FGOに知識チート系転生者(二週目)をぶち込んでみた場合 作:クヤ
FGOに登場させるのに設定を考えて書いていたら意外とそれっぽく仕上がったので、おまけとして公開してみた。
何度でも言うけど、
正直こっちかいてから書き出したので、FGOのとは別人だと思う。
どうしてこうなった。
そこは、白い部屋だった。
そこでは何もかもがあいまいで、確かなものなど一つとしてなかった。
分かることと言えば、ここが普通ではないということだけだった。
どれほどの時間が過ぎたのか、あるいは瞬きする間だったのかその時の私にはそれすらわからなかった。
ただ、声が……。そう、声が聞こえたんだ。
―――――お前は何になりたい
意味は分からない。なにになりたいかとはいかにも抽象的だ。
それは生き物であるのかないのか、そんなことすら含んだ意味にすら思えた。
ただそう、凡人たる私は一度天才という物になってみたいかもしれない。
友人に天才というべき傑物がいた。
何をしても容易く結果をだし、何をしてもつまらなそうだった。
なんだかそれがとても腹立たしくて、気が付いたら友人になっていた。
我がことながらどうしてそうなったのかは分からない。
あるいは私にも突出した才能があったのかもしれない。
そんなことを言うと、その友人には爆笑されてしまったが。
もちろん殴っておいた。
殴り返されると敗北は確定していたが、私は刹那に生きていたのだ。
結局私は、その友人を理解できたとはいいがたい。
同じ人間などいないのだから、他人と他人が理解し合うなど烏滸がましいと思わなくもない。
だけど、どうにも寂しげな笑い顔が脳裏によぎる。
叶うなら一度同じ視点に立ってみたい。
それでも理解できなければ、あきらめもつくという物だ。
だから私は、天才になってみたい。
天災と称されるほどの能力を持った怪物に。
―――――それがお前の選択か
その言葉に、なぜか苦笑する友人が思い浮かんだ。意識が遠くなる。
目覚めの時なのだろう。
これは果たして夢なのか。
何とも不思議な体験だ。
ただ、まあ、一つ言うなら、白い部屋は落ち着かないということだろうか。
なぜか爆笑が聞こえた気がした。
あの夢から、夢、なのだろうか。
目が覚めたら赤ん坊になっていた。
どうにも生まれ変わったようだ。
生まれ変わったということは、友人が私を実験台にでもして赤ん坊に知識を植え付けたりしていない限りは、私は死んだのだろう。
あの天災は、最高に寂しがりやで、不器用なので、狂気に落ちたりしていないかそれだけが心配だ。
星一つ容易く滅びるだろう。
その程度の破滅主義ではあったと思う。
同性であったから、アレだったが、仮に異性であった場合、私は囲い込まれていた自信がある。
言ってみれば私はおそらく、あいつが執着する唯一のものだった。
なぜか、私の全記憶経験を持った女性型クローンが頭に浮かんだ。
なんだろうこの寒気は。
なぜだろう予想が、予想が脳内を駆け巡る。
考えることはやめよう。
今の私にはどうしようもないことだ。
今世の名は、東雲 冴(しののめ さえ)
御年1歳である。
子供というのはいいな。感情の振れ幅がとても大きい。
成熟した思考を持っているのに、ちょっとしたことに心動かされる。
おむつが気持ち悪いだけで泣きたくなるというのは新鮮だ。
テレビを見ているだけで一日つぶせるというのも驚きだ。
何というか飽きが来ない。
不思議だ。とても不思議だ。
世界はこんなに色づいている。
毎日が楽しい。
赤ん坊は最高だ。
あれからいくらかの時が流れて、小学校へと入学した。
あの夢で願った通りわたしは天才になったらしい。
あれはなんだったのだろうな。
友人が神になって私の願いを叶えたとでもいうのか。
ありそうなのが恐ろしい。
ただ、その場合私に接触しないでいる可能性が微塵も想定できないので、きっと別の何かだったのだろう。
私は愛されていた。
私は異性愛者だ。
お尻がきゅんとした。
さて、天才になった感想だが。
世の中楽しい。
理解できないことがないとでもいうのかこの万能感。
天才ごっこと称した厨二病ごっこが最高に楽しい。
悪のマッドサイエンティストごっことか、やったことがなかったという友人はきっと頭がおかしい。
私にあいつが理解できないことが証明された。
あの無駄に影のある笑顔はなんだったというのか。
影が差すような出来事が欠片もないのだが。
両親にめちゃくちゃ可愛がられつつ、既に大学の入試問題なんかを解き終わって復習が終わり、賞金付きの数学問題に手を出してみていたりする。
あと、こんなの欲しいと思うと頭に設計図が浮かび上がってくるこの素敵な頭脳。
技量レベル的に、前世でできなかった漫画とかも書いてみていたりする。
絵が思った通りかそれ以上に改造されてアウトプットされていく。
ただ、あまりにもスラスラかけてしまうので、時間つぶしにならないのが問題と言えば問題か。
やりたい放題だった。
小学校では、ドッチボールなどして最高に楽しんで過ごしている。
カッコイイポーズとか取りながら華麗に相手の球を避ける。
最高に華麗である。
ただ人体の限界に挑戦しすぎて、たまに動けなくなって負ける。
私も相手も楽しくて、最高にウインウインな戦い方だ。
放課後に、3時間ぐらいかけて黒板アートを作ってみたりしていると、無心になれていい感じ、やっぱり微妙な陰影とかあると、どんなに頑張っても早く書きあげられないようだ。
なんでもほどほどが一番というが、全力で楽しめば、限界にチャレンジしても最高に楽しい。
そして入学半年、そんな私の学校での評価は、なんかすごいバカである。
解せぬ。
それでは、すごいバカみたいではないか。
すさまじい能力を持ったバカと称していただきたい。
そんなことを言ったら、すごいバカでいいじゃんと、言われてしまった。
解せぬ。
そういえば私も立派な問題児だが、別のクラスにも問題児がいるらしい。
私みたいに大騒ぎ系ではなくて、なんていうか孤高な私カッコイイみたいな。
反社会系、な感じで頑張っているらしい。
私としては、将来ごろごろ転がり回るのを予見しながら、ほっこりした気持ちで見守っていけばいいと思うのだが、先生方はそうもいかないらしい。
公僕の務めとして、社会になじませようと努力しているようだ。
仕事だというなら仕方がない。頑張ってほしい。
そんなこんなで、二年ほどたった。
全力で楽しみ過ぎてさすがの私もそろそろ、息切れ気味だった。
一年ぐらいはまったり過ごそうと思う。
先生が、私の行動をブログに上げたりしていたら、有名人になってしまったのだ。
私の名前が直接挙がっていたわけではないのだが。
なんかすごい小学生がいるってことで、取材の申し込みとかあって、それは断ったものの口コミで広まっていってしまったのだ。
さすがにうっとおしいので、ちょっと行動を自粛である。
漫画家として頑張っていきたいと思う。
そういえば、例の問題児と初めて直接顔を合わせた。
同じクラスになったからだ。
言うほど反社会的ではなかった。
よくよく考えてみると、私だけしか言ってなかった気もする。
見たところ、ただの引きこもり体質だろうあれは。協調性が皆無であるのは間違いない。
学校にパソコン持ち込んで授業中ひたすらカタカタやるとか、受ける意味がなくてもせめて紙媒体の内職にしとこうよ。
私のように。
無駄に資格を取るのが楽しい。読めばだいたい記憶できるこの頭脳が最高である。
しかし、そんなボイコット組に委員長の魔の手が。
名を織斑千冬、のちの世紀末覇王である。
真面目ちゃんが、鉄拳で正義をなしていくサクセスストーリーによって我々は弾圧された。
おかしい。私はきちんと先生に許可取ってやっているはずなのに。
テストでちゃんと満点取ってるのに。
それもこれも、はたかれた束が私を指して「あいつも授業に関係ないことやってるじゃん」とか言い出したのが悪い。
教育に悪いということで、私の内職すら封じられてしまった。
かかわりがなかったので割と放置していたが、よくよく見てみればこれは天才という人種だった。
ただの社会不適合者だと思っていた。
私の知る天才は、表面を取り繕うのはまことにうまく、私のようにその顔がムカつくとか言い出す感受性豊かなタイプ以外には、聖人君子のようにふるまっていたから、てっきり天才とはきちんと表面的には社会に適合できると思っていたのが大きい。
表面すらとりつくろえていない天才がいたとは。
それでも天才なのか。
万事うまくこなせるから天才なのだと思っていた。
と、そのようなことを本人に語ったところ、全力で無視されたので、なぜか友人の天才を思い出した。
これは付きまとうしかない。
前世の友人を理解できないから天才になり、天才になっても理解できなかったのでそういうものと諦めたが、ここに天然の天才サンプルが現れたのである。
これは調べるしかない。
そして私以外を無視するたびに、千冬によってはたかれる束はついに他人に返事をするようになった。
先生が泣いて喜んだとか。
親呼び出してもひとりで勝手に帰ってたからなこいつ。
ちなみに私の場合は、無視されても束が諦めるまで、全力でかまってやっていたので手を出す余地はなかった。
しかし内職については私も束も、一切聞き入れなかったので、千冬も諦めた。
うむ、その努力にはすまないと言っておく。
問題児と統括という関係になって、私たちの担当は教師から千冬になった。
なんだかんだで千冬も番長的な意味で、浮きがちな子供だったので、特殊な子供がまとまったと言えるかもしれない。
数年もすると、束も完全にこちらに懐いた。
前世の友人を思い出す感じで。
ただ束のが頭が軽いというかお花畑な感じだ。
ちょっと心配になるが、まだ子供だし仕方のないことかもしれない。
今日は束をイジメようとした勇気ある少年の話をしよう。
それはいつもと変わらない日だった。
ただ、束の席に花瓶が置いてあったというだけで、別に無知ではない束はくだらないものを見たといった様子であった。
正直いじめられる天才という物を見たことがなかった私には、この後の束の行動が予想できなかったというか、予想外に大ごとになる予感がしていた。
無言で所定の位置に花瓶を移すと、束と重力発生装置について語り合った。
普段は千冬が会話に入ってくる余地を残すために、専門的な話はしないのだがこの日は千冬の目も怖く、口を引き結んでいたため、私は会話に逃げることにしたのであった。
次に起きたのは、いつも束が持ち歩いているパソコンを奪おうとした事件だ。
私との有意義な会話によって、機嫌を急上昇させていた束に、冷や水を浴びせかけるがごとき事件であった。
事件は、パソコンに手をかけられた瞬間に放たれた右ストレートで未然に防がれたが、朝の花瓶もこいつだろうと、誰もが思ったことだろう。
「ねえ、なんでこんな無駄なことさせるの。冴と有意義な話をしていたんだけど。なんでその時間を邪魔されないといけないの。君に使う一秒でどれだけ私が損をしているのかそんなことさえ分からないとか、本当に人間?サルの間違いじゃないかな。ほら謝ってよ。人間で御免なさいって。それとも実はサルでしたごめんなさいかな。それは好きにしていいけど。時間の無駄だから早く答えてよ。泣いても意味が分からないんだけど。喚かれて私の貴重な時間をこれ以上浪費させないでほしいんだけど?ちーちゃんがいうから、返事はするようにしているけど、私には君との会話に価値を見いだせないんだから、話しかけないでもらえないかな。むしろ私の視界に入らないでほしいんだけど、わかる?言ってることさえ分からないならもういいから、これ以上私に時間を使わせないでもらえるかな」
束の口撃によって、少年のプライドは粉々に砕け散ったようだ。
何事もなかったように、私との談議に戻った束に、ああ、こいつは紛うことなき天才だと、私に思わせる事件だった。
ここまで露骨ではなかったが、友人にもそういうところがあった。
推測の域を出ないが、束は美少女であるし、私や千冬以外にはとことんまで関わらないことに、いらだちを覚え、ちょっかいを出してみたくなったのだろう。
つまり束に惚れていたんだろうにむごい仕打ちだった。
もっとも、私はいじめが好きでないのでまったく同情する気はないのだが。
好きならば、私のように付きまといつづければ、意外と仲良くなれるものだ。
そんなことすらできないなら束に好意を抱く資格はないだろう。
私たちと話しているのを見る限りは、ただの美少女だから仕方のないことではあるが、この悪い意味で有名な束にちょっかいを出すその神経は、驚愕に値すると思う。
制裁でも加えてやろうとしていた千冬も、拳の置き所がなくて困っているようだったので、重力装置から漫画話に派生させて、会話に入れてやるのだった。
問題は、有名漫画でさえ千冬が知らなかったことだろうか。
それでも貴様は日本人か。私は、千冬に漫画を読ませることを心に誓った。
この事件によって、一層束が孤立することになるのだがその辺はもう今更だろう。束はそういう子なのだと理解している。
友人よりもはるかに我が強く。己を通さずにはいられない。
何とも不器用な生き方だ。
そういう意味では千冬とも似ているのか。だからなんだかんだ言って仲がいいのだろう。
だから、無理に協調性を身に着けさせようとするのは、あきらめればいいと思うよ千冬。
将来の夢。それは子供心にとても面倒くさかった記憶がある。
夢がなくて何が悪いのか。
前世ではとてもつらかった。
ない夢絞り出して、金持ちになりたいとか適当なことを書いていた記憶がある。
しかし、今世では私にもテーマはある。
天才の研究である。
しかし、それを書こうとしたら、先生からストップがかかった。
もっと普通の夢にしてくださいと、言葉が通じる方の問題児と認識されている私は、仕方がないので、別のものを書くことにした。
私と同じで特に夢がない千冬は論外として、束は宇宙開発が夢らしかった。
やばい、最もアレな束が一番子供らしい夢を持っている。
私と千冬は顔を見合わせて、冷や汗を流した。
そして、私はせっかくなので束に便乗することにした。
天才の観察のためには、一緒にいる必要があるのだから、せっかくなので私は束の夢を全力で手伝ってやることに決めた。
そしてそのことを作文にしたら、主体性はなかったが、めちゃくちゃ微笑ましい目で見られた。
束が嬉しそうに抱き着いてきて、私に頭をぐりぐり押しつけてきたのも原因かもしれない。
おい、やめるんだ。
厨二な行動以外でその目をされると、私に効く。
ちなみに私と束の作文は、私たちの中ではすさまじく具体性を持っていたのだが、傍から見ると子供特有の気宇壮大な、悪く言えば夢見がちなものに見えたようだ。
おかしい。確かに束のマルチフォーム・スーツは、実現しても宇宙開発に活用されなさそうだったが、それをフォローするための独立国設立からの、移民船計画はきちんと宇宙開発を見据えたものなのだが。
仲好さそうな私たちに、千冬は疎外感を感じたのかしばらく私たちの距離は近かった。
ちなみに千冬の夢は発表の機会に恵まれなかったせいか、表ざたになることはなく、先生が微笑ましげに見るだけであった。
真っ赤な顔した千冬に教えろーと二人でやっていたら二人仲良くアイアンクローを喰らうこととなった。
衝撃的な事件が起きた。千冬の両親が蒸発したのだ。
その話を聞いた時には、思わず二度見してしまった。
束でさえも驚いていた。
大丈夫だと言っていたが、あの切れたナイフのような雰囲気したやつが大丈夫には欠片も見えない。
というより金はあるのか。
なんかバイトを始めたらしいが、人間が生きていくのは結構金がかかるぞ。
確か幼い弟もいたはずだ。
とりあえず、本当に問題ない生活をしているのか、食材の差し入れがてら夜襲してみた。弟の一夏が家事をしていた。
千冬はバイトらしい。
お、おう。
まだだ、一夏が私たちみたいな異常な生き物なら問題ない。
うん、普通の男の子だったよ。
おい、千冬ッ!
ついでに通帳を見せてもらうとこれは、中学卒業までへたすると持たないのではないか。
子供的には大金に見えるかもしれないが、税金とか保険で結構飛んでいくぞ。
あと保護者がいないのは致命的だ。
うちの両親、いい人だけどこういう時に頼れるタイプじゃないからな。
束の親父さんにたのもう。
なんかこう、地元の顔役的なポジションな人だった気がするし。
名前がかっこよかったからきっと大丈夫。
でも必要な書類ぐらいは揃えておくか。
明日でいいよもう。先に飯にしよう。
いつもは千冬がコンビニ弁当買ってきてるらしいが、子供のうちはしっかり食わんと。
大人になったら好きなだけ不養生すればいいさ。
「一夏帰ったぞ」
「お帰りー」
一夏の手を持って振らせていると、ぎょっとした顔で、こちらを見てきたなんか照れる。
「なぜうちにいる!」
そういうのいいから、手を洗って、さっさと飯にしよう。
良くこの時間で働く仕事見つけたよなというか、結構いろいろ条件あったはずだけど。
「それは、いい人が見つかって……」
「売春はやめとけよ。お互いに不幸になるからな」
「するかっ!」
「へぶっ」
とりあえず元気が出たようで何より。
束経由でアポ取って、後見人になってもらうことに成功した。
人格者だったね本当に。
さすがは束の親なんてやっているだけはある。
とりあえず金は私が無利子無担保で貸しておくことにした。
金は賞金とか、先物取引とかで増やした。
気候情報を一年先まで正確に予測すれば意外と儲かる。
ただ素人には全くお勧めできないからやるなよ千冬。
金は余裕がないと、人間ダメになることが多いからな。
先にそれなりに与えておく。
使わないことはできるが、いざというときに使えるものがあれば、心の余裕が違う。
最悪私と結婚すれば借金チャラのウルトラCができるしな。
いや、その手があったかみたいな顔されても、金で始まる結婚生活とか嫌よ私。
束さんも結婚するーじゃなくてね。
お前ら私のこと好きだな!おい!
切れたナイフのようだと噂された千冬さんも生活が安定し、家に同級生が入り浸っていると、丸くなったヤンキー並には落ち着いた。
委員長から番長への超進化だった。
意外とこの二つは似たものなのかもしれない。
束は夢のマルチフォーム・スーツがもう少しで完成するらしい。
発表が今から楽しみだとか恐ろしいことを言っていたので、止めた。
ブー垂れていたが、こっちが圧倒的な力を持ってないと兵器転用が容易なそれは半端なく厄介ごとしか呼び寄せないだろう。
やるなら国の二つぐらい丸め込んでからやるか、砲艦外交できるレベルでなくては。
今の弱気な日本でそんなことしたら、あっという間にこっちに負債を負わせようとしてくるだろう。
私の方は私の方で、束の夢のために島を買い取った。
その島を改造して、秘密基地のように今はなっている。
なかなか、織斑家から離れられないので、作業がそれほどすすまなくて困る。
まずは輸入に頼らなくていいレベルで、食糧生産ができるプラントを作らないと、輸入に頼りきりの食糧を盾にされたら日本はどうしようもない。
私はまだ日本に住んでいたいのだ。
完全循環型食糧生産プラントはさすがに難度が高い。
半循環はすでに可能になっているのだが、目標は大きくなければ。
もっとも、大規模な人間の生活スペースまで組み込めば、完全循環可能なので目標はすでに達成しているともいえる。
もともと、宇宙船用に開発していた技術だったのだが何が幸いするかわかったものじゃない。
あとは、数さえ用意できれば、食糧自給率100%を目指せるな。金はかかるが、食糧輸入費を考えると、将来的には大幅な黒字になるだろう。
最近は人口増加によって、世界的に食糧が足りなくなりつつあるからな。
こそこそと集めていた議員方の弱みを駆使して、海上に大規模な食糧生産プラントを作るのだ。
しかし、まさか最初に必要になるのが作業用機械になるとは、思っていなかった。
よくよく考えれば当たり前なのだが、大規模な施設は手足の数がないとどうしようもない。
私は天才のはずなのにこんな初歩的なことに頭が回っていなかったとは。不覚。
そんなこんなで稼いだ金で資源を集め、研究に投入している。
研究自体は最初に作った演算器でだいたいを行うので、維持費ぐらいの金額しか、かからないが、シミュレーションで完璧でも、実証実験されていないものでは、意味がないからな。
金がかかる。
これで、ようやく表向きの資金源にめどが立った。
ペーパーカンパニーから、普通の会社にすることができる。
社長は信頼できるのをスカウト済みで、私と束が株主ということになる。
今のところ特許を取るつもりはない。
取ったところで真似されるのがおちだ。でかいだけのパーツはあちこちに発注して基幹部品は全部うちの作業用機械で作る。
そして食料を牛耳ったところで、束のISと私の宇宙探索船を発表して、宇宙開発を会社でやっていくことを宣言する。
この段階まで行くと、周りの横槍を気にしなくてもよくなる。
逆にいうとここまでやってようやく、ある程度我儘を言えるようになるという恐ろしい現実だ。
横槍は気にしなくても対策取れば問題なくなるだけで、横槍自体は入ってくる想定だ。
突出した天才が苛立つ気持ちもわからなくもない、ここまでやらなければ何もできないとか、いらだちもするだろう。
実際、宇宙開発用の技術を一緒に開発していなければ、しびれを切らした束はすぐにでも特攻しただろう。
そして、ISによって世界が牛耳られる社会になったことだろう。
予想でしかないが、そうなった可能性は非常に高い。
数年かけて、宇宙開発を過熱させれば、あとは私たちが手を出さずとも、人類は勝手に宇宙へ行くだろう。
民間人をいかに煽るか、軍事だけに使わせないためにはそれを考えなくてはいけない。
汚職やら何やらを、常に集めている私には、文句言える人間はあまりいない。
そのことを知っている人間はあまりに少ないが、いざとなったら、世界中に機密情報ばらまいて、宙の果てでも目指すので何の問題もない。
世界的に大混乱必至だろうが、私の知ったことではない。
あっこれ、天才ぽかったな。
ふふふ、私もついに天才を理解し始めたか。
さすが私だ。
衝撃の事実。IS女にしか乗れないってよ。
ちょっと楽しみにしていたのに。
乗せてくれるっていうから小躍りして乗ろうとしたのに。
「あれー?」
あれーじゃないよまったく。ぷんぷんだよまったく。ぷんぷんっ。
「そんなに怒らないでよ」
こんなに尽くしてきた男に対してこの所業。
いいもん、この間見つけた魔法の本を熟読して魔法使いになってやる。
「えっなにそれ本物?束さんも見たい!」
「だーめです。私の期待を裏切った束には、社長からせっつかれてる海上プラント関係の仕事をしてもらいますー」
「えー、ずるいずるい」
「でも結局やってくれる束ちゃん大好き」
「束さんも大好きだー」
わははーしあわせスパイラルー。
「お前たちは何をやっているんだ」
「あれ、千冬じゃない。なんでここに?」
「ちーちゃんはISのテストパイロットをしてもらってるからでしたー」
「なるほどー」
「私の質問に答えろ」
「なんだっけ?」
「なんだったかなあ?」
素で頭から飛んでいたら。頭に指がめり込んだよ。
「この天才的な頭脳がー」
「ダメになっちゃうよー」
「似た者どうしめ。なにをしていたか聞いているんだ」
なにを?していたか?
「そうだ。聞いてよちふゆん。束がさんざん期待を煽ったのに、私はISに乗れなかったんだよ」
「誰がちふゆ……なに?」
「いやー今分かったんだけど女の子にしか乗れないみたいで、束さんも予想外だったんだよ!」
「束がIS乗せてくれるだろうからって、機動兵器の類は開発しなかったのに」
「ごめんよー許しておくれよー」
「ギュッとしてくれたら許す」
「よしきた。ぎゅー」
「よし許す。ぎゅー」
束は順調に育っているのだ。至福!
このあと千冬にめちゃくちゃ怒られた。
高校生になったころには、世界有数の実業家になっていた私たち。
最近は少し物騒な気配がしてきた。
こっそり政府からの護衛がついていたり、バイトしている千冬にボディガードの仕事をさせてお金を流したり、一夏と箒ちゃんを構って遊んだりだ。
私の取り合いが定期的に発生したりする。
愛い奴らだのう。
なんだか火花が散って見えるときがある気がするけど、基本的に二人は仲良しだから。
「冴兄さんは姉さんのお婿さんになるんだ」
「いや、千冬ねえだ」
「姉さんが他の人と結婚できるわけないだろう。私はこれから先、姉さんに恋愛感情もたれそうな人間がいるとはかけらも思えない!だから諦めろ!」
「それを言うなら千冬ねえだって、あんな性格だから、共学に通ってるのに冴兄以外には男友達すらいないんだぞ!」
「千冬さんは社会に適合できてるだろ!姉さんはな社会不適合者なんだぞ!そんな人を許容してくれる人が他にいるわけないだろ!他を当たれ!」
「家ではずぼらだし、外では強すぎる女で、俺には千冬ねえが結婚できるイメージがわかないんだよ!だから、超優良物件に任せるんだ!箒こそ他を当たれ!」
「「あんな人、他にいるわけないだろう!」」
二人は基本的に仲良しだ。ただ何か譲れないことがあるらしい。
大体私が聞くころには、千冬に鎮圧されていて、誰も喧嘩の内容については教えてくれないから内容は知らない。
秘密ができるなんて、昔から成長を見守ってきた兄貴分としては、かなしいやらうれしいやら、何とも言えない気持ちだ。
そういえば、最近どっちが本命なんだとか聞かれるがどういうことだろうか。
二人とも私の大事な友達だが。
なんだったら結婚してもいい友達だが。
そういえばついにISを発表し、宇宙開発を進めていくことを宣言した。
以前からちょいちょい、宇宙空間に行ってデブリ拾って来たりしていたが、その時の映像をネットに流したりして、下準備を進めてきたかいあってか、割合スムーズにISは世界に認められた。
傭兵を雇って、ISを支給し、ボディガードとして関係各所に配置して安全面には、気を使っている。
金払いがいい限り、信用できる傭兵というのは探せばいるものだった。
ただ、女性でないといけないので、そこで母数が一気に減ったのが面倒だった。
基本的にすべてがブラックボックス化しているので、ISは束にしか作れないようになっている。
だからまあ、世の中悪人ばかりだなと。
何人しょっ引けばこの誘拐大作戦は終わるんだろうか。
スパイ大国日本という言葉を久しぶりに思い出したよ。
そして、世界の要求は、ISの供給だった。
もちろんそんな要求に屈する日本ではなかった。
(私の懐には脅し可能リストが控えていた)
というか、言ってみれば最新型の戦闘機や爆弾を要求するのとそんなに変わらないと思うのだが、馬鹿ではなかろうか。
これに屈する方もばかだと思うけど。
言ってみれば、核よりクリーンな、しかし同規模の兵器なわけで核をばらまけとそういうセリフと大差がないことにどれほどの人間が気付いているのだろうか。
ばらまく気満々の開発者いたりしたけども。
「いやー、本当に冴くんの言うとおりになったねえ」
「だから言ったでしょう。人間は底抜けに愚かしいって」
「束さんは、人類ってやつをもう少し信じていたんだよー」
「よしよし。これからは気を付けようね」
世界は日本への締め付けを決定した。
正直どうかという意見も多々あったが、強行されてしまったのだ。
とはいっても、それに意味はなかった。
すでにエネルギーは水力、太陽光などに取って代わられ、自動車は水素と電気で動く。食糧はこっそりと増やしつづけた食糧プラントによって、すでにほぼ100パーセント自給が行えていた。
唯一問題があるかに思えた鉱物資源は、ISでデブリを採取するだけで賄えるほど、宇宙はゴミだらけだった。
デブリがなくなるころには、宇宙開発も進みそちらで採掘がおこなえる予想が立っていた。
輸出産業はダメージを受けることは避けられなかったが、日本から輸出されるようなものは、むしろ世界の方が欲しがる類のものが多かったらしい。
しかし、ないならないなりにどうにかしてしまうのが現実。
でも、輸入に制限がかかったと同時に、日本の方でも輸出に制限をかけた結果、どこかの最新機械が、製造中止に追い込まれるなど、なかなかに愉快なことになっていた。
一部の有識者が過熱して批判をしていたが、いくら言い回しを変えたところで、日本への要求は強盗と変わらないものだったため、さすがに日本人も怒った。
もっとも、生活が変わらないならいいやとすぐに冷めてしまったのだが。
最高に日本人だなと、私なんかはしみじみ思った。
この政府の意向を受けて、企業は外需から内需への切り替えが行われた。
国も、保障という名の露骨な日本国籍企業への優遇政策を行った。
これによって開店休業状態に追い込まれた海外資本の企業は撤退を余儀なくされた。
もともと、海外が参入してくることで、国内だけではやっていけなくなっていたところがあった日本企業は、締め出しが行われたことで、逆に内側にこもってもやっていけるようになってしまったのだ。
「なんかすごいことになったねえ」←すべての元凶
「さすがに予想外だった。日本ってたくましいね」←実行犯
「……はぁ」←客観的に見てしまった第三者
いざとなった時のために各種用意がしてあったのに、あらかじめ出してあったものしか使わないという、ちょっとよく分からない結果になった。
日本すごい。
問題がなかったのはきっといいこと。
さて、問題がひと段落ついたところで、宇宙船の発表。
すでに鎖国気味なので、日本国内限定の発表だった。
ネットを通じて世界に発信したりしているのはきっと誤差。
昔から頑張って作り上げた人工重力発生装置によって、ガワさえ頑丈ならドラム缶でも宇宙に行けてしまうようになったことを発表した。
束だってPICとかいうそのまんまの名前の慣性制御装置つくっていたし、むしろ遅れている気分である。
だから大したことではないと思っていたのだが、思った以上に反響があった。
やはり、マ○ロス級の力だろうか。
人型を動かすために、重力制御装置を作ったなんて言えない。
ほぼ無重力にして、要所要所で重さを発生させ、PICで制御するというニコイチ甚だしいのだが、それでも二足歩行ロボは素晴らしいらしかった。
作っておいてなんだが、武装はほぼ建築仕様なのが笑える。
月だと余計な横やりが入りそうだし、火星開発用である。やっぱり人型が一番汎用性に優れていると思うんだ。
ワープとかさすがにできないから、移動に数か月かかってしまうのだけど。
一隻で、数年は開発計画に従事できる予定だ。
食糧の関係で、それ以上は確約することができない。
そんな制限を無視できる、島を改造して作った移民船も実は完成しているのだが、こちらは時期尚早だろう。
いつか絶対ワープしてやる。
今まで先手先手を打ってきたが、ついに後手に回る羽目になった。
ミサイルをぶっぱなしやがったのだ。
「千冬出撃だ!」
「了解した」
最近のミサイルは誘導装置が付いているのがまだ救いだ。
束と二人で、ハックしまくってほとんどのミサイルを一個所に向け発射させることに成功した。
そしてそのミサイルで、千冬が無双する。
「いつのまに荷電粒子砲なんて作ってたのよ?」
「こんなこともあろうかとだよ!」
実際はデブリ駆逐用に作ってあったらしい。
武装が豊富なこと豊富なこと。
ついに一発も、撃ち漏らすことがなかった。
「これって千冬がすごいの?」
「束さんが作ったISとちーちゃんがいれば不可能なんてないのだ」
「ひどい。仲間外れだ。せめて武装には参加したかったぞ」
「じゃあ次は冴くんも一緒にやろー」
「約束な!次なんてない方がいいんだけど」
後で調べたところ、亡国機業という秘密結社が、今回のミサイル発射に関与していたことが判明した。
亡国って、どこの国だよ。
あれかな、政権変わる前のどこぞの国かな。
一番それっぽいけども。
ついに秘密結社まで出てきたことに驚きを隠せない。
ちなみに私は、敵にはどんな非道でも行っても構わないと考える性質です。
あぶりだせたのが、末端だけだったので、すべての末端を洗脳してみた。
現在はじわじわと、大本を食い荒らそうとしている。
ある程度規模の大きい末端に、遭遇したらそこも洗脳。
これを繰り返していくと、あら不思議。すべての敵がマイサーヴァントだ。
被害がなかったので一発目は誤射扱いで済ませてしまった国日本。
普通に総選挙だったね。
さすがにないと思ったよ。
特に口出ししなかったらこのざまか。日本大丈夫だろうか?
今回の件を受けて、国防力の充実の必要性が明らかになった。
やったのは完全に個人だったからな。
政府の懇願を受けて、ISの貸与が決定した。ということになっているが、そろそろ操縦者の教育始めて行こうと、束と決めただけの話だったりする。
私としては、宇宙ステーションを作って、そこで行いたかったのだが、まだ数年かかりそうなので、しぶしぶ地上での運用から始めることとなった。
もちろん安全装置には気を使っているし、人員も厳選している。
教官はもちろん千冬。
というより、他に時間が空いてて教官できそうな人間がいなかった。
そしてついにほぼ鎖国までいった日本。
一部の嗜好品の類以外の輸出入が完全に止まった。
外国人観光客も締め出されてしまった。
海外では蘇る侍の国とか、センセーショナルに報道されていた。
日本には忍者も侍もいません。
いや、忍者はいたかもしれない。
更識という家が、日本の諜報を一手に引き受けている大家らしい。
装備に苦無があったりする。
報道と言えば、ミサイルを打った当時に至って普通に自国民もいる状態だったことから、今諸外国が荒れているらしい。
日本を悪者にしようと頑張っているが、撃ったミサイルの数を映像付きで公表されているのでその言い訳はないと、みんな思っていた。
それでも、情報に乗っかってなぜか日本を非難する人民がいたりするのはもう、なんなんだろうね。
あまりにも腹立たしかったから、海外のスパイを分かっている限り、顔写真付きで公表してしまったよ。ははは。
もっと混乱してくれたまえ。
さてそんなつまらない話はともかく。
火星のテラフォームが始まった。
さすがに十年スパンで考えている。技術的な革新があったとしてもそれほど速くどうこうなることはない。
今は隔離された空間を、人間の住める環境に改造している所だ。
それが終わったら、移民を進めていくことになる。
その次に、惑星自体に住めるように本格的なテラフォームを始めることになる。
先は長い。
私たちは宇宙に出てもすぐに地球に帰ってこなければならない。
立場がある環境はつらい。
かなりの頻度で脱走をもくろむのだが、千冬につかまる。
私たちがいなくても回るようになっているのに、なぜか行動を制限されている。
それもこれも亡国機業ってやつの仕業なんだよ!
束と一緒に全力で八つ当たりした。
八つ当たりしても誰からも文句が出ないって素晴らしいよね。
ないことになってるから、文句言うこともできない。
「束―今楽しい?」
「最高に楽しいよ!」
「そっか」
結局、天才になってみても、前世の友人のことはいまいち理解できなかったけど。
この天才の笑顔は守れているようだ。
やっぱり、悲しそうな顔よりも、つまらなそうな顔よりも、笑顔は最強だ。
これからもばかをやって、いっぱい、いっぱい笑って過ごそう。
なんてったって天才だからね。