やはり俺が私立グリモワール魔法学園に転校生と一緒に入学するのは間違っている 作:水無月ゲンシュウ
生徒会室を後にした八幡は先ほど伝えられた事実によって生じる未来設計図(クエストでお金を稼いでその財産を餌に働いてくれる女性探して専業主夫計画)の予定変更について頭を回していた。
(他の魔法がうまく使えないとなると他の物を武器として使用するしかない。手っ取り早い方法は銃火器か……今のとこは保留だな、確か結構面倒な手続きをしなくちゃいけなかったはずだ。しばらくは練習も必要だと思うし。その次に有効なのは実戦経験を積むことだが…俺が学園のやつらとうまく連携をとれるわけがない、なんせクエストには最低でも二名で受けなくてはいけないからな。…とりあえずは招集のかかったクエストだけ受けるか。だが経験というかけがえのない武器が手に入れられない以上他に役立つもの、例えば知識を人より多く得るとか…………)
「ーーーーのあなたっ」
八幡はこの時考え事に熱中するあまり、一人の少女が声をかけているのに全く気付いていなかった。その理由の一つに普段声をかけられる機会がないということも要因になっているのは触れないで上げていただきたい。
「そこのあなたっ!」
(だがそうすると時間が圧倒的に足りない、どうすれば……)
「無視しないでくださいっ!!」
(たしか学園の中には授業を免除される生徒もいるよな、それを使えば……)
比企谷の思考がようやく収束しそうな時、さんざん無視された少女の堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしてください!」
「うひょい!」
「あなた、何なんですかその態度!風紀委員室でお話を聞かせてもらいますっ!あとその目、明らかに普通の人の目ではありません!そのことについてもお話を聞かせてもらいます!」
「は?いやなんで?」
突然の出来事で返答に困る比企谷。怒っている彼女の様子から察するに声をかけていた彼女を無視していたようだ。確かに無視したことについては考え事をしていたとはいえこちらに非があると思ったが、眼は関係ないだろっ!と内心で突っ込んでみたり。あれよこれよとしているうちに風紀委員室に連れてこられてしまった。
そこには友好関係が狭い(というかほとんどないに等しい)比企谷の知っている人物がいた。
「ん、比企谷じゃないか。どうしたんだ風紀委員に何か用か?」
「神凪か…いや用というよりはこの人に無理やり連れてこられて…」
「あぁ……氷川、比企谷が何か問題でも起こしたのか?」
どうやら俺をここまで連れてきた人の名前は氷川というようだ。
「問題を起こしたも何も彼は問題だらけじゃありませんか!まず服装!ネクタイはちゃんと締めてないですし、ブレザーのボタンはしてません!衣服の乱れは心の乱れです!次に姿勢!猫背が癖になっています!そして何よりもこの眼!何なんですか!風紀を乱すためにあるかのようなこの濁ったまなざし!このような人を見かけて見過ごせるはずありません!」
いや、どんな理論だし。
「とにかく、風紀を乱していることは明確ですし反省文は書いてもらいます!」
俺が人の話を聞かないこの女の相手をしているとまた新たに部屋に入ってくる影があった。そいつこそが俺の今後の学園生活に影響を与える人物だと、俺は一目見たときからそう思った。