「畜生・・・これで終わりなら良いけどなあ。ッ!?そうだ、あの女は!!」
ヤコブとの戦いを終えて疲労困憊の状態だが「どうでもいい」、「あいつ」が殺されるのは嫌だ、一刻も早く安否を確かめなければと心から思った、あの手の温もりは失わせたくない。意識が少しずつ薄れる中でその想いが現実へと引っ張っていきおぼつかない足取りを一歩一歩、前に進ませる。
「はは・・・この野郎、こんな時なのに笑ってやがる」
全く、怒る気にもなれねえ、まるで安心しているかのように彼女は笑みを浮かべながら眠っていた。その笑みはとても優しそうな笑みだった、もう大丈夫だと、安堵の笑みにも見えた。
「たくよ・・・なんだかなあ、俺も・・・っ・・・」
それにつられたのか、ハワード自身も眠る様に意識が途切れて地に倒れ伏してしまった
「ふふふ、ヤコブを討ち取ったようですね。だが彼はまだまだ己が何者かを理解していらっしゃらない」
男女二人が満身創痍で倒れているのを見つめる一人の男。その姿は宗教の信者が身に着ける法衣の様なモノを着こなし、背丈は長身、少なくともハワードより背は高い。
その顔はまだ若そうに見えるが、まるで枯れてるかのように痩せていた。
「彼と彼女らはまだ死ぬべきではない、このブライ。必ず二人を導きましょう・・・」
ブライと名乗る男は倒れているハワードと女性と共に消えた。そう形容するしか無い程まるで神隠しの様に痕跡も残さず、この場から文字通り消えたのだった。
・・・
「起きなさい」
ああ、なんか如何にもめんどくさそうな女の声がするなあ
「起きなさい、ハワード、惰眠を貪っても時間を無駄にするだけよ」
「ああ!もう、うるせえ!アンタは俺の母親か!!」
折角、どんぱちを終えてゆっくりとしているだろう。こう言う時に目覚めて目の前に現れるのはやっぱ天使だろうと思ったが・・・
「おはよう、ハワード。よく眠れたかしら?」
如何にも人を小馬鹿にしてる様な女だった。
「御陰様で糞気持ちよく目覚めましたよ、つうか、ここどこ、あっ・・・そう言えば名前聴いてなかった!」
「はあ・・・やれやれね、まるで子供だわ。私は・・・」
「ここは、私、ブライが住まう。魔術を扱う者達の学び舎で御座います。そして彼女の名はルイネ。優秀な魔術師であり貴方様を手助けしてくださいます
」
開いた扉からは瘦せこけた男が俺の下にやって来て腰を下すと、話しかけてきた。
「あんたどっかで見た事あるよなあ?商店街にいる漢方薬売ってるおっさんか?」
「ハワード!」
「構わんよ、彼はそもそも自分がどんな存在か、それを知らないのだ」
ブライと名乗る男は真剣な眼差しを向けてこう告げた。
「貴方様は救世主なのです」
「・・・は?」
多分今の俺は阿保みたいな顔をしてるんだと思う。
「世界を、いやありとあらゆる世界を救う存在であるのです」
「・・・」
まるでカルト司教のお告げかよ、ドン引きして声も出ねえよ。
「俺はただの人間だ」
「いいえ、間違いありません」
「はあ・・・世話になったな、感謝はしてるけどそんな馬鹿話に付き合う程お人よしじゃない」
そう言ってベッドから立ち上がる、ドアノブに手を掛けた。
「ハワード!」
背後からあの女の叫び声がしたが、どうでもいい。もうあんな命が何個あっても足りない様な戦いなんて御免だ、こっちから出て行ってやるよ。
「・・・腹減ったなあ、お!」
そう言えば昼は何も食べていないからか腹の虫が泣いていた・・・暫く歩くと酒場があった、当てもないが、金はあるから腹ごしらえしようと思い入店することにした。
そうそう、馬鹿らしい、酒飲んでぐうたらして。生きてれば儲けもの。
そんな事を思いながら彼はこの時間を堕落し過ごす事に決めたのだった・・・そしてとある人物と邂逅が始まる。
皆さんこれが主人公(笑)です、こんなんで大丈夫なのだろうか・・・と思う方、はい、私もそう思います。
次回はとある方との語り合い……お楽しみ下さいませ。