猫がいる   作:まーぼう

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第3話

 結局、赤城瀬菜のことは俺と由比ヶ浜が担当することになった。

 例の二股先輩は本人の希望により、悪即惨殺状態で凍てつく焔と化した雪ノ下に一任することになった。凍てつく焔って材木座とか五更が喜びそう。

 ……いや、俺も知り合いが殺人に走るのは止めるべきだとは思うんだが、うかつに口出しすると俺のほうが凍らされたあげく「貧弱貧弱ぅ!」とばかりに砕かれそうだったもんで。

 まあ雪ノ下もあまり無茶はしないだろう。と思いたいところなんだが、あいつの場合、完全犯罪普通にやってのけそうだからなぁ……。

 

「んで、どうする?」

 

 翌朝、下駄箱で出くわした由比ヶ浜にそんなことを聞く。

 もっともできることなどそう多くない。

 とりあえずは赤城瀬菜がどんな奴か確認するのが先決だろう。五更と同じクラスらしいからもう一度聞き込みに行くか。

 

「それなんだけどさ、ゲー研の方も調べてみない?」

 

 一瞬きょとんとしたがすぐに得心する。

 考えてみればクラスの方に拘る必要もない。むしろクラスメイトの目がある分、話づらいこともあるかも知れない。

 それならいっそ部活の方に的を絞るのもありだろう。

 

「で、調べるのはいいけど、心当たりでもあんのか?」

「心当たりってほどでもないけど、ゲームだったら姫菜が詳しいかも知んない」

 

 ……姫菜って誰だっけ。まあ由比ヶ浜の知り合いならとりあえず任せとくか。

 

 

「優美子、おはよー。おはよ、姫菜」

「はよー、結衣。……ふぁ、ねむ……」

「おはよ、結衣。優美子もホラ、しゃっきりして」

「いやあーし昨日三時間しか寝てなくてさ……。ちょっと気になったことあって調べてたらいつの間にか3時まわってて……」

「そんなの私だって同じだよ。私も気になるBL画像追っかけてたらいつの間にか真夜中だったから」

 

 全然同じじゃねえ。

 朝っぱらから飛ばしてんな、何この眼鏡。由比ヶ浜も笑いが引きつってるし。三浦の方は眠気のせいか反応薄いけど。

 つーかこの娘だったのね。また分かりませんでした。

 

「あはは……。そういうこともあるよね、たまには。ところで姫菜、ゲーム研究会のことって知ってたりする?」

「?ううん。なんで?」

 

 ありゃ、あてが外れたか。

 

「ふーん、ゲー研とかあんだ。何、結衣、入んの?」

 

 三浦が首を突っ込んでくる。眠いなら寝てりゃいいのに。

 

「結衣ちゃんゲームに目覚めたの?よかったら私のコレクション貸そうか?」

 

 そのコレクション、ジャンルに偏りがありませんか?

 

「いやー別にそういうわけじゃないんだけど」

「なになに?何の話?」

 

 由比ヶ浜のセリフの途中で金髪の男子が割り込んできた。誰だっけこいつ。確か葉山の取り巻きの……騒ぐしか能のないお調子者、戸部だ。

 

「なんかー、結衣がゲームにハマってんだって」

「いや、そういうわけじゃ」

「へー。俺も結構詳しいぜ?海老名さんはどんなのやんの?」

 

 あー、そうだそうだ。海老名姫菜だ。思い出した。

 で、なんでそっちに話振んの?今確か由比ヶ浜の話してたよね?相変わらずリア充の会話の流れは理解できん。

 

「うわ、あんたオタクだったの?」

「バッ、ちっげーから!男ってフツーにゲーム好きなもんだから!」

「え~、そういうもん?隼人~、隼人もゲーム好きなわけ~?」

「やってみると結構面白いよ。今度一緒にゲーセン行くか」

「ふーん。隼人が一緒なら行ってみてもいいかな」

「ちょっ!俺のときと態度違くね!?」

「戸部……人には持って生まれた領分ってものがある。諦めろ」

 

 蝶が花に群れるように、リア充は賑やかな雰囲気に群れる。

 三浦と葉山が揃ってにわかに華々しくなった空気にみんなしてワラワラ集まってきた。

 1匹見たら30匹。蝶とか言ってる場合じゃねえ。ほとんどクラス全員じゃん。(比企谷くんは含まれません)

 これはもう情報聞き出すとかは無理だな。

 由比ヶ浜も諦めたのか、人の群れから脱け出して俺の方に退避してきた。

 

「ゴメン、ダメだった……」

「まあしょうがないだろ。地道にクラスの方当たるか」

「何の話?」

 

 うお!?

 いきなり背後から投げ掛けられた声に振り向くと、いつの間にか葉山隼人がそこにいた。

 またしても背中を取られた……。俺がゴルゴだったらどうする気だ。

 

「隼人くん、ゲー研の人に知り合いとかいない?」

 

 あ、聞いちゃった。

 まあ葉山なら問題ないとは思うが、こいつは探偵にはなれないな。

 

「うーん、そうだな……」

「いや、事情とか聞かねえの?」

「また奉仕部の活動なんだろ?いいよ。この前の恩もあるしね」

 

 ……だからどこまでイケメンなんだこいつは。

 

「で、知ってる?」

 

 由比ヶ浜が意気込んで聞くが葉山は首を横に振った。

 

「ゴメン、知り合いにはいない。でもサッカー部の先輩が、妹がゲー研に入ったって話してたよ」

 

 おお、予想外の収穫。……て、妹?

 

「なあ、その先輩なんて人だ?」

「赤城先輩だけど?」

 

 

 

「そう、葉山くんが……」

 

 昼休みに部室で情報交換したところ、雪ノ下が苦い顔で呟く。

 この前も思ったけど、こいつ葉山が絡むと態度おかしくね?

 

「んで、放課後葉山にその先輩に紹介してもらえることになってる。妹さんは一年らしいから、多分昨日話に出てきた赤城瀬菜本人で間違いないだろ」

「なんていうか、さすが隼人くんだよね~。人脈広い広い」

 

 由比ヶ浜だって相当だと思うけどな。……いや、俺のレベルが低すぎて差が理解できないだけか?

 

「それで、雪ノ下はどうする?」

 

 俺と由比ヶ浜で行くことになっているが、話を聞くだけなら俺一人でも事足りる。雪ノ下が付き合う必要はない。

 なのだが雪ノ下は小さく息を吐きながら首を振った。

 

「……いえ、私も行くわ。例の先輩だけど、五更さんと一緒にゲーム研究会に入部してたらしいの」

 

 どんだけ重要なんだよゲー研。ていうかマジで何なんだ二股先輩。

 噂に踊らされるのはさらさらゴメンなんだが、こう先々に出没されると本気で何か企んでると思えてくるぞ。

 つーか五更の奴狙われてる?マジで危ないんじゃないか?……いや、噂は既に『彼氏』だったよな。てことは手後れ?

 噂は噂に過ぎないとはいえ、こういう「もし本当だったらシャレにならない系」は勘弁してほしい。

 必死になって追いかけても大抵徒労に終わるし、デマと決め付けてそれが本当だった場合、罪悪感が半端じゃない。

 結局、無駄だと思いながらも必死にならざるをえないのだから質が悪い。

 

「……五更の奴に直接忠告した方がいいか?」

「……どうだろ。その先輩が実際にどんな人なのか知らないけど、少なくともあたしたちよりは五更さんと付き合い長いんだよね?あたしたちが何か言って聞くとも思えないけど」

「だよなぁ……」

 

 こういうのは、たとえ100%善意で忠告したとしても聞き入れてもらえるとは限らない。むしろ敵視される可能性すらある。特に恋愛絡みだと盲目的になりがちだし。ホンッとめんどくせぇ。

 

「とにかく」

 

 迷いを断ち切るような鋭さを持った声で雪ノ下が宣言する。

 

「まずは放課後、赤城先輩の話を聞いてから。どうするかはそれからよ」

 

 

 

 放課後、昇降口の前で雪ノ下を待つ。一人だけクラス違うからな。

 さほど待つこともなく雪ノ下が現れる。

 

「……お待たせ」

 

 相変わらず感情の読めない無表情。だがそれは、今日この場に限っては無理に作ったもののような気がする。気がするだけだが。

 一方葉山は普段と変わらぬ爽やかな笑顔。

 

「じゃあ行こうか」

「隼人くん、その赤城先輩ってどんな人なの?」

 

 てくてく歩きながら由比ヶ浜が葉山に尋ねる。

 

「そうだな……いい人だよ。後輩からの信頼も厚いし頼りになる人だ。それにすごく妹想いだし」

「ふーん」

 

 葉山にかかれば誰でもいい人になってしまう気がするんだが。それはともかく最後の方、笑顔が若干引きつってたように見えたんだが気のせいか?

 グラウンドまでの僅かな距離の移動の間、葉山と由比ヶ浜が他愛ないおしゃべりしながら歩く。

 俺と雪ノ下は黙って後をついていくのみだ。

 やがてグラウンドに着くと、一人の男子生徒が立っていた。

 どこか葉山に似た、爽やかな雰囲気のイケメンだ。何?サッカー部ってこんなのしかいねえの?

 

「赤城センパイ、チワッす!」

 

 葉山がいきなり大声でお辞儀した。こいつもやっぱ体育会系なんだな。

 俺達も葉山に倣って頭を下げる。

 

「おー葉山。話ってなんだ?練習すぐ始めっから手短に済ませろよ」

 

 赤城先輩の方は、いたってリラックスした感じでフレンドリーな気配を纏っている。これなら話も聞きやすそうだ。

 葉山はもう一度頭を下げて、直球で頼み込んだ。

 

「すいません。実は妹さんのことを教えてもらいたいんですが」

「あ゛?」

 

 瞬時に赤城先輩の気配が塗り変わる。

 つい先ほどまで極めて穏やかな空気だったのが、今はなんというか修羅を感じる。

 

「葉山……オマエまさか、俺の天使に手ぇ出すつもりか……?」

「い、いえ!決してそんなつもりは……」

「貴様ぁ!瀬菜ちゃんに口説く価値がないと言うのか!!」

 

 なるほど、こういう人か。

 両眼を爛々と輝かせ、今にも葉山に噛みつかんと(文字どおりの意味で)している赤城先輩に、俺は猛獣使いになった心境で話しかけた。

 

「まあまあ落ち着いて。妹さんに用事あるのは俺ですから」

「なんだ貴様は……?貴様も瀬菜ちゃんに近付く害虫か……?」

 赤城先輩はふしゅるるる~、と口の端から蒸気っぽい何かを吹き出しつつ俺に向き直った。該当クラスはバーサーカーだな、間違いなく。

 

「いえ、そういうつもりはありません」

「なんだと!この世で最も美しい女に向かって」

「俺ごときでは到底釣り合いませんから」

「なんだ、お前いい奴だな。何でも聞けよ。答えられることなら答えるぞ」

 

 よし。あとは話を聞くだけだな。

 

「ヒ、ヒキタニくん、すごいな……」

「いや、別に大したことしてないだろ?」

「ううん、すごかったよヒッキー」

「ええ、癪だけど認めざるをえないわ。大したものよ」

 

 なんでべた褒め?俺普通のことしかしてないはずなんだけど。

 赤城先輩だって、妹を持つ兄としてごく標準的な態度しかとってないし……。

 それはともかく何を聞くべきか。

 実は予想外に大きな収穫があったことで満足してしまい、そこから先を考えるのを忘れていた。

 そんな俺に気付かずに、由比ヶ浜が口を開く。

 

「それじゃ早速、妹さんってどんな娘なんですか?」

「この世で一番可愛い女の子だ」

 

 ごく簡潔に答える赤城先輩。

 

「学校での評判などを教えていただけるでしょうか?」

「当然みんなの天使だな」

 

 雪ノ下の問いに即答する赤城先輩。

 

「あの先輩、もっとこう、どの教科が得意とか、友達は何人くらいいるとか、そういう答え方をした方が……」

「貴様が瀬菜ちゃんを語るなぁ!」

 

 葉山に牙を剥く赤城先輩。

 葉山は練習があるから、と行ってしまった。なんで俺だけ……とかなんとか聞こえてきたのは空耳だろう。

 しかしこの先輩に妹のことを聞いても、主観が強すぎて質問する意味がないな。もう少し具体的な質問をした方がいいか。

 

「妹さんってゲー研で仲良くしてる相手とかいるんスか?」

「……瀬菜ちゃん、部活のこととか、あんまり教えてくれないんだ」

 

 哀しそうに呟く赤城先輩。駄目だ、使えねえ。

 

「由比ヶ浜、ちょっと」

「ふぇ?」

 

 由比ヶ浜に耳打ちする。……なんかいい匂いする。由比ヶ浜さんはちょっと無防備すぎると思います。

 

「あの、直接お話ししてみたいんで、写真とか見せてもらっていいですか?」

 

 由比ヶ浜は俺の言った通りに頼んだ。これは男子が言うと、また暴走するからな。

 

「おう、いいぞ。ほら、これだ。可愛いだろ?」

 

 そう言って赤城先輩は携帯の待ち受けを見せつけてきた。だからなんでみんな引くの?妹の写真待ち受けに使うのは当然の義務だろ?

 笑顔を引きつらせた由比ヶ浜の肩越しに先輩の携帯を除きこむ。って、こいつはあのときの眼鏡ちゃんじゃねえか。

 

「ヒッキー、どしたの?」

「ああ、いや、なんでもない」

 

 動揺が表に出たらしい。

 しかし参ったな。こいつ確か五更のこと嫌いっつってたよな。

 

「もうそろそろいいか?俺も練習あるし」

「ハイ。お手数おかけして申し訳ありませんでした」

 

 雪ノ下が丁寧に頭を下げる。結局大した収穫はなかったか。

 

「そだ。三年生に二股男がいるらしいんですけどなんか知りません?」

 

 ふと思い出したので聞いてみる。まあさすがに知ってるわけないとは思うが。

 

「二股?パッと思いつくのは高坂くらいか?」

 

 …………まさか普通に答えが返ってくるとは思わなかった。雪ノ下と由比ヶ浜も唖然としている。

 

「ちょっ、すいません。それもうちょっと詳しく!」

 

 

 

 結局あれからさらに聞き込みを続け、いくつかの有力な情報を手に入れることができた。

 赤城先輩は、練習時間を大幅に削られたにも関わらず、終始にこやかに対応してくれた。なんというか感謝の言葉もない。

 俺は葉山の「いい人」発言をロクに信じていなかったのだが、この先輩に関してはガチだったらしい。

 

 赤城先輩から聞き出すことのできた高坂京介という人物。

 先輩の友人であり、幼馴染みの彼女がいるにも関わらず(本人は彼女じゃないと言い張っているらしい)最近は一年の女の子にべったりだとか。

 しかもその一年生の特徴が五更瑠璃に酷似してる上に、三年に進級してからゲー研に入部したらしい。

 もう完全に真っ黒である。

 噂の二股先輩と別人の可能性を探す方が難しい。

 

「この高坂先輩については、引き続き私が当たることにするわ」

 

 名前まで割れた以上、雪ノ下にかかれば二股疑惑の真相が明かされるのも時間の問題だろう。風前の灯火と言い換えてもいい。高坂先輩の命がだ。

 俺と由比ヶ浜はロクに収穫のなかった赤城瀬菜の方に話を聞くべく、ゲー研の部室に向かっていた。特別棟のすぐ下の階だ。

 すでに下校時刻が迫っている。今のタイミングなら捕まえられるかもしれない。

 

「でも困ったね。五更さんと仲悪いんでしょ?」

 

 由比ヶ浜がぼやく。

 仲が悪いとは限らない。赤城瀬菜が一方的に嫌っているだけの可能性もある。なんの救いにもならないが。

 だがまあ、あのはっきりした性格を考えると、正面からぶつかり合ってる可能性の方が高いだろう。それならまだ望みもあるかもしれない。

 階段を降りたところで鉢合わせた。

 無害で大人しそうな風貌の、見知らぬ男子生徒と。

 ……誰だよ。このタイミングで関係ない奴が出てきてんじゃねえよ。

 

「あれ?真壁くんじゃん」

「由比ヶ浜さん?と……奇遇ですね」

 

 このやろう、失礼にも俺を見て言葉を濁しやがった。で、こいつ誰?

 由比ヶ浜に目で訴えると、察してくれたらしく互いを紹介してくれた。

 

「えーと、こちら同じクラスの真壁くん。で、こっちは同じクラスの比企谷くんです」

「「……初めまして」」

 

 お互いぎこちなく一礼する。初めましてって五月にクラスメイトに対して使う挨拶じゃないっすよね。

 

「それでどしたの?こんな時間に」

「僕は部活の帰りです。由比ヶ浜さんこそどうしたんですか?」

「あたしも部活。真壁くんって何部だったっけ?」

「ゲー研です。由比ヶ浜さんも部活やってたんですね」

 

 こいつもゲー研かよ。思いっきり関係者じゃねえか。

 しかも同じクラスときた。メチャクチャ遠回りしたなオイ。

 ところで真壁くんとやら、視線がさっきからチラチラ下向いてんだが何見てんだ?

 

「ゲー研の一年に赤城って部員がいると思うんだが来てるか?」

 

 声をかけると真壁くんはビクリと身を震わせた。こいつ、俺のこと忘れてやがったな?

 

「あ、赤城さんは今日は来てませんけど……。彼女に何か?」

 

 丁寧口調だが気弱な印象は受けない。後輩の女の子に知らない男(クラスメイト)が近付くのを警戒してるようだ。

 ていうか愛されてんな眼鏡ちゃん。年上を魅了するフェロモンでも持ってんのか?

 僅かに緊迫した気配を感じ取ったのか、由比ヶ浜がとりなすように間に入る。が、俺は構わず続けた。

 

「最近になって高坂って三年が入部したらしいけど話聞かせてくんねぇ?」

「ちょっと、ヒッキー?」

「……個人情報を提供するわけにはいきませんので。一体なんのつもりですか?」

 

 いよいよ警戒を露にする真壁くん。

 

「まあ当然の対応だな。ところで話は変わるが大は小を兼ねるって言葉、どう思う?」

「は?」

「男としてわからなくはねえけどな。紳士としてあるまじき行為だとは思わんかね?」

「……っ!な、なんのことですか?何を言っているのかさっぱりわかりませんけど?」

「そうか。わからないならいいんだ。今度二人で話そうや」

「そ、そうですね!また今度ゆっくり!じゃ、じゃあ僕、もういきますから!」

 

 真壁くんは逃げるように行ってしまった。

 置いてきぼりを食らってキョトンとしていた由比ヶ浜が口を開く。

 

「……ねえ、さっきのなんだったの?」

「さあな」

「ちゃんと説明してよ!全然意味わかんなかったんだから!」

「知らねえって」

「ふんだ、ヒッキーの意地悪!」

 

 由比ヶ浜はぷりぷり怒って行ってしまった。

 説明しろと言われても、何もないのだから仕方ない。ないものはないのだ。

 真壁くんが由比ヶ浜の胸をチラ見してたのが気に食わなかったとか、そんな事情はどこにもない。

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