やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
前回の探索で発見された裏世界。霧の魔物との戦いに人類が敗れたもう一つの世界。俺たちの世界と同じ人物が存在し、そして霧の魔物によって俺たちと違う結末をたどった俺たちがいるとされる世界。報道部部長、遊佐鳴子によれば極まれに起こる霧の嵐によって行方不明になる人のほとんどがこの裏世界へと飛ばされるんだとか。彼女もその口であり、その反動で魔法使いとして覚醒、裏世界の生き残りの人類に生き方を教わり、そして運よく霧の嵐に再び巻き込まれこちらの世界に帰ってこれたとのことだ。衝撃的な事実ではあるが他にも根本的なことで気になることもある。それは歴代生徒会長と報道部部長はゲートの存在を知っておきながら、なぜか第七次侵攻まで探索をさせようとはしなかった。ここから導かれる仮説はこちら側に来た人間がいる、ということだ。そのうえ、この第七次侵攻が人類の転換期であるということ知っている人間が。そのうえで第七次侵攻を乗り越えられるだけの力がなければ探索をする意味がないということを知っているということを。
その上彼女の口振りから察するに裏世界と呼ばれるものは複数存在し、今回俺らが捜索した世界はその内の一つに過ぎないということだ。パラレルワールドっていうやつだな。別に魔法なんてトンデモ理論で発動するものが存在する時代だ。異世界の一つや二つ存在したところで今更驚くことはない。問題は今回の捜索から得られた知識からそう遠くない未来に人類は魔物に敗北するという事実を突きつけられたのだが。来年に大規模侵攻があると正直学園は厳しいだろう。なんせ今年の卒業生に学園の主力が多く存在しているからな。
色々な問題はまだ残っているが、無事卒業式も終了した。俺の近辺で主だった変更は水無月が生徒会長へと就任が決定。そのため繰り上がりで氷川が風紀委員長へとなる。それにより風紀委員は今まで以上に過激路線へと走ることとなる。
「比企谷さん」
俺が部屋で物思いにふけているとドア前から声が聞こえた。
「ん、委員長か、なんか用ですか?こんな夜中に」
「うちは用事がなくちゃアンタさんに会いに来ちゃいけねーんですか?」
まぁアンタが来る時は大体用事がありましたからね
「少しおはなししましょーよ」
そう告げられ、渋々委員長を部屋に入れる。
「お邪魔します。随分と片付いてますねー、普段からよく人が来るんですか?」
「いや、委員長が初めてだ」
「ほぉーさいですか・・・ふふふ」
「こんなものしか出せませんが」
部屋に常備しているマッ缶を温めたのを出す。委員長も流石に慣れたのか特に何も言うことなくマックスコーヒーを飲む。
「それで、お話というのは」
「そんな大した事じゃねーですよ。ちょっとグチに付き合ってもらおーかと思いましてね・・・・・・ねぇ比企谷さん、ウチに生徒会長なんて務まると思いますか?」
・・・ヘビーな話題だな、さてどう答えるべきか。彼女が求めているのは同情や励ましの言葉ではないだろう。そんな安っぽい言葉は今の彼女の心に何も響くことはないだろう。かと言って否定するのも違うだろう。おそらく彼女が求めているものは、
「委員長のやりたいようにやればいいじゃないんですかね。無理に今のようなスタイルを取る必要はないですよ。あれは武田虎千代というチート人間がいて初めて成り立つ手法ですからね。むしろ委員長が同じやり方をすれば会長との差が明確に出る。それよりは委員長の持ち味を活かした運営をするべきです」
「ウチの持ち味・・・」
「それに一人でやるわけじゃないんですから、俺が言っても説得力皆無だと思いますが使える人間は使うべきですよ」
「・・・生徒会長になった後もアンタさんをこき使ってもかまいませんか?」
「しょっちゅうは困りますがね」
「・・・ありがとーごぜーます。なんだか気分が楽になりましたよ」
「そっすか」
結果的にありきたりな事しか伝えられなかった。委員長は俺とは違う。俺のように一人でもやれるタイプではない。彼女を見送った後(正確には見送らせられた)俺は布団へと潜り込む。新たな年度を迎えるために。俺が眠っている間に世界に大きな変化が起こるとも知らずに。