やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている   作:水無月ゲンシュウ

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第十四話 第7次侵攻

 服部に別れを告げた後、自分の持ち場へと向かう途中で前線近くに進軍する精鋭部隊と出会った。どのメンツも面構えが違う。志願制で募集するだけあってどの生徒もやる気に満ち溢れている。それにその自信を支えるだけの場数を踏んできているのであろう。変に絡まれる前にその場を離れようとしたが運悪く見つかってしまう。最近ステルスヒッキー人に対して効果薄くなりすぎじゃありませんかね。

 

 「ん?貴様は確か前に訓練場で会った生徒か。何をしているこんな最前線で」

 

「さっきまで偵察に出てたんすよ。俺はそれぐらいしか役にたてないんでね」

 

「いや、十分な事だぞ。偵察で得た情報の精度が高ければ高いほど作戦は成功しやすくなる。貴様は自分にできる最高の仕事をこなしただけだ。誇っていいぞ。帰ってゆっくり休め。いずれまた偵察に出されることもあるだろうしな」

 

予想だにしなかった反応に俺は一瞬思考が停止していた。戦場で思考を放棄したら敵から容赦のないツッコミが飛んでくるところだが。俺はいつから人の役にたてるような人間に、人に必要とされる人間になっていたのだろう。いてもいなくても変わらない存在。それがボッチと言うものだ。彼女たちは軍隊で育った。軍では連携が重視される。仲間の為に命を捨てることができるか、ということだ。一人の負傷兵を助けるために三人の兵士を犠牲にする。そんな環境で生きてきた彼女には役に立たないという考えがないのかも知れない。そのうえ休めと言ってくれた。ここ最近掛けられたことのない言葉だ。兵士には休息が大事だということだろう。そのあとに仕事があるからという言葉がなければ手放しで喜べたものなのだが。

 

「そっすか」

 

「戦闘はアタイらに任せてとっとと後方に引っ込んでな」

 

彼女なりの優しさなのだろう。戦えないなら後方支援でもしておけという。ただ俺の配備はここの割りと近くなんですけどね。距離が空いているとはいえ。

精鋭部隊と遭遇するというアクシデントはあったが無事に配置場所につくことができた。

 

「おやおや、ずいぶんとおせー出勤じゃねーですか」

 

「それがさっきまで仕事をしていた人間への労いの言葉っすか」

 

相変わらずのやり取り。雪ノ下もそうだが立場上俺の上司になる人は総じて当たりが強いんでしょうかねぇ。それを言ったら社会の当たりがボッチには厳しいんですけどね。だが、そのやり取りにホッとする自分がいた。少なくともいつもの軽口を叩けるぐらいには余裕があるということに。

 遠くで戦闘の音が響き始めた。小銃から排莢される空薬きょうが地面に叩きつけられる音。後方からの支援砲撃。自らを鼓舞する声、仲間を 咤激励する声。

 

 「始まりやがったですねー。しばらくしたら国軍がわざと魔物を後ろに逃すと思うんでそしたらうちらの出番です。ま、それまでゆっくりとしてましょーや」

 

 緊張のし過ぎもよくない。適度に休めるときに休む。ボッチの場合倒れても誰も助けてくれないからな。ペース配分は非常に重要だ。休めるときにしっかり休もう…………………………………………………と思ってた時期が俺にもありました。戦い初めて3日目だけど魔物の数…多くね?あと時々強い個体混じってるんですけど。これ明らかにタイコンデロガ級じゃね?前線で何か問題でもあったのか?それにそろそろ弾薬が尽きる。出来ればここら辺で補給したいところだ。だが戦闘中の補給というのは非常に難しいものだ。簡単にできるとは思えない。どうやって補給しに行くかを考えていると転校生たちの補給部隊がやって来た。非常にベストタイミングだ。できれば俺の弾薬も持って来てくれると嬉しい。しかし都合のいいことばかり起こるはずもなく、彼らはよくない情報と共に来た。


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