やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
前回のあらすじ!俺、比企谷八幡は自称元魔法使いのウサギもどき卯之助のくだらない冗談に付き合っていた!すると金髪ツインテールの少女が出てきた!
「おーやおーや卯之助、一体何を卒業するんです?」
声の主の方向へゆっくりと首を向ける。身長は百五十㎝くらいだろうか、金髪をいわゆるツインテールでまとめており、左側のもみあげ付近の髪を三つ編みにしている。材木座あたりが彼女を見ればツンデレとかいってそうだが、目の前の少女からはツンデレのツンデレすら感じられない。それどころか全く別の雰囲気を醸し出している。けだるそうな雰囲気を纏いながらもその本質は違う。ハンターだ。獲物が油断するのを待っている捕食者。
俺がそう思考を巡らせていると、その少女と視線があった。笑顔を向けられたが、それに返す余裕もない。なぜなら今目の前で捕食者による狩りが行われているのだから。
「いや、風子これはだな…そう!言葉のあやってやつだ!コイツの質問に答えてたらうまい言い回しが思いつかなくってな!」
そう卯之助が釈明するようにしゃべると、風子と呼ばれた少女は、「ほう…」とつぶやきながら言葉を続けた。
「そんじゃ、どんなことを話したっていうんですか?」
「あぁ…コイツ今日から転校することになってるやつなんだが登校中に変な視線を感じるっていうからさ」
「……それで?」
雰囲気が尋問している人そのもなんですけど。
「俺はこういってやったんだ!それは女子がお前のことを異性としてみてるって!」
「………………………」
その言葉を聞いた途端風子さん?の表情がわずかにだが険しくなったのを俺は見逃さなかったが、どうやら鈍感な卯之助は変化に気づかず、そのまましゃべり続けた。
「そしたらコイツ冗談はよせって言いだして、よくする話をしたってわけだ」
「……そーですか、よーーくわかりました」
何がわかったんでしょうか。
「な?誤解だったろ?」
「あんたさんが校則で禁止されている不純異性交遊を助長するような言動をしていることがよーくわかりましたよ」
「……え?」
「この件は委員会で話し合いたいと思います。卯之助をこのまま朝の時間に校門に立たせていいものかと」
ギャー!と卯之助が割と本気でおびえているのを不思議に思って眺めていると彼女の標的が俺に移った。
「それとそこのアンタさん、今回は転校初日ですし、卯之助の発言を気にも留めていなかったので不問にしますが次今回みたいな発言をしてたらちょーばつぼー行きですからね」
えっ!?これ俺にも飛び火するんかい。
「はぁ…」
とりあえず覇気なく俺がそう返事をすると彼女は校舎の方に歩いて行った。俺もうなだれている卯之助を無視して校舎のほうへ向かう、俺が六年間通うクラスへと。
正直なところ期待もあった、ここでなら本物をみつけることができるかもと。だがその期待を押しつぶすぐらいの不安があった。このような変わった時期の転校、当然クラスにはとっくの昔にグループができている。そんな所へ俺のような異物が紛れ込んで、今まで通りとはいかないだろう。さらにここは男子の数が少ない。つまりそれだけで目立ってしまう。
不安を胸に抱えながら俺の編入するクラス‟リリィ”の前まで来たがそこには見覚えのある顔がいた。名前は……何だっけな。まぁ転校生と呼んでおこう。転校生から少し離れた位置に立つ。
「……………………」
「……………………」
沈黙が続く、お互い全く知らない人ではないゆえに発生してしまう微妙な空気。幸い担任の先生が来たことで沈黙は破られた。その人に連れられ教室へと入る。簡単な自己紹介の後、席へと座り朝のホームルームが終わる。俺の予想通りに転校生がクラスの女子から質問攻めにあう。話を聞く限り転校生は特殊な体質らしい、そのことでいろいろと聞かれているようだ。
他人事のように思っていると俺の新しい暇つぶし機能付き目覚まし時計兼財布が震えた。確認してみるとどうやらクエストが発令されたらしい。そのまま読み進めていると指名されている人の名前が出てきた。
指名 南 智花 神凪 怜 岸田 夏海(転校生の名前)比企谷八幡
………いやなんで?普通に考えておかしい。まだ訓練すら受けていないのにいきなり実戦に出すとはアレなんですかね。上層部は習うより慣れろとか、実戦あるのみとか平気で言っちゃうタイプなんですかね。
そう思っていると、転校生の方でも俺の名前が載っていることに気が付いたのか俺のほうによって来る。ついでに南?も。こっちくんなよ、注目されるのはボッチには厳しいんだよ。
「あの比企谷さん…でしたよね?よろしくお願いします!一緒に頑張りましょう!」
とりあえずクエストに出たことのある南の指示を受けながら簡単な支度を終え、集合場所に指定された校門前につくと南と転校生、あと残りの二人も来ていた。
「お、アンタがもう一人の転校生ね!アタシは岸田夏海、報道部よ!あとでいろいろ取材させてよね!」
「お前に話すことは何一つない」
チッ、一人はマスゴミか、変なこと話して面白おかしく書かれるのはごめんだ。抗議している彼女をよそにもう一人が挨拶をしてくる。
「神凪怜だ。風紀委員に所属している……お前が委員長が言っていた男か…」
風紀委員か……俺とは縁のない委員会だな、目を付けられなようにしよう。一通りの挨拶が進んだところで岸田が俺の疑問についての話題を提供してくれた。
「今回のクエストってさ、転校生の実力図るためだよね」
「そうだな、対象の霧の魔物の戦闘時に居合わせた智花と念のために私達二人が選ばれたのだろう」
「そんで比企谷はついでにって感じだよね」
「いや俺のあの場所にいたし」
「……そうだったわね!」
こいつ本当に報道部か……?まぁ実際のところここまでの戦力を用意しているんだ、俺は本当についでなのかもしれない。余裕のある時に実戦を経験させておきたいのだろう上は、と自分を納得させる。
「それじゃあ、行きましょう!」
南の掛け声で皆歩き始めた。雰囲気を見ているとこれから戦闘をしに行くとは思えないほどリラックスしている。
「比企谷」
「なんだ?……神凪?」
「そう緊張することはない、この戦力だ。それに転校生の魔力供給がある。お前に魔物が近づくことなんかないさ」
本当にそうだといいんですけどねぇ……
~少女達戦闘中~
………疑ってすみませんでした。これが魔法使いの戦闘か。想像以上に三人とも強かった。三人とも在学五年目だそうで学園内ではベテランになるらしい。一般人なら逃げ惑うしかない存在をあそこまで簡単に仕留めるとは…魔法使いを恐れる人間が出てくるのもわかる。人は己と違いかつ力を持つ存在を嫌うものだ。
特に転校生の魔力供給がどれほど貴重なものかをこの目で確認した。あれはいわばロールプレイングゲームでいうМP無限回復のようなものだ。
戦闘が終わり転校生と楽しく会話をしている三人の話を聞いていると、どうやら三人は同じ年に入学したらしい。道理でタイプの違う三人がまとまっているわけだ……こうやって日常をのぞいてみると、魔法使いの少女達も普通の高校生で、あそこまで互いを信頼している三人をみて本物とはあのようなものなのかと思ったりしていたのだ。