一週間目
「まずは空中浮遊からだ。箒に跨って飛ぶことだけを意識しろ」
「そんな無茶な!いきなりかよ」
最初はとにかくイメージを具現化することだった。その初段として魔法使いの代名詞「空中浮遊」をすることになった。
魔法の中でも「物体浮遊法」に当たる魔法で、主に半径二メートル圏内の物体を浮遊させるとこが出来る。杖等の遠射法を使えば遠くに飛ばせるが、魅魔の話だと魔理沙は小火力を苦手とする体質らしい。
「私なんぞ今なら力も要らずに飛べるぞ」
「それは足が無いからだろ!!」
結局一週間での習得は無理だった。羽や石ころ程度なら少し浮くようになって来たのだが、如何せんコツが上手くつかめない。
二週間目
「今日から一週間。魔力の増強に入る」
「えー、めんどくさいぜー」
魔力と言うのは主に背中辺りから放出される、そこから空気中の魔素を吸収するため常に魔力の通気口「魔口」が開いている。
初心で魔法が上手く操れない場合は魔力の放出量を整える必要がある。特に魔理沙は魔力の放出量に大きなバラつきがあり、これでは大火力を一瞬にして発生させるミニ八卦炉を操ることなど叶うこと無い。
「とにかくこの一週間はキノコを食べて魔力を付ける事」
「何でキノコなのぜ?」
「キノコは魔術界での必需品だ。実験にも使うし、魔力の補充にも使う」
キノコは魔術界で『気の子』と呼ばれており、魔力のみならず様々な能力値を底上げしてくれるらしい。ただキノコを食べても効果は一瞬で、魔力の放出量を上げるにはキノコを食べ続けて魔力の通しを良くすることが必要らしい。
ただ毒キノコは特別な魔素を含んでいるらしく、食べると体の到る所に症状が出るのもそれが原因だと言う。
「これはアカヤマドリ。こっちはクギタケ。おっ!見ろ、これはサクラシメジと言ってな。魔術界では卑猥の象徴とされて―――」
(魅魔様って中身ただのオバさんだよな・・・)
一週間だけでなく常にキノコを食べることを強いられた魔理沙であった。だが不覚にもキノコのことを嫌いには慣れなかった。
「キノコおいしー」
三週間目
「今日は実戦的な魔法を使ってみよう」
「ついに本格的な魔法か!」
箒で飛ぶことも十分本格的な魔法なのだが、この日は攻撃魔法。物体に対して衝撃を与える魔法「物理魔法」を習得する。
と言っても物理魔法は体内の魔力を一点集中して放つ初歩的な攻撃方だ。さらに物理魔法には専用の物があるため、知識さえあれば誰でも使えるのだ。
「まずは腕に魔力を込めて私に殴りかかって来い」
「いくぜ!」
腕に魔力を入れるイメージを起こす。キノコを食べたおかげか、体の調子がよく、力が体の中に存在しているのが体感して分かる。
そして魔力を込めた力一杯の拳で魅魔を殴り付けた。
バシッ!!
「なかなかじゃないか。この短期間でここまで魔力を溜めたか」
「マジ?」
「筋はあると思うぞ」
魔理沙の言う「マジ?」はどちらかと言うと拳を片手で受け止めた魅魔のことなのだが。そういうことにしておいた。
続いて強化魔法。先ほどの物理魔法と似て異なるものだ。
魅魔の持つ杖にも強化魔法が掛けられているらしく、基本メインアームに使う魔法。この魔法をかければ強度・性能が飛躍的に上がるらしいのだが・・・
「もう一度!!」
「うおおおおおおおおおおおおーーー!!」
力一杯小枝に魔力を注ぐ。
そして魅魔が枝を持ち、つまんで曲げる。すると簡単に折れてしまう。
「もう一度!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおーーー!!」
これを何度も続けていた。
「どうやら強化魔法は向いていないようだな」
「ぜェぜェ・・・マジでェ?」
要領は同じなのだがどうしても魔力が小枝に伝わらない。
物質の中には魔力が伝わりづらい物もあるが、この小枝は中でも伝わりやすい物だ。だが魔理沙の魔力は小枝に保存されない。
「おかしいな。普通なら伝導した魔力は魔素として物質に保存される魔力保存の法則があるのだがな・・・」
前に香霖堂で読んだ外の世界の本に「質量保存の法則」と言う物を見たが、それと同じような物なのだろうか?と思いながらキノコを食べて気力を上げる。
「仕方ない。防御に少し難があるようだが攻撃で防げば問題無い」
「お!遂に攻撃系か!」
「とりあえずは、な。来週から始めようか」
「うっしゃあッ!!」
気合いと根性だけはあるのだが、魔法と言うものは難しい。
四週間目
「では“魔法”をお前に教えよう。今までやってきたことは単なる準備運動に過ぎないぞ」
「わっかりましたー!!」
身形で敬礼し、目を輝かせて魔法習得に挑む。
今までの「物理魔法」や「強化魔法」は単に魔力を注ぐだけのストレッチのようなものだ。そしてこれから行う「魔法」は「特殊魔法」とも呼ばれる魔力を具現化する方法だ。
「まずは物理魔法と同じように腕に魔力を溜めて」
「フゥゥゥゥゥ―――」
「その力を指先に集中させて解放させる。やってみて」
右腕に溜めた魔力を手の平へ注ぎ、五本の指先から流れ出すように解放させる。イメージ通りに行く感覚が神経を伝って目に浮かぶ。
それぞれの指先から淡い光が漏れだし、手の平に光の球体が形成される。
「これは・・・」
「どうやら魔理沙は魔法を『光』と思っていたようね」
「え?」
「魔法の第一段階『魔力生成』は本人のイメージで決まる。たとえばそれが『炎』だったら、『水』だったら」
そして魔理沙の手の平に浮かぶ魔力の塊は眩い光を放つ光球。
「光は進む者を照らし、直線を描いてまっすぐ進む。それがお前の属性でもある」
「属性?」
「つまりお前は光の属性魔法なんだよ。練習すればそれ以外も出せるが、基本お前は光をベースに魔法を生みださなきゃいけない」
昔から魔法使いと言えば常闇を彷徨う流れ星のようなイメージがあった。そのおかげだろうか。
その後も魔力を放つ練習をし、魔法を更なる形へと変化させていった。
「今日はここまで」
「えーまだやりてぇのに」
「駄目だ、適度に休まないと明日出来ないぞ」
「わあったよ」
魔理沙が意外と努力家だと分かった魅魔は体調管理と生活だけは徹底していた。
「キノコスープまだー?」
「はいはい今持っていくから」
まるで親子のような生活をしていた二人。窓からあふれ出る木漏れ日のような光は温かく濁りのない風景だった。
それはまるで親子の様―――
五週間目
「お前の体はすでに並の人間を越えていると言っても良いだろう」
「マジかよ。魔法って一カ月で覚えられるほど楽なんだな」
「そ、そんなことはないぞ・・・」
幻想郷に魔法はまだ普及していない。その理由は「魔法を伝える人がいない」ということが主だろう。最近では僧侶が魔法を取得しようとしているという話を聞いたことがある。
実際、魔法習得には才能が必要だ。まず魔法と言う存在を否定していないことだ。魔法使いを夢見ていた魔理沙はそれだけ魔法への関心が強かった、魔法習得には魔法をどれだけ信じているかが関わってくる。通常なら信じていないため、より魔法は人々に通じにくい。
「それで?今日は何すんの?」
「お前は物覚えが良かったから意外と早く済んだ。だから今日は―――」
「ゴクリ・・・・」
「箒に術式を掛ける」
「・・・・・・・」
魔理沙は思った。
八卦炉どうした?
と
「あー、うん。わかりましたー」
ついこの間までしていたような地味な作業になりそうだった。
「お前のために新しい箒を作ってやった。こいつは魔力伝導率が高いから一定範囲内ならお前の魔力に従ってくれるだろう」
真新しい箒を受け取り、いつも通りに魔力を注いでみる。すると
「うわっ!!」
空中に一気に吹っ飛んだ。右手に握りしめた箒を両手で掴み、必死にしがみつく。
みるみる地面が小さくなっていき、遠くに見えた山が平らに見えてくる。その浮遊感に心臓の鼓動が速くなる。
「魔理沙ッ!!」
とっさに魅魔が飛翔する。だがその速度は遅く、近づくことが出来ない。すると脳内に魅魔の声が響いてきた。
(魔理沙!少しづつ魔力を抜くんだ!)
「わ、わかった!」
魔理沙も魅魔もかなり動揺していた。言われた通りに少しづつ力を抜く、だが間違って一気に力を抜いてしまった。
されるがままに急降下する。その時、体が箒より上に持っていかれ、そのまま魔力を僅かに込めた。すると箒の落下スピードが落ち、手元に近くなった箒に跨った。
「よ、よし。あとは・・・」
魔力を少しだけ箒に注ぎ、頭の中で前進するようにイメージする。すると箒は動きを止め、前へ進み始めた。
「よっしゃ!成功したぜ」
それを下で見守っていた魅魔
「やるなあの子は・・・」
その時魅魔は魔理沙の中に眠る可能性に賭けてみたくなった。
あれだけの事を初見で出来るなら頭の中にイメージは大体固まっているはずだ。そう魅魔は考えたのだ。八卦炉の習得をまだしていないのもそれが理由の一つだ。
「魅魔様~!」
ふと顔を上げて空を見上げると、元気な子供のようにはしゃぐ魔理沙がいた。空を自由に飛べることがよほど嬉しいのだろう。岩場だらけの黄色い空を元気いっぱいに飛び回っていた。
魅魔は空を舞う魔理沙に片手で大きく手を振った。
魔法系については勝手に妄想したものです。