ダンまちにアクシズ教を!【更新停止】 作:アクシズ
あれから新しくアクシズ教徒になった者達に、どれ程アクアが素晴らしいのか語り始めたら、もう一泊することになってしまった。そして驚きの新事実が。
入信書を記入することで【アクシズプレート】が生成されるまでは、ベルの時と同じだったのだが、今回新たに加わった同胞達には、スキルポイントが付与されなかったのだ。正確にはスキルポイントの項目自体表示されなかった。スキル伝授も試したが、これも反応なしである。
皆の布教活動に役立つであろう【宴会芸】くらいは、覚えてもらおうかと思っていたのだが、当てが外れてしまいました。そもそもシステムが異なる異世界において、ベルにスキルポイントが発生したのが、“イレギュラー”だったのかもしれません。この先も信者が増えれば詳しくわかるかもしれませんが、今のところベル一人のみですし、『芸達者なアクシズ教団』の確固たるイメージ作りには、時間がかかるかもしえません。
アクアの信者になったことで、多少は芸達者になれる資質があがるかもしれませんが、これも異世界ゆえに確かとは言えません。何もなくともアクアの教えの素晴らしさは、アクアと実際に接すれば、皆素直に納得するでしょうが、入団してもアクアと会ったことない人など、今後どんどん増えていくでしょうし、目に見える形でのメリットというものに、人々は弱いものですからね。
スキルというわかりやすいご褒美なしで、信者を効率よく集める方法の模索もしていくとしましょう。
そんな今後の展望を描きながらも、アクア、幼女、元盗賊A親子と共にメレンの街へと向かっていたわたし達。途中徒歩での移動に飽きたアクアが我儘を言ったり、文句を言ったりしたが、その不満はすべて盗賊Aに向けて貰った。地味に役立つ男である。
♢
そうして今、視界に収まるこの光景を見て、感動を覚えている。実はわたし、アクセルの街以外、王都と紅魔族の里しか実際には見たことがないのだ。あぁも大量の船が停泊している光景や、広大な湖。文献や映像でしか見た事のない、港街というものに魅了されていた。
「やっと着いたのね!港というからには海を想像してたのだけれど、なんか違くないかしら?」
とアクアが言うがここに向かう途中、元盗賊Aがどんな街か説明する際、確か汽水湖だと言っていたはずだ。長い説明や難しい話になると、大体聞き流しちゃうんですよね。
「アクアあれは湖だそうですよ、そしてあの先にうっすらと見えるのが海かと思われます」
「あらかずみん、いつの間にそんな情報を知ったのかしら、相変わらずあんたは頭いいわね!」
「えへへ、母に褒められました。ついでにあの街の簡単な説明もしときますよ?」「えぇお願い」
Aが長々と語っていた内容を短く要約して。
「あの街の名は『メレン』。大きなロログ湖に沿って栄えた街。ここら一帯の貿易拠点。そして幼女が住んでいた可能性が高い、アマゾネスの国である『テルスキュラ』にいくなら、この街からが向かうのがいいみたいです」
「なるほどね!とりあえず疲れたしお腹すいたし、宿を取って海の幸を堪能しましょ!Aはさっさと案内してちょうだい。ご飯とお酒が美味しいところよ!?」
「へい!まかしてくだせい!・・・ここにくる途中一生懸命説明したんだけどなぁ~~~はぁ」
Aの案内によって街を歩く。比べる知識が少ないのが残念ですが、アクセルの街より纏まりがない感じがします。きっと色々な国の文化が入り混じった結果なのでしょう。石造りを基本とした建物。路上には色々な工芸品を売る露天商や港街らしく海産物を取り扱うお店が多く見える。どれも見た事のないものばかり、中々興味をそそられます。
「あ~なんかこの漂ってくる香りが海の近くに来たって感じよね!」
「なるほど、この独特な匂いが海のものでしたか、何だか慣れないもので違和感を感じてました」
「・・・なつかしい・・・かも」
なつかしいですか。幼女は海の近くに住んでいたのかもしれませんね。
「おっここだここ!宿と飯屋が一緒になってやすし、飯は料理人が全とっかえでもしない限り保障できやすぜ」
宿屋の中へ入ると一階がご飯処、二階以降が宿屋になっているようだった。ご飯処を見ると多くの客で賑わっている。悪くはなさそうです。
「いらっしゃい!飯かい?泊まりかい?」
「両方だ、二名部屋が二つ、空いてるかい?」
「ダイジョブだよ!これがカギだ、飯なら遅くまでやってるから、好きな時に食べにおいで!」
少し休んでからA達とは合流するとして、鍵をもらい中に入ると、シンプルにベットが2つ置いてあるだけの部屋だった。
「やぁ~~~~と着いたわ~~~~~こっち来てから、歩くこと多いから嫌になっちゃう!」
「確かにこんなに長いこと、歩いたのは初めてです。疲れはしますが、アクアと一緒ならなんだって大丈夫です!」
「うぅ・・・いつものことながら、あんたのその底抜けの信頼感。たまに怖くなるんですけど」
「何を言うのです母よ、あなたは愛と正義と水の女神!世間に蔓延る悪を成敗し、常日頃から世界の為、その身を挺して我々を救っているという、最高の神ではないですか!ほら幼女からも言ってあげなさい」
「・・・あくあはめがみ」「そうです!アクアは素敵」「・・・あくあすてき」「お~よくできました!良い幼女です」
「そうよね!私は女神!でも疲れはするのだから、今はちょっと休ませて」
「はいおやすみなさいアクア」
ホントに疲れていたのであろう、幼女を抱き枕にしてすぐ眠りにつくアクア。わたしは少し頭を整理してから眠ろう。この街ですることはシンプルだ。今日はゆっくりと休み、明日にはさっそくテルスキュラ行きの船を確保する。
この港街をゆっくり探索してみたい気持ちもありますが、幼女は出来るだけ早く帰してあげたいですからね。2.3歳でアクアとはぐれて暮らす自分など想像したくもありません。
悪はなくならないものとはいいますが、幼女のような子に厳しい世間などエクスプロージョンしたくなります。
♢
コンコンコン、ノックの音がする。
「Aですか?」「へい」「どうぞー」「お邪魔しやす」
部屋に入ってきたA親子は、どこかで買ってきたのか新たな装いを纏っていた。
「服を買ってきたのですね、素敵ですよ二人共」
「おうありがとよ」「ありがとう」
「ご飯に行くのですよね?」「あぁそこで服買うついでに、少し気になる話聞いてな飯食いながら話そうかと」
「難しい話はやめてよねーとりあえず海の幸を堪能しましょ!」
一階に降り食堂に入ると、そこは昼過ぎにみた時より更に活気が溢れていた。種族の違いというより、国の違いかもしれない様々の服装の者達。全体的に日に焼けた肌を晒し、頭に手ぬぐいを巻いた海賊っぽいイメージの者が多いが、このお店の中が世界の縮図になっているかのようだ。
「いろんな人がいて面白いですねアクア」「そうね!」「席はもう取ってありやす」といって案内してくれるA。ホント地味に優秀な男です。
席につきメニューを見る。やはりというか魚料理がオススメらしい。知らない名前のものばかりなので適当に頼むことにする。
「わたしはこの
「それ本当にでけぇぞ、1Mくらいあったりすっからな」「なら皆で分けましょう」
「私は蟹がいいわ!この店で一番美味しい蟹とお酒を持ってきてちょうだい!」
「飯が来る前に気になった噂だけでも、聞いてもらいたいんだが」「どうぞ」
「確認とったわけじゃねぇが、今海の入口付近に強えぇモンスターが居座ってて、船を出すのはかなり危険って話だ」
「それが真実だった場合、どのような流れになりそうですか?」
「この街の連中で倒せないようなモンスターなら、おそらくオラリオの冒険者に依頼することになるじゃねぇかな」
「なるほど、もしそうなら多少出発が遅れる可能性があるってことですね」
「ああでもまぁ精々2.3日くらいあれば解決してると思うがな」「了解しました」
その後はいつもの流れだ。巨黒魚の姿煮にはよくもまぁ、こんなデカイ魚をそのまま煮込めたものだと驚き、海の幸を堪能し、美味しいお酒を飲み気分の良くなったアクアが、周りで飲んでる連中とも絡みだし。
「お手を拝借~~~【花鳥風月】──ッッ!」(※1)
その瞬間周りにいた連中の両手には何故か扇子が出現しており、そこから小さな噴水が沸き上がる。
「うぉぉぉぉぉおぉ!」「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」「なにこの水!凄く美味しいんだけど!」「可憐じゃ・・・」「拙者はこの奇跡のような光景よりも、あのアクアと申す美少女が、下に履いてるか履いてないかの方が気になるのだが」「アァ皆が喜ぶ姿を見て朗らかに笑うかずみんハァハァ」
「何だったんだ今の!?頼む、もう一回やってくれ!金なら払うから!」
「その気持ちは嬉しいけど、受けたとはいえ同じ芸を2度も見せるつもりはないの、お金も結構よ!」
やはりアクアの宴会奉行っぷりは、いつ見ても素晴らしい。だがわたしもアクアの娘!一緒になって盛り上げて見せましょう!
わたしが【スポットライト】(※2)を使うと、店内の明かりが消え、我が頭上から降り注ぐ光だけになる。
「我が名はかずみん、宴会と水の女神アクアの子にして、これから一発お見せする者!」
♢
アクアとA子が酔い潰れ、幼女もおねむのようなので、そろそろ部屋に戻ろうとするとき。
「ん?ありゃ、エース!お前エースじゃないか、街に戻ってきたのか!」
元盗賊A改めてエースに声をかけてくる、えらく顔の整った男だ。頭の後ろでひっつめているだけの髪は茶色。浮かぶ笑顔には穏和な性格が滲み出ているかのようだが、一方で精悍な面構えでもある。服装から見て海の男っぽいが、着るものを着れば、王族と言われても違和感なさそうな風格も感じられる。
「─────神ニョルズ」
「おう!神ニョルズさんだぞ、いきなり娘と共に消えたと聞いて心配したんだぞ?っと何だすまんな、連れがいるのに割り込んじまって」
「そんなこと!いやこの方達は俺の恩人でして、ここで酔いつぶれてるアクア様と、かずみんには本当に世話になったんすわ」
これが神か・・・確かに大物感はありますが、アクアやエリスと比べたら、神らしさを全く感じないです。神威とやらを発していて、すぐにわかると聞いていましたが・・・これも異世界ゆえのズレのようなものなのでしょうか。まぁいいやる事は一つだ。
座っていた椅子から勢いよく飛び上がる。
「我が名はかずみん!紅魔族随一の母思いにして、アクシズ教団特別司祭!───初めまして、神ニョルズ」と最後にお辞儀する。
ポカーンとしてる神ニョルズ。おっこの反応は久々に見た気がします。
「えっとどうしたんですかい?」
「あっああ・・・すまない少々そのユニークな自己紹介に我を忘れてしまってない、ハハ」
「それならわかりやすぜ!俺もこのかずみんの名乗りを聞くと、忘れていた若い頃の熱くたぎるようなモノを思い出すんでさ!」
「そっそうか、そのかずみん?なんだがエースを助けてくれたんだって?ありがとな!」
明らかにわたしの名に含むところがありそうですが、まぁ良しとしましょう。
「いえいえ、助けを求める者を見かけたら、積極的に介入するのが、正義の味方としてのスタンスですので」
(このおかしな名前の子は、おそらくヒューマンの子供で、種族一の母思いで正義の味方?本気でそう思ってるのが伝わってくる。これ程純粋で気持ちのいいの言葉を聞いたのは久しぶりな気がするな。名前はちょっとおかしいがいい子だ。あとその眼帯に添える手とか、ポーズが痛いのでやめて欲しい)
「そうか、優しい子なのだなかずみんは。エース積もる話もあるだろう、明日にでもホームに遊びにこないか?勿論娘やかずみん達も一緒に」
「へい!俺は是非とも行かせてもらいやす!他は聞いてみないとわかりやせんが」
「船が外洋へ出せないという噂がホントならば、わたしも一緒したいです。神ニョルズそこのところどうなのですか?」
「あぁその話か、ちと面倒なことになっててな、しばらく出せないかもしれん」
「ならばまずはあなたのホームとやらに、ご一緒しようかと思います。よろしくお願いしますね」
「おお喜んで、しかしえらく礼儀正しい子なのだなかずみんは、まだ10も生きていないだろう?」
「はいそうですが、礼儀作法に厳しい先生がおりまして、魔法使いというものは、言霊を大事にするものだそうです。良き言葉には良き魂が宿ると」
「ほぉ~随分と良い師に恵まれたのだな、しかもその年で魔法使いとは、かずみんはヒューマンであろう?」
「はいその通りです神ニョルズ」
「あぁ~なんだ、神とはいえもっと楽にしていいぞ?下界に降りている神なんて、子供達と同じように生きたいと願っている者が大半だ。近所のお兄ちゃんのように接してくれると俺は嬉しいぞ」
「わかりましたニョルズお兄ちゃん!ですが言葉使いは、それ程普段と変えてませんので悪しからず」ニパっと音が出るような笑みと共に言ってみる。
「ごふっ・・・大体わかったぞ、かずみんは本当に純粋な子なのだな。では明日昼頃にでもどうだ?ご飯の用意もしよう」
「ええそれでお願いします」
「それじゃあまた明日」「はい」
「やっぱかずみんはすげぇな、俺なんかニョルズ様に覚えて貰えただけで舞い上がっちまって、何が何だか」
「そうですか?それよりあの神の事を教えて下さい。アクア達を部屋に連れて行ってからでお願いします」
実を言うとわたしも、この世界初遭遇である神に興味津々であったりする。少々眠いが大事なことだ、知れる限りの情報は得ておくべきだろう。アクアとニョルズ。わたしに対して敵意を見せなかったとはいえ、異世界の神であるアクアに対しどうでるかは未知数なのだから・・・
おかしいです。オラリオとの距離は3K(キルロ)まで来たというのに、オラリオ編が遠ざかっていく。
次話でメレン終了。その次の次でオラリオ到着出来ればいいかなぁと・・・
(※1)花鳥風月 宴会スキルの1つ。扇子から水を出したり、植木鉢に花を咲かせたりする。 飲み水のスキルとしては案外有効活用されている。アクアの場合、長い研鑽の末に通常の花鳥風月より、より豪華になっている。また水の女神らしく水の質は良い。
(※2)スポットライト かずみんオリジナルスキル。指定した空間に暗闇を齎し、自身の頭上にのみ光を降り注ぐ。囮などに使えるかもしれない。