激しい光に包まれて、最初に見えた光景は陸地に面した大きな湖だった。
「う、うわぁ!」
雲が手で掴めそうな高度から魔理沙の体は落ちていく。徐々に早くなっていく体を魔理沙は無理やり浮かせようとする。
「ふう、いきなりフリーフォールとか一体どこに繋がったのやら」
後から来たであろうエリスを探して魔理沙は見回す。
辺りはハスやスイレンが咲き浮いている湖のようだ。陸地には神社に続くような石階段が見えるが本殿は木々に隠れて見えない。
「おおっと、さっきぶりね魔理沙」
「来たねエリス」
コウモリではなく今は常時人型で現れたエリス。その姿は今まで通りで何の変化も無い。どうやら無事こちら側へ来れたようだ。
「ここはどこなの?」
エリスは周囲を見回して手掛かりになりそうな物を探すが、その地形は日本らしい風景ばかり。階段があるという事は少なからず人の手が入っている場所ということだが。
「まあいいわ。私には関係無いだろうし」
エリスは溜め込んでいた気持ちを吐き出すように溜息を付いた。そしてその顔から興味らしき物が消えていったような気がした。
「どうしたんだ?」
「どうやら私が求めていたのはここじゃないみたい。仕方ないわ、私の力でなんとかする」
「そうか・・・残念だな」
「そうかしら?もしかして寂しいの?」
「か、からかうなよ!悪魔!」
笑いながら近づいてくるエリスは片手に持つ星のステッキを掲げて近づいてきた。
「それより、あなたにはその姿は見合わないわね」
ステッキを一振りし、眩い光が魔理沙を優しく包み込んだ。光は暗いドレスを彩り、白と黒のドレスへと変化させた。杖は短縮され、6つのカラフルな水晶玉と白い翼が背中から生えた。
「これは・・・」
「私が悪魔ならあなたは天使よ。そうでしょう?ミカエル」
「ミカエルか・・・趣味が良いのか悪いのか」
天使は翼を広げ、大きく空へ舞い上がった。今の魔理沙は魔術の中の最高潮を繰り出すことができる。それは唯一無二の存在で、正に
「じゃあ私はこれで、See you!」
悪魔の翼は黒い霧を残して天空へ消えていった。彼女は一体何処へ行き、何をするのだろうか。それはまた別の話で語られることだろう。
恐らく現世であるこの世界でまだ確認できていないことがある。それは文化レベルだ。一体この世界の人類はどの様な力を持ち、またどの様な文化を築き上げているのか。相手に寄ればいきなり死に直面する可能性も無きにしも非ず。
「さて、まずはこの世界に溶け込まないといけないんだけどな」
その時、水平線より遥か遠く、何かが高速で近づいてくる感覚が魔理沙を覆った。エネルギーの波が臭いのように五感を刺激し、独特な感覚が湖全体を囲んだ。それが人ならざる者という事は直感で理解した。
「妖怪か?するとこの世界はまだ神の信仰が続いているのか?」
近づいてくる気配は距離を縮めるにつれて存在を確かなものにしていく。それは妖怪でも神でもない。人類でもなければ生命体でもない。しかしそれは膨大なエネルギーを有した絶命体と推測できる。
「兵器・・・もしくはホムンクルスの類か・・・?」
視界に入った目標は、人の形をしていた。律儀に一定の距離を保って『少女』は浮遊している。どういう原理で浮いているのかは分からないが、メイド服を着た赤毛の少女は魔法使いのように箒を持っていた。形は歪だが。
「とんでもないとこまで来てしまったかも・・・今日中に帰れるかしらん」
咄嗟に植物の陰に隠れたはいいがどうやら気が付いていない様子だった。少女から聞こえる硬い音やよく通る声、そして微かに匂う鉄の匂いから魔理沙は彼女の存在を確信した。どこかの巫女も同じような物を持たされていたのを思い出す。
思い切って魔理沙は機械少女の前へ飛び出し、こう告げた。
「撃つと動く!!」
「!!?」
驚く、と言うよりは態勢を変えたようだった。
「初めまして、空飛ぶ機械ネズミさん。こんな辺鄙な所まで何の用かしら?」
「おつかいです!・・・あとネズミじゃないです」
「おつかい?何を」
「聖杯を探しに来ました」
聖杯とはキリスト教の儀式で使われる杯や聖遺物と言うのが一般的だが、魔理沙の知っている聖杯はもう一つあった。それは聖杯伝説に登場する聖杯である。争いの渦中に潜む聖杯は神秘的な力を秘めており、その力に人々は魅了され、争った。その存在すらも肯定されていないような不安定な存在を巡って人々は殺し合ったのだ。正に伝説上の幻である。
「聖杯だ?そんなもん東にあるわけないだろ。頭使えよ、頭。もしかしてスペック低いのか?」
その時、空気が変わった。
「私の頭脳回路は全身に埋め込まれていますが、主に胸部に集中しております」
少女から放たれるオーラは特有の物らしく。覇気と狂乱に満ちていた。その感覚に駆り立たされ魔理沙も態勢を変えた。
「ほう・・・やる気満々のようだな?この体、この世界では初めての魔法だ。気ぃ入れて『逝き』な」
「そうですね無いならすぐに他の場所に『行かない』と・・・ッ」
全身の装備を使い、少女はレーザーを放つ。前面に展開される範囲の広い弾幕は容赦なく魔理沙の全身を包み隠し、魔力の壁に吸収されていった。
撃つと動く、その言葉通り魔理沙は翼を羽ばたかせ、魔理沙を中心に5つのオーレリーズを展開する。
力に執着する弾幕が機械メイドを掠め、難癖付けた紅夢の魔法使いが東の空を大きく高く飛翔した。
分かる人は分かると思いますが旧作幻想郷から秋霜玉のEXステージに移行しました。なんかごちゃごちゃしてて分かりにくいかもしれませんが想像力をフルに活用して読んでいただけると幸いです。
あと書き終わった後に思ったんですが、今話短いですね。話数が重なるごとに内容が多くなるのが特徴だったんですけど。読みやすくていいか。