「それで、この出歯亀男は何者なのかしら?」
雪ノ下雪乃は、部室の真ん中で正座させられている真壁楓を冷たく見下ろしながら、そう言った。どうでもいいけどなんで俺まで正座させられてんの?
俺は雪ノ下の疑問に端的に答えた。
「こいつは真壁。同じクラスでゲー研部員だ。今回の件で協力を取り付けたから、その説明の為に来てくれるように頼んどいたんだよ」
「お願いしたのはあたしだけどね」
そうなんだよ。この野郎、俺が頼んだときは散々渋ったくせに、由比ヶ浜が頼んだら一発でOKしやがった。そんなに巨乳が好きか。俺も好きです。
「……なるほど。つまり比企谷くんが覗きの手引きをしたということね」
「話聞いてた?説明の為に呼んだだけで、しかも頼んだのは由比ヶ浜だよ?覗きはあくまでも真壁の個人的な趣味だからね?」
「いや庇ってくださいよ!?そんな趣味ないですから!変なタイミングで入っちゃったのはただの事故ですから!」
悲鳴を上げて自己弁護する真壁を、しかし雪ノ下は冷たいままの眼で睨めつける。
「たとえ本当に事故だったとだとしても、ノックの返事も待たずに部屋に入るというのはどういうつもりなのかしら?マナー以前に常識を疑うわ。状況次第では訴えられてもおかしくないと思うのだけれど」
「それは……その、すみませんでした」
「……もういいわ。次からは気をつけるように」
ようやくお許しが出て、膝の埃を払いながら立ち上がる。やれやれ、酷い目にあった。
「比企谷くん。あなたに立っていいと言った覚えはないのだけれど。一体誰の許可を得て足を崩しているのかしら」
「待てオイ。実行犯が解放されてんのに、なんで巻き込まれただけの俺が正座続けなきゃなんねんだ。理由を分かりやすく説明してみろ」
「私がなんとなく気に入らないからよ」
「理不尽だけど分かりやすい!」
なんとなくって言っちゃってるよ!俺Mとかそういう性癖無いんでやめてほしいんですけど。
「……で、お前はさっきから何やってんの?」
正座している俺の隣、よりもやや後方で、膝を抱えるような形でしゃがみこんでいる由比ヶ浜に疑惑の視線を投げる。その格好、あとちょっとでパンツ見えるぞ。
由比ヶ浜はなんというか、そわそわした様子である一点を凝視している。
「……ねえヒッキー」
「なに」
嫌な予感しかしないんですが。
「突っついていい?」
「ダメ」
「えい!」
「うぎょろべ!?」
足の痺れを紛らわすために転げまわる。ダメって言ったよね!?ねぇ!?
「何……しやがる……!」
「あはは……。ゴメン、つい」
「ついじゃねえ!お前だってこれの辛さぐらい知ってんだろ!?自分がやられて嫌なことは人にするなと「えい!」ぎゃわばら!?」
再び床を転げまわる俺。
雪ノ下が常に清潔にしているとはいえ、わざわざ転がりたいとは思わないのだが、そんなことは気にしてられない。のたうちまわる俺を見下ろす由比ヶ浜が、頬が紅潮していてちょっと色っぽいとか思う余裕も無い。
少しでも刺激を抑える為、うつ伏せてエビ反りになって足を持ち上げる。その状態のままヒクヒクしている俺に、呆れたような声が振りかけられる。
「……何をやっているのあなたは。お客がいることを忘れているの?」
「あはは、ゴメンゆきのん。面白くって、つい」
だからつい、じゃねえだろ。雪ノ下じゃなくて俺に謝れ。それと雪ノ下さん、なんで単数形でしかも俺に言うんですか?
「まったく……TPOをわきまえなさい。次は私がするからそれで最後にするわよ」
「えー?ゆきのんズルい!」
「ズルいとかそういう問題じゃねえ!TPOわきまえろとか言っといてなんで続けようとしてんだよ!?お前こそわきまえろ!」
頬染めてそわそわしてんじゃねえよ!……可愛いって卑怯だよな。
「……仕方ないわね。まずは話の方を片付けてしまいましょう。比企谷くんはそれまで正座を続けるように」
「するかっ!」
「えー?やってよヒッキー。ホラ、ゆきのんあんなに残念そうにしてるよ?」
「そう思うんならお前がやってやれよ」
実際、雪ノ下は哀れみを誘うほどにガッカリしている。
なんなのこの娘。そんなに俺が苦しむところが好きなわけ?愛?愛なの?そんなものが愛だと言うのなら、俺は愛など要らぬ!
退かぬ媚びぬ省みぬの精神で今度こそ立ち上がる。だから残念そうにしてんじゃねえよ二人とも。
「あのー、そろそろ僕のことも思い出してほしいんですけど……」
部室の隅で所在無さげに佇んでいた真壁楓が、ボソリと小さく呟いた。
「つーわけで、ゲー研の方でなんか動きがあったら伝えてもらえることになった」
俺はもう一度日曜にあったことを簡単に説明し、三浦先輩に協力を取り付けたことを二人に伝えた。
まあ、逆にこっちで何かあった場合はゲー研に連絡することになってるのだが、現状そっちのパターンが起こる可能性は限りなく低い。なにしろ問題の中心となる人物は一人残らずゲー研側だし。
だからこの条件は三浦先輩の気遣いなんだろう。……ウチのクラスの三浦さんも見習ってほしいものだ。
雪ノ下は話の内容を確認すると、小さく頷いてから真壁に向かって丁寧に頭を下げた。
「ご協力感謝します。後日改めてお礼に伺うと、そちらの部長にもお伝えください」
「い、いやいやいや!お礼とか別にいいですから!ホラ、部長とか基本ノリだけで行動する人ですし」
真壁は真っ赤になって謙遜している。別に真壁個人に感謝したわけではないはずだが、まあ美人慣れしてるようにも見えんしな。
「それで、昨日早速ゲーム作りのこと説明するって話だったけど、どうなったんだ?」
「あ、はい。部長が二人を説得して、コンテスト用のゲームを一本作ってもらうことになりました。それで二人がそれぞれ制作中のゲームのどちらかを、という話になったんですけど……」
「今度はどちらのゲームを作るかで揉めだした、と」
雪ノ下の言葉に真壁はハイ、と頷く。昨日赤城が言ってたのはそれか。
「それで今度プレゼンを開いて、二人にそれぞれの作品をアピールしてもらことになったんですけど……」
そこで真壁が口ごもった。
「どしたの、真壁くん?」
由比ヶ浜が先を促すが、真壁の表情は晴れない。
「今日の部活でついさっきのことなんですけど、その……高坂先輩が、あ、最近ゲー研に入部した先輩なんですけど、その人が、って、え?」
高坂京介の名前が出た途端に殺意の波動を放ち始めた女子二人に真壁がビビる。
そういや五更と赤城についてばっかりで、奉仕部内での高坂京介の評判が最悪だってのは話してなかったな。
真壁は助けを乞うように、俺に説明を求めてきた。
「あ、あの、どうしたんですか?この二人……」
「まあ色々あってな。それで、高坂先輩がどうしたんだ?」
「ええと、その……エロゲー作ろうとか言い出しまして」
「…………What?」
何を言っているのか分からない。あまりに意味不明な発言に、雪ノ下と由比ヶ浜も目を白黒させている。
「……えーと、なんだ。え?何それ?」
「今度応募する予定のゲームコンテストなんですけど、ジャンル毎に分けて評価されるんですよ。RPGとかSTGとか。当然応募数にも偏りがあって、人気のあるジャンルでは賞を獲るのが難しくなります。そこで、比較的賞の獲りやすいジャンルを狙おうと言い出して……」
「その狙い目のジャンルがエロゲーってことか」
「はい……」
疲れたように頷く真壁。
まあ、筋は通ってるよな。
部活なんか生徒全員強制参加の学校とかでもない限りは、基本自分の趣味に合わせて入るもんだ。
つまり五更も赤城もゲーム好きで、しかもプログラミング経験者ってことは、元から作る方に興味があったってことで。
そういう奴がコンテストに参加するとなれば、良い成績を残したいと思うのはごく自然なことだろう。だから少しでも競争率の低いところを、というのはおかしくも何ともないことだ。
雪ノ下あたりなら小賢しい小細工、とでも言うかもしれないが、俺はそうした部分も含めて努力だと思う。
つまり何が言いたいかというと、高坂京介の言い分は正しい。正しいんだが……
「……それ、後輩の女の子にエロシーン書けってことだよな?」
「そうなんですよ……」
またかよ。最高すぎんだろ高坂先輩。
思わず師匠と崇めてしまいそうだ。絶対やらんけど。
「それ、ただのセクハラじゃん!」
由比ヶ浜が非難の声を上げる。まあ当然の反応だな。
雪ノ下は無言だが、プレッシャーがね、もう木星帰りかってくらい圧倒的。オールドタイプにも伝わっちゃうとか凄すぎだろ。
「まあ落ち着け。そんな意見通るわけねえんだから。んで、結局何作ることになったんだ?」
「それがその……18禁ゲームで行こうってことになっちゃいまして……」
「オイッ!?」
「いや、僕は反対したんですよ!?でも部長がノリノリで五更さんまで賛成しちゃってそういう流れになっちゃって!だから雪ノ下さんも由比ヶ浜さんもその汚物を見るような目をやめてください!」
いや、その視線は順当なものだと思うぞ?
賛成に回ったという部長はもちろんだが、止めなきゃならん立場であっさり見過ごした真壁も同罪だ。
しかし今のセリフで重要なポイントはそこではないだろう。
「五更が賛成したってのはどういうことだ?」
俺の言葉に由比ヶ浜が表情を変える。今気がついたらしい。
セクハラされる側がそれを受け入れるというのは、普通に考えればまともではないだろう。
高坂京介に対してネガティブな印象を抱いている俺達としては勘繰らざるをえない。精神的な拘束、いわゆる脅しとかそういうのをだ。
「単純に、それで成績が良くなるなら、って言ってましたね。あとは高坂先輩に対する信頼でしょうね。五更さんもかなり恥ずかしそうにしてましたけど、高坂先輩の言うことなら何だかんだで聞きますから」
真壁の言葉に、雪ノ下と由比ヶ浜はヒソヒソと何ごとかを話し合う。女子のヒソヒソ話ってトラウマ刺激されるからやめてほしいんだけど。
にしても信頼ねぇ……。五更の話でそんな単語が飛び出すとは思わなかった。
「しかし18禁ゲームか……。五更にそんなもん書けんのか?」
赤城の方は平気な気がするけどな。ジャンルは偏りそうだが。
「その辺りは大丈夫なんじゃないですかね。五更さんもまるきり経験ないってわけじゃないみたいですし。あ、18禁モノの創作って意味ですよ?男性の身体には知識が無いと言ってましたけど、高坂先輩が手伝うって言ってましたし」
「ふーん……おい、それまさか『作画資料を提供してやるぜフヒヒヒヒ』とかそういうことか?」
ガタン!と顔を青ざめさせて由比ヶ浜が立ち上がる。
それを見た真壁が慌てて否定した。
「い、いやいや!そんなんじゃありませんから!多分!五更さんだってその辺りはちゃんと拒絶してましたから!」
……拒絶したってことは、それらしいことは言ったってことか?あと今多分って言ったよな?
取り乱す由比ヶ浜に、雪ノ下が声をかける。
「由比ヶ浜さん、落ち着いて」
「でも!」
「とりあえず高坂京介について、一年生を中心にセクハラ先輩という噂を流しましょう。少なくとも、それで今後新たな被害者が出ることは防げる筈よ。……由比ヶ浜さん、お願いできるかしら?」
「……うん!分かったゆきのん!」
雪ノ下の要請に決意の表情で頷く由比ヶ浜。
激しく動揺してる者でも、明確で分かり易い目標を与えてやれば冷静さを取り戻す。なんつーかさすがだ。
そしてこれで高坂京介が後輩から告られるイベントは、可能性のレベルから摘み取られたわけだ。ザマミロ。
そんな二人を見ていた真壁が、何かを恐れるように俺に耳打ちしてきた。
「あの……あの二人、もしかして高坂先輩のこと嫌いなんですか?」
「まあ、ちょっとな……」
説明できない、というか説明するのが面倒くさいので適当に誤魔化した。
二人の様子に、やや怯えた風に真壁が退室したあと。
今度こそ放っては置けないと、急遽、高坂京介対策会議が開かれた。
「絶対ヤバいって高坂って人!高校の部活で、その……Hなゲーム作れとか、どう考えても普通じゃないじゃん!」
「全面的に同意ね。手近な女性に捻じ曲がった劣情をぶつけているとしか思えないわ。少なくとも真っ当な神経の持ち主なら有り得ない発想よ」
「五更さんも幼馴染みさんも騙されてるんだよ絶対!こんな変態好きになるとかどう考えたっておかしいもん!ヤダもうマジキモい!ヒッキーよりキモい!」
「きっと妹さんにも無理矢理破廉恥なゲームを押し付けて一緒に遊んだりしているのでしょうね。吐き気がするわ」
高坂先輩フルボッコの巻。二人揃って思い込みだけで滅茶苦茶言ってます。ところで由比ヶ浜、俺を引き合いに出す意味ってあったの?
いや、俺も別に庇うつもりは無いんだが、周りがこうヒートアップしてるとどうしても冷めちまうというか。
高坂京介の最初の印象が悪すぎたせいか、二人とも冷静になるのが難しいらしい。特に雪ノ下なんか、面識の無い相手を『きっと』でああまで罵倒するというのは、普段ならそれこそ有り得ないだろう。
「とりあえずちょっと落ち着けお前ら」
「ヒッキー?」
「比企谷くん?」
「五更が誰を信用してようが、それは俺達が口出しすることじゃねえだろ。もう高校生なんだし、その辺の判断くらい自分で出来んだろ」
「……あなた何を言っているの?五更さんを見捨てるつもり?」
「そうだよヒッキー!このままほっといて手後れになったらどうすんの!?」
「放っとくとは言ってねえだろ。俺が直接話してくるよ。五更か、高坂京介と」
翌日の昼休み、俺は五更を探して裏庭へ向かっていた。
一応、先に三年の教室も覗いてみたのだが、高坂京介の姿は見えなかったので、もうそういう星の下に生まれたものだと思うことにした。
……なんで行き先を聞かなかったのかって?
俺を誰だと思ってる。見知らぬ上級生に話しかけられるわけないだろうが。
初心忘れるべからず。押して駄目なら諦めろだ。
話をつけてくるという俺に、二人ともかなり食い下がってきた。主に、俺にコミュニケーションがとれるのか、ということで。
まあ確かにこういうことなら普通は由比ヶ浜の出番なんだろうが、五更とまともに話したことあんの、この中じゃ俺だけなんだよな。
それに由比ヶ浜は五更とは相性悪い気がする、なんとなく。雪ノ下は論外だしな。
それにあんな噂が飛び交ってる男に女子を差し向けるわけにもいかんし。……言っとくがこれはあくまでもついでの理由だぞ。ハチマンウソツカナイ。
五更瑠璃は、以前俺と話したベンチで以前と同じように座っていた。
「よう」
「……どうも」
五更は何時かと同じように、無表情に俺を見上げてきた。
今度は前置き抜きで隣に腰を降ろす。五更は一つため息を吐くと、弁当箱に蓋をした。
「……またお昼を食べる場所を探していたのかしら?」
「まあそんなとこだ」
「陰でこそこそ嗅ぎ回っているようね。なんのつもり?」
五更が鋭く睨みつけてくる。敵意を隠そうともしないのは個人的に非常に好感が持てる。
さて、こいつと高坂京介が本当はどういう関係なのか。
少なくとも、健全な付き合いなのかどうかだけでも確認する必要があるわけだが、どうするか。
「お前って、高坂京介と付き合ってんの?」
ゴト
「おい、弁当落としたぞ」
「と、とととととつでん何を言い出すのかしらこの男は。何故この私があんな人間の雄と契りを結ばなければならないの?そういうことはまず連理の誓いと比翼の契約を交わし光の属性へ
動揺しすぎだ。途中から何言ってるか分かんねえし。あと契りとか俺そこまで言ってないよ?
「ちっと落ち着け」
俺は五更が落とした弁当箱を拾いながらそう言った。
幸い蓋が開いたりはしてない。中身までは分からんが多分大丈夫だろう。少なくとも食えなくはない筈だ。
「わ、私は落ち着いてるわ。一体何を根拠に私が動揺してるなんて思ったのかしら。というか何故あなたが先輩のことを知っているの?繋がりがまるで見えないのだけど」
別に繋がりってほどのもんでもねえんだけどな。マジで。噂話と顔を知ってる程度。
「根拠もなにもどもりすぎだ。なぁ、お前高坂先輩のどこが好きなの?」
「だ、だから!私は別に先輩のことなんて」
「セクハラ大王なんだろ?」
「え?」
五更は一瞬きょとんとしてから、取り直したように同意して見せる。
「そ、そうね。発情期の狗と変わらない、呆れた雄よ。まったく、年下の女と見れば見境なく手を出して……」
「ふーん、二股疑惑は本当なんだな。他にも居るっぽいけど。エロゲマニアってのも聞いたんだが?」
「ま、まあエロゲーはあの男のライフワークと言って良いでしょうね。ところで二股とか他の女とやらのことを詳しく……」
「つくづくろくでもねえんだな。こりゃ妹にまで手を出してる鬼畜野郎ってのもマジなのかもな」
「……ええ、そうね。先輩は実の妹を心の底から愛して止まない変態よ」
「ああ、やっぱそうなんだ。シスコンを自認する俺でもさすがに引くわ」
「……」
「いやマジ引くわ。妹相手に二股とか有り得ないっしょマジで。変態鬼畜先輩マジパナイわ。どうせ二次元相手にマジ恋愛してるような痛い奴なんだろ?ホントこんな奴」
「黙りなさい」
低く、暗く、重い声が響く。
見れば堕天聖黒猫がドス黒いオーラを放ちつつ、ドドドドドッ!とジョジョっぽい書き文字を背負っていた。つーか超コエー。
「さっきから黙って聞いていれば、一体何様のつもり?あなたが先輩の何を知っているというの?」
いや、黙ってはいなかったよね?
どうやら、とか言うまでもないようだが、ようやく怒ってくれたらしい。バカの真似までした甲斐があった。
俺と五更は大して親しくもない。そんな相手から本音を引き出すにはどうすればいいか。
方法は色々あるだろうが、手っ取り早いのは怒らせることだろう。
怒りは容易に本音を引き出す。後は黙っていても勝手に喋ってくれる筈だ。
「いいこと?先輩は確かにシスコンの変態よ。でもそれが何?妹を愛するのは家族として当然のことでしょう。それの一体何がいけないというの」
その辺はまったくもって同意見だ。もしかしたらこいつも妹いるのかもな。
それはともかく相手のことを何も知らないまま盲信しているわけではないらしい。
「二股?あの男にそんな甲斐性あるものですか。大方いつものノリで誰かを助けて過剰に感謝されていたんでしょうよ。まったく、あの雄はいつもいつも……」
……助けて?
「大体エロゲーの何が悪いというの。思春期の男なのだから性欲くらいあって当然でしょう。私だって好きなアニメのキャラで妄想するのは日々欠かさないわ」
あ、こいつもバカなんだ。気付いてないみたいだけどトンでもねーこと口走ってんぞ。
「いい?よく聞きなさい。私はね、彼が妹の為に無様晒して必死になって駆けずり回る姿を見て好きになったのよ。それを侮辱するというのであれば、たとえ誰であろうと赦しはしないわ」
五更は真っ直ぐに俺を睨みつけてそう言った。
その瞳に宿る物は、揺るぎなき信念。
俺は、知らず気圧されていた。
「……オーケー。俺が悪かった」
アメリカ人のように両手を上げて降参のポーズを取る。どうもこいつとは相性が悪いらしい。やっぱ由比ヶ浜に任せりゃ良かったかな。
「……ふん。もう余計な真似はしないでもらえるかしら。不愉快だわ」
「了解。他の二人にも言っとくわ」
俺は立ち上がりその場を後にする。五更はこちらを見る事もなく食事を再開していた。
……さて、奉仕部の依頼はこれにて完了だ。高坂京介の人格についての確認は取れなかったが、五更なら大丈夫だろう。
……あいつらになんて説明すっかなあ。