キリト「生還したら妹と弟がくっ付いてた」 作:ブロンズスモー
翌朝。直葉は目を覚ますと、目の前に海斗の寝顔があった。
「……………はっ?」
なんでっ?と直葉は昨日の夜のことを思い出した。確か、海斗の寝顔を見ようと思って同じ布団に入って………、
「あ、あのまま寝ちゃったんだ……」
はぁ……と、大きくため息をついた。昨日は普段より早く寝たからか、まだ時間はある。もう少しゆっくりしようと思って、布団の中で海斗の頭を撫でた。
すると、海斗が何か言ってるのに気付いた。寝言かな?と思って、耳を澄ませた。
「………カズ」
「!」
兄の名前を呼んでいた。自分の事を慰めてくれていたが、やはり海斗も辛かったのかな……なんて思ってると、また声が聞こえて来た。
「……てめぇ、まだ許してねえからな俺の当たり券勝手に使ったの。マジで覚えてろよモヤシ」
「……………」
気の所為だったようだ。
気を取り直して、頭を撫でてあげた。しばらくそうしてると、そろそろ起きなきゃいけない時間になったため、先に一階に降りて朝飯を作りに行こうとした。
布団から出ようとすると、グッと袖が引っ張られる。海斗が眠ったまま離してくれなかった。
「か、カイくーん?離してくれないと、朝ごはん作れないよ……」
「……………」
振りほどけなかった。いや、力が強くてじゃなくて可愛くて。
だが、早くしないと朝食を作る時間がなくなる。すると、海斗は袖を掴んだまま寝返りをうった。
「っ?」
グイッと引っ張られ、直葉は海斗の真上に転んだ。まるで、海斗を押し倒したようになってしまった。
自分の顔の真下に、海斗の顔がある。あと1ミリ顔が下がればキスしてしまう距離だ。ギリギリ、両腕で体を支えていた。
「っ………」
マズイ。そう思って、ソーッと身体を起こした直後、下から「んっ」と吐息の漏れる音がした。
ヤバい、と思った頃にはもう遅かった。海斗は起き上がってきた。直葉の唇に柔らかい何かが触れた。
「っ⁉︎」
が、くっ付いたのも一瞬で、すぐにおでこにおでこが直撃した。
「グハッ⁉︎」
「っ!」
海斗はすぐに後ろに倒れ込み、直葉は口を押さえてボーッとした。
直葉の気も知らずに、海斗は涙目で直葉の顔を見上げた。
「な、何してんだテメェ………‼︎」
「…………」
「スグ?」
「ばかあああああああああ‼︎」
キーンときて、耳を塞ぐ海斗の上から直葉は飛び退いて、走って消えて行った。
「……………はぁ?」
その背中を見ながら、海斗は呟いた。
ー
学校が終わり、放課後。部活の時間が終わった後、海斗は一人でバッティングセンターに行った。
そのため、直葉は一人でログインした。未だに唇に柔らかい感触を感じながらレコン、シグルド、サクヤと狩に出掛けた。
仕方ないのでサクヤが後衛に入り、シグルドとリーファが前衛……なのだが、シグルドの出番なかった。リーファは顔を真っ赤にしたまま、ただ延々とモンスターを狩り続けていた。目に入った敵をとりあえず殺していた。
「………な、何かあったのか?」
「わ、わからないよ……」
サクヤがこっそりとレコンに聞いたが、レコンは首を横に振った。
「学校でもずっとあの調子だったんだ」
「ふむ……」
サクヤが顎に手を当てて考えてると、シグルドがリーファに言った。
「おい、リーファ。何があったか知らないが落ち着け。戦ってるのはお前だけじゃない。少しは周りのことも考えろ」
「……………」
「おい、リーファ!」
「えっ⁉︎な、何⁉︎」
「何でもかんでも手を出すな。周りをもう少し見て」
「ち、違うから!あたしから手を出したんじゃないから!」
「は?」
「そもそもあいつが手を離してくれなかったのが悪いんだから!」
「何言ってんだお前」
「き、キスなんて誰もしてないんだから‼︎」
レコンが目を見開いて「今なんつった?」みたいな感じで口を開いた。
「あ、あれは事故なんだから!ちょっと口が触れただけなんだから!」
レコン(というか永田)の鼻から血が垂れた。
「そ、そもそも弟と寝てたのだって、本当は寝るつもりなかったんだから!」
レコン(というか永田)の目から血が垂れた。
「別に襲うつもりなんてなかったんだからああああああ‼︎」
レコン(というか永田)は吐血した。
リーファは泣きながら飛び上がった。
「お、おい。リーファ!」
サクヤが手を伸ばし掛けた直後、リーファが空中でドンッと誰かにぶつかった。
「きゃっ!ご、ごめんなさい!」
「………むっ?」
そいつは、不運なことにサラマンダーだった。しかも、かなり装備が整えられているサラマンダー。体格は、パーティ最大のシグルドよりも大きく、その横には同じような体格の男が一人と、普通くらいのサラマンダーが八人いた。
「あっ………」
明らかに自分よりも強い。いつ戦闘になっても逃げられるように身構えた。
男はギロリと自分を睨み付け、言った。
「気を付けろ」
「す、すみません……」
見逃してもらえる……と、ホッと胸を撫で下ろした時、サラマンダーの後ろの男がリーファを指差した。
「ユージーンさん!モーティマーさん!こいつです、リリース当初に俺のパーティを二回も蹴散らしたの!」
その言葉に、巨漢はピクッと片眉を上げた。
「こいつが……?」
「は、はい!まちがいないです!」
よく見たらそいつは、序盤に自分を襲って来たサラマンダーの一人だった。
ユージーンと呼ばれた男は、リーファの下を見た。レコン、サクヤ、シグルドを見下ろした。
「…………ふむ、そうだな。見逃してやるつもりだったが、部下が世話になった相手なら別だ。ここで死ね」
直後、ユージーンは背中の剣に手を掛けた。それを見て、サクヤが声を上げた。
「リーファ、逃げろ!」
直後、シグルドの魔法が飛んでくると共に、リーファは下に降りて回避しながら逃げた。
それに合わせて、シグルドとサクヤも後に続いた。放心状態のレコンを捨て置いて。
「レコン!早く逃げて!」
「奴はもうダメだ!諦めろ!」
「そうだね!分かった!」←ゲームでの死に慣れた
逃げる三人を見下ろしながら、ユージーンはモーティマーに聞いた。
「兄貴、どうする?」
「お前は後ろから追って圧力をかけろ。そこの四人、二手に分かれて左右から襲え。そこの二人はユージーンの後に続け。残りは俺と真上から追跡しながら、魔法で敵の足を止める」
モーティマーの指示に従って、サラマンダー達は動き出した。
「リーファちゃんと……コイコイが……」
ブツブツ呟いてるレコンを改札を通るついでのように瞬殺しながら、自分達を追ってくるユージーンを見て、リーファが二人に聞いた。
「ち、ちょっと!何なの⁉︎」
「アレはサラマンダーの領主、モーティマーとその弟のユージーンだ!」
「サラマンダー最強の兄弟とかで有名だぞ」
それを聞いて、リーファは冷や汗をかいた。
その直後、上から影が掛かる。焔魔法が降って来た。
「! 避けろ!」
三人とも上手く躱しながら進むが、ふと左右を見ると、二人ずつ追って来ている。後ろからも来ているし、追い付かれるのは時間の問題だった。
「くっ……!このままでは全滅だ!戦おうにも、戦力差があり過ぎる!」
奥歯を噛みながらサクヤが呟いた。
リーファは目を閉じて考えた。こういう時、コイコイならどうするか。層の薄い左右の敵を倒す?だが、敵に10秒でも粘られたら、すぐに後ろに追い付かれるし、足を止めれば上の魔法に狙撃される。
四方の誰か一方の敵を蹴散らしつつ、背後から追いつかれない手を考えなければならない。
しばらく考え込んだ後、リーファは二人に言った。
「………二人とも」
「どうした?」
「あたしの考えに乗ってみない?」
リーファはそう言うと、作戦を説明した。シグルドとサクヤはそれを聞いて、ノータイムで頷くと、三人で真上に飛び上がった。
「⁉︎」
「追うぞ。空中で挟み撃ちだ」
後ろからのユージーンの部隊と、左右に展開した部隊も真上に上がり、三人を追った。
三人はそれを確認すると、モーティマー達の魔法攻撃を上手く回避した。その魔法攻撃が、下から追ってくるユージーン以外のサラマンダーに直撃する。ユージーンは上手く回避した。
「⁉︎」
「しまった……‼︎」
それを見て、モーティマーは全員に魔法攻撃をやめさせた。
その直後、左側から追って来ていたサラマンダーのメンバーに一番大きく怯んでいたようなので、そっちに逃げた。
「逃すか!」
ユージーンは早くスタートを切って、三人を追った。
「チィッ……!何してる、追え!」
モーティマーの指示で、他のサラマンダー達も魔法を使いながら後を追った。
リーファ達は一瞬とはいえ、足を止めることに成功したが、ピンチなことには変わりない。
「この後はどうする⁉︎」
「とにかく、何処かに身を隠そう」
そうサクヤが言った直後、後ろからユージーンが剣を投げて来た。
「⁉︎」
それが、サクヤの背中に直撃し、地面に落下した。
「サクヤ!」
リーファとシグルドはサクヤの隣に降りた。
「大丈夫⁉︎」
「問題ない……。だが、これからどうしたものか」
上を見上げると、サラマンダー合計十人が自分達を見下ろしていた。
「………ここまでだな」
マーティマーがニヤリと微笑んで、剣を抜いた。他のサラマンダー達も、油断なく武器を構えたり魔法で援護出来るように浮いていた。
「………万事休すか」
シグルドがそう呟いた直後、何かが猛スピードで自分たちの前に降って来た。
全員がそっちに目をやると、煙の中からコイコイが出て来た。