思いつき短編集   作:先詠む人

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前にTwitterでアンケートを取ったやつの最後になります。

題材は艦これです。
てか、これコンセプトにしたのが思ったよりもクソ難しかった。
続きかくの大変だと思う。いやマジで。


狭間

 海面(そら)が高い。

 

 演習の際に何故か混ざっていた実弾の砲撃を受けて大破どころか轟沈判定レベルの傷を負ったオレの体は沈んで行っていた。

 

 無意識のうちに光指す海上の方へ手を伸ばす。

 手袋が外れてしまったその手は傷だらけだけれども見た目相応のみずみずしさを持った少女の手だった。

 

(あぁ、なんで俺沈んでんだろう。殺し合い強制させられてんだろう。)

 

 端からどんどん欠けていく視界の中でふと思う。

 

(なんで俺はオレになったんだろう………)

 

 そう思いながら真っ暗になった世界の中に映ったのはあの日の記憶だった。

 

 

 

 体感時間自体では一月前。

 アニメイソに行ったときにそのチラシを俺は偶然手に入れた。

 

「江田島で艦これのイベント?日にちは……明日!?あ、でも明日もバイトねかったわ。よし行ける。」

 

 そうと決断したら一直線。

 家にそのチラシを持って帰り、俺はその日の夜のうちに準備をまとめた。

 

 そして翌日。

 

 広島駅の方から広島港を目指して朝早くに自転車をこいで本通りを抜ける。

 

 ごみ収集車が店先に置かれたごみを回収している本通りのアーケードを抜け、市電が走っている少し長めの横断歩道を渡らずに左へと曲がる。

 まだ朝早いのもあってドコデモの本通り店の上にある電光掲示板はその光を灯していない。

 

 季節的に冬なのもあり、自転車をこぐことで荒くなった吐息は白く、激しく口から出ている。

 

 そのまま自転車をこぎながら平和大通りを渡ったところで空が白み始めた。

 

「やべー、急がねぇと船の時間間に合わなくなる。」

 

 そう言いながらホテルや店やコンビニが並んでいる大通り沿いを自転車で走り続け、約十分後市役所の前を通過した。

 

 市役所の前を通過してなお、自転車をこぎ続ける。

 目指す場所はまだまだ先にある。

 

 通りの真反対に消防署があるのを横目に見つつ、さらに南下する。

 

 すでに空の色は紺から白へと変わっていた。

 

「よっと。」

 

 宇品へとつながる橋のすぐ近くにある信号が赤へ変わったので停止する。

 ペダルにかけていた両足を地面につけず、左足だけを地面につけて立ち体重を左に寄せ、本来ならばアウトだがスマホを操作して艦これに繋ぎ、遠征を回収する。

 

 その時、プー!!!とトラックの警笛(クラクション)が遠くで鳴っていたが音自体が小さかったのもあって無視していた。

 

 艦これで遠征を回収し終えたのと同じタイミングで待っていた信号は青に変わった。右と左を確認する。曲がろうとする車も、信号無視しようとしている車もどちらもいない。だが、後ろから継続的に聞こえているその音はどんどん大きくなっていた。

 

「?どういう事だ?こんな朝っぱらから迷惑な」

 

 スマホをジーパンのポケットに入れながらそう思い、振り返った瞬間だった。

 

 

ゴシャッ!!

 

 鈍い音とともに視界が反転する。

 そのまま宙に浮かんだ俺の視線が最後にとらえたのは目の前に迫る某社のエンブレムだった。

 

 

グチャッ!

 

 エンブレムと俺の鼻が当たったのではないかと思う距離まで近づいたとき、何かがつぶれるような音とともに俺の視界は真っ赤に染まり、そのまま今度は黒へと変わった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「しれぇ~。バニラっておいしそうな名前の海域なのにここつらいよ~。」

 

『我慢してくれ。そこにいるはずだって彼女が言うんだ。』

 

「わかったぁ~。みんな~捜索続行だって~。」

 

「えぇ~!!メンドくさっ!!」

 

「ねぇ、何度ここにきて何度あの姫級と戦わなきゃいけないの!?」

 

「まぁ、仕方があるまい。ここは腹をくくれ。」

 

「そっか~、一番提督と仲がいい時津風でもダメかぁ~。」

 

 黒い大きな破片舞い散る海の上でそう喋りながら手に持った砲塔のようなもので破片を退けつつ、海の上を進む様々な服装、髪の色の少女たち。

 

「……?これって………」

 

 その中で、薄い青のような銀髪の少女がとある破片を除けた際に何かを見つけた。

 

「こちら弥生。みんな………件の子見つけたかも。ただ、少し変だから知ってる子いたらこっちに来て。」

 

 少女、、弥生は通信機越しにそう呼びかける。

 

 弥生の視線の先には赤毛でアホ毛、そのきれいな額が割れて血を流している()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うどう見ても艦娘とは思えない出で立ちの少女が浮いていた。

 

「お待たせしました。萩風到着です……って嵐!?」

 

 弥生がその少女がそれ以上沈まないように肩を貸して引き起こしていると紫髪をサイドポニーにした少女が弥生に近づき、弥生が肩を貸している少女を見て驚いた。

 

「やっぱり?」

 

 弥生がそう聞くと、サイドポニーの少女、萩風は

 

「はい。でもなんで艤装も制服も身につけてなくて別の服を着ているの………?」

 

 首をかしげながらそう答えた。

 

ザッザザーおーい。例の嵐って子は見つかったかー?』

 

「あ、はい見つかりました。一応。」

 

『歯切れが悪いな。とにかく見つかったのなら一度帰投してくれ。こちらでモニターしている限り加賀と長門がそろそろ燃料がやばい。帰る分を考えたらこれが限界だ。』

 

「わかりました。とにかく、一度彼女を連れて鎮守府に帰還しましょう。話はそれからです。」

 

「ええ。」

 

 そう言ってから銀髪の少女と紫髪の少女は力なく項垂れている赤毛の少女を両方から挟んで肩に手を通し、海上を進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「うぅん……」

 

 おでこの辺りにチリチリするものを感じて目を覚ます。

 

「あれ?……オレ…。」

 

 そう言いながら体を起こそうとしたが、その時違和感を覚えた。(あれ?俺の声ってこんなに高い声だったか?)と。

 

 無意識のうちに喉の方へ手を伸ばす。

 

 喉には熱はない。至って普通に生きていたら発する程度の熱しか喉には熱がなかった。

 

(てっきり扁桃腺が腫れたからこんなことになってるのかと思ったんだが……というか、なんで俺は死んでないんだ?)

 

 比較的冷静に自分の状態を考えている最中にふと最後の記憶を思い出す。

 どう考えてもあの音と、体をつんざくかのように奔った痛みは重傷を負う程度で済むとは到底思えない。

 それを考えたら俺が死んでないのはおかしいと思う。

 

(訳が分かんねぇよ。)

 

 そう思いながら先ほど起こしかけた体を再び起こそうとしたときにふと視界に赤い毛の束が目に入った。

 

(赤毛…?邪魔臭いな…)

 

 元々冬でもかなり短い感じに髪を切ってもらっていた俺からしたらそんなところに毛の束があるというのはうっとうしいことこの上なかった。

 不快な感情を体全体から発しながら体を起こす。それから目にかかるその赤毛の束を除けようとしていたのだが……

 

(下に下がった?というか、この毛……俺の毛?」

 

 目にかかっていたその束は俺が体を起こすと重力に引かれるかのように視界の下の方へ降りていき、最終的に肩にかかる程度の所で落ち着いた。

 

「どういうことだ……?」

 

 そう呟きながらクルリとカールがかかったその毛をいじる。

 そして毛をいじりながら周囲を見渡そうとしたタイミングで自分の服装が白の入院着に変わっていることに気が付いた。

 

「………ここって……病院なのか?」

 

 相変わらず口から出る声のキーの違いに違和感を拭えなかったが、そのまま周囲を見渡したところで2mほどだろうか。かなりの高さがある鏡が置いてあることに気が付いた。

 

(俺の体……どうなってんだ?見るも見られない姿になってたらどうしよう…)

 

 そう思いながらベッドの上で体を鏡がある方へ回し、ベッドを降りる。

 足の裏からは突き刺さるかのような冷えが感じられ、俺が生きているということを実感させた。

 

「さむっ……」

 

 ほとんど条件反射でそんな声が出てしまう。

 

 肩をすくめたときに胸に違和感を覚えたが気のせいだろう。いや、気のせいであってほしいと内心祈りながら鏡の前に立った。

 

 現実を現実と認識できずに崩れ落ちる。

 

 鏡に映ったのは若干勝気な瞳の赤毛の子供。

 頭の上には某最終信号さんみたいにアホ毛がぴょこんと立っており、その瞳は炎を中に光らせているかのようにわずかに陰を持った赤だった。

 

 呆然と力なく項垂れたまま恐る恐る手をそこへと近づける。

 

 スカッという何も触れないときに聞こえるその音がすべてを物語っていた。

 

「嘘だろ……」

 

 結局体をあちこち触って分かったのは、あるはずの場所に息子(あるもの)がなくて、ないはずの(もの)が地味についていることだけだった。

 ついでに言うと、興味本位で胸を触っていたら地味にあるだけだというのに感度がよかったみたいで腰が抜けて動けなくなった。

 

「まずここが一体何処かっていう以前の問題で()()()()()()()()()()……」

 

 鏡の前で仰向けに倒れたまま息を荒げつつそう呟く。

 鏡に映っていた子供、いや、少女の名前は嵐。

 ほほが異常に痩せこけているものの、今のこの姿は俺と同じ名前を持つ陽炎型駆逐艦の十六番艦の()()と呼ばれる少女のものだった。

 

「あ、目を覚ましたみたいですね?」

 

 そのまま床に倒れこんだまま息を整えていると少し離れたところから声が聞こえた。

 声のした方へ視線を向ける。逆光ではっきりと姿は見えなかったけれどもこちらにやってくる人影は明石さんのように見えた。

 

 

 

 

 

 

「はい、バイタルチェック完了です。一応今日は安静にしていてね。提督にあいさつに行くのは明日でもいいでしょ。」

 

 腰が抜けて動けなくなっていた俺をお姫様抱っこで担ぎ上げて明石さんはベッドまで運び、それからいろいろと器具を使って俺の体を検査した。

 

「はぁ……。」

 

 若干こんなゆるくていいのか?と呆れながらうなずく。そんな俺を見て明石さんは

 

「とりあえず寝ておきなさい。」

 

 と言いながら布団をかけて部屋を出て行った。

 

 医務室と呼ぶには異様に重い音を鳴らしながら扉が閉まる。

 しかし、扉の向こうで明石さんが

 

「やっぱり深海棲艦に体を半分以上作り変えられていたみたいだから消耗がやっぱり激しいわね……。これ戦後解体処理しても元の生活に戻れるのかしら?しかもその上で異端個体(イレギュラー)の可能性もあるってなんでうちの鎮守府はそう言った艦娘が多いの……?」

 

 と嘆いているのが聞こえていた。

 

「イレギュラー……俺が?しかも深海棲艦にってどういうことだ…?」

 

 

 そう部屋で一人首をひねるがその問いに答えをくれる人はいなかった。

 

 

 そうして始まった鎮守府での生活は中身が男なのが原因で萩風に何度も怒られ、矯正され、最終的に他の鎮守府に所属している嵐よりも大分男勝りでスカートじゃなくて短パンを履いた嵐が出来上がっていた。

 

 スカートなんて防御力なさそうなの着たくないし、一回スカートを強制的に萩風に着させられたけどその時にオレを見て発情したながもんに襲われたから二度と着ないって誓った。

 

 同じ鎮守府に所属している艦娘からはオレ、木曾さん、天龍さんの三人でイケメン三人衆とか言われているのを野分が呆れながら言ってきたので知った。そんなわけだけど、オレからしたら男だった時に習慣づいていたことをしてるだけなので別に何も思うこともなく。

 そう返すとまた野分にあきれた表情を浮かべられたりしたりしていた。

 

 そうして俺は今演習で轟沈レベルのダメージを受けて沈んだ………はずだった。

 

 かなり重い瞼を開ける。

 轟沈した(しんだ)はずなのに死んでなかった。生きてた。

 そう安堵しながら右手を動かす。すると、見慣れない手になっていることに気が付いた。

 

「?」

 

 骨張り、長い間眠っていたのだろうか筋張った上に皮膚のキメがかなり荒くなっている。

 

「え…」

 

 声が低い。

 

 その事実に何故か恐怖を覚えながら恐る恐る首を動かす。

 すぐ横にあった窓ガラスには包帯で左半分のほとんどを覆われているとはいえ、一月ぶりに見た俺の顔がそこにはあった。

 

「どういうこと……だ?」

 

 そう呟くも、その答えは得ることができない。そうして俺が痛む体を無理やり動かしてベッドに体を起こしていると、ガシャンと大きく、甲高い音がした。

 

「!?」

 

 演習で神通さんたちに叩き込まれたせいで身についた反射速度で音がした方を見る。

 音がしたのは部屋の入口の方で、看護師が俺を驚きの目で見ていた。

 

()()()()目を覚ましたんですか!?」

 

 そう言いながら俺の元へづかづかと歩いてくる。

 

「っ……(どういうことだよ…)」

 

 萩谷。それは俺がオレである前、元々21年間名乗ってきた名字だった。

 

 焦った様子で俺の元へ歩いてくる看護師を見つつ、俺からしたらさっきまで駆逐艦嵐として生きていたのにいきなり萩谷嵐として世界を認識させられたせいで俺も困惑しきっていた。

 

 それから数日の間はめぐるましく過ぎた。

 

 医者がやってきて自分が受けたケガの説明を受け、左目は恐らく見えなくなっている可能性が高いこともその時に言われた。

 俺はどうやら一月の間昏睡状態になっていたらしい。

 その関係もあって経過観察がしたいからしばらくの間安静にしておきなさいとのことだったのでベッドの上で何もせずに外を見て過ごす。

 

 正直、医者からの説明を受けながら駆逐艦嵐として過ごした一月は死に掛けたせいで見た夢だったのだろうかと思ってしまった。

 

 しかし、俺はここから困惑し続けることになる。

 

 女性と男性ではトイレが違う。

 お風呂ももちろん違う。

 

 しかし、無意識のうちに駆逐艦嵐として萩風に矯正された体は女性トイレや女湯の方へ足を向けてしまう。

 女湯に今も駆逐艦嵐が浸かっているのかと思って………

 

 そうやって看護師たちに今度は叱られながら一週間が過ぎていた。

 

 明日からリハビリが始まるとのことだったのでモチベーションにでもしようと思って乗っている車いすを押して最上階へと上がり、外を見る。

 

 最上階のガラスから見る外は景色がよく、海が光っていた。

 

 ……………が。

 

「ん?」

 

 一瞬遠くの瀬戸内海が()()見えた気がした。その時だった。

 

「カハッ!?」

 

 突然胸が苦しくなる。さらに何故か本来ないはずの夢だと思っていた駆逐艦嵐として過ごしていたときに夜、夜戦だぁ!!と突然部屋に押し寄せてきた川内にいじられたときのように女の秘所があるあたりが異様に熱くなる。

 

 股と胸に手を当てながら車いすの上から崩れ落ちそうになる。崩れ落ちそうになりながらぐるぐると回り出した世界を見つめる。だが、最終的に俺は痛みに耐え切れずに崩れ落ちた。

 

 そして世界が暗転する…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………のどが苦しい

 

「コフッ!?」

 

 苦しさから解放されようと目を開けると、腹に一撃くらわされて肺に入っていた息を無理やり吐きださせられた。

 

「ゲホッ!!ゲホッ!!オェーーー!!」

 

 それだけでもかなり苦しいのに無理やり目の前にいる誰か_像がぼやけてよく見えない_が俺ののどの方に手を突っ込んだせいで胃液でも吐いているんじゃないかと内心思うほど咳き込んだ。

 

「嵐、大丈夫?」

 

 そう言いながら誰かが俺の背中に布をかけた。

 

 そんな中で俺はしばらくの間体を上下させながら息を整えていたが、ふと気づいた。

 

(あれ?俺の手ってこんなにちいさ………え?)

 

 俺自身の手が駆逐艦嵐の時のように小さく、瑞々しくなっているように見えた。

 

「状況終了。萩風、嵐の様子は?」

 

 そう言いながら刀を持った緑色のコートを着た少女が歩いてくる。

 

「はい、木曾さん。左手の二の腕に書かれていたコードの通りうちの嵐みたいです。よかった……」

 

 横から紫髪の少女が抱き着いてくる。やっとわずかに動くようになってきた左手で目にかぶさっている?ようにまとわりついてくる粘液みたいなのを拭うと視界がはっきりとしてきた。

 

 目の前にはコートに身を包んだ少女、木曾さんが改二状態で立っていた。

 横を見ると萩風、その少し横を見ると手を痛そうに振りながらこっちを見る野分。

 

「え…?どういう事………」

 

 そう呟いたオレの問いに対して木曾さんが

 

「お前、演習で敵艦隊に紛れ込んでた内通者に轟沈(ころ)されたんだよ。そんで沈んで行ったからあわててうちの司令官がまるゆたちに回収させに行ったらそのままうわさでしか聞いたことがない深海棲艦にお前が吸い込まれていったっていうから大慌てだったんだぞ。」

 

 どうやらオレはあの時やはり轟沈判定。要は死亡宣告されていたらしい。そんで、そのまま謎の深海棲艦に吸い込まれた?どういう事?

 

 そう疑問に思っているのを表情からでも気づいたのか、木曾さんはこうつなげた。

 

「その深海棲艦はな、艦娘が轟沈したっている状況が確認された海域にいるって噂がある奴だったから大至急で救出作戦をはじめてな。」

 

「それで今作戦成功。と言うところよ。まだ、この中から脱出する必要があるけどね。」

 

 木曾さんの説明を補足するかのように萩風はそうつなげた。

 

「それじゃあ脱出するぞ。萩風、右に行ってくれ。俺は左の肩の方にまわるから。」

 

 そこまでで説明はもう十分だろとでもいうかのように木曾さんは俺の左の方に回ってオレの左手をもって自身の肩に回す。

 

 萩風もそれに続くかのようにオレの右手を持ちながら、

 

「早く鎮守府に帰ってお風呂に入りましょ?何時までも裸じゃ寒いでしょ?」

 

 そう言ってしっかりと俺の手を握った。

 

「もぅ訳が分かんないよ…」

 

 オレは運ばれる最中、そう小さい声でつぶやいた。

 

 大きな光が差し込むところから外に出てそのまま木曾さんに背負われて鎮守府に運ばれる。

 

 鎮守府についたら俺はそのまま入渠ドックへと連れていかれ、萩風に体を洗われる。

 鏡に映るのは裸の()()()()の姿。

 

 オレはまた、駆逐艦嵐になってしまっていた。

 

 体中にまとわりつく粘液をしっかり丁寧に洗い流され、萩風に肩を貸してもらいながらドックへ浸かる。

 

 オレはそのタイミングで安心してしまったのか、徐々に瞼が落ちて行く………

 

 

 

 

 

 瞼を開く、ベッドの上だ。

 横を見る。ガラス窓に映っていたのはオレではなく、俺の姿。

 

 俺は再び萩谷嵐へと戻っていた。

 

「どういうことだよ……」

 

 手を顔にかぶせるかのように起き、そう漏らす。

 

 訳が分からなくなってきたせいで何も考えたくなくなった俺は再び目を閉じた。

 

 

 

 

「嵐!!嵐!!ここで寝ちゃダメよもぅ!!」

 

 揺さぶられる感覚がして目を開ける。目の前には焦った表情を浮かべる萩風がいた。

 

「はぎぃ……オレもう何もかもわかんなくなってきたよ……」

 

 そう言って萩風の胸元へ倒れこむ。もにゅんと言う男なら嬉しいと前に同じサークルの友人が言っていた感触を顔全体に感じるが、そんなのを楽しむ余裕もなく俺は再び意識を暗転させた。

 

 目を開けると再び駆逐艦嵐(オレ)萩谷嵐()になっている。

 

 再度目を閉じれば萩谷嵐()駆逐艦嵐(オレ)になって萩風が俺のパジャマを着せようとしていた。変にフリフリがついている奴を。

 

 

 それを見ながらふと呟く

 

駆逐艦嵐(オレ)/萩谷嵐()の現実はどちらが正しいんだ?」

 

 萩谷嵐と言う青年の人生は駆逐艦嵐が艦娘の嵐となる前に見ていた夢にすぎないのか?

 それとも、俺が昏睡状態になったせいで何かが起きたのか?

 

 そう考えだした時点で『おれ』と言う自己は崩壊し始めていた……。

 

 始まったそのカウントダウンは止まることを知らない………………

 




感想、評価待ってまーす。
感想を見て連載化するどうかある程度は決めようと思っていますので、そこのところよろしくお願いします。(二次創作系をまとめた部誌にはあとで全部寄稿する予定)
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