やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
「お前はいったいどこまで知っている?」
俺の目の前にいる転校生と呼ばれる少年。計測不能なほどの魔力を保有し、かつそれを他人に譲渡できるという世界にただ一つだけの力を持つ少年。その性格は極めてお人よしかつ天性の女たらしの才能を持つ。その女たらしの才能を生かした彼の人脈は軍、政治、産業の要人の御息女たちとも親交が深いなど、既に一般人の領域を超えたものとなっている。そんな彼にかかれば俺の隠している秘密など簡単に暴いてしまうだろう。
そう問われた転校生は少しの間悩み、決断したのか口を開いた。
「体内に霧が入り込んでいるってことくらい」
「………………そうか」
やはり、知っていたか。俺が霧に侵されていることを。
大怪我をしたとき、あるいはものすごく霧の密度が濃い場所などにいたりすると、稀に体内に霧が侵入することがある。一度侵入した霧は、体内で血液と同化し、体中を駆け巡る。霧は霧を呼び寄せる特徴があり、外部からどんどん霧を吸収する。その結果、霧に侵された人間は霧の魔物となる。現在有効な治療法は確立されておらず、霧の吸収を抑える方法として魔法による障壁を展開して霧の侵入を止める。定期的に体内の血液を入れ替えて霧を薄めるといった方法が存在する。
「誰から聞いたんだ?」
このことを知っているのは生徒会や宍戸などごく一部の人間だけだ。
「卯ノ助から」
「あの変態ウサギめ…………」
俺が風紀委員を辞めたことに対して卯ノ助が何のアクションを取らないことを不思議に思い、問いただしてみたところ、白状したらしい。
転校生は俺のこの事情を知っていてなおも俺の辞めた本当の理由を問いただしてくる。
八幡は観念したかのようにポツリ、ポツリと話し始めた。
「……風紀委員は久しぶりに居心地がいいと感じた場所だった。俺みたいな人間を理解しようともしてくれた……………怖いんだ。あいつらが俺が霧の魔物になりかけだと知った時の反応が、拒絶されるかもしれない、気味悪がられるかもしれない、死ねといわれるかもしれない………それを恐れるくらい俺はあの場所に馴染んじまったんだよ。それにいつ俺が魔物になるかわからない。あいつらに迷惑をかけるのはごめんだ。ましてやあいつらを手にかけるのも、あいつらにかけさせるのも」
ここまでの八幡の会話を聞いた転校生は、なぜ風子にきつく当たったのかを問いただした。
「実は俺結構前から意識が戻っててな、ただ体内の浸食度の具合を経過観察しなくちゃいけなくてな、大体誰か来たときは寝たふりをしてた。そしたら委員長が結構な頻度で見舞いに来るんだよな。俺を置いて行ったことを謝罪しながら。すげー苦しそうに、深刻な表情でさ。もしあいつが今の俺の現状を知ったら間違いなくあいつは死に走る。それだけは避けなくちゃならない。俺のせいで人が死ぬのはごめんだ」
そこまで聞いた転校生が出した結論はいたってシンプルだった。
比企谷は風紀委員に戻るべきだ。そして風子にしっかりと謝ること。そのためには、
「デートしてきなよ。仲直りを込めて」
「は?」
風紀委員長、水無月風子とデートをしろという提案だった。