やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
結論から言うと第八次侵攻は起きなかった。待機時間でありながらも来栖と転校生にはクエストが発注されるといった執行部との認識の齟齬はあったが、概ね滞りなくことは済んだ。
俺自身月月火水木金金よろしくこき使われた疲れを癒すべく休日のプランを立てていたところ、生徒会からすぐさま第三回裏世界探索が行われることが発表された。なんでも今回侵攻が発生しなかった場合、待機していた国軍とJGJ傭兵部隊をそのまま裏世界探索に回すらしい。どうやら裏世界探索をダシに今回の不確定要素に対して軍備増強を認めさせたようだ。これまでグリモアから小出しにされていた情報を確かめることが出来るチャンスではあるから理解はできる。……現場の兵士の方々はご苦労様です。
今回の裏世界探索では向こうにしか存在していない建物「ゲネシスタワー」において生存しているであろう裏世界の宍戸をこちらに連れてくることが目的らしい。俺の覚醒時に説明をしてくれたちょっと頭のいい人ポジかと思っていたがとんでもない。世界でも上から数えた方が早いくらいの天才。それは裏世界でも同様であるはずで、まず最優先で避難させられているはずだと言うのが生徒会の意見である。
「で、なんで俺は司令所にいるんですかね」
「前線に送らなくても良い人材の中で内勤向きな人物を選出しただけさ」
「遊佐先輩がいれば十分だと思いますけどね」
「生憎情報の整理で忙しくてね、水無月君から事務処理が優秀だとは聞いているから期待してるよ」
「委員長……」
今回は十分な戦力が用意されたことからも俺の出番はないと考えていたが、遊佐の奴まで俺をこき使うようになってきやがった。他にも楯野と何故か南もいた。遊佐さんと南の会話から察するに近頃見る悪夢を払拭するために今回の探索に参加したようだ。正面を会長や東雲などといった実力者で固め、それ以外の部分を他の人員で取り掛かる。
俺の担当は司令所で索敵魔法垂れ流しの他に生徒会長と別ルートで進軍する精鋭部隊へ衛星情報を伝達するのが主な役割となる。衛星情報を元にして安全なルートを提示していく。
「300メートル先、アンブッシュに適した場所がある。気をつけてくれ」
「了解した。全員警戒を怠るな」
こちらの伝達した最低限の情報を元に的確に指示を出していく。その言葉に迷いはなく、支持を受けている側も澱みなく命令を実行する。今の所問題なく進軍できているが油断は出来ない。主力が揃っている部隊も先行している円野によると、魔物の魔の字もないらしい。
生徒会中心の主力部隊では朱鷺坂の正体についての謎々をしてる始末である。内容は東雲と朱鷺坂の共通点である。二人の共通点……魔法が強い?
司令所内も当然その話題となる。楯野が人狼ゲームよろしく推理し始める。
「朱鷺坂が話すことは結構重要らしい。わざわざ東雲を連れてきたということはヤツに関係がある。二人の共通点としてはどっちも偽名を使っていることと、魔法が強いってことかな?」
え、あの二人偽名なの?この学園に入る前にしっかりと身分証明されていたと思うんですけど、政府さんお仕事してますか?あと東雲、マジで300年生きてるのか。てっきり中二病発症したイタい子かと思ってたわ。それからも楯野の推理が続き彼女は答えにたどり着いたのか大きな声を上げる。実はあの二人親戚だったりして。
頭脳労働は頭のいい連中に任せて俺は自分の仕事に集中することにした。会長の部隊でも、朱鷺坂の正体について、東雲が質問攻めをしていると、先行していた円野と会長の間に突如魔物が出現。こちらも精鋭部隊に対して無線を飛ばす。
「アメディック隊長、そっちに魔物は?」
「こちらは順調そのものだ、道中で、円野を拾い、そのまま進軍する」
「了解。一応援軍要請があった場合のルートを送っておくんで、必要だったら使ってくれ」
「了解、交信終了」
いくばくかの時間が過ぎたが、会長達のもとに集まった魔物は一向に数を減らさない。それどこか増えていきその数は100を超えた。そのどれもがタイコンデロガ級であり、異常な再生力を持つ。指令所では今回の探索の中止を決定し救出部隊を送り込む。
会長の必殺技であるホワイトプラズマを使用し、魔物を消し飛ばすがそれでも、新手が来る。不意に現れた魔物の攻撃から転校生をかばい、重傷を負う。
何故魔法で防御しなかったのかと詰める東雲に対し、時間停止の魔法によって死ぬことはないと言う朱鷺坂。傷が癒えて、変身魔法を解除した彼女は本来の姿、東雲アイラの姿を見せる。自分自身は裏世界から来た東雲アイラだと。
これまであった謎の一部が解き明かされたものの、東雲の心に大きな傷を残す事になった。恩人との約束である魔物を滅ぼすと言う約束を裏世界の自分も守り続け戦っているという希望を、彼女は失ったのだから。