも関わらず、穂乃果だけに壁を作っているように感じられる。

家族を大事に思う穂乃果にとっては堪らなく寂しいと思うし、家族だから仲良くしたい。辛辣な事を言ったり、やや比べる事を言うような母親も、寡黙…と言うかほぼ無言な父親だってそう思っている。

 

「……じゃあ、行ってくるね?」

 

「……車とかの事故に気を着けるのよ?」

 

苦笑いを浮かべる穂乃果に何かを察したのか、母親も深く言わずに見送る。

 

「…………どうしてあの双子はあんなに仲が悪く…ううん、椎名はあんなに一方的に穂乃果を嫌うのかしら…」

 

──────

 

 

音ノ木坂高等学院。それが今日から彼女が通う学校の名前。何とか遅刻間際に間に合い、高校生活始まって早々に説教を受ける事を免れた穂乃果は時間に間に合った事に安堵し、宛がわれた席に座って早々に机に突っ伏す。その顔は非常にやりきったかのような達成感に満ち溢れていた。

 

「穂~乃果!」

 

「相変わらず遅刻ギリギリだったね?」

 

「大丈夫?」

 

そんな彼女の元に三人組の少女達が声を掛ける。声を掛けられた穂乃果は登校時間内に間に合う為に全力疾走をして溜まった疲労による眠気や怠慢感を押し殺して彼女達に顔を向ける。

 

「ヒデコちゃん、フミコちゃん、ミカちゃん……うん、何とかね~…」

 

穂乃果と中学時代からの同級生であり、友人であるショートヘアのヒデコ、ポニーテールのフミコ、そしておさげで小柄なミカを見て安心したように力なく笑う。

 

「穂乃果は相変わらずよね~」

 

「仕方ないじゃん、目覚まし時計が仕事しないんだもん」

 

「そうやって物のせいにしないの、起きない自分が悪いんだから」

 

「返す言葉もございません」

 

「でも間に合ったからいいんじゃない?」

 

「ミカちゃんだけだよ、私の味方は」

 

「「ちょっとそれどういう意味かな?」」

 

他愛のない友人の会話。穂乃果は堪らなくこの時間が楽しく感じる。友達との何気ない会話、今日の授業が終わったらどうするかの遊ぶ予定。この小さな一時が唯一穂乃果が幸せと感じれる時間であった。

 

 

 

─────────────────

 

 

 

「ねぇねぇ椎名ちゃん、ここの問題教えて!」

 

「椎名ちゃん、一緒に私達と帰ろ!」

 

「ごめんね?帰りは先約があるの」

 

「あー、"園田"さんと"南"さんか~、本当に仲がいいよね~」

 

「まあ、あの人達なら仕方ないかな~?」

 

 

「…………」

 

「……本当に人気者よね、穂乃果の妹さん」

 

「うん、そうだね」

 

今日の授業が終わり、教室の中心でクラスの皆にちやほやされている妹の椎名の声が聞こえてくる。そんな椎名をフミコが何気なく言うと穂乃果は少し表情を曇らせてつつも、微笑んで頷く。

正直に言うと穂乃果はそんな椎名を少し妬んでいて、"妹"の顔面をひっぱたきたいのだが、姉の立場としてがあるため、そんな事はできない。

 

「と言うか穂乃果……椎名ちゃんに嫌われてるのによく庇ったりするよね」

 

「妹思いなのは微笑ましいけどさ…」

 

「流石に……どうなの?」

 

「う~ん……」

 

優秀な妹の椎名と無能な姉の穂乃果。

当の本人達にそんなつもり等は無くても、周りは二人を比べてしまう。

頭脳明晰スポーツ万能、オマケに容姿端麗なしっかり者で周囲に優しい妹の椎名。対して姉の穂乃果はそれの真逆で頭も悪く、お世辞にもスポーツは得意とは言えない。オマケに遅刻常習犯で生活面もだらけきっていて周りに甘えがち。そのお陰でどちらが姉なのか周囲はわからなくなる。

だから椎名もそんなズボラな姉である穂乃果が嫌なのか、距離を置いているのか……と、穂乃果自身は思っており、何度か直そうと思っているが、やはり無理であった。

 

「も、もう椎名の事はいいでしょ!それよりも帰ろ!」

 

「仕方ないわね…」

 

「まあ、そうだよね…」

 

「うん、帰ろ帰ろ」

 

無理矢理にそう言ってカバンを手に取ると、ヒデコ達もカバンを取って教室の扉へと歩く。

それに続いて穂乃果も出ていこうとした時に不意に教室で友達と話している椎名と目が合う。

一応、微笑んで穂乃果は軽く手を振るが、椎名の方は興味なさげに見てすぐに友達との会話に戻る。最早このやり取りが日課となるくらいに慣れてしまった自分が情けないと思い、穂乃果は肩を落としてヒデコ達の後を追った。

 

「お待たせ!」

 

「遅いよ穂乃果」

 

「ごめんごめん!」

 

「そうだ、穂乃果!今度の休日に遊びに行こうって思ってたんだけど一緒に行く?」

 

「行く行く!」

 

帰り道に友達との会話。自分は恵まれている……そう思いながら穂乃果はヒデコ達と帰路を歩く。

女の子らしくガールズトークに華を咲かせ、夕日に染まった道を歩いていると、不意に頭痛が穂乃果を襲い出した。

 

「……ッッ!!」

 

「穂乃果!?」

 

「大丈夫!?」

 

「また"いつもの"…?」

 

───燃え盛る孤児院、殺される孤児達と世話になっている祖父祖母を見て泣き喚く少年。

 

───得体の知れない者達に肉体を切り刻まれ、機械の体へと変わる己に絶叫する少年。

 

───何とか逃げ出し、一人の男性に命を救われる少年。

 

───その男性を経由して仮面の戦士達と出会い、弟子入りを懇願する少年。

 

頭痛と共に浮かび上がる身に覚えのない体験。走馬灯の如く駆け巡る映像。感覚が鋭敏となり、頭の中の血流…脈が打つのを感じながら充血した目を心配するヒデコ達に顔を向けて穂乃果は無理矢理笑う。

 

「だ、大丈夫だよ……さっ、行こ!」

 

「本当に大丈夫なの?病院行った方がいいんじゃない?」

「そういうの放っとくと後々ヤバいんじゃないの?」

 

「穂乃果が居なくなったら私達嫌だよ?」

「大丈夫大丈夫!危ないと思ったらちゃんと病院行くって!」

 

幼き頃から見続ける謎の"夢"と走馬灯のようにフラッシュバックする身に覚えのない光景。生まれた時からずっと穂乃果はこれに悩まされ続けた。

あの光景は一体何なのか?何故自分はこんな"夢"を見たり頭痛に悩まされるのか?

このままだと自分は一体どうなってしまうのか?果たして自分は自分であり続けられるのか?

怖い……考えるだけでも怖い…自然と指が震え始め、このまま自分じゃない誰かになりそうで恐怖が沸き上がって来る。

 

 

今の"高坂 穂乃果"にはあるべきものがない。

 

 

"幼馴染"と呼べる"彼女達"の存在が、傍にいない。

 

 

今の彼女にあるものは"女神"になる事のない、何気ない日常と…………。

 

 

 

とある異世界にて、"神をも滅ぼす"存在として恐れられた■■■■■ ■■■■という禁断の力を宿す"嵐"が歩んできた"記憶"という……。

 

 

 

 

"神"から与えられた最も残酷な力と運命だけであった。

 

 

 




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