やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
第七次侵攻は、国軍の損傷三割、世界的にも各国の軍隊はダメージを受けたがどこも人類の居住権を奪われることなく、またグリモアも学園生の死者ゼロ人という奇跡に近い戦果で人類の勝利という形で幕を閉じた。表向きは。
現在生死の境をさまよっている生徒が一名ほどいる。先の侵攻で風紀委員の殿を務めた比企谷八幡だ。風紀委員各員を無事撤退させたのち、増援の部隊が到着するまでの間多数のタイコンデロガ級を含む魔物の群れ相手に一人奮戦。増援が到着したときには一般人なら死んでもおかしくないほどの傷をおった比企谷と動けなくなった魔物だけが存在していた。
彼はあえて霧を払おうとはせず、手足に当たる部位を集中的に狙うことにより弾薬の消費を抑え、かつ殿としての役目を全うしたのだ。
そんな彼の病室には彼の所属する風紀委員の長、水無月風子が今なお眠る彼を見守っていた。
「比企谷さん……ごめんなさい……ごめんなさいっ………!」
彼女は今激しく後悔していた。なぜ自分が殿を努めなかったのかと。クエストに一回しか行ってないという明らかな経験不足なのも、自分が置かれている立場も頭では理解している。風紀委員長という、責任のある立場。自分が残れば恐らく他の委員も残ると言い出すことも容易に想像がつくことだ。だが、だとしてもそんな理由で一人の生徒が自分の為に生死の境をさまよう羽目に逢うのは間違っている。自分に命を賭ける価値などないというのに。
「……また来ますね」
後悔を胸に抱いたまま彼女は病室を後にする。
その後も彼の病室には様々な彼と関わりのあった生徒が決して多くはないが来ていた。その中でも転校生よりも多く来ていたのは水無月風子だけであった。
彼が眠る間も時は止まることなく、魔法使いに覚醒してない科学者が転校してきたり、旧科研に調査に向かい、霧の護り人の痕跡があったり、人型の魔物が出たりしてで気付けばクリスマスシーズンへと突入していた。
町はすっかりお祝いムードが漂い、彼がその状況を見れば「リア充め」などといいそうな雰囲気。先の侵攻の勝利も相まってかなりの賑わいであった。
もちろんそれは町に限った話ではない。学園でもにぎやかにパーテイーが行われていた。このように学園性が楽しくクリスマスパーティーを過ごす中、風紀委員総勢15名は鳥取で発生したのち真っすぐと学園に向かってきている魔物の集団の対応をしていた。その中に比企谷の姿はなかった。
「そんじゃ、ちょちょいと片付けましょーか」
風子の号令で風紀委員各員は戦闘に入る。ある者は連携し、またある者は単独で。討ち漏らしは後方にいる服部や精鋭部隊が対処し、魔物の数を着々と減らしていった。だがうまくいっているときはどんなに訓練した兵士でもわずかに集中力が切れるというもので、まぁ正規の部隊などならその気のゆるみを上官が引き締めるのであろうが、風紀委員を指揮する水無月風子は公式、非公式合わせてまだ二回しかクエストの経験がなく、今回の作戦を指揮するうえで若干の経験不足感が否めなかった。結果的に彼女の失言は冬樹イヴの怪我につながることとなり、また水無月風子自身も窮地に立たされていた。
(ちょいとマズいですねー。どうにかして距離を取らねーと)
そんな彼女の思惑を感じ取ったのか、一発の弾丸が今まさに彼女を攻撃せんとしていた魔物を吹き飛ばした。
(いったい誰が?メアリーでいやがりますか?)
すぐさま索敵用の魔法で眼にスコープ機能を与える魔法を発動し、弾丸が飛んできた方向を見る。
「比企谷……さん………?」
そこには対物ライフルを構えた比企谷八幡がいた。