翌日。今日は土曜日、午前のみで修了だ。
俺は授業が終了すると、飯も食わずに一年の教室を目指した。由比ヶ浜も一緒だった。
いい加減、赤城瀬菜と直接話をしたいところだ。今から行けば部活前に捕まえられるだろう。
目的の教室が見えたところで何か違和感を覚えて立ち止まる。
「ヒッキー?」
由比ヶ浜もつられて止まったものの、別段何かに気がついた様子はない。
なんだ?何に引っ掛かった?
視界に映るのは人、人、人。
授業が終わって緊張から解き放たれ、めいめいに身体をほぐす一年生の群れ。
ある者は腹を抑え昼飯を求めて教室からさ迷い出る。
またある者は隣を歩く相手と泊まり掛けで遊び倒す計画を練っている。
食堂に向かう者、部活の準備をする者、街に繰り出そうとする者、目的もなくたむろする者、教室を覗き込む者、それぞれがそれぞれに行動し無秩序な喧騒を……覗き込む?
他の生徒達が教室から吐き出されていく中で、一人流れに逆らい教室の中の様子を伺う男子生徒がいた。
どう見ても挙動不審なその男は、人混みで上履きは確認できないが、少なくとも一年生には見えない。
そしてそいつが覗いているのは俺たちが目指していた教室。すなわち、五更瑠璃のクラスだ。
「あいつ……!」
断定はできないが、恐らく高坂京介だ。五更に付きまとっているというのはどうやらマジだったらしい。
思わず駆け出しそうになるが人が多すぎて思うように進めない。くそっ!無双ゲージが溜まってれば一気に蹴散らせるのに!
手間取っている間に五更が姿を現す。
二人は二、三言葉を交わすと連れ立って歩いていった。
……今の、五更のほうから声かけてたよな?
結局、噂は単なる噂でしかなかったのかもしれない。だが実際に自分で確認するまでは投げ出すつもりもない。
二人を呼び止めるべく、今度こそ走り出した。
「きゃっ!」
ところで誰かとぶつかった。
「わ、悪りぃ!大丈夫か?」
思わず足を止めて、しりもちをついた相手に謝る。
「いたたた……。気を付けて下さいよもう、ってヒキタニセンパイ?」
ぶつかったのは、やや赤みがかった髪に真面目そうな眼鏡、そして俺の知る中で一、二を争うおっぱいの持ち主。
都合が良いのか悪いのか、赤城瀬菜その人だった。
五更たちの方に目をやると、すでに二人の姿は見えなかった。
仕方ない。本来の目的を果たすか。
俺は赤城に手を差し伸べた。
「チッ、肝心なところで出て来やがって」
「ちょっ、いきなり突き倒された挙げ句に舌打ちされましたよ!?何なんですかこの人!?」
「いやスマン、つい本音が出ちまっただけだ。全面的にこっちが悪い、謝罪する」
「本音って言った!実は全然悪いと思ってないでしょう!?」
言いながら助け起こしたところで由比ヶ浜が追い付いた。
「ヒッキー、どうしたの急に……って、あれ?」
すでにターゲットと接触していたことに面食らったらしい。目をぱちくりさせていた。
「ヒッキー、なんで手つないでるの?」
「そこかよ。転ばせちまったから助け起こしただけだろうが。何?ナンパしてるようにでも見えたの?俺がナンパして上手くいくとでも思ってんの?」
「ちがくて、ちょっと羨まし……って嘘!間違い!なんでもない!」
「嘘なのか間違いなのかなんでもないのかはっきりしろよ。何?羨ましいの?」
「だ、だからちがくて!」
「女同士なんだから手くらい頼めば繋がせてくれんだろ。いちいち騒ぐようなことか?」
「……あー、うん、そだね」
「なんで露骨に適当になってんだよ」
何故か遠い目で答える由比ヶ浜は一旦脇に置くことにして、ふと気が付くと、赤城が俺達にじったりとした視線を向けていた。いかんいかん。ついほったらかしてしまった。
「スマン、ちょっと話があるんだが……」
「あたしからも聞きたいことがあるんですがいいでしょうか?」
赤城が俺の言葉を遮る形で発言する。
その語気は強く、拒否を赦さない。
「お、おお。いいけど……」
迫力に飲まれ、つい許諾してしまった。
赤城は、では、と置いてから由比ヶ浜を厳しい目で見据えながら口を開いた。
「そちらの方は誰でしょうか?」
なんでそんな敵意満々なの?
由比ヶ浜を見るがきょとんとしている。心当たりはなさそうだ。
「……こいつは由比ヶ浜結衣。クラスメイトだ」
とりあえずそのままを答える。だが、それでは赤城は納得しなかったらしい。
「この前来た時も一緒でしたよね。まさかと思いますけど……浮気ですか?」
険しい表情で、そう追及してくる赤城瀬菜。
……何を言ってるんだこいつは。
突然由比ヶ浜に襟首を掴まれ激しく揺さぶられる。
「ひ、ひひひひヒッキー!うわうわうわ浮気ってどういうこと!?もしかしてこの娘と付き合ってんの!?」
「放せ揺らすな何言ってんだお前は……ちょっマジやめてホント吐く」
どうにか由比ヶ浜を振りほどいく。うう、気持ち悪い。
「んで、どういうことだ?百歩譲って俺と由比ヶ浜がそういう関係だったとして、それがなんで浮気になる?」
吐き気を抑えて赤城に質問する。何の話なのか本気でわからない。由比ヶ浜が後ろで「やだ……そういう関係とか……」とか言いながらくねくねしてるけど気にしない方向で。
赤城は断罪者の顔で決定的な言葉を放った。
「ヒキタニセンパイ、葉山センパイという彼氏がありながら何故違う女の子とイチャイチャしてるんですか!」
……何を言ってるんだこいつはアゲイン。
一体俺がいつ由比ヶ浜とイチャイチャしてたというんだそこじゃありませんよねわかってますちょっとした現実逃避です。
そういやそうだよこういう奴だったよ!あまりに嫌すぎて記憶の底に封印してたよ!
「ひ、ヒッキー……?隼人くんと……そうだったんだ……」
「おい待て、あっさり信じるな。泣くほどイヤなら想像とかしてんじゃねえ」
「ヒキタニセンパイ!なんでよりによって女の子なんですか!言語道断ですよ!」
「お前はちょっと黙ってろ!」
「ゴメンねヒッキー、気がつかなくって……。あたし、応援できるようにがんばるから……そうゆうの姫菜が詳しいから相談にのってくれるように頼んどくね」
「やめてお願い引き返せなくなっちゃう!」
「お兄ちゃんにあたしのこと聞いたんですか?」
赤城は大きな瞳をぱちくりさせて疑問の声を上げた。
「うん。実は赤城さんのクラスの五更さんのこと相談したくて」
「あ……この前来てたのって」
それだけで察したらしい。話が早くて助かる。
「ま、そういうことだ。とりあえず一人話し相手ができるだけでもずいぶん変わると思うんだが、頼めないか?」
そう言うと赤城は、顎に指を当てて考える素振りを見せる。
「無理ですね。あたしはともかく五更さんのほうにその気がないですから」
「そこをなんとかできないかな?」
由比ヶ浜が手を合わせてお願いのポーズをとる。すると赤城は、イタズラを思い付いた子供のようにニヤリと笑った。
「んっふっふっ。ご安心ください。あたし、ゲーム研究会に入ってるんですけど、実は五更さんもゲー研なんです」
「それは知ってる。だからお前に頼んでるわけだし」
「なら話が早いです。任せてください。部活を通じてキッチリ真人間に更生させて見せますから」
赤城は得意顔で胸を叩く。
「あたし、ああいうちゃんとしてない人って大嫌いなんですよ。正直五更さんが入部したって聞いたときはうわっ、て思ったんですけど、考えてみたらこれってチャンスですよね」
腕が鳴ります、と赤城は眼鏡を光らせた。
「今日これから新勧会っていうのがあるんです。実はまだ部活では五更さんと顔を合わせてないんですけど、こうなったらもう逃がしませんよ」
「どう思う?」
そう、由比ヶ浜が呟くように聞いてきた。
赤城瀬菜は意気揚々と部活に向かい、俺と由比ヶ浜も教室に鞄を取りに戻ってから部室へ向かった。その途中の言葉である。
「赤城さん、上手くいくかな?」
「無理だな」
即答した。
赤城は更生という言葉を使った。この段階でアウトだ。
ぼっちは、というより少数派に属する人間は、自分と異なる価値観というものに対して柔軟だ。少なくとも、自分とは違うから、という理由でむやみに排除しようとしたりはしない。
これは少数派の人間が温厚だとか、性格が良いとかそういうことではない。そんなことをすれば自分自身が排除されることを知っているからだ。
少数派とは基本的に排除される側だ。故に、身を守ることにかけては過剰と言えるほどに慎重になる。
正面切って誰かを攻撃すれば、次は自分が的になる。
そう。少数派の人間は、正面から他の価値観を否定することはない。
自分には無かった概念であっても「そういう考え方もあるか」と受け入れることができるし、理解できないものでも不干渉というスタンスで許容できる。
また、どうあっても受け付けない価値観とぶつかった場合でも、正面から戦うことはない。そんなことをすれば叩き潰されるのは分かり切っているからだ。
嫌がらせをするならあくまでもこそこそと。
表では仲間の振りをして、決して顔を明かさず、正体を隠しながら。それが鉄則だ。
そんな少数派ではあるが、例外が一つだけある。
それは、自分の価値観を正面から否定された場合だ。
価値観の否定は精神的な拠点侵略である。故に、敗走は即滅亡となるため、一時的な撤退すらも許されない。
それを知っている者ならば、例えどれだけ絶望的な敵であろうと戦わざるをえないのだ。
少数派同士の小競り合いならば、そんな状況は滅多に起こらない。
その危険さを理解している、いわゆるマナーをわきまえた者が多いのも勿論だが、それ以上に、自己保身に特化した人間がほとんどだからだ。そうした人間は、誰かの正面に立つような愚は犯さない。
だが多数派は違う。
多数派に属する人間にとっては自分達の価値観こそが絶対の正義であり、それ以外の価値観は悪となる。その悪性を『善意』でもって正そうとするのだ。
多数派の人間は、自分達は正しい。だからみんな自分達と同じになろうと価値観を押し付ける。そして彼らは、それが相手の価値観を否定していることに気付かない。
彼らにとって少数派とは、存在することを『許してやって』いる相手であって、『認めてやってる自分優し~!』と悦に浸るためのツールでしかない。
彼らは自己保身を考えない。絶対的強者である彼らには、保身を考える意味がない。
仮に絶対に相容れない価値観とぶつかったなら、数という最強の矛をもって一方的に磨り潰すのみだ。理解しようとする必要すらない。
彼らは多数であるが故に正義とされ、正義であるが故に自分達の正しさを疑わない。
数が正しさの保証足りえないにも関わらずだ。
なお、これに例外は存在しない。少数派の価値を認めた段階で、そいつは多数派から外れるからだ。
その理屈でいくと、由比ヶ浜や葉山なんかは『多数派のふりをした少数派』ってことになるがまさしくその通りと言える。
実際この二人みたいな本物のお人好しは、探したところでそうそう見つかるものではないだろう。
由比ヶ浜も赤城が成功するとは思っていないのだろう。
俺の言に特に反論することもなく、ただ小さく息を吐いた。
「高坂京介について調べてきたわ」
部室にはいつもの如く雪ノ下がすでに居て、俺と由比ヶ浜がいつもの椅子に座るなり、そう切り出した。
「って、昨日の今日だぞ。早すぎんだろ……」
「すでに名前までわかっているのだからこんなものでしょう」
澄まし顔で言っているが俺には分かる。ちょっと得意になってる。
「それで、どんな人なの?」
「そうね……とりあえず噂レベルの情報だということは念頭に入れておいて」
由比ヶ浜が聞くと、雪ノ下はそう前置きしてメモ帳を開いた。
「まず、幼馴染みの恋人がいる。ただ、当人は恋人であることを否定している。これは昨日赤城先輩から聞いた通りね」
本人は違うと思っているが周りからはそうとしか見えない間柄。つまりはラブコメ物でありがちなテンプレ幼馴染み関係ということか。
とりあえず包丁でも用意するべきかな。
「ただし、恋人関係を否定した直後に、その幼馴染みに恋人ができることは許さないと発言しているわ」
……なにそれ。
「……なにそれ」
由比ヶ浜が異口同音に声を上げる。いや、俺は口に出してないが。て言うか由比ヶ浜さん、顔が恐いっすよ。
「自分はその人と付き合う気はないけど、他の男がその人とくっつくのは許せないってこと?」
言葉にするとあらためて最低だなオイ。
雪ノ下は重々しく頷き続けようとするが、メモに目を落として一瞬硬直した。心なしか顔が赤くなってる。
「また、その幼馴染みの家に、その……宿泊、することもあるらしいわ」
…………いかん。俺達とは次元が違いすぎる。
由比ヶ浜も唖然として何も言えずにいる。
「……あー、その、幼馴染みなんだろ?泊まるつってもガキの頃の話なんじゃねえか?」
「確認された中で一番最近の例は去年の10月だそうよ」
……真っ黒ですやん。
今度は由比ヶ浜が口を開く。
「……相手の人って一人暮らしなの?」
「いいえ。ご両親と弟、祖父母と暮らしているようよ」
マジですか。それで彼女の家に泊まれるとかどんな心臓してんだよ。
「ていうか、家族公認の彼女居んのに浮気してるわけ?サイテー……」
これはもはや庇うこともできない。いや元々庇う気もないけど。
「さらには近くの……」
「ちょっ、待った!まだあんのか!?」
「こんなの序の口よ。近くの公園で中学生の女の子に脅しをかけていたという噂もあるわ」
「お、脅し?てか中学生って……もしかして五更のこと間違えたのか?あいつ小柄だしそういう可能性も……」
「いえ、特徴を聞いた限りだと別人のようよ。制服も違っていたようだし。どうもいやらしい格好をするよう強要されていたらしいわ」
「……サイッテー」
由比ヶ浜が吐き捨てるように呟く。
「この公園ではよくこの二人が見かけられるみたいね。何か弱味でも握られてるのかもしれないわね」
「……よく見かける?てことは他にも?」
「ええ。その娘とまた別の女の子の三人で修羅場のようになってたこともあるらしいわ」
登場キャラまだ増えんのかよ!
「……それ、あたし知ってるかも」
由比ヶ浜がぼそっと漏らす。
「あたし、サブレ……えっと、犬の散歩でよくその公園行くんだけど、去年の夏休み終わって少ししたくらいだったかな。なんか女の子二人がすごいケンカしてて、それで男の人がなんかすごいこと……アレ?」
「オイ、途中でやめんな。どうしたんだよ。忘れたのか?」
「いや、なんかこう……高坂?」
由比ヶ浜はおもむろに鞄を漁るとファッション誌を取り出しパラパラとめくりだした。
「おい、ホントどうしたんだ?」
「いや、ちょっと……やっぱ無い!ヒッキー、スマホ貸して!」
「お、おお……」
こちらの返事も待たずにひったくると、スマホを操作してブラウザを立ち上げる。
「何調べてんだ?」
「バックナンバー。たしか……この表紙……うん、思い出した。これに……あった!」
由比ヶ浜がスマホに表示された写真を見せてくる。
そこには雑誌で紹介されてる服をバッチリ着こなした、俺達より少しだけ年下と思われる二人の少女。
一人はおそらく染めたものであろうライトブラウンの髪にヘアピンを留めた、快活そうな笑顔の少女。
もう一人は、しっとりとした黒髪に控え目な笑顔が印象的な、真面目そうな雰囲気の少女だ。
二人ともとんでもない美少女だった。雪ノ下で美人に慣れてなかったら惚れてたかもしれない。
由比ヶ浜がその内の片方、茶髪の娘を指して叫ぶ。
「この子だよ、絶対!あの時公園にいたの!」
「ハ、ハァ!?」
「それで、男の人がこの子のこと抱き締めて『俺は妹を愛してるんだー!』って大声で叫んでた!」
妹展開キターーーー!!!
慌ててプロフィールを確認すると確かに『高坂桐乃』とある。しかもコメントにはお兄ちゃん大好きときたもんだ。おのれ……なんて羨ましい……!
あまりの超展開に雪ノ下も目を見開いている。
「つ、つまり、こいつ妹にまで手ぇ出してるってこと?」
「……残念ながらまだ終わってないわよ」
「マジで!?」
「さっきの妹発言のインパクトが強すぎて印象が薄れてしまったけれど、彼の噂はまだ残っているわ。聞きたい?」
俺は、ごくりと喉を鳴らして頷いた。
曰く、エロゲーキャラがプリントされた痛チャリで深夜の街を疾走していたらしい。
曰く、新発売のエロゲーを買いにわざわざ秋葉の深夜販売の行列に並んでいたらしい。
曰く、レンタルルームを『高坂京介専属ハーレム』の名前で借りて、複数の女の子を連れ込みメイドのコスプレをさせていたらしい。
曰く、クリスマスに妹とデートして外泊までしたらしい。
曰く、駅前のスタバで年下の女の子と修羅場って泣かせていたらしい――これは情報が古くてはっきりしないが、どうもこの女の子というのは妹っぽい。
出るわ出るわ。
よくこんだけやらかしたなってくらいワケわからんエピソードが大量に。
いやもう尊敬するわ、嫌味抜きで。
だが約二名の女子には甚だ不評だったらしい。
雪ノ下は元々自分で調べてきた物だからあまり変化はないが、由比ヶ浜の方が何と言うか眼に光が無い。
怒りのあまり、俯いてぶつぶつ何事かを繰り返すだけのモノと成り果てている。
「とりあえず、さっさと拘束するべきね」
「待てオイ。お前最初に自分で噂だって言ってたろ」
「こんな噂が流れてる時点でロクな人間ではないのは確実でしょう」
それはまあ、一理あるが。
「だからっていきなり逮捕ってわけにゃいかんだろ。警察だって逮捕状が必要なんだぞ?」
「比企谷くん、どういう……」
「ヒッキー……なんで庇うの?」
雪ノ下のセリフに被せる形で声が響く。
由比ヶ浜のその声にいつものような明るさは微塵もなく、その瞳と同じくただひたすらに虚ろだった。
「ねえ、なんで?あんなやつ守る価値なんかないよね?もしかしてヒッキーもあいつと同じなの?そんなのやだよねえヒッキーなんとか言ってよねえヒッキーなんとか」
「怖ぇーよ!正気に戻れ!レイプ目やめろ!いいか?俺らが請けた依頼は五更の立場の改善だ。高坂京介は確かに女の敵っつーか男の敵でもあるが、とにかくこいつの成敗は別問題だ。わかったか?」
「正確には五更さんの対人関係を把握して、問題があるようなら解消することよ」
「わかってんなら暴走してんじゃねえよ質悪ぃな!」
ったく、大声出したのなんか何年ぶりだ?なんか異常に疲れたぞ。
「わかったわ。高坂京介のことはひとまず置いておきましょう。その代わり、五更さんの件が片付いたら徹底してやらせてもらうわ。由比ヶ浜さんも手伝ってくれる?」
「うん!任せてゆきのん!」
目に光の戻った由比ヶ浜が力強く頷く。
言っとくが俺はやらんぞ。殺人に関わる気なんてないからな。
「あなたもくるのよ。拒否権は無いわ」
……やらないって言ってんのに。