猫がいる   作:まーぼう

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第2話

「……誰?なんのつもり?」

 

 五更があからさまに不機嫌な声を出す。

 

「比企谷。飯食う場所探してただけだ」

 

 俺は平然とすっとぼけた。

 

「他所にいくらでもあるでしょう」

「いちいち探すのがめんどい」

「……さっきと言ってることが違うじゃない」

「別にいいだろ。そもそもこのベンチ四人がけなんだから」

 

 言って、勝手に座る。

 五更は不愉快そうに眉をひそめていたが、立ち上がりはしなかった。

 俺は黙ってビニール袋からコロッケパンを取り出しかじりつく。近くに人がいるといまいち味がわからん。

 

「なんのつもり?」

 

 1つ目のパンを口に詰め込んだところで、五更が最初と同じ問いを、先ほどより強く発する。

 

「たまたまだ」

「嘘おっしゃい」

 

 一言で切り捨てられた。

 

「あなた、あの奉仕部とかいう部に居た男よね。昨日も突然声をかけてきたし、同情でもしてるつもり?」

 

 表情は変わらない。だが、その瞳の奥にあるのは怒り。

 初めは雪ノ下に似てると思ったが別もんだな、こりゃ。割と激情家っぽい。

 

「同情ってのはなんのことだ」

「……っ!」

 

 しまった。そんな感じで顔を背ける。若いねえ。さすが1年。

 俺はヤキソバパンの袋を開けながら適当に話す。

 

「昨日のは本当にたまたまだよ。友達なんかいなくたって別に困んねえんだから、わざわざ隠さなくてもいいだろ」

「……なんの話かしら?友達くらいいるのだけれど」

 

 ……そうきたか。

 

「そうかい、そりゃ悪かったな。そのお友達は今日は休みなのか?」

「……その娘は今、遠いところにいるのよ。会うことは叶わないわ」

「どこのファンタジー世界の住人だよ。あのな、妄想に逃げ込むのは別に構わない。世の中辛いことだらけなんだ。逃 げ場くらい自分で作ったって誰も責める権利なんかねえよ。でも現実に居もしない相手にすがって」

 

 柄にもなく説教くさい言葉がこぼれ、それが途中でせき止められる。

 

「いるわ」

 

 五更瑠璃は真っ直ぐに俺の眼を見つめていた。

 その瞳は深く澄んでいて、強い意思を湛えている、ような気がする。

 

「友達は、いる」

「……そうかい、そりゃ悪かった」

 

 今度は皮肉ではなく謝罪する。

 いるのだろう。きっと、本当に。彼女が友達と呼べる相手が。

 俺は最後のチョココロネを開け、ちぎって口に放り込む。

 

「しかしなんだ、お前よく俺のこと覚えてたな」

「そうね。随分と存在が希薄だったから最初は低級霊の類いかと思ったわ」

「よりによって低級霊かよ……。俺の気配遮断はスキルなんだよ。なんなら火影を目指せる逸材だぞ」

「あら、それは失礼したわね。どのみち私の魔眼には通じないようだけど」

 

 案外ノリいいなこいつ。これなら普通に話すくらいできそうなもんだが。……いや、ちと毒が強いか?

 

「お前、クラスの奴らともうちょい上手くやれねえの?」

 

 自分のことを棚に上げて聞いてみる。

 

「……あなたには関係ないでしょう」

「友達いんだろ?同じ要領で付き合えねえ?」

 

 まあ人間関係ってのが、んな単純なもんじゃないのは分かっているが。と、思っていると予想外の反応が返ってきた。

 

「冗談ではないわ。我が強敵(とも)をあのような下賤な連中と同列に扱わないでもらえるかしら」

 

 あれ、なんか雰囲気違ってねぇ?

 

「いや、いきなり下賤とかどこの貴族だよお前は。何?魔眼持ちとか魔族かなんかなの?」

「ふっ……。よくこの私の擬態を見抜いたわね。褒めてあげるわ」

 

 おかしい。ここは否定が返ってくるタイミングじゃないのか?

 

「……えーと、あの、五更?」

「その名で呼ばないでもらえるかしら?それは人の世で過ごす為の仮の名……。我が真名(まな)は黒猫。千の葉が舞い散る大地に降り立った咎人。千葉(せんよう)の堕天聖、黒猫よ」

 

 oh、GOD……。

 わけ分からんってのはこれのことか。

 雪ノ下に似てると思ってたら、まさかの材木座タイプとは。そりゃ友達できねえわけだよ。

 いつの間にか立ち上がり、ポーズまで取ってる五更を刺激しないように、俺は慎重に言葉を選んだ。

 

「何言ってんだこのバカ」

「だっ、誰が馬鹿よ!」

「いや、お前以外に誰がいんだよ」

「くっ……、屍鬼の分際で生意気な……!」

「誰が屍鬼だ!」

「あなた以外に誰がいるのよ」

「くっ……、中二のくせに生意気な……!」

 

 しばし睨み合う。

 五更は不意に視線を外し、ふっと息を吐くと、ベンチに置きっぱなしになっていた弁当箱を拾い上げた。

 

「……どういうつもりかは知らないけど、先生に連れられて行った時に言った通り、気遣いは不用よ。他人を気にかけている暇があったら自分の心配でもしてなさい。その眼の腐りぶりでは、あなたの方こそ友達などいないのではなくて?」

「へいへい。ちゃんと友達いる奴の言うことは重みが違いますね。あいにく俺は、一人でいられるのは権利だと思ってるんでね」

 

 リア充たちは常に群れている。それはつまり、一人の時間を持てないということだ。

 一人になれないということは、常に他人の目を気にしなければならず、常にストレスにさらされ続けることになる。

 実際、それはかなり辛い。

 人に慣れた犬だって、子供にベッドに連れ込まれて一緒に寝ると、ストレスで吐いたりする。

 つまり、リア充よりも、ストレスフリーで生活しているぼっちのほうが長生きし、最終的には勝者たりえるのだ。

 ところで権利って大抵自分から放棄できるものなんだけど、これの場合どうなんだろう。

 

 そんなアホなことを考えていると、五更が俺を無表情に見つめていた。

 ……いや、違う。

 こいつは表情が読みづらいだけで無表情なわけじゃない。

 だがその表情が何を意味しているかまではわからない。

 

「……なんだよ」

 

 仕方なく、声に出して聞く。

 五更は小さくかぶりを振って答えた。

 

「……昔の私と同じようなことを言うのね」

「あん?」

「以前の私は孤独を好み、孤高であることを誇って生きてきたわ。それが間違っていたとは今でも思ってない」

「……」

「それでも私は、今の自分になれたことを嬉しく思っているわ」

 

 嬉しい。

 そうはっきりと言い切った五更の目に、偽りの色はない。

 

「……ハッ、ご立派なことで。簡単に変えられるような自分が自分だとは思えんがね」

 

 どこかで聞いたことのある言葉、と思ってたら自分のだ。雪ノ下と初めて会った時に似たようなことを言った覚えがある。

 あの時の雪ノ下は確か、それじゃ誰も救われないとかそんなことを言っていた。

 俺にはそれが、必至に自分に言い聞かせているように見えたんだ。

 だというのに、

 

「変わってなどいないわ」

 

 五更はあっさりと言い放った。

 

「私は変わったのではなく、前に進んだのよ」

 

 詭弁だ。

 そう言うのは簡単だったろう。

 だが俺はなにも言えなかった。

 こいつには勝てない。心のどこかでそう思ってしまったのかもしれない。

 

「あなたの誇りを傷つけるつもりなどないけれど、あなたにも何時か、前に進める日が来ることを祈っているわ」

 

 そう言い残して五更は立ち去った。

 後に残された俺は、MAXコーヒーを取り出し蓋を開ける。

 

「……クソガキが」

 

 流し込んだMAXコーヒーは、なぜかとても苦かった。

 

 

 

 放課後。

 

「もうほっといていんじゃね?」

 

 隣のお団子頭にぼやく。

 割と本気でそう思った。いや、生意気な後輩にムカついたとかじゃなく。俺より全然大人だろ、あいつ。

 

「いやそーいうわけにもいかないっしょ。なんかあったの?お昼終わってからいつも以上に目が死んでるけど」

「うっせ、ほっとけ」

 

 俺は教室を出ていつもとは逆に曲がる。

 

「ってヒッキーどこ行くの?部活行かない気?」

「先行ってろよ。ちっと寄るとこあるだけだから」

「あたしも付き合うってば」

 

 だからなんで必要もないのに誰かと一緒に居たがるんだよこいつらは。

 そんなリア充の性質に生物学的な疑問を抱きつつ歩く。

 

「ヒッキー、こっち昇降口だよ?やっぱ部活サボる気?」

「確認しときたいことがあるだけだ。向こうの階段、誰もいなかったよな?」

「? うん。多分」

 

 やっぱりか。普通なら手分けしてやるものなんだが。

 

「ねえ、なんなの?説明し……」

「しっ」

 

 唇の前に指を立てて由比ヶ浜を黙らせる。

 

「居た」

 

 壁の端から除きこむと、昨日と同じように五更が一人で階段を掃除していた。

 

「誰?」

 

 由比ヶ浜が聞いてくる。

 誰って……て、由比ヶ浜が五更を見るのは初めてか。

 

「五更瑠璃。今、奉仕部で話題独占中の人物だ」

「へー、可愛い娘だね。でもこれって……」

 

 言葉の途中で黙りこむ由比ヶ浜。こいつはこうやって察してくれるからありがたい。

 

「でも、たまたまかもしんないよね?」

「昨日も見てなけりゃ俺もそう思ったんだがな」

「そっか……」

 

 予想していた通り、他の当番は見当たらない。

 やっぱ放置するわけにはいかないか……。

 

「手伝ってったほうがいいかな?」

「やめとけ」

 

 由比ヶ浜の提案を一言で却下する。

 五更は昼に、誇りという言葉を使っていた。多分五更自身、相当にプライドの高い奴なんだろう。

 それでなくともぼっちというのは誇り高い生き物だ。冗談ではなく。

 普通の人間が仲間に頼って解決していることを、ぼっちは自分一人でなんとかしなければならない。弱音を吐いたところで助けてくれる相手などいないからだ。

 たとえ理由が後ろ向きであったとしても、他が複数で助け合ってこなしていることを、自分一人で乗り越えたという事実は自負につながる。

 ぼっちにとって、誇りとは心の支えなのだ。支えがなければ一人でいることに耐えられない。

 それを傷つけられれば当然のように激怒する。

 

「……何をしているの、あなたは」

『見てのとおり、階段掃除』

 

 ……こんなふうに。

 由比ヶ浜と二人して再び覗き込む。

 五更は階段の踊り場から階下を睨みつけていた。

 ここからは見えないが、下に誰か居るのだろう。くぐもってよく聞き取れないが、男のものらしき声で返事も聞こえてきた。ところで由比ヶ浜さん、あんまくっつかれるとその、色々困るんですが。

 

「……気に入らないわね。哀れんでいるつもり?」

 

 言葉自体は昼に俺に向かって言ったものと大差ないが、込められた感情は桁違いに思える。こいつがここまで感情を露にする相手ってのはどんなんだ?

 

『なんのことだ?』

 

 ……とぼけかたが俺そっくりなんですが。何だろう。なんか胸くそ悪い。何この感情。

 

「とぼけないで。私が一人で掃除しているのを見かねて、それでこんなことをしたのでしょう?余計なお世話よ。言われなければ分からないの?」

『そりゃ悪かった。でも、もう掃除しちまったしなあ。ま、今日のところは許してくれよ』

「……っ」

 

 うわーぉ。とんでもなく神経の図太い野郎だな。五更が唇噛み締める音がここまで聞こえてきたぞ。

 にわかに緊迫した空気に、由比ヶ浜なんか向こうに気づかれてないのに固まっちまってる。

 

「お礼なんて言わないわよ」

『もちろんだ。これは俺たちが勝手にやったことだからな』

 

 そこで五更の両目がきゅっと細くなった。微妙な間があってから、彼女は重い声を紡ぐ。雰囲気が変わった……?

 

「私のことが心配なのはウソじゃない――以前、あなたそう言ってたわね?」

『おう。ウソじゃないぞ』

「あらそう。……ええ、分かっているわ。ウソではない、ウソではない、ウソではないのでしょうね。でも……その気持ちがどこから来ているのか、考えたことはあるのかしら?それとも……気付いているのに気付いてないふりをしているの?」

 

「……行くぞ、由比ヶ浜」

「えっ、でも」

「これ以上は勝手に聞くべきじゃないだろ」

 

 というかもっと早い段階で離れるべきだった。雰囲気に飲まれてたな、くそ。

 由比ヶ浜はまだ気になるようだが、すぐに頷いてくれた。

 言い争い――いや、五更の一方的な糾弾をできるだけ耳に入れないようにしながら、俺達は静かにその場を離れた。

 

 

 

「……ヒッキーの言うことって合ってるんだね」

 

 そう、力なく呟いた由比ヶ浜を、雪ノ下が気遣わしげに覗き込んだ。

 

「……由比ヶ浜さん、体調が悪いの?比企谷くんの言うことが正しく聞こえるなんて重体よ?」

「どういう意味だおい。しかも重症じゃなくて重体かよ。なんで死の危機に瀕してんだよ」

「比企谷くん。何があったのかは知らないけれど、きちんと由比ヶ浜さんに謝りなさい。切腹は掃除が大変だから、できるだけ部屋を汚さない方法を選んでちょうだいね」

「別に謝らなきゃならないことはしてない、つかなんで詫び入れる方法が命ありきなんだよ」

「大目に見てあげたのよ。あなたの一月分のお小遣いよりは安上がりなはずでしょう?」

「お前は俺の命をいくらだと思っとるんだ!?」

「……ぷっ、あははははは!」

 

 突然由比ヶ浜が笑い出した。なんか笑う要素あったか?

 

「はは、は……ありがとね。なんか元気出た」

「……それで、何があったの?」

 

 

「そう、そんなことが……」

「うん。ヒッキーが止めてなかったらあたし、普通に手伝ってたと思う。それで仲良くなれると思ってた。それがあんなに怒るなんて思わなかったから……」

「まぁ、由比ヶ浜ならもっと違った展開になってたとは思うけどな」

 

 同じことをされても、相手次第で感じかたは異なる。五更の場合、あれだけ感情的になる相手のほうがレアケースだろう。

 

「今回は由比ヶ浜さんの方針でいこうと思っていたのだけど、見直したほうがいいかしら」

「というと?」

「五更瑠璃さんに友達を作る。彼女、本気で人付き合いを嫌っているわけではないと思うのよね」

 

 その可能性は俺も考えていた。

 嫌われるには他人と関わりを持つ必要がある。

 孤立を好むならわざわざ自分から接触したりしない。

 つまり五更の場合、普通に仲良くなろうと近付き、普通に失敗してきたのではないだろうか。あの堕天聖黒猫を見た後なら普通に納得できる。

 しかしそうなると別の問題が出てくる。

 

「……友達ってどうやって作るんだ?」

「……盲点だったわ」

「別の案探すか」

「そうね」

「いやいや二人とも諦めるの早いから!」

 

 由比ヶ浜が突っ込むがこればっかりはな……。

 

「自分の友達作ることもできないのに人の友達なんかどうやって作るんだよ?」

「それは、ほら……そうだ!部活入るとか!」

 

 これだ!とばかりに身を乗り出す由比ヶ浜。確かにポピュラーな手段ではある。

 

「でもなぁ、同じ趣味を持ったメンバーで空間を共有すれば話も弾むだろうけど、それで友達になれるとは限らないだろ?俺達とかいい例だろ」

「えっ!?あたしら友達じゃなかったの!?」

「えっ?俺らって友達だったの?」

「違うわよ」

「違うってさ」

「ゆきのんひどい!?」

「あ……、違うのよ、由比ヶ浜さん。由比ヶ浜さんのことはその、と、友達、だと、思っている、わ……」

「……ゆきのん!」

 

 おお、雪ノ下がデレた。由比ヶ浜なんか感極まって抱き付いてるし。見た目エロくて非常にけっこう。

 しかしあれだな。ナチュラルにハブられてるね、俺。いや別にいいけどさ。混ざりたいわけでもないし。……ホントだよ?

 

「それで、部活のことなのだけど。調べてみたら彼女、少し前にゲーム研究会に入っているらしいわ」

「調べたって、どうやったんだ?」

「平塚先生に頼んだのよ」

「ああなんだ、ビックリした」

 

 雪ノ下に普通の聞き込みなんかできるわけないもんな。

 

「……今、何かとても不愉快なことを考えてなかった?」

「気のせいだ」

 

 しかしゲー研か。

 

「他に一年で入ってる奴っていんの?」

 

 できれば女子がいいんだが。

 

「同じクラスの女子に一人いるようよ」

「マジかよ、どんな偶然だよ」

「名前は赤城瀬菜さん。こちらは入学してすぐゲーム研究会に入部したようね」

「んじゃとりあえずはその娘とくっつけるって方向で行くか」

 

 雪ノ下と簡単に打ち合わせしていると、由比ヶ浜がなんか難しい顔をしているのに気付いた。そういやさっきからしゃべってねえなこいつ。

 

「どうかしたのか?」

「あ、うん……」

 

 なにモジモジしてんだこいつ。

 

「えっと、五更さんのことで、あくまで噂なんだけど……。なんかね、三年の先輩と付き合ってるらしいの」

 

 …………は?

 

「えっ、なに?あいつ彼氏いんの?」

「うん。そういう噂」

「……それをどうして今まで黙っていたのかしら?」

「ゴ、ゴメン!なんか言い出すタイミングがなくて」

 

 ま、まあタイミングって大事だよな、うん。

 しかし五更の彼氏ってどんなのだ?まったく想像できんぞ。つーか友達0で恋人1ってありえんの?いや一人とは限らんが。

 

「それでね、その先輩なんだけど、五更さんの他にも幼馴染みの彼女がいるらしいの」

「…………」

 

 えーと嘘から出た真いや違うなんだこれ頭の中で適当に考えたことが現実化いやそれも微妙に違う増えたのは五更の彼氏じゃなくて彼氏の彼女でオーケイ一辺落ち着け俺なにこれすごい動揺してる。

 

 予想外過ぎる情報が立て続けに飛び込んできたせいで混乱した。

 

「……つまり二股、ということ?」

 

 雪ノ下が絶対零度の声音で確認する。やはり女子ということなのだろう。

 

「う、うん。多分……」

 由比ヶ浜が震える声で返事する。びびってるびびってるめっちゃびびってる。でもこれは仕方ない。

 にしても二股か……。

 割とよく聞く単語、いやそうでもないか。ラノベならともかく現実では、いやラノベでもあんまないか。いかん、まだ動揺してる。この手の問題にはてんで縁がなかったからな。

 

「えっと、ゆきのん……、それで、どうする、の……?」

「どう、とは?」

 

 だから怖えよ。

 写真で見れば穏やかな微笑みだろうに、放たれる気配は最上級の氷結魔法すら凌駕している。雪女でも凍死するレベル。

 

「死刑、とか言わないよね?」

「そんなわけないでしょう。馬鹿なことを言わないで」

 

 まったくだぜ由比ヶ浜。お前は全然分かってない。

 雪ノ下がそんなこと言うわけないだろう。

 

「死刑じゃ苦しみが一瞬で終わってしまうでしょう?」

 

 ホラやっぱり。


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