やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
私、千葉市立総武高校二年F組所属比企谷八幡は強制的に入部させられた奉仕部の部員二名、宇宙一かわいい妹、大天使戸塚、葉山グループと千葉村に(半ば強引にではあるが)ボランティアに来ていた。そこでいくつかのトラブルはあったが無事解決し今回のボランティア活動は終了した。その帰り道に……
人生初の霧の魔物と遭遇した。霧の魔物、三百年前突如出現し人類に対して牙をむいた謎の存在。この謎の存在は通常兵器では倒すことは不可能ではないが難しく、人類は魔物が出現するたび、その生存権を奪われてきた。
とっさに俺は魔物の注意を引く。霧の魔物は習性上元となった生物に近い行動をする時が多い。今回俺が遭遇しているのはクマに非常によく似た個体で、全長は三メートルほどだろうか、でかい。クマは目の前で動く物体を襲うという話を聞いたことがある。
「お兄ちゃんっ!」
「八幡っ!」
「比企谷!」
遠くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。どうやら誘導はうまくいったようだ。俺も隙を見て逃げなくては……
その一瞬の気のゆるみが命取りだった。地面のくぼみに足を取られ、よろけたところに魔物の攻撃を食らってしまう。腕による薙ぎ払い攻撃が腹にクリーンヒットしその衝撃で崖へと転落していく。攻撃を食らった時点で内臓や肋骨には相当なダメージが入っており、くわえてこの高さからの落下だ。まず助かるまい。
「比企谷君!」
「ヒッキー!」
意識が薄れゆく中、彼女たちの必死の声が聞こえたような気がした……
「……っは!」
目が覚める。というより自分という自我がある。つまり……俺は生きてる?周りには医療用の機具と思わしきものがある。ほのかに薬品の匂いが鼻をくすぐる。腕には点滴が付いており、ここまでくれば誰もが自分がいるのが病院だと気づくであろう。どうやらあの後、自分は幸運にも死なず、かつ、人に見つけられ救急車をよんでもらったということだろう。いや呼んだのは雪ノ下達か……そうだよね?などと考えているとドアが開き人が入ってきた。やたら度の強そうなメガネをかけたショートカットの女性?だ。白衣を着ているあたりこの病院の医師かなんかなのだろうか。
「宍戸結希よ。いまからあなたのこれからについて説明するわ」
「はぁ」
おそらくリハビリやら検査についてだろう。さすがに後遺症がないなんてことはないだろうし。生きていただけ儲けもんってものさ。とにかくリハビリをとっとと済ませ、小町と戸塚に会いたい……
「あなたは魔法使いに覚醒した。なので退院次第私立グリモワール魔法学園に入学してもらうわ」
「……はい?」
……予想を裏切る衝撃の事実だ。霧の魔物の出現と同時期に人類側が得た新たな力、魔法。それを使う人間を総称で魔法使いと呼ぶ。魔法使いが放つ魔法は霧の魔物に対して最も有効であり、人類が魔法使いを対霧の魔物戦の切り札として使うようになるのにそう時間はかからなかった。ちなみに魔法使いに覚醒した人間の比率はおよそ一万分の一。日本は総人口約五千万人に対し魔法使いは約三千人。俺はその一人になったわけだ。
「あなたは霧の魔物に襲われ崖からの転落中に魔法使いに覚醒したの。そして魔力で強化された体は運よく落下時の衝撃からあなたを守ってくれたわ。そのうえ近くにいた人の応急処置がよかったのもあなたが生存した一因ね」
「…そっすか」
どうやら俺は雪ノ下たちに助けられたようだ。
「あら、意外に落ち着いてるわね」
「まぁ、魔法使いになっても進路に問題ありませんし」
「軍人志望だったの?」
「いえ、専業主夫です」
「……詳細を説明するわね」
……スルーっすか
彼女に詳細を説明された翌日、魔法使い特有の回復能力の高さのお陰で比較的短期間で無事退院した俺は学園行きのバスに乗っていた。説明を聞く限りいかにも都会にありますよアピールだったので、暇つぶし機能付き目覚まし時計で学園を検索してみたら……見事に山の中でした。正直な話そんなことはどうでもいい、今現在俺が最も意見を言いたいのは他のバスの乗客についてだ。現在バスには俺を含め三人乗っているのだが、なぜか俺の近くの席に座ってきたのだ。別にそこに座らなくてもよくないですかね。俺がそんなことに頭を回していると突然バスが激しく揺れたかと思うと道路からわきへと突っ込んでいった。
「いってぇ……」
頭をぶつけ、その痛みに軽く悶えていると外で戦闘音がした。
「やぁ!」
どうやらバスに乗っていた女子生徒が戦闘音の発生源のようだ。いかにも魔法少女みたいな服装だ。そしてその後ろでなんかやっている?男子生徒がいた。
「当てます!」
その掛け声とともに女子生徒から放たれた一撃は霧の魔物に深刻なダメージを与えたようで魔物は一度うなった後森へと消えていった。てか最後に放った一撃今まで放っていたのより普通に威力が高かったんですけど。あれなの?ピンチになるとどんどん強くなる少年漫画の主人公的な奴なの?
「あ、あなたは……バスに乗ってた方ですよね?ケガはありませんか?」
周囲に他の魔物がいないことを確認し終えた少女がもう一人の乗客の俺に気づいてしまったらしい。
「あ、あぁ」
「その制服、もしかして転校生の方ですか?はじめまして、私、南智花って言います!」
「ひ、比企谷八幡でしゅ」
あ、噛んだ。ここでも安定のコミュ障っぷりだなおい。
「それにしても珍しいですね。男子生徒が一度に二人も転入するだなんて」
なんかいきなりなれなれしいなこの人、友達なのかと勘違いしちゃうだろ。
「ん?二人?」
「はい!こちらの方も今日転校してきたんですよ」
コク
これが俺とのちの転校生との初めての出会いであった。