D×F×C 記憶喪失の天災は愛を求める   作:謎の旅人

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第2話 やっぱり家ではママが頂点

 さて、しばらくして、私の目の前にあるのは私たちの家だ。居間を合わせて六部屋あって、一つ一つの部屋も大きいというちょっと大きな一階建ての家だ。

 だが、私の家は周りと比べて大きいというわけでもない。家族の人数によって部屋や大きさは変わるが、四人家族なら当たり前の大きさなのだ。

 みんな持っている一般的な家だ。

 まあ、私たち妖怪には人間みたいに物欲が激しいというわけではないからね。だから貧乏など存在しないし、逆に金持ちも存在しない。大きな家があったり、小さな家があったりするが、それは個人の趣味である。

 お金というものは存在するが、家という高いイメージの物の物価も高くはないし、宝石なんて興味がないのでこういうところも金持ちが存在しない理由だろう。

 

「ルリ、そろそろ降りてよ。もう家の前だよ」

「嫌だ。そのまま家までね」

「はあ……本当に甘えん坊だね。(まあ、そんなところが可愛いんだけど)

「ん? 何か言った?」

「なんでもないよ」

 

 私はそのまま家の中に入った。

 まず目に入ったのは玄関だ。着物を着ている時点で分かるだろうが、家も和風である。だから履いていたもの、つまり草履を脱ぐ必要がある。

 

「ほら、今度こそ降りて」

「あーい」

 

 ひょいと降りると玄関の脇に私とルリは籠を置き、草履を脱いだ。

 ちなみに裸足だ。足袋とかは履いていない。一応そういう靴下系はあるのだが、私たち家族は履いていない。

 さて、今日のお仕事も終わったし、居間に行こう!

 

「パパ~ママ~! 帰ったよ!」

「帰ったよ!」

 

 私の言葉に続いてルリも言う。

 居間に行くとそこには私たちの大好きな両親がいた。ただしパパはママに膝枕をしてもらって二人そろっていちゃついていたが。

 まあ、両親が不仲というよりはいいだろう。

 た、ただ仲がよすぎるのも、ちょ、ちょっと問題なんだけど……夜のアレ的な意味で。

 

「おう、帰ったか、ルリ、リル」

 

 パパがこちらを向き、そう言う。

 私たちの父だが、父の種族は実は狐ではない。狼だ。髪や尻尾や耳は灰色、いや、銀の美しい色を持っている。そして、見た目は三十代で顎鬚のあるイケメンである。

 パパみたいな人っておじさまって言うんだっけ? まあ、自慢の父である。

 

「おかりなさい、ルリ、リル」

 

 そして、パパに膝枕をしている母だ。

 私たちの母の種族は私たちと同じ狐だ。私たちと同じように耳や尻尾や髪は金である。で、見た目は二十代、いや、十代後半だ。つまり美女、または美少女なのだ。ただし胸のほうは大きいが。

 それでなぜ父が狼で母が狐で、娘の私たちが狐なのかだが、これは別に母に昔狐の男がいて、その狐の男に何かあったから狼の父と夫婦になったというわけではない。

 別々の種類の獣の妖怪同士で子どもを生した場合、子どもの種族はランダムで両親のどちらかの種族になるのだ。

 だから私の父はパパで間違いない。

 

「今日は遅かったな。あと汚れているな。どうしたんだ?」

 

 パパは微笑みながら言う。

 パパは別に厳格な父というわけではない。ママといちゃいちゃして私たちを大切にしてくれている家族大好きな父なのだ。

 パパの言葉に私たちは笑顔が一変する。

 

「ちょっと喧嘩を……」

 

 ルリは気まずそうに言う。

 私もまた気まずい。

 だって、

 

「……ほう」

 

 パパの優しい微笑みが怒り顔になるんだもん。

 優しいパパも怒ると本当に怖い。

 パパは体を起こす。

 

「喧嘩? 喧嘩と言ったか? あの殴りあったりする喧嘩かぁ?」

 

 ひうっ! やっぱり怒ってるよ!

 喧嘩する度のことなのだが、やはり慣れない。いや、慣れちゃいかないか。

 

「「ご、ごめんなさい!!」」

 

 私たちはすぐさま土下座をする。

 だが、そこでまた気づく、あっ、謝ったらダメだったって。だって、謝る相手はパパではなく、傷つけてしまった相手であるルリだから。パパはそう思っている。だから、ダメなのだ。

 

「おい、お前たちは誰に対して謝ってんだ? あん? 言ってみろ」

 

 父は怒っているとき口が悪くなる。

 もう誰だよって言いたいくらい。

 

「おら、言え!」

 

 ぐすっ、うう……。

 私たちの目に涙が浮かぶ。隣のルリはもう涙を流していた。

 それを見た瞬間に私も決壊した。

 

「うえええぇぇぇぇん!!」

 

 声を出して泣く。私の泣き声でルリも声を出して泣き始めた。

 パパはそれを変わらず怒り顔で見ていた。

 

「あなた、それくらいにしたらどうです?」

 

 泣きじゃくる私たちに助けが入った。ママだ。

 私たちからすれば救いの手だった。

 

「この子たちはまだ子どもですよ。喧嘩ぐらいしてたほうが元気でいいです」

「だがな、二人は女の子だぞ? 男の子ならまだしも、女の子だ。口喧嘩ならともかく、殴り合いの喧嘩だ。想像してみろ、可愛い可愛い娘たちが妖力を使って殴りあったしして血みどろになる光景を。おまえだって思うところはあるだろ」

「ないって言ったら嘘になりますけど……。でも、その原因の一つはあなたじゃないですか」

「お、俺?」

 

 そのとき初めて怒り顔は崩れた。

 

「ええ、そうです。私はちゃんと育ててきましたし、女の子らしい遊びも教えてきました」

 

 ママの言うとおり私たちはママからたくさん遊んでもらったしルリと二人でできる遊びも教わった。

 

「それなのにあなたは何をしましたか?」

「何って……色々だ」

 

 パパは別に私たちの世話を怠っていたわけではない。むしろ暇なときには私たちとたくさん遊んでくれた。まさに理想の父と言えるだろう。

 私たち姉妹はパパが大好きなのがその証明だ。優しいけど怒ってくれるから好きだ。

 

「ええ、たくさんあの子たちのために遊んでくれましたものね。妻として最高父です。ですが! あなたがあの子たちにやったことはなんでしたか!? あなたはあの子たちに追いかけっこや山を使ったかくれんぼです!」

「それが悪いのか?」

「いえ、ここまでならいいんです。よかったんです。でも! なんで追いかけっこの相手が動物で、かくれんぼの相手が怒り狂った熊なんです!? いくら熊程度を殺せると言っても女の子の遊びじゃないでしょ! 今までは何も言いませんでしたけど、もう我慢できません!」

 

 怒ったときはママよりもパパのほうが怖いのだが、パパはママには弱い。

 これも多分ママの勝ちかな。

 

「喧嘩したことで怒るのならば、そんなおかしな遊びを教えたあなたはどうなのかしら? まさかとは思うけどあなたが教えた遊びとこの子達の喧嘩は関係ないって言うんじゃないでしょうね?」

「うぐっ……言わない」

「ならいつもみたいにただしかるだけじゃなく、あなた自身の手でちょっとは何かしたらどうですか? そうですね、喧嘩をさせないためにあなたが相手になるとか」

「それはあの子たちに戦いを教えさせるということか?」

 

 パパはその提案に難色を示す。

 

「嫌なんですか?」

「当たり前だろう。戦いを教えるということはこの拳で娘を殴らなければならないということだぞ。俺にそんなこと……」

「へえ」

 

 ママの目が細く鋭いものになった。

 ちなみに私たちはもう泣き終えて目元を擦りながら、ルリと抱き合って二人を見ていた。

 

「万が一娘たちが怪我をするかもしれない遊びを教えたあなたがそれを言うんですか?」

「うっ……」

「そんな可能性のあるのよりもあなたに任せたほうがいいと思うのですけど。そのほうが知らないうちに大怪我なんてないでしょうし。それに娘が強いことに越したことはないですよ。そうでしょう?」

「……そうだな」

「はい、決まりです」

 

 ママは満面の笑みでパパに言った。

 やっぱりママが勝ったか。にしてもパパ。さっきの怖いのはどこへ行った? 今いるのはがっくりとうな垂れる、情けなさが目立つ父親の姿だった。

 えっと、これが尻に敷かれるというやつか。やっぱりママが我が家の最強だ。

 

「ほら、ルリ、リル。喧嘩をしてはいけないとは言わないけど、殴り合いはもうダメよ。でも、そういうのは妖怪の本能的部分もあるから、お父さんと一緒のときにやりなさい。いい?」

「「はい」」

 

 私たちにとって喧嘩はたまにやる姉妹のスキンシップの一つとして存在している。そう、スキンシップだ。喧嘩しているときだから一時的に大嫌いとか思っていたりとかは全くないのだ。

 喧嘩を口実にしていると言っても過言ではないほどに。

 だから、もしママが本気で喧嘩は絶対にダメなんて言われたら、言葉に出さずとも何となく察して喧嘩時にばれないように手加減するだろう。

 さすがの私たちもママには勝てないのだ。ママに言われたらどうしても一回でもうやらないと思ってしまう。

 

「これで終わりです。ほら、リル、ルリ、おいで」

 

 これで説教は終わりと告げて、ママは両腕を広げた。その意味を理解した私たちはママにぎゅっと抱きついた。

 ママは強く抱きしめる。

 

「お父さんはあなたたちが心配して怒っているのよ。そろそろそれを自覚して心配かけないいようにしなさい。いい?」

「「うん」」

 

 私だって前世を合わせたら二十歳くらいだ。それなりに自制できる……はずだ。

 それでもやってしまうのはやっぱりこの体に引かれているのかな。この体は子どもだからそういう部分があってもおかしくはない。

 そういえば前世の体もそうだけど、この体も結構可愛い。ママが美人だからきっと私も美人になるに違いない。そして、ルリもび美人になるだろう。

 

「あっ、そういえばリルってもう妖力を操作できるようになったの!」

 

 ママと抱き合ってしばらくして、ルリがそう言い出した。

 えっ? ちょ、ちょっと? な、何を言い出すの!?

 

「なに!? それは本当か!?」

 

 一番に反応したのはパパだった。

 パパも!?

 

「うん! まだ不安定だったけどちゃんと妖力弾にして放ったんだよ!」

 

 ルリが自分のことを言うかのようにはしゃいで言う。

 

「その歳でか! まさか独学?」

「そうなの! 独学だって! すごいよね! 私だって全く操作できないのに!」

 

 私は二人が私がいる中で褒めたり驚いたりするので、恥ずかしさのあまりママの服に顔を押し付けて羞恥を隠していた。

 ママはそんな私を頭を撫でてくれる。

 それはもちろんこの歳で、しかも独学で妖力を操ったのだからすごいというのは分かっているよ。だから自分がすごくないなんて言わない。うん、私はすごい。天才までは言わないけど、才能はあるはず! その程度には思っている。

 結局私はパパとルリに褒められ続けたせいでずっとママにくっついたままだった。二人の会話がママによって止められたのは、一時間以上後であきらかにママも楽しんでいた。

 ううっ恥ずかしすぎる……。

 でも、ママに甘えることができたと喜んでいたり。

 

 そんな日があった翌日から私たち姉妹は仕事をしながら、パパに戦い方を教えてもらえることになったのだった。

 私たちはめきめきと上達していく。教えがよかったというのもあるが、やはり私たちの才能の面も大きいだろう。

 始めてから数ヶ月で私は妖力の操作は完全にできるようになり、ルリもまた不安定だが操作できるようになった。

 時々パパが私たちに戦うことが許してくれているので、本能的なものも発散されている。

 その私の勝率は本当に低いが。十回に一回勝つくらい。

 うん、本当に妖力弾とか使っているのになんで低いのだろうか? 本当に不思議だ。

 ただ父曰く、私は動きや策が素直らしい。だから受け身で相手の動きで変わるようなルリにとっては扱いやすいそうなのだ。

 だからルリよりも妖力を上手く扱えても勝てないのだそうだ。

 

 ま、まあ、別に私は戦闘大好きというわけじゃないから、そこまで悔しくはないから別にいいけど!

 いつもそんな強がりで頑張っている。

 ともかく私たちは同年代でも結構上のレベルには辿り着いたとは思う。さすがに一番上ではないだろうが。

 これも全てパパが妖怪としての格がパパの同年代と比べて高いからであろう。

 聞けば私たち家族が住んでいるここらの地域ではパパが一番強いらしい。

 かっこいい上に強いとか何それ? しかもママという美人さんが嫁とか! そしてママとの愛の結晶である可愛い可愛い娘の私たち。絶対にパパって勝ち組だよ。

 私も大人になったらいい人を見つけて、今みたいな幸せな家族を築きたい。

 

 私だって結婚願望はあるもん。前世では長く生きられなかった私。だから寿命や身体能力も高い私は命の限り幸せに過ごしたい。

 ただ私の旦那様になる人がすぐに見つかるとは思えない。

 それはここらの地域に私たちの同世代の子どもがほとんどいないことにも関係している。妖怪は人間を基準に考えると長寿で、それ故に子どもができにくい。何十年や何百年でようやく産まれるということが多々ある。人間のように子どもができやすいというわけではないのだ。

 パパもママも同じで四十年で私たちができたらしい。

 

 ともかく前世の知識のせいか同世代の旦那様が当たり前という認識のせいか、どうしても私の意識は同世代の異性に拘ってしまっているのだ。

 まあ、恋は盲目とも言うし、そういう人が見つかればそんな認識も変わるかもしれないが。

 そうして私は未来のまだ見ぬ旦那様に対し、あれこれ思いながら日々を過ごしていったのだった。

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