「へえ、その魅魔って人すごいわね」
グリモワールを両手で抱え込んで魔理沙の顔を覗き込むアリス。
「まぁな、私のお師匠様だし。おかげで今じゃこいつは欠かせないぜ」
そう言ってポケットに入れてある八卦炉を服の上からポンポンと叩く。最近は八卦炉とは呼ばず、マスタースパークを縮めた「マスパ」と呼ぶことが多い。
そして何より大きいことは、魔理沙の八卦炉のおかげで魔術界に激震が走ったのだ。
「魅魔様はその後どうしたの?」
「ああ、実は私のマスパが新しい魔素を含んでいるらしくて、その後魅魔様は魔界へ連れ戻されたってわけだ」
「何があったの?」
不思議そうに八卦炉を見つめる。
「アリスも使ってるだろ。これと似てる魔法」
少し考え、まさかと言って口に出す。
「“魔砲”なの?」
「ピンポン!正解。実は魔砲の始まりはこの八卦炉なんだぜ」
驚くアリス。話をまとめると
世界には魔術と魔法の二つがあるとされていた。それらを用いて使用する超常現象を“魔術法”とまとめていた。
しかしそこへ「ミニ八卦炉」と言う外部からの魔力伝達による新たな魔術法が出来てしまった。これにより魔界に存在していた魔術学研究本部は魔理沙を育成した保護者である魅魔を呼び戻し、実験を行うための立会人としたのだ。
本当のところは魔理沙を連れて来たかったのだが、魔界にヒトを連れてくることはダメらしく、仕方なく研究材料として五行山を持ちかえったそうだ。
そしてその後に付けられた新たな魔術法の名前は“魔砲”。その名の通り「魔術法による魔力砲台」。つまり兵器だ。
「魔理沙も大変だったようね」
「それほど大変じゃなかったぜ。なにせスキマ妖怪が圧力掛けたみたいでな」
「余計駄目じゃない・・・」
「そう言えばアリスは何で魔砲使えるんだ?」
「そ、それはあれよ、グリモアがあるからよ!」
何かを必死に隠そうとしている。だが鈍感な魔理沙はそれが分からなかった。
普通、魔砲は魔界の人間にしか使えない。これは基本的な魔力量と流れている魔力質が違うためと言われている。
今のところ、魔理沙が知る限りで魔砲が使えるのはアリス・マーガトロイドと風見幽香のみだ。
風見幽香は魔界人という話があるためほぼ確定だと分かる。だがアリスは
「それより!もうそろそろ私の家が見えてくるわよ!」
「あ、本当だ。じゃあ早く行って御茶でも飲もうぜ」
「はいはい、お菓子もあるから」
二人は緑生い茂る森の小道を駆け抜け、その先にある湿地の家に入って行った。
魔界と地上界を行き来していた“人間”がすぐ近くにいることを、まだ魔理沙は知らない。