街はずれの森で迷っていると、古城を見つけた。
『クライ・ルーガー』はなんと幸運なことだ、と思い、
普段は神など信じていないくせに、神に感謝した。
その後に疑問が浮かんだ。
その古城は立派なものだった。
森の木々に隠れる事はないくらいに大きい。
だが、こんな城があるなど、聞いたこともない。
もしかすると、怪しい場所かもしれない。
しかし、水も食料も尽きてしまった身としては、贅沢は言えない。
例え殺人鬼の館だろうと、最後にシチューが食べれればそれでいいと、
ルーガーは持ち前の呑気さを発揮し、
城の入り口を探し始めた。
しばらく古城の周りをまわっていると、
大きな赤い『門』を見つけた。
ルーガーの身長の二倍ほどはある。
これがきっと入口だろう。
恐る恐る、その門を開ける。
「すいませーん...」
古城の中に向かって呼びかけてみるが、返事はない。
仕方なく、城の中に足を踏み入れた。
内部はやけに薄暗く、
数個のランプだけが、入口を照らしていた。
少し前に進むと、大きな階段に気が付いた。
赤いカーペットが敷いており、高級感のするものだった。
が、その先は暗闇で何も見えない。
これでは、上がろうにも上がれない。
「誰かいませんかー?」
暗闇に向かい、ルーガーは再び呼びかける。
「いますよ」
今度は、返事がした。
後ろを振り返ると、ぶつかりそうな距離に、
黒を基調としたメイド服を来た女が立っていた。
「驚かれました?フフフ」
彼女の纏う、清楚だが、そこか力強いオーラに、
ルーガーはやや圧倒される。
「どうされました?こんなところまで来て」
「あ~、えっと、森で迷っちゃって」
女は手をポンと打つ。
「成程。わかりました。お送りしますので、少し待っていてください」
言うと、女は階段を上ろうとした。
よくもそんな暗くて足場の見えない階段に踏み込めるな、と、
ルーガーは彼女の度胸に感心しかけたが――。
「『ハーバー・ライツ』」
女がそう呟くと、ポワッと、光が浮き上がり、
城の入り口全体を照らした。
「こ、これは...」
「あら、驚かれました?」
ルーガーは、光が出てきたことに驚いたのではない。
女が、『スタンド使い』だったことに驚いたのだ。
彼女の背後に、人型の、スタンドが現れる。
各所に埋め込まれている電球が特徴的だ。
「あなたにも見えているんですね?『この子』が」
そう言って、女は自身のスタンドの頭を撫でる。
どうやら、それなりに可愛がっている『タイプ』らしい。
この時からすでに、ルーガーはこの古城の住人達との、
奇妙な冒険に巻き込まれていたのだ...。